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ただの魔女 その①

粘土・土塊・石ころ・木の根・砕けた舗装のアスファルト。
混ぜてくっつけ捻くれさせて、出来上がりますは自慢のゴーレム。
“emeth”なんて弱点つけて自動化せずに、都度都度指揮るマニュアル操作。
跳んで走って暴れ回って、殴って壊して傷つけて。
こうして“悪事”を働いていれば……。
「…………そら来た」
この猛然たる風切り音。“悪者”を打ち倒さんとする正義の味方。華美な衣装に身を包み、派手な魔法で平和を守る、みんなの憧れ。
「“魔法少女”……!」
街の危機に颯爽と駆け付けた魔法少女は、私の創ったゴーレムを、光を纏った剣で一閃。
たった一撃でやっつけてしまった。周囲の一般市民からも歓声が上がり、彼女も笑顔で手を振って応える。
まさにスター。ヒーロー……ヒロイン? 街のアイドル。みんなが彼女に憧れて、みんながあの子を好いている。
「…………気に食わないなぁ」
ゴーレムに魔力を送り込む。崩れた身体は再び歪に引っ付いて立ち上がる。
ほらほら頑張れ正義の味方。街の脅威がまた立ち上がった。
彼女の剣がまた閃いて、今度は綺麗に3等分。
「その程度?」
再び修復されるゴーレム。どうせ私がいる限り、何回だって再生されるんだから。そろそろ気付かないものかね?

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五行怪異世巡『天狗』 その⑦

その場に取り残された青葉はしばらく呆然としていたが、突然吹いてきた強風に身を震わせ、すぐに刀を構え、周囲に注意を払い始めた。
「わぁ、あの化け物だけがいなくなった、好都合だね」
周囲に天狗の声が響き渡る。
「お前はどうもただの人間みたいだな。その程度なら軽いもんだ!」
天狗がそう言うのと同時に、地鳴りのような音が青葉に迫る。
(何だ……? また『天狗倒し』か? いや……)
音源の方向を探し、青葉は周囲を見回す。そして、背後から迫っているものに気付いた。
それは、彼女の背丈ほどの直径はあろうかという巨大な火球。山肌を転がり落ちてくるそれを、青葉は転げるようにしてどうにか回避する。火球はそのまま転がり続け、倒木に衝突して消えた。
(たしか…………『天狗火』!)
続けて転がってくるもう一つの火球を回避しながら、青葉は背負っていたリュックを素早く地面に投げ捨てた。
更に自分に向かってくる天狗火を冷静に回避し、天狗の姿が無いか、周囲を見回す。
不意に、視界の隅で何かが動いた。すばやくそちらに納刀状態のままの刀を向ける。
その正体は、天狗火の直撃によって根元を破壊され、青葉に向けて倒れ込んでくる枯木だった。

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不機嫌なドミネイトレス

百貨店の外壁に突き刺さり暴れる怪物の姿を向かいのビルの屋上に腰掛けて眺めながら、魔法少女は溜め息を吐いていた。
「…………あーあー、また怪物が出たからってパニックになって。そのデパート、4か所しか出入口無いんだからさぁ? もっと冷静に順番守って逃げなきゃ、転んで怪我しちゃうでしょ……あ、ほら見ろ。1人転んだ。ああなると後ろも連鎖しちゃうんだからさぁ…………え、何? 私あんな馬鹿どもを助けなきゃならないの? 警察の皆さんも自衛隊の皆さんも分かってる? 普通の兵器効かないんだよ? 現状私の魔法しか対抗手段無いんだよ? この街一つ分の命を私が握ってるんだよ? 私のモチベがこの街の命運左右してるんだよ? あんな馬鹿ばっか……もっと真面目に生き延びようとしてよ。このままじゃ私、アイツらを助けたくなくなっちゃうよ……」
怪物の身体が完全に百貨店の中に潜り込むのを見届けてから、ようやく少女は重い腰を持ち上げた。
「…………まぁ、まあね。別に死んでほしいわけじゃないしさ。やらなきゃならないことはちゃんとやるよ。けど……」
軽く1歩跳躍して10m以上先の百貨店の外壁に着地し、そのまま怪物が開けた穴から屋内に侵入する。そのフロアにはまだ、逃げ遅れた一般市民が残っており、一部は侵入してきた怪物にスマートフォンを向けている。
「馬鹿と阿呆と無能には、ひとまず退場してもらおうか」
少女が指を鳴らすと、周囲にいた人間や両生類のような外見の怪物の動きがぴたりと止まった。
更に少女が指を軽く振るのに合わせて、人間たちは自動人形のような硬い動きでぐるりと振り向き、階段やエスカレーターに向けて列を乱すこと無く歩いて行き、1人ずつ順番に地上階に向けて避難を進めていった。
「……やっと消えたか。何百人いたんだか…………あー疲れた。もうこれで帰っちゃおっかなー……」
少女の魔法が解けて自由になった怪物が、最後に手近に残っていた彼女の方に顔を向ける。
「ウソウソ。ちゃんと最後までやるからさ。秒でお前片付けて、さっさと帰ろっと」

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マホウショウジョ・リアリティショック キャラクター

・福居路香(フクイ・ミチカ)
性別:女  年齢:まだ12歳  身長:144㎝
中学校に進学したばかりの少女。誕生日は2学期中盤。
部活動は決めていないが、何となく音楽部に入ろうと思っている。良い感じの管楽器をやってみたいが自分と周囲の適性的にドラムセットを叩く未来が確定している。
友人も多く、多趣味で、勉強も決して際立って得意では無いながらも毎日努力してそこそこの成績を維持している、ばちぼこのリア充。
家族や周囲からは愛され適切に褒められて育ってきたので自己肯定感も自己効力感もMAXで、自分の人生を滅茶苦茶価値が高いものとして認識している。子供なんてそれくらいで良いんだよ。

