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少年少女色彩都市 act 5

肉塊がその身体を地上の2人に叩きつける。しかし、それは少年がガラスペンで描いた障壁に防がれた。
「っ……やっぱり、結構重いな」
障壁には深く放射状の罅が入っており、一撃を防ぐのが限界であることは明白だった。
「君、早く逃げるんだ。防ぐだけなら何とかできるから」
少年に促されるが、叶絵は怪物の襲撃のショックからか座り込んだまま動かない。
「ああもう、早く逃げるんだよ!」
少年に手を引かれて漸く正気に戻り、肉塊が次の攻撃を放つ直前で、2人は怪物の真下から脱出した。直後、少年の生成していた障壁が粉砕され、肉塊が頭部を地面に叩きつける。
「危なかった……。良いかい、君。今すぐここから逃げて、家に帰るんだ」
「え、いやでも……」
「エベルソルの前で民間人連れて何やってるの?」
2人の会話に、突如薄紫のワンピースの少女が割り込んできた。
「⁉ な、何故ここに……⁉」
少年のことは無視して、少女は叶絵に軽く片手を挙げて挨拶した。
「しかし君、日に2度もエベルソルに遭遇するなんて一周回って逆にラッキーなんじゃない? 今すぐコンビニに行って一番くじ引くのをお勧めするよー。今ねぇ、私の好きなアニメの一番くじやってるんだー」
肉塊のようなエベルソルが近付いてくるのを、少女は片手に引きずっていたヘドロの塊のようなエベルソルを投げつけて牽制する。
「ねえ君、私の助け、あった方が良い?」
少女が少年に尋ねる。
「え、あ、ああ、できればお願いしたいけど……」
「そんな答え方できる余裕があるなら、まだ余裕そうだね」
「えっ」
少女はヘドロ塊のエベルソルを再び拾い、肉塊エベルソルの脇を通り抜けた。
「ぐっどらっく、若きリプリゼントル。本当に駄目そうだったら助けてやるから、せめて私がこいつを片付けるまでは頑張るんだよ」

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厄祓い荒正し Ep.1:でぃすがいず その①

割れた床板の下に手を突っ込んで、しばらく床下を探る。目的の感触が触れ、すぐにそれを床の上まで持ち上げた。
「……見つけた」
お目当ての品、この神社がまだズタボロ廃神社じゃ無かった頃にお神酒として奉納された、半升入りの清酒の瓶。瓶・中身共に状態良しと目視で確認し、栓を開ける。
端の欠けた猪口を2枚、床の上に並べる。1枚を目の前に、もう1枚を、まるで誰かと対面しているかのように奥に。
お神酒をそれぞれの猪口に注いでいく。奥の猪口、こちらの猪口の順番で。瓶には再び封をして、また床下に隠す。
それから、またお神酒の前に胡坐で座り、こちらの猪口を取り上げ、中身を一息に飲み干した。
日本酒特有の気持ち悪い甘味と喉を焼く感触に思わず顔を顰めたが、我慢して飲み込み、猪口を床にタン、と置き、あちらの酒器を見る。
「……やっと出てきた」
あちらの酒器を持ち上げ、中身を吞むでも無くしげしげと見つめている異形の怪物……この神社の御祭神に、溜め息を吐いた。
「良ィーい酒だァ……旨かったべや?」
「無理な味だった」
「ウッソだァー。だってこんなン、香りだけで旨ェだろーがよィ」
「ならさっさと吞んでくださいます? せっかく神様呼ぶために苦手なの我慢したんですから」
「ウイウイ」
細長く節くれだった指3本で摘んでいた酒器を口元に持っていき、神様はすい、とお神酒を飲み下した。
「ッ…………はァー……! やッぱ旨ェなァ、人間サマが神社に納める酒はよォ」
「あれが旨いぃ? 理解できない……」
この神様は、いつも人間のことを指す時に、『人間サマ』と“様”付けで呼んでいる。神様なんだから、もっと偉そうにしても良さそうなものなのに。以前それについて尋ねた時はたしか……。

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CHILDish Monstrum:或る離島の業務日誌 その⑧

