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嘘吐きの館

今晩は。こんな辺鄙な所によくいらっしゃいましたね。道中大変だったでしょう。ああ、申し遅れました。私、この館で使用人をしております、サムワンと申します。
さて、この館に来たからには、あなたにもゲームに参加してもらわなくてはいけませんね。あ、逃げようなんて思わない方が宜しいかと。ほら、既に扉は閉まっておりますゆえ。そんなに乱暴に叩いても開きませんよ。
では、ゲームの内容を説明いたします。
このゲームは、嘘吐きが誰かを当てる、という簡単なものです。これから5人の使用人を呼んできます。それぞれが話す内容をヒントに、嘘吐きを当ててください。本当に簡単でしょう?
それでは皆さん、お願いします。
A「よお、お前さん。よく来たな。ゆっくりしていけよ」
B「私達は、この館の使用人の中でも、特に偉い5人なんです」
C「えーっと、俺何て言うんだったっけ?」
D「全く君は馬鹿だな。さて、これからヒントを出すから、僕らの偉さの順番を当ててもらうぜ」
E「まあ、大事なのは誰が嘘吐きかだから、順番は間違えたって構わないよ」
え、誰が嘘吐きかは間違えてはいけないのか、ですって?ええ、そうなんですよ。これを間違えますと、我らの主の力により、簡潔に申しますと、死にます。ああ、だから逃げようとしたって無駄だと言ったでしょう?窓だって割れませんよ。
あ、因みに私達も人間ではないので。ああもう、だから逃げないでくださいってば。分かってて来たんじゃないんですか?
A「ちょっと?」
おっと失礼。どうぞ続けてください。
A「では私から。見ての通り私は年も食っていて経験も豊富なものだから、2番目以上には入っているよ」
B「私は女性だからか、3位以上にはいませんの。本当、男尊女卑って嫌な思想よね」
C「俺、実はこう見えてこの中じゃ3位の実力なんだぜ」
D「僕は4位」
E「お前ら本当のことしか言っていないじゃないか。あ、僕は2位以上にいるよ。」
A「あれ、そういやそうだな」
B「あれま本当」
C「ははは、まさかそんなわけ…」
D「何故黙っ…」
E「だから言ったろ?」
………えー、皆さん、ありがとうございました。さて、誰が嘘吐きか、分かりましたか?分かったらレスに書き込んでください。ああ、いえ、こっちの話です。間違えたら、分かりますね?

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或る青年の幽霊噺4

霊能者「やあやあ我こそは、世に名高いうんたらかんたらの霊能者である!中略そこの悪霊、退治してやるから覚悟なさい!」
男の霊「俺ェ?」
霊能者「あ、いや、そっちじゃなくて。貴方は何もしてないでしょう?」
女の霊「ジャア私カイ?」
霊能者「いえ、貴女でもなくてですね、ほら、あなた方の中で一番の新参さんの、そう、貴方!」
黒い霊「ア?俺ガ何シタッテイウンダ?」
霊能者「いやー、貴方がその人に取り憑いていると、その人に実害があるんですよねー。というわけで、離れてくれません?」
黒い霊「エ、嫌ダヨ。折角取リ憑イタノニサ。例エバ、オ前ハ身銭切ッテ買ッタ菓子ヲ口ツケズニゴミ箱ニ捨テラレルカ?」
霊能者「『身銭切る』なんて久し振りに聞きましたが、とにかく、貴方に居なくなってもらわないと困るんですよ。嫌だとは思いますが、そこを何とか!」
黒い霊「エー、俺ニ良イコト無イジャン」
青年「いやいやいやおいおいおいなあなあなあちょっと待てお前ら」
霊能者「何です、青年さん?今良いところなんですが?」
青年「除霊ってそんな感じなの⁉そんな緩〜くお願いする感じで良いんですか⁉」
霊能者「私はこの方法であまり失敗したことがありません!」
青年「ちょっとあるんじゃねえか」
霊能者「除霊して欲しいんでしょう?その話は後にしましょう」
青年「お、おう」
霊能者「すいません悪霊さん。さっきの続きですけど、どうしても駄目ですかね?」
黒い霊「オイオイ、俺ハ『悪霊』ナンテ名前ジャナイゼ?」
霊能者「ほう、それではどのようなお名前で?」
黒い霊「ジェームズトデモ呼ンデクレ」
霊能者「ジェームズさんですか」
黒い霊「バカ、タダノジョークダヨ。本気ニシテンジャアナイゼ」
霊能者「でも面倒なんで、ジェームズさん、て呼びますね」
黒い霊「オイ!フザケンナヨ!」
青年「あ、お前もそう思う?普通ふざけてるって思うよな!」
黒い霊「オォ、オ前話ガ分カルジャネーカ」
霊能者「はいはいそこ、意気投合しなーい。除霊して欲しいんでしょ?」
青年「ああ、そうだった」
霊能者「ところでジェームズさん、もしも別の身体があったら、その人から出て行ってくれます?それなら心当たりがあるんですが」