・使い魔
女子中高生を狙って魔法少女にさせようとしてくる謎の生き物。外見は四足歩行の哺乳類をモチーフにしたと思われるぬいぐるみのよう。全高約15㎝。ちっちゃい。色々と適当な甘言を述べて言いくるめまくり、これまでに数十人ほど戦いの道に引きずり込んだ実績がある。その大義はただ、化け物達から世界の平和を守るという一点にのみある。我が行いに一点の曇りなし。全てが正義だ。ちなみに歴代魔法少女たちは4割ほどが無事に成人し、1割が存命かつ未成年です。
ミチカちゃんにプレゼントした髪飾りは、本物の宝石とプラチナが使われている地味にすごいやつ。ミチカちゃんはよくある子供向けの安価な作り物だと思ってる。

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マホウショウジョ・リアリティショック 後編

ぬいぐるみが鬱陶しかったので、再び向き直り、目の前にしゃがみ込む。
「良い? ぬいさん」
「え、何……」
「私はね、今がすっごく楽しいんだよ。友達もたくさんいて、趣味も充実してて、勉強も頑張ってるし。これから多分部活にも入るから、もっと楽しく忙しくなる。そんな私の青春の時間と、仮に『魔法少女』とやらになったとして私が懸けなきゃならない命を、何の対価も無しにあげるわけが無いよね?」
「えっ……と……いや、そう、願い! 魔法少女になれば、何でも1つ願い事が叶うんだ! 君にもあるd」
「たった1つ? 私、自分の命と時間にはもうちょっと価値があるって自負してるんだけどなぁ」
「そ、それじゃあ……」
「ねぇぬいさん。1個だけアドバイスしてあげるね」
立ち上がりながら言う。
「そんなに無償の少年兵が欲しいなら、もっとコンプレックス丸出しの自己肯定感なんか欠片も無いネガティブな子を当たると良いよ。適当に甘い言葉並べて誘いたいならさ」
「うっ…………分かったよ」
思ったよりもあっさり引き下がってくれた。ちょっと意外で思わず振り返る。
「ためになるアドバイスをありがとう、ミチカちゃん。お礼にこれをあげよう」
ぬいぐるみは私に何かを差し出してきた。見たところ、髪飾りみたいだ。
「魔法少女に興味が出たら、それを使って。もちろん、ただのアクセサリとして使ってくれてもきっと君に似合うだろうし」
使って、と言われても……そこまで言うなら使い方まで教えてくれれば良いのに。まあ使うつもりは1ミリも無いけど。
ぬいぐるみは徐に立ち上がり、四足歩行でゆったりとした歩調でどこかへ歩き去っていった。それを見送ってから、もらった髪飾りをポケットにしまって私も帰途についた。

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五行怪異世巡『天狗』 その③

青葉は背負っていたリュックを地面に下ろし、杖代わりにしていた刀だけを抱くようにして種枚の隣に腰を下ろした。
「しかしまあ、よくついて来るじゃあないか。その貧弱な身体でさァ」
揶揄うように言いながら、種枚は青葉の腕をつついた。上着の下に隠れて目立たなかった、骨と皮しか無いかのような細腕の感触が、種枚の指に伝わってくる。
「ははは……まあ、軽いので。同じ力でも人より大きく動けるんです」
「なるほどなァ。私も結構細いんだぜ? 筋繊維が人より丈夫な分、量が要らないんだ」
笑いながら、種枚は腕まくりをしてみせた。彼女の骨ばった手首から前腕までが露出する。
青葉は曖昧な笑いを返し、リュックから水入りのペットボトルを取り出し、栓を捻った。
「……しッかし、居ねえなァ……天狗」
青葉が水を飲んでいると、不意に種枚が呟いた。
「いませんねぇ……」
登山道を離れているため、当然周囲に人の気配は無く、風に木々がざわめく音や鳥の鳴き声だけが聞こえてくる。
自然音に和んでいると、2人のもとに強風が吹きつけてきた。それに煽られ、青葉が被っていたキャップ帽が地面に落ちる。
「ン……鎌鼬じゃあねエな。まあ山ン中だし風くらい吹くか」
一度伸びをして、種枚は立ち上がった。それに釣られて、青葉もペットボトルをリュックにしまい、刀を杖に立ち上がる。
「疲れは取れたかい、青葉ちゃん?」
「まあ、少しは」
帽子を拾い、リュックを背負いながら答える。
「オーケイ、それじゃあ行こうか」
そう言って、種枚は更に山奥を目指して歩き始めた。

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鉄路の魔女:あんぐら・アングラー その④

超高速で飛び込むように大鯰に追いつき、ギンはシックル・クロウをその頭部に突き立てる。
(こいつのパワー相手じゃ、私ごと引きずり込まれるだけだ。私如きの力じゃブレーキにもならない)
「……だから」
踵落としの要領で、突き刺した足を勢い良く振り下ろす。彼女自身の落下速度と蹴りの威力もあり、大鯰の下降は更に『加速』される。
「もいっぱあああぁぁぁあッつ!」
まだ自由な状態にあった方の足もシックル・クロウを起動して突き刺し、下方向への勢いを更につける。
「まだまだぁあ!」
真上から地面を透過して、キンの放った矢弾が大鯰に直撃し、爆発してその勢いで更に下方へと押し出す。大鯰とギンが地下を通る線路をすり抜けた直後、地下鉄の車両が轟音を立てながら通り抜けていった。
「……ふゥー、間に合った。そして、このまま殺す」
地上からキンの放った徹甲矢弾が、大鯰の片目を正確に射貫く。ダメージで暴れ狂う大鯰の銃創を、ギンの精密な蹴りが更に貫いた。事前の射撃によって砕かれていた頭骨はそれを止めることはできず、柔らかい脳漿に足首まで深々と沈み込む。
「どんな動物でも、脳味噌をブチ抜かれれば死ぬんだ」
一度格納されていたシックル・クロウが、再び起動する。その威力と衝撃は大鯰の内部から破壊を引き起こし、一度大きくびくりと身を震わせてからその幻影は動きを止め、少しずつぐずぐずと消滅していった。

「おかえり。勝てたんだ?」
出迎えたキンに、地上へ這いあがって来たばかりのギンは無言でサムズ・アップを示した。その手を引いてギンを完全に地上に引き上げ、衣服についた汚れを払ってやってから、2人は車道を出て手近な商店の屋根によじ登った。
「お疲れ」
「いえい」
拳を突き合わせ、互いを讃え合う。
「助かったよキンちゃん。っていうかよく私の意図が分かったね」
「まぁ、付き合いそこそこ長いからねぇ」
「あと、地面挟んで見えないはずの相手によくあんなに正確に当てられるよね……毎度のことながらちょっと怖いよ」
「いやぁははは。慣れてまして」