「じゃね、おじさん。もう帰っていいよ。私はおじさんの魔剣作るから」
魔剣? 作る? キュクロプスの能力に関係することなのだろうか。これから関わっていく以上、知っておいた方が良いだろう。この機に尋ねることにする。
「魔剣? 君の能力か?」
「ん。私の能力、『魔剣の鍛造』。島のみんなも全員持ってるよ。おじいちゃんにもあげたの。たくさん」
「悪いけど、私は剣なんか使った事……」
「別に、剣になるとは限らないよ」
「『魔剣』なのに、かい?」
「ん」
微妙に話が飲み込めない。首を傾げていると、キュクロプスが話を続けた。
「『魔剣』っていうのは、別に剣だけじゃない。武器でも何でも無いこともある。分かりやすく言うなら、『魔法のアイテム』みたいなもの。その辺のモンストルムの特殊能力にも負けない不思議な力を持った道具類。その人専用の最高の相棒。それを私は『魔剣』って呼んでる」
説明しながら、キュクロプスは『作業場』に続いている方の扉に向かっていた。
「次、いつ来るの? 私、3日は作業場から出てこないよ」
「あ、ああ……それじゃあ、3日後の12時頃、また来よう」
「ん。じゃね、おじさん」
最後にこちらに手を振って、キュクロプスは作業場への二重扉をくぐり、あちらへ籠ってしまった。

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CHILDish Monstrum あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
昨日をもちまして、企画「CHILDish Monstrum」は無事に終了いたしました。
今回も案の定参加者が少なかったのですが、最終盤に滑り込み参加する方が出てきたりしたので根気良く待つのが1番かなと思いました。
という訳で、毎度恒例の企画の裏話をば。

今回の企画は、去年のニコニコ超会議開催中にニコニコ生放送で一挙放送されていたアニメ「ダーリンインザフランキス」というアニメを観ていた時に思いついたものです。
件のアニメの後半でとあるキャラクターが「僕たちは君たち人間と違って優れた存在だから」みたいなことを言っていて、この場面を観た瞬間に「人間が作った、人間より優れた人外たちが人間を守るために戦う話」を思いつき、この企画の原型である物語ができました。
しかし、最初はこの物語を自分の中で色々展開させていましたのですが、その内忙しくなったり他の空想に走ったりして気付いたら放置するようになってしまいました。
それから時間が流れて去年の12月上旬、ふと学校帰りに「あの話を企画として昇華しちゃえばいいんじゃね?」となり、他に思いついた企画と共に企画アンケートをここに投稿、この企画に1番票が入ったので年明け早々に始めて今に至ります。

アンケートで4票も入ってたので4人くらいは参加者が出てくれるんじゃないかと踏んでいましたが、そうはいかなかったので企画って相変わらず難しいな〜と思いました。
でも某ナニガシさんがめっちゃ楽しんでたみたいなのでよかったです!
本当にありがとう!

長々と書いてしまいましたが、今回はこの辺で。
次は企画アンケートで2番目に票が入った企画「Daemonium Bellum RE」を3月に開催します!
今度は天使と悪魔が大暴れする企画なので、皆さん楽しみにしててくださいね〜
遅刻投稿も待ってます!
では、テトモンよ永遠に!でした〜

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CHILDish Monstrum:或る離島の業務日誌 その⑦

時々考えるように虚空に目を泳がせながら、キュクロプスは2分ほどかけてメモを完成させたようだった。
「これくーださい」
メモ帳のページを破り、こちらに差し出してくる。ページを受け取り、内容を確かめる。
『牛革3頭分、鋼鉄400㎏、合成ゴムロール10m、プラスチック75㎏、和紙1m四方、アルミニウム10㎏、銅線200m、インバーダの硬質な外皮または甲殻用意できるだけ、インバーダの羽毛用意できるだけ、インバーダの爪または牙用意できるだけ、米5㎏、鶏胸肉300g程度、キャベツ1玉、醤油1L、食器用洗剤1本、歯ブラシ2本、ペット用ウサギ1羽』
後ろの方は食品や日用品だ。1人でこんな場所に暮らしているわけだから、生活支援に必要なのは分かる。しかし、前半の大量の素材の要求は、キュクロプス1人の需要にしてはあまりに多すぎる。まるで工場か業者の発注ではないか。
1度、自分の手帳を確認する。

・キュクロプスが欲しがった物は可能な限り提供すること
・特に工業素材やインバーダの遺骸は絶対に入手すること
・ペットの要求は断ること(長期間作業にかかりきりになることが多いキュクロプスには面倒を見られない)