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鉄路の魔女:あんぐら・アングラー その②

「オーケイそのまま、向こうのデカい交差点まで追おう」
「了解おギンちゃん。タイミングそっちで調整してね」
「はいはーい」
ギンと呼ばれた魔女は速度を上げ、先回りしてみせた。
「キンちゃん一瞬止めてー」
「はいはい了解」
大鯰の進む先にギンの放った矢弾が直撃し、粘性の高い液体がまき散らされ、大鯰の移動速度が一瞬遅れる。
「これで良い?」
「おっけぇーい!」
移動の勢いのまま、大鯰が空中に飛び出す。その巨体は、大型道路の交差点に落下しようとしている。
(奴にこのまま突っ込まれると、車に乗ってる人たちがイマジネーションを吸われちゃうかもしれない。だから)
足首に仕込まれた固有武器であるシックル・クロウを起動しながら、ギンは大鯰に飛び蹴りを食らわせた。
発条機構の弾性力とギン自身の威力と質量、速度の乗った攻撃が、大鯰を一瞬押し留めるが、体格差ゆえにすぐ弾き飛ばされてしまう。
「うぅ……流石に重さが違うや…………けど」
大鯰はそのまま落下していく。交差点の中央、信号の切り替わる瞬間の、『車が1台も通っていない』ど真ん中に。
「これで十分。お前に食わせるイマジネーションは無いよ」

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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑬

「それは辞めといた方が良いんじゃねッスか、シラカミさんよぉ」
後ろから鎌鼬くんが声をかけてきた。白神さんが面倒そうに振り返り、彼の方を見やる。
「その人、種枚さんも目ェ掛けてますんで、あの人と喧嘩する羽目になりますよ?」
「やぁーだぁー! 千葉さんはわたしが囲うのー!」
放電しながら自分を抱き締め、白神さんは反抗した。電流で身動きが取れない。
「いやマジでお願いしますよ。俺、お目付け役任されたんで、2人に喧嘩されると100パー巻き込まれるンス」
「し、白神サン」
自分もどうにか口を開く。
「ここは間を取って、その、自分は不可侵ってことでどうですかね。いきなり白神さんのものになるのはちょっとアレだけど……白神さん以外のものにもならないってことで」
「む……それなら、良いかな……」
そう呟き、白神さんは自分を解放してくれた。電気にやられて完全に麻痺しきった身体がその場に崩れ落ちる。
「……そういうわけで、鎌鼬くん。種枚さんに言っておいてくれる……? そうしておかないと、自分が死にかねない」
「了解ッス。じゃ、俺は失礼します。お大事に」
白神さんに抱えられて帰途に就きながら、鎌鼬くんにどうにか会釈を返した。

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Side:Law in Black Market 保護者

MNE-015
性別:男  年齢:25歳  身長:177㎝
好きなもの:子供、銃器
嫌いなもの:悪人
“ブラックマーケット”の一角にある施設、通称『学校』に所属する男性。役職は〈番人〉。主な仕事はたまに現れる脱走しようとする子供を張り倒してでも止めて元の部屋に投げ返すこと。
子供という生き物をナチュラルに下に見ており、ただでさえ危険なブラックマーケットに自分すら超えられない者を放り出すわけにはいかないという思いから、脱走者を叩きのめす際にはできるだけ汚くて理不尽な戦法を意図して用いている。これすら超えられないようなら脱走なんて許せるわけが無ェ。
脱走者が出た日は子供を殴ったストレスで一日中機嫌が悪くなる。一度寝ると元に戻るが、そもそも素で目つきと言葉遣いがあまりよろしくない。不機嫌モードではそれらが4割増し程度に悪くなり、声を掛けられた時の反応が「あ?」から「あ゛ァ⁉」くらいになったりする。また、子供の呼び方が素で「クソガキ」だが、「クソガキ=子供=保護すべき対象」という等式が脳内で成立しているため、「クソガキ」扱いしている子のことは命に代えても守ってくれる。
脱走者以外に手を上げることは無い上にスタンスが一応「子供は守るもの」側なので、脱走経験0の子供からはそこまで怖がられてはいない。
ちなみに本名は色々あって捨てた。現在の名前は上層部が呼び方に困って取り敢えずでナンバリングしたもの。あとでちゃんとした名前つけようねって言ってたらタイミングを逃した。渾名は「ミネさん」。

※『学校』:ブラックマーケット区域内で大人の保護者が周囲にいない子供をその事情を問わず攫い、最低15歳、最高18歳までの期間を拠点敷地内に監禁し、様々な教育と養育を行ってから多少の現金と希望された武器類だけを握らせて解放するという謎の活動を行っている組織。少なくとも監禁されている子供達は外と違って絶対に生命の危機に晒されずに済むが、『学校』側の解放より早く抜け出そうとするとボコボコのボコにされて止められる。「ブラックマーケットの浮浪児を使って何か大規模な悪事を働こうとしているのではないか」みたいな噂も流れているが、真相は創設者にしか分からない。

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子供は適切な保護者に安全に教育されなければならない 後編

「たしか、テメェは…………まだ13歳だったか」
『ミネ』と呼ばれた男は、呟きながら足下に転がしておいた品を少年に向けて蹴り飛ばす。それに釣られて、少年の視線が足元に転がって来た品物に移る。それらは自動拳銃用のボックス・マガジンだった。
「…………?」
「どうした? ソレ使うなら替えの弾は無きゃ意味無ェだろ。拾えよ」
少年は一瞬の逡巡の後、素早くしゃがみ込んで弾倉を拾い上げた。そして立ち上がった時、ミネは既に少年の眼前にまで音も無く迫っていた。
「ッ⁉」
拳銃を向けた腕を、ミネは片手で掴み、照準から己の身体を外す。続けて少年が振るおうとした空いた片手も片手で押さえ、最後の抵抗に放たれようとしていた蹴りも、両脚を片足で踏みつけるように抑え、抵抗の余地を完全に潰す。
「銃1丁で強くなった気でいたか? クソガキが……」
もがく少年を意に介すこともなくミネは上体を仰け反らせ、少年の額に勢い良く頭突きを直撃させた。
「がっ……!」
拘束を解くと同時に、気絶した少年がその場に崩れ落ちる。倒れた少年の頭を軽く一度蹴ってから、ミネは通信用インカムを起動した。
「…………もしもォし、こちら〈番人〉」
『……はぁい、こちら〈医務室長〉。何だいミネさん先生』
「ガキが脱走しようとしてたから止めた。回収しろ」
『了解。今日は誰だい?』
「ロタ。……ああ、あと一つ」
『何?』
「拳銃と弾倉パクってやがった。没収はするなよ」
『良いのかい? また逃げる時に使われるよ?』
「ガキの鉄砲ごときで止められるなら〈番人〉やってねェ」
通信を切り、ミネは再び塀の上によじ登り、監視を再開した。

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鉄路の魔女:Nameless Phantom その④

ミドリちゃんの方に向き直ってみると、彼女は回り込むようにして私と一定の距離を保ちつつ、倒れたアオイちゃんに駆け寄った。
「アオイちゃん! 無事?」
「何とか……威力はそんなに無かったっぽい」
「良かった……」
ミドリちゃんがこっちを睨みつけてくる。
……しかし、これ以上撃たれるのも嫌だし、いつまでも戦い続けるのも面倒だな……。
「…………もう、終わらせようか」
私に残ったイマジネーションを確認する。貯蓄は十分。
棍棒を投げ捨てる。4脚を開いて強く踏みしめ、機械腕を大きく真横に広げる。
「……〈Iron Horse〉」
脚部と両腕の機械装甲が捻じれ膨らみ、私の全身を少しずつ覆い隠していく。『鎧』として、そして、敵を殺す『刃』として。変形しながら形成されていく。
「〈Bicorne〉」
最後に頭部が完全に覆われる。額からは大きく湾曲した悪魔のような角が2本。鋼鉄故の黒色の装甲も合わさり、これじゃあ丸っきり見た目が化け物だ。
「ま、良いか。今日のところはここで退散してね」
全力を4脚に注いで踏み切り、機械装甲の補助によって全身のバネの力が100%乗った加速で2人に接近する。
アオイちゃんが咄嗟に前に出て防御しようとしたみたいだけど、今の私には関係ない。闘牛の角のように構えた腕の片方で引っかけるように轢き飛ばし、ついでにその後ろにいたミドリちゃんも巻き込んで吹き飛ばした。
「…………ふぅ」
2人が見えなくなるまで飛んでいくのを待ってからブレーキをかける。
「ひゃく……いや300mくらいは飛んだかな?」
〈Iron Horse : Bicorne〉を解除し、2人の飛んでいった方を眺める。これだけ痛めつければ、今日のうちくらいはこれ以上突っかかってこないだろう。刃は立てなかったからきっと生きてるだろうし。そんなことより、散歩を再開しようか。

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Side:Law in Black Market:真黒な闇から真白な貴方へ 後編

そして3つ目。どんな世界でも、どんな社会でも、必ず「あぶれずにはいられない者」というのは現れるものですが、そんな人たちが追いやられ、死にさえしなければ辿り着ける最後の希望。“危険なセーフティ・ネット”……これは私だけが呼んでる異名ですけど。ヒロマレヒロマレ。そのエリアを人呼んで、〈ブラックマーケット〉。基本的には地表から広がっていますが、時々他のエリアが位置するはずの高さにまで侵食し、食い込んでいることもありますね。正確な規模や面積すら把握しきれていない、世界の暗黒面ですよ。
このエリアでは、“地上”や“天界”の法なんて意味を持ちません。ここで意味を持つのはたった一つ簡単なもの。『商品価値』です。
「才能」でも「人手」でも「物品」でも、価値ある『何か』が提供できること。それが〈ブラックマーケット〉で生きるための条件です。ああ、別に無くても良いんですよ? 『価値』は客観的なものですから。人間、生きているだけで如何様にも使えるものです。
……それで、何の話でしたっけ? ああ、そうでしたそうでした。戸籍も記憶も何も無い。そんな貴方に『世界』のことと『生き方』を教えてあげるって話でしたね。
ようこそ我らが唯一最後の居場所〈ブラックマーケット〉へ。私たちはあなたを歓迎しますよ。分からないことがあったら何でも聞いてください。私は“情報屋”ですから、あなたの『商品価値』の限り、喜んで私の『価値』―情報をお返ししましょう。

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Side:Law in Black Market:真黒な闇から真白な貴方へ 前編

今からおおよそ200年ほど前の事だったでしょうか。世界は軽く滅亡しました。
理由ですか? いえ、私はその頃生まれてすらいませんでしたので……。資料? 残っているわけ無いじゃないですか。紙の書類や書物はどれもこれも真っ先に燃料になっちゃいましたし。もしかしたら誰かがデジタルメモリで保存しているかもしれませんが……少なくとも私は知りませんね。情報が欲しいなら〈アッパーヤード〉にでも行ってみたらいかがです?
さて閑話休題。種の滅亡を目前にしたとき、本能的にそれを回避しようとするのが生物というものです。幸い、『ヒト』という種族にとってもそれは同じだったようですね。
世界各地の大都市(メトロポリス)を拠点として、スカイ・スクレイパー群の上層へと逃げるように移住した人間たちは、争ったり協力したり、ウヨキョクセツを経た結果、やがて収斂進化的におおよそ3つのエリアが成立しました。
1つ目に〈アッパーヤード〉。さっきちらっと口にしましたね。最低でも地表から100m以上の高さに位置し、そのメトロポリスの有力者や権力者の居住区と、図書館や情報関係の施設など、人類にとって重要になる施設が多く見られるエリアです。“天界”なんて呼び方をする人たちもいますね。
2つ目に〈グラウンド〉。目安として、地表から40m以上に位置し、生き残りの子孫のおよそ7割が暮らしています。ちなみに〈アッパーヤード〉の人口比率はおおよそ2割ほどです。
“地上”とも呼ばれるこのエリアの特徴はスカイ・スクレイパー群の間に橋渡しするように増築された迷路のような居住区です。ぱっと見、本当にそこが地表みたいに見えるんですよ。下から見上げたり遠くから眺めると壮観ですよ、おすすめです。