「……ウサギ以外は次来た時に」
「ざんねん」

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指定席 #2

三両目、一番前のドアから電車に乗る。
この時間はどの席にもいつも同じ人が座っている。
不思議なものだな、と思いながらもいつもの『自分の席』に座る。
四人掛けシートの通路側。進行方向と反対側の席。この席は正直、少し座りづらい。それでもこれまで守り抜いてきた、俺の特等席だ。

最近学校の先生はやたらと話を「将来」に繋げたがる。この勉強が将来何に役立つか、を教えてくれるのではなく、「提出期限を守れていない人が多いけれど、もしそれが大学や会社に出す書類の時でも、同じように期限を守らないのですか?」とか。それが間違っているとも、否定したいとも思っていない。
でもあまりぴんとこないのだ。将来のことを考えようとしても、自分が「今」に夢中になりすぎているからだ。
起きて、学校で朝練をして、授業で寝て、昼休みは昼練で午後の授業も寝る。そして放課後は部活。気づけばずっと、この生活を送っていた。俺には部活しかなかった。進路指導のための学年集会の後に皆が将来のことを話している時も、俺はその横で愛想笑いを浮かべながら(今日のシュートはなかなか良かった)とか(明日は久しぶりに走るだけの日にしよう)とかを考えるだけで、目の前のことに精一杯になっていた。
電車に揺られながら、考える。
俺って何になりたいんだろう……。

車内放送が駅に到着したことを告げる。隣の席の女子が慌てて立ち上がる。彼女が降りやすいように、なるべく足を折りたたむ。向かいでも会社員の男性が同じようにしている。これもいつものことだ。


もうすぐ俺の学校の最寄り駅に着く。
今日も部活のことだけを考えていたい、と思う。


「自分」の中の悩みが、「俺」には気づかれないように。



【悠 Matsuno Yu】
高校二年生
バスケットボール部員
大学のことを考えるのが嫌

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE おまけ 2

「CHILDish Monstrum:CRALADOLE」のおまけ…というか設定集、その2です。

・デルピュネー DELPYNE
身長:162cm
特殊能力:バリアの展開
使用武器:盾(本編未登場)
一人称:私
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
心優しく世話焼き、ビーシーと仲良し。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
長髪で青緑色のパーカーを着ている。
怪物態は(本編未登場だが)下半身がヘビになった女巨人。

・ビーシー BIXI(贔屓)
身長:150cm
特殊能力:怪力
使用武器:ハンマー(本編未登場)
一人称:ビィ
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
気弱だが仲間思い、デルピュネーと仲良し。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
二つ結びで茶色のパーカーを着ている。
怪物態は巨大な亀。
あだ名は“ビィ”。

・羽岡 Haoka
身長:175cm
一人称:わたし
とある都市“クララドル”のインバーダ対策課の職員。
クララドル市に配備されているインバーダたちの世話や外出時の監視などが担当業務。
真面目で業務や上からの指示に忠実。
個性豊かなクララドル市のモンストルムたちに手を焼いている。

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE おまけ 1

「CHILDish Monstrum:CRALADOLE」のおまけ…というか設定集です。

・ゲーリュオーン GERYON
身長:165cm
特殊能力:分身(本編未登場)
使用武器:槍
一人称:自分
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
クララドル市のインバーダ対策課のモンストルム部隊の隊長を務めている。
冷静で自らに与えられた仕事を淡々とこなすタイプ。
しかし怪物態になると苛烈な戦い方をする。
チームメイトとあまり深く関わらないようにしているが、これはかつての仲間を戦闘で失ったことによるもの。
自分以外の仲間のモンストルムが全滅した戦闘でショックのあまり暴走、街を破壊して回ったという過去を持ち、今でもそれがトラウマになっている。
長い茶髪を高い位置で結わいており、黄土色のパーカーを着ている。
怪物態は三つ首で有翼の巨人。

・ワイバーン WYVERN
身長:155cm
特殊能力:飛行
使用武器:拳銃(本編未登場)
一人称:あたい
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
明るくてテンションが高く、食べることが好き。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
短髪で(本編で書き忘れたが)赤いパーカーを着ている。
怪物態は赤い前脚のない赤い飛竜。

・イフリート Ifrit
身長:158cm
特殊能力:火炎放射
使用武器:長剣
一人称:おいら
とある都市“クララドル”に配備されているモンストルム。
お調子者で気が強め、あれこれ縛られるのが嫌い。
先代のクララドル市のモンストルム部隊が壊滅した後に作られ、クララドル市のインバーダ対策課に所属することになった。
金髪でオレンジ色のパーカーを着ている。
怪物態は燃える髪と瞳を持つ巨人。