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Side:Law in Black Market 用語集・地理編

・スカイ・スクレイパー群:滅亡の危機において人類が退避した、世界各地のメトロポリスの高層建造物群。特に呼称が定まっているわけでは無く、敢えてそれ全体を指して呼ぶ際はかつてその場所につけられていた地名で呼ばれる。

・〈アッパーヤード〉:居住区のうち、地表から100m以上に位置するエリア。有力者や権力者の居住区と、情報・記録関連の施設が見られる。『天界』と呼ばれることもある。ちなみに〈グラウンド〉や〈ブラックマーケット〉の人間がここに来たからと言って罰せられるとか後ろ指差されるとかいったことは起きないので安心。人間皆、滅亡の危機を協力して乗り越える仲間である。……いややっぱブラマの住人は変な目で見られるかも。バレてはいけない。

・〈グラウンド〉:居住区のうち、地表から40~100mに位置するエリア。構想建造物どうしの間に橋渡しのように増築された居住区が特徴。総人口の7割ほどが住んでいる。『地上』と呼ばれることもある。

・〈地表面〉:〈グラウンド〉において、高層ビルの隙間に橋渡しするように増築された部分。多層的に重なり、ほとんど隙間なく敷き詰められていることから、〈グラウンド〉で生まれ育った若者や子供の中には、自分の立っている場所が文字通り「地表面」と勘違いしている者もいたりする。

・〈ブラックマーケット〉:居住区のうち、〈アッパーヤード〉にも〈グラウンド〉にも属さないエリア。ここの住人に市民権は無く、このエリア内で法律は適用されない。

・〈ホワイトホール〉:周囲を〈ブラックマーケット〉の領域に囲まれ、完全に分断された〈グラウンド〉または〈アッパーヤード〉。ほとんど見られない。一見危険そうに見えるが、〈ブラックマーケット〉の住人は外にあまり出ないので意外と安全。ただ旅行はできないのが難点。

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Side:Law in Black Market

企画っていうか厳密にはその下位互換っていうか、敢えて明文化するなら『誰でも好き勝手使って良い世界観』とでも言えば良いんですかね。そんな感じのものをご用意したんですがね。誰か使ってくれないかなー……って。
そういうわけで期間なんかも特に定まっていないわけなんですが。これ使って何かやれそうだなって人はタグに『Side:Law in Black Market』か『SLBM』か『さいどろ』と入れてお話とかポエムとか書いてくれると嬉しいです。というわけで以下雑に世界観。

舞台は近未来の世界。自律ロボットもサイボーグも多分いる。約200年前、人類は滅亡の危機に瀕した。
理由は不明。紙媒体の資料はポスト・アポカリプスにおいて『燃料』として消えてしまったから。デジタル・デバイスは生きているが、重要な情報は大部分が厳重に保管・秘匿されているため、真相を知る人間は少ない。
人類は世界各地のメトロポリスの高層建造物群を利用し、上へ上へと逃げるように移住していった。やがて彼らはそれぞれの役割に応じて、そのスカイ・スクレイパー群に3層に住み分けるようになる。
地表から100m以上の上層〈アッパーヤード〉。総人口の約2割、主に有力者や権力者が住み、デジタル・メモリを利用した情報・記録の保存と各スカイ・スクレイパー群の統治を目的としたエリア。
〈アッパーヤード〉より下、地表から40m以上の〈グラウンド〉。建造物の隙間に橋を渡すように増築された『地表』が総面積の約7割を占める、一般市民の居住区。
そして、〈ブラックマーケット〉。正確な規模や面積は一切不明で、地表から〈グラウンド〉や〈アッパーヤード〉の高さにまで食い込んでいることすらある、人格や思想故に民衆から『あぶれざるを得なかった』ドロップアウター達が最後に辿り着く危険地帯。
〈ブラックマーケット〉の領域内において上層の『法』は適用されず、ただ『商品価値』を示せる限り生を許されるという『掟』だけで回っている。『価値』を失った人間は、最後に残った『肉体』と『生命』を『価値』が分かる人間に『活用』されることになる。

物語の主な舞台は〈ブラックマーケット〉。ドロップアウター共が己の『価値』を武器に現世の地獄を生き抜く、そんな歴史の端にも引っかからないような、ちっぽけなお話。

というわけでもうちょい色々書きますね。

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化け蜘蛛の友達

三笠雪菜(ミカサ・ユナ)
年齢:15歳  性別:女  身長:149㎝
願い:〈友斬〉と一緒にいたい
マジックアイテム:《蜘蛛切》
衣装:黒地に女郎蜘蛛と蜘蛛の巣の刺繡模様が入った和装
魔法:化け蜘蛛の力を部分的に引き出す
不幸にも〈友斬〉に絡まれ、その上で見事に勝利してしまったため、魔法使いになった少女。大賢者と無関係の魔法使いは多分激レア。
死闘の中で〈友斬〉との奇妙な絆を覚えてしまい、完全に精神がおかしくなってしまった(普段は正常な人間っぽく振舞えてはいる)。殺し合ったまでは記憶があるものの、自分が〈友斬〉を殺してしまったことは完全に忘れており、暇なときは変身して唯一最高の親友〈友斬〉を探して彷徨い歩き、目についた魔法使いとファントムには取り敢えず斬りかかっている。そのせいで大賢者と一度バチりかけたけど彼女は今日も元気に蜘蛛狂いやっています。
魔法の性質は雑に言うと「蜘蛛のように壁や天井を歩き回れるようになり、敏捷性が上がり、感覚能力も上がる」というもの。ちなみに《蜘蛛切》(雪菜自身は頑なに《友切》と呼び続けている)にはデフォルトで「刃が当たっただけで斬撃が発生する」という魔法効果がかかっていたりする。
変身中は何故かうっすらと〈友斬〉との繋がりを感じられるので、変身状態は好き。