長いので「おまけ 2」につづく。

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CHILDish Monstrum 参加作品の誕生秘話やコンセプトその他①

〈アウトロウ・レプタイルス〉
誕生秘話
大昔、何かにアウトプットするという発想も無かった時代、ナニガシさんが脳内に設定だけ考えていたキャラクターが、今回の企画にめちゃくちゃ合致していたので使ってあげようと思いまして。
Q,サラマンダーってレプタイル(爬虫類)じゃなくね?
A,細けえ事ァ良いんだよ。
Q,ラムちゃん不死身すぎない?
A,ちゃんと死ぬよ。外的要因で殺すのはちょっと難しいけど、魂や生命を直接抜き出せば死ぬんじゃない? 不死身なのは肉体だけだし。
Q,ククルカン(ケツァルコアトル)って神様じゃ……。
A,外見は翼のあるヘビさんだしセーフセーフ。

〈水底に眠る悪夢〉
誕生秘話
カナロアって神様がいるんですよ。ハワイの神様で、魔術が得意で、外見はタコさんなの。「タコ」「魔術」「神様」何かを思い出す特徴ですね。
そう、偉大なるクトゥルフですね。神様が条件的にセーフかは分からなかったんですが、クトゥルフはどうも、一神話生物がアホほど高齢になった結果神格扱いされるレベルになった個体という説があるらしいのです。じゃあカナロアもセーフやろ()ってことで。
そんな感じでできたお話です。
Q,何故カナロアが“ロード”?
A,龍王。ググれ。
Q,何故クトゥルーが“リトル”?
A,ク・リトル・リトル。

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視える世界を超えて エピソード5:犬神 その⑦

「犬神ってモグラみたいな姿してたんですね」
「まあ、名前からは想像しにくいよねェ」
「……そういえば、なんで犬神が憑いてると土が操れるようになるんです?」
そう問うと、種枚さんは足を止め、顎に手をやってしばらく考え込んだ。
「……これは完全な私の想像なんだけど、それで良ければ」
「お願いします」
種枚さんは再び歩き出し、話し始めた。
「まず君、そもそも犬神がどうやって作られるのかは知っているかい?」
「知りません。そもそも作れるものなんですか?」
「ああ。犬神は呪術的な方法で人工的に生み出すことのできる怪異だ。その製法にはいくつか伝承があるんだけど……その一つが、生きた犬の首から下を地面に埋めて、飢えさせるってものなんだよ。その後ももう少し工程が挟まるけど、そこは大して問題じゃない」
「はあ」
「犬神は生前、土の中で身動きを取れず死に向かう苦痛を味わう訳なんだ。つまり、あの生き物はあらゆる怪異の中で、実体験として最も『土壌の恐ろしさ』を知っているんだよ。それが関係しているんじゃあないかな、って」
「なるほど……?」
話しているうちに、駅に着いた。
「ああ、君は返ってくれて良いよ。私は徒歩で帰るから」
「……さいですか。では、失礼します」
当然のようにとんでもないことを言う種枚さんに会釈して、改札を通った。

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CHILDish Monstrum:迦陵頻伽

モンストルム”ヨグ=ソトース”の肉体生成がようやく終了した。
管理モニタから目を離し、大きく伸びをして凝り固まった身体を解してから腕時計を見る。午前7時過ぎ。これで三徹目か。
流石に一度仮眠を取ろうとデスクを立つと、部屋の外からアコースティックギターの音が近付いてきた。
「……む、カリョウビンガか。ちょうど良い」
そう呟くのとほぼ同時に、モンストルム”カリョウビンガ”が研究室に入ってきた。
カリョウビンガ。仏教上の霊鳥の名を持つモンストルム。私の『研究室長』という立場と権力を濫用……もといほんの少し活用して作成した、非戦闘用モンストルム。『あらゆる楽器と音楽技法を扱う』能力を持つ、華奢で小柄な少女のような人間態の、可愛らしい演奏人形だ。別に外見は私の趣味では断じて無い。ただ単に生成コストが低く見た目に圧迫感が無いからそうしているだけだ。現在は『研究室の護衛』の名目で自由に歩き回らせている。
と、カリョウビンガが部屋に入ってきた。
「おはようございます、作者さん」
「やあ、カリョウビンガ。今日はギターかい?」
「はい。……作者さん」
「何だい?」
カリョウビンガは何も言わずにこちらをじっと見つめ返している。
「カリョウビンガ?」
「…………」
「どうしたんだ、私の可愛いカリョウビンガ?」
「何でも無いです。そうだ、新曲を作ったのです。子守歌にどうですか?」
「良いね、ちょうど仮眠を取ろうとしていたんだ」
カリョウビンガと連れ立って、仮眠室に移動する。カリョウビンガがプレイヤーにCDを入れて、再生ボタンを押した。流れてきたのは、アップテンポでロック調の音楽だった。2分半ほどでその曲は終了した。
「……うん、良い曲だったよ。しかし驚いたな、デスク・トップ・ミュージックと歌声合成ソフトまで使いこなすとは」
「作者さんが創ったカリョウビンガですから。それでは、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
カリョウビンガはぺこりと頭を下げ、仮眠室を後にした。