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魔法使いの友達

〈友斬〉(トモキリ)
巨大な蜘蛛の姿をしたファントム。素質があると思われる人間の前に現れ、どこからか刀を一振り目の前に投げ、それを用いて自分と戦うように告げる。相手が死んだら仕方ないので食べて証拠隠滅する。
戦闘時には相手が魔法使いでなくとも見えるようになってくれる上、周囲のあらゆる生物や魔法使い、ファントムから認識できなくなる。
人間どもに喧嘩を売る理由はただ一つ、「己にとって最高の友人を見付け、その友人に殺されるため」。強さに絶対的な自信を持っており、自分を殺すことができるとしたらそれは自分が認めた友人であり、用いる道具は自身の所持している刀《友切》であると考えている。実際滅茶苦茶硬くて結構速くて糸も毒も吐くからかなり強い。
〈友斬〉を殺した《友切》は《蜘蛛切》と銘を変え、魔法使いに変身するためのマジックアイテムとなる。ちなみに《蜘蛛切》は普段、邪魔なので組紐飾りに変化して手首や足首や首に巻き付いている。
最高の友人と出会い、無事殺されることができたものの、友人の「願い」に反応して彼女に吸収される形で一命を取り留めることとなった。まあ出てくることなんて無いので実質死んでるようなものなんだが。

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悪霊の指揮者

榛名千ユリ(ハルナ・チユリ)
年齢:青葉とタメ  性別:女性  身長:145㎝前後
好きなもの:家族、自分、悪霊、飴
嫌いなもの:反抗的な無能、調子に乗ってる無能、身の程を弁えない無能、果汁入りの飴
悪霊遣いの少女。両手の十指に1体ずつ悪霊を封じ、その霊体と霊障を自在に操る能力を持っている。当然霊感もある。現在の手持ちは右手親指に封じた無数の手の霊“草分”、右手中指に封じた大鎧と刀で武装した武者の霊“野武士”、右手小指に封じた暗紫色の炎を纏った左眼だけ嵌まった頭蓋骨の霊“邪視”、左手薬指に封じた身長約2.4mの女性霊“私の愛しいエイト・フィート”の4体。
家族が大好きで心の底から尊敬している。特に名付け親でもあり、霊感があることから経験してきた様々な怪異の話を寝物語として語ってくれた母方のお祖母ちゃんには滅茶苦茶懐いている。“私の愛しいエイト・フィート”もお祖母ちゃんの因縁から受け継いだもの。
家族が大好きなので、家族から血や縁や名や才や姿やその他様々なものを受け継いで生まれ育ってきた自分の事も大好き。
そこまでは良いのだが、家族愛が過ぎて自分の認めた相手以外のことは見下しているところがある。
以上の理由で性格はきわめて悪い。他人と会話する時高確率で罵倒か軽蔑か軽視が含まれてる。教師や大人相手でも態度が変わらねえってんだから大したものです。
普段から身に付けているウエストポーチには、飴ちゃんが大量に入っている。その理由については彼女曰く「アタシは軍師だから頭たくさん使うの」とのこと。他人に分けてくれることはほぼ無い。
ちなみに名前の「ユリ」の部分だけ片仮名なのは「千百合」だと「せんひゃくごう」と区別がつきにくいと思ったお祖母ちゃんの意思。千ユリ本人はちょっと変わっているので気に入っている。

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縁に縛られている

応絢那(イラエ・アヤナ)
性別:女  年齢:10代  身長:160㎝
マジックアイテム:お守り
願い:独りになりたくない
衣装:拘束衣
魔法:縁に縛られる
魔法使いの少女。家庭の問題の影響で孤独に対して異常なまでに恐怖しており、その願いが魔法に反映された。
その魔法を簡単に表すと「自分と何者かを繋ぐ『縁』が残っている限り、決して死ぬことが無い」というもの。自分を知っている者が一人でも生きている限りその『縁』によってあらゆるダメージは『縁』を材料として即座に修復される。ファントムとの敵対ですらそれ自体が『縁』となるため、ファントムとの戦闘中、彼女は絶対に死なない。また、自身を縛る『縁』を鎖として具現化し、武器として操ることもできる。
かつて初めてのファントムとの戦闘にて、肉体の大部分を食われたせいで、魔法でできていない彼女の生来の肉体部位は右脚全体と左腕の肘から先のみであり、それらの部分が己の魔法で『縁』に代替されることも恐れている。これらの部位を軽くでも怪我するとひどいパニック症状に陥り、再生させないために『縁』の鎖で傷口を更に深く抉り続ける。異物が傷口に直接接している限りは『縁』の再生が起きないためである。
思考する脳さえも己の魔法に代替されてしまっているせいで、『自己』というものに自信が持てず、精神は非常に不安定。

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視える世界を超えて エピソード7:潜龍 その⑩

種枚さんと犬神ちゃんは、およそ3時間の間、何も言わずその場にじっとしていた。種枚さんは目を閉じたまま脱力しきっており、犬神ちゃんはそんな種枚さんの顔を、何も言わず、微動だにもせず覗き込んでいる。
段々と辺りが暗くなり、完全に日が沈み、夜が更けていく。そのうち、背後に聞こえていた神楽の音も聞こえなくなり、祭りの終わる気配がし始めた。
不思議とここまで、本殿の方には一人も来なかったけれど、ようやく足音が迫ってきた。
「貴様ら。何をしている?」
低い男声に振り返ると、数時間前に会った、狩衣姿のあの男性がすぐそこに立っていた。
「よォ、潜龍の。遅かったじゃないか。友達が来たもんだから、悪いが帰らせてもらうよ」
答えたのは種枚さん。
「フン、馬鹿を言え。鬼の力は完全に封じた。それに加えてこの拘束、逃げられるものか」
会話内容からして、種枚さんをあんな目に遭わせたのは、この男なんだろうか。
「たしかに、ちょっとこれは、しんどい……なっと」
言いながら、種枚さんは腕を思い切り振るった。その勢いで鎖と縄、有刺鉄線は簡単に引きちぎられ、掌を貫いていた刀もあっさりと抜けてしまった。
同じように足もばたつかせ、拘束を完全に振りほどく。紙と木の御札は彼女の体温にやられたのか、真っ黒に焼け焦げていた。
男性の顔を見る。彼は信じられないとでも言いたげに目を見開いていた。
「……馬鹿な…………怪異を封じる札に、怪異を狩る刀を4振りも使ったんだぞ⁉ 有刺鉄線で動きも制限していたはずだ!」
「アァー、結構痛かったんだぜ、あの刃。ほら見ろ、まだ穴が開いてら」
未だ出血の止まらない両手をひらひらと振りながら、種枚さんは冗談めかして言い、本殿からのそりと出てきた。そのまま、これまた出血が続いている両足を引きずりながらこちらに歩いてくる。そして、呆然としている男性とすれ違うその時、足を止めてその肩に手を置いた。
「改めて言っておくぜィ、潜龍の。私は飽くまでも『人間』だ。もしかしたら薄ゥーく鬼の血でも混じっているかもだが……、これから私を捕らえたきゃ、コンクリでも使うんだね。まァ、何されたって出て行ってやるけどな」
そして男性、潜龍さんというのだろうか。彼から離れ、犬神ちゃんに手招きし、上機嫌で駆け寄ってきた犬神ちゃんの肩を抱き、舞殿の方へ歩き去って行った。

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑫

「う……タマモ?」
腕の攻撃は空振りに終わったけれど、私を助けてくれたのであろうタマモの方を見ると姿が無い。ぶつけた後頭部をさすりながら周囲を見ると、数m後方でひっくり返っていた。
「タマモ……その、ごめん」
「いや謝るな、感謝しろ。俺のお陰で死なずに済んだんだぞ……痛え」
そこまでのダメージは受けなかったみたいで、すぐに起き上がった。鼻血を流してはいるけれどそのくらいだ。
「ありがと、タマモ。頭はぶつけたけど」
「マジか。次は受け身取れよ?」
「善処する」
そういえば攻撃の手が止んでいた。咄嗟にエベルソルの方に向き直る。さっきまで頑張って破壊していた腕は大部分が再生しているようだ。
「あークソ、せっかくの攻撃が無駄になったじゃねえかよ。大人しく防御だけしとけッてンだよなァ」
「上への攻撃がちょっと密度低かったかも」
「反省会は後だ。削れるのは分かったんだから……もう一度殺しきるぞ!」
タマモはまた光弾を用意してすぐに発射する。
私も光弾を描きながら、描いた傍から撃ち出していく。ほぼ真上に、奴を狙うのでは無く、取り敢えずその場から退かす意味合いで。
「……準備よし。全弾……突撃!」
十分な数を撃ち出したところで、光弾全てを敵の一点、およそ中央に向けて叩き込む。
槍の如く並んだ光弾は、腕の防御を破壊しながら奥へ、また破壊しながら奥へ、どんどん突き刺さり、体幹を破壊した。腕たちの起点を上手く射貫けたようで、腕たちがバラバラに地面に散らばる。
「……ロキお前……すげえな」
「殺せては無いし」
「いやァ……あとは1本ずつ順繰りに処理すりゃ良いだけだからな。9割お前の手柄だよ」
「わぁい」
あとは腕たちを二人で手分けして処理していき、私の初めての戦いは無事に勝利で終わった。

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復讐屋

“復讐屋”
性別:女  年齢:27歳  身長:181㎝
ブラックマーケットの奥深くで「復讐支援業」に従事している女性。本名を知っている人間はごく少数で、腕利きの情報屋ですら名前を探れないでいる。
「復讐とは、過去の因縁に決着を付け前に進むための儀式である」との信念から、顧客たちの復讐の支援を行うべく、情報収集・ターゲットの誘導・武器類の提供を行う。
飽くまでも直接手を下すのは復讐を望む本人であるべきと考えており、「復讐代行」だけは絶対にしないと決めている。
愛銃は6発装填リボルバー式拳銃の〈ジェヘナ〉と5発装填ボルトアクション式スナイパーライフルの〈リンボ〉。実際に発砲する機会は少なく、特に〈ジェヘナ〉には常に1発しか弾丸を入れていない。
仕事で使っているリュックサックは状況に応じて中身が変わるが、ミネラルウォーター500ml×2、携帯食料1日分、アーミーナイフ、防水マッチ30本入り1箱、電気ランタン、合成繊維製のロープ10m、カラビナ4個、ブランケット、〈リンボ〉用の弾薬箱20発×2、〈ジェヘナ〉用の弾丸1発は常備している。
自分の生業については、「死後地獄に堕ちることが確定しているだけでそれ自体は正当な行為である」と認識している。

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑩

「しかしまあ……結構だりィぞ」
「何が? ちょっと頑張ればダメージ通せるよ?」
「いやァ……ちょいと俺の攻撃をよォーく見といてくださいよフヴェズルングさんや」
タマモの攻撃が、防御していた腕を数本吹き飛ばす。すぐに別の腕が防御に回って……。
「あ、なるほどー」
千切れていたはずの腕が無くなっている。というか、無事な腕の陰に隠れた隙に再生してるっぽい。
「火力足りてなくない?」
「だなァ。一般市民が通報して応援が来てくれるまで粘るってのもアリではあるンだがよォ……なあロキ」
「何?」
「せっかくの初陣、華々しい勝利ってヤツで飾りたくね?」
「まあ、せっかくならねぇ」
ニッ、と笑ってタマモが1歩踏み出す。
「じゃ、ちょっと頑張ろうぜ」
「うん」
タマモは素早く弾幕の用意をして、それと並行してエベルソルを攻撃している。正面から削り切るつもりだろうか。私も攻撃に参加しても良いけど、私達2人でダメージが追い付くだろうか。せめて全方位から削れれば効率良く倒せそうなんだけれど……。
「あ、良いこと思いついた」
「あ? 何だ、先輩として協力なら惜しまねーぞ」
「引き続き頑張って」
「りょーかい」
少し大きめの光弾をたくさん生成する。そのうち半分は、作るのと同時にエベルソルに飛ばして、タマモの支援をする。
そして、そこそこの数の光弾が貯まったところで、改めてエベルソルを睨む。