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CHILDish Monstrum:或る離島の業務日誌 その④

「まあ良いや。朝ごはん食べるから外で待ってて。作業場には入らないでね、蒸し死んじゃうから」
キュクロプスに言われて、ひとまず小屋の前で待機することにする。
手帳の内容を復習しながら待つことおよそ30分。扉が僅かに開き、キュクロプスが顔だけを覗かせてきた。
周囲に注意を払うキュクロプスと目が合う。
「いた」
「やあ」
キュクロプスが屋外に出てきた。そのまま丘陵を下り、麓の村落の方へ歩いて行く。とりあえず後をついて行くことにする。
道中、私は手帳に書いたとある項を思い返していた。

・散歩には、手も口も出さないこと
・散歩には、必ず同行すること

黙ってついて行け、か。たしかに過干渉はストレスになるだろうが、モンストルムはあんな外見でいても所詮は“兵器”だ。手出しすらしてはいけないというのは奇妙な……。
考えながら歩いていると、いつの間にか村落に到着していた。
既に活動を開始していた島民たちは、キュクロプスの姿を見ると親し気に近寄っていって挨拶を交わしていた。意外にも、キュクロプスはこの島ではかなり親しまれているらしい。
キュクロプスは島民の1人と随分話し込んでいて時間がかかりそうだったので、近くにいた別の島民に話を聞くことにした。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス キャラクター紹介

・フェンリル
性別:男  外見年齢:16歳  身長:160㎝
特殊能力:行動の全てが破壊に帰結する
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「破壊力」は「強さ」。無数の拘束具でガッチガチに拘束されているものの、ほぼ無意味。何なら彼の能力で全滅していてもおかしくないので、気を遣っているまである。自分に邪魔な錘を付けて閉じ込める人間は嫌いだが、暴れた分だけ喜んでくれるから人間を守ることは好き。拘束具は邪魔だから嫌いだが、武器になるから好き。正直脱走しようとすれば余裕で出られるし嫌いな人間たちに迷惑かけられるからアリだとも思っているけど、今の生活も好きなので別に逃げない。

・スレイプニル
性別:女  外見年齢:16歳  身長:166㎝
特殊能力:超高速で移動する
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「速度」は「強さ」。無数の拘束具でガッチガチに拘束されていたものの、フェンリルに解放された。好きなことは走ること。普段は隔離施設の廊下を爆走している。できることなら永遠に走り続けていたいのだが、速度があり過ぎて周囲への被害が尋常でないので、あまり走らせてもらえない。そういうわけで人間は嫌い。恩人であるフェンリルが脱走しないので自分も我慢しているが、脱走派が多数派になった瞬間脱出する準備はできている。

・デーモン
性別:男  外見年齢:15歳  身長:155㎝
特殊能力:人間の望みを叶える
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「実行力」は「強さ」。人間大好き派で能力も対人間のものだが、「受けた望みをどう叶えるか」にちょっとした問題があってあまり表には出せない。別に脱出しても構わないとは思っているけど、それをして嫌な気分になる人間もいることは理解しているので逃げたくない。

・ベヒモス
性別:女  外見年齢:14歳  身長:150㎝
特殊能力:自身の質量を変える
DEM社の地下深くに幽閉されているモンストルム。「質量」は「強さ」。初めて戦場に出た際、ちょっとやらかし過ぎて閉じ込められた。そのせいで人間は大嫌いだし逃げ出したい。それはそれとして一般人が危ない目に合ってるのを放っておけない程度には良識と正義感ある、良い意味で普通の子。割とタフいけど、もう二度と戦いたくないです。守ってもらう側になりたい。