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑧

「……そうだ、何か芸術っぽいのが多い所行こうぜ。エベルソルってのは芸術をブッ壊すことに命懸けてる連中だからな」
「なるほどー。それなら“芸術公園”とか?」
「おっ、名案」
通称“芸術公園”。この彩市在住のアーティストが制作した彫刻などの立体作品がそこら中に乱立する市民公園。屋外ステージもあって、ちょくちょくイベントが開かれたりもする、住民たちの憩いの場だ。
「こっからだと歩いて……10分くらいか。お前時間とか大丈夫か?」
「うちは門限とか結構緩いから大丈夫」
「そうかい。じゃあ行こうか」
適当な世間話をしながら、公園に向かう。タマモ、私より2つも歳上だったのか。敬語でなくても構わないと言われたので、言葉遣いはそのままだけど。
「……さて、着いたわけだが」
「いないね、エベルソル」
「いないなァ……」
殆ど日没といった空の下、公園には数人の一般市民が見られる程度で極めて平和そうな日常風景が広がっていた。
「……もう帰って良いかな」
「そう言うなよ。10分くらい時間潰していこうぜ」
「ん」
曲線的なシルエットをした石材製の大型彫刻に登り、公園全体を見下ろす。
「……本っ当に平和。エベルソルって実在するの?」
「一応、10回くらい遭ったことはあるんだけどなァ……」
少し離れたところに立っている時計をちらと見やる。もうすぐ5時か。
「5時まで何も無かったら帰って良い?」
「良いんじゃね?」
そのやり取りを終えた瞬間、まるで見計らっていたかのように大きな影が公園に近付いてきた。
「……あーあ、フラグ立てたりするからよォ」
「むぅ、まあ戦い方も考えたいし良いか」

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑥

フォールム本部内を1周して、あの部屋に戻ってきた。タマモは設備について逐一教えてくれたけど、様子を見ていた感じ、半分くらいは彼も初めて入った場所だったようだ。
彼が少し血のついたままの椅子に掛け、促されて私も向かいの席に座る。
「最後にここが、数ある休憩室の一つだ。最序盤でスルーした部屋は全部休憩室だな。誰がどこ使うとかは決まってねェけど、リプリゼントルは好きに使って良いことになってる」
「へー……」
「さて……施設内見学は終わったが、何か質問とかあるか?」
「はーい、ありまーす」
「何でしょうフヴェズルングさん」
「タマモせんせー、私、絵が全く描けないんですけどどう戦えば良いんですか? このガラスペンで何かを描いて戦うんですよね?」
「あー…………」
タマモはしばらく目を泳がせ、テーブルに備え付けられていたメモ帳のページとボールペンをこちらに差し出した。
「ロキお前、犬と猫を描き分けられるか?」
「…………」
とりあえずペンを取り、さらさらと2つの絵を描いてみる。なかなかに酷い出来の、辛うじて四本足の何かと分かる絵が並んでいた。
「すげェや、違いがある事しか分からねえ」
「お恥ずかしい限りで……」
「別に恥ずかしいことじゃねェよ。俺も絵はド下手だ」
そう言いながら、タマモはページをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだ。
「じゃあ、タマモはどうやってるの?」
「こうしてる」
ニタリと笑い、彼はガラスペンを取り出した。そのペン先からインキが垂れ、空中で一つの球形にまとまる。
「……さっきの紙捨てなきゃ良かったな。まあ良いや」
彼はメモ帳から新たに1ページ破り取り、宙に放った。そしてひらひらと落ちてくるページ片に、インキの球体、いや、弾丸を発射し命中させた。
「おー」
自然と拍手が出る。
「複雑なモン描けねェなら、単純なモンを武器にすりゃ良いんだ」

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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Artists Beginning その⑤

「クッソ負けた……人を操ることについては自信あったんだけどなァ……完璧にそっちのペースだったな」
そう言われて、少し得意げになってしまう。当然だ、これが私の『芸術』なんだから。
「それじゃあ、そっちから教えて?」
「……俺の芸術は…………何て言えば良いんだろうな。……敢えて言うなら、そうだな、『扇動』が近いかな。芸術ってのは、人の感情を揺さぶり動かすものだろ?」
頷き、続きを促す。
「言葉で、リズムで、テンポで、環境で。あるものと使えるもの全部使って、人の感情を動かし操る。それはもう芸術だろ」
「……言われてみればそんな気がしてきた」
タマモの表情がぱっと輝いた。
「だろー? あの野郎はそれが分からねえから駄目なンだよ。顔料か旋律が無きゃ芸術じゃねェと思ってンだぜ?」
「それは良くない」
これは間違いなく私の本心だ。私の芸術も、そういうものだから。
「で、ロキ。お前はどういう『芸術』を使うんだ?」
「んー……『展開の演出』、かな。ボードゲームなんかだとやりやすいんだ、ルールで縛られてるから。ゲームっていうのは物語の創出だから、より面白い展開を描くために勝敗を捨てて『人』と『運』、『場』を都合のいいように操作する」
「なァるほどォ……道理で負けたわけだ」
「お褒めに与り光栄至極」
「ハハッ、くるしゅーない」

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貰ってはいるのよ、愛を。

・岩戸青葉(イワト・アオバ)
年齢:13  性別:女  身長:小学生料金でバスや電車に乗れるくらい
初出はエピソード6。名乗る機会が無かったので「少女」で押し通さざるを得なかった子。
人外のモノに好かれ、人外の異能の才を持つ女系一族“岩戸家”の当代末子。人外の才能や霊感は全く無く、かといって姉や両親、親族からそれを理由に邪険に扱われることも無く、むしろ能力など関係無いとばかりに深い愛情を受けて育ってきたが、その愛が逆に彼女の劣等感を刺激した。
「家業を継ぐ」という観点においては明確に劣っている自分がその愛情に足ると心の奥底で信じ切れず、それを受けるに相応しい人間になるべく、夜な夜な愛刀たる〈薫風〉を手に家を抜け出しては、怪異相手に武者修行を繰り広げている。
幼い頃には自分の無能ぶりに絶望し引きこもったこともあったが、現在は〈薫風〉と暴力性(殺意)、身体能力という希望があるため、かなり安定している。
ちなみに家族や親族に八つ当たったことは一度も無い。彼らが悪いわけでも無ければ、そもそも自分の能力の低さが理由なのにその能力がある人間に当たれるわけが無かったので。

〈薫風〉:岩戸家に伝わる日本刀。刃渡り約55㎝。全長約80㎝。各代で最も力の弱い子が怪異から身を護るために受け継ぐ。霊体にも干渉し、怪異存在に特にダメージを与えることができる。また、所有者であるというだけでその威光が弱い怪異を寄せ付けず、所有者の受ける霊障を吸収する。近代以降、実際にこれを武器として用いる継承者はいなかった。