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放課後の第二面談室[3]

一瞬だけ、男と目があった気がしました。私はその鋭い眼光に睨まれ、射竦められてしまいました。しかし、彼は私など気にも留めていなかったのでしょう、私にくるりと背を向け、次の駅で開く側の扉をじぃっと見つめていました。そうです。お察しの通り、その次の駅が、私の乗換駅だったんです。
人の多い駅でしたから、彼がその駅で降りることに何も不可解なことなど無かったのですが、ああ、この人も次で降りるのか、なんかやだな、等と考えておりました。
そうこうしているうちに、電車は駅のホームへと滑り込みました。ホームにはたくさんの人が並んでたっていました。車内で座席に座っていた人たちも、十数人が立ち上がりました。そのときは何も思わなかったのですが、思い返せばあのとき、男はしきりに肩からさげた鞄の中身を漁っていました。それが本当に私の想像していた通りだったとは、思いたくありません。
電車が些か荒っぽく止まり、ドアが開くや否や、その男は隙間をこじ開けるようにして外へ飛び出しました。それに続いて、他の乗客たちも降車し始めました。するとそのとき、駆け出したその男が、ピタリ、と足を止めました。そしてキョロキョロと辺りを見回すと、並んでいる列などお構いなしに、またドアの方へ、人を掻き分けて戻ってきたのです。なんだ、降りる駅を間違えたのか、そう思いました。車内でも彼はそわそわしっぱなしだったので、焦るあまりに間違えてしまったのだと、そう考えたのです。
その男は私の横をすり抜けようとしました。彼とすれ違い様に、私は彼と肩がぶつかりました。そのとき、私の脚に、男の鞄が当たりました。
「痛っ」
それは衝撃の痛みなどではなく、確かに刃物で切られたような痛みでした。痛んだところを撫でると、微かに血がついていました。慌てて私は振り返りました。すると、バチリと男と目があったので、私は驚きました。男は、何故かニヤリと笑うと(それはそれは不器用な笑みでした)、また向き直って電車に乗りました。そのとき、男の鞄の底の辺りに、キラリと光る金属のようなものが見えたのは、気のせいではなかったと思います。
その後男がどうなったのか、私は知りません。

学校につくと、私は保健室に行って傷の手当てをしてもらいました。それで遅れたんです。なんですか、先生。そんな真っ青な顔をして。

【終わり】

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或る青年の幽霊噺3

青年「…………」
霊能者「やっぱりまた来ましたね」
青年「………おう……」
霊能者「私の勘はよく当たるのですよ。で、何の用です?」
青年「見りゃ分かんだろ…」
霊能者「また憑かれたんですか。そういうの引きつけやすい体質なんですかねえ?」
青年「どうでも良いから今度こそちゃんと祓ってくれよ」
霊能者「えーっと、今回の霊は…ご老人ですか。病死でもしたんですかね?これで老若男女フルコンプですね。幽霊家族でも作るつもりですか?」
青年「冗談は止めてくれよ。もう精神が参った。これは十分実害だろ」
霊能者「我慢してあげなさいって。霊の方にだって事情くらいあるんでしょうし」
青年「ふざけてんだろテメー。こうなったらもう訴訟も辞さないぞ」
霊能者「誰も真面目に考えてくれませんよ」
青年「は!まさか、お前が俺を呪い殺そうとしてこんなことを⁉」
霊能者「そんな訳無いでしょう。本当に危ないのが憑いたらそのときは祓ってあげますから、ちょっとくらい我慢しましょう、ね?」
青年「おいおい、そりゃー無いぜ…」

青年「……ちょっと良いか…?」
霊能者「あ、青年さん。お久し振りで…て、何ですかその見るからにやばそうな黒いもやもやした人型っぽい何かは!?」
青年「やっぱりお前にも見えたか…。これに憑かれてから身体中が痛いし重いし、事故には遭いかけるし、寝不足だし、ソシャゲのガチャでは雑魚しか出ないし、これまでとは比にならない程やばい奴な気がするんだよ…。流石にこれは祓ってくれるよな…?」
霊能者「後半は関係ない気がしますが、ええ、流石の私でもこれは見逃せませんね。分かりました、今回は祓いましょう」
青年「おお、本当か!ありがとう!あれ、そういえば霊能者って、どうやって除霊してるんだ?よく考えてみると、お前の除霊見たこと無いや」
霊能者「まあ見ててくださいな」

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No music No life #6 フィクサー

結月視点



数日後、僕の裁判が行われた。3人が証人になって、面会の日に僕に言ったことを証言してくれた。
だが、美月は僕にも言ってなかったことがあったらしい。それは、「橘副司令、あなたは、ライフルの名手、川上春樹なのではないですか?」
美月が言った瞬間に、辺りがざわめき始めた。
春樹は笑いながら、「よく知っているね。さすが、俺の妹だ。」そう、言い放った。
「私は、もうあなたなんかの妹じゃない。」
美月と春樹の口論になってきている。
そして、美月が
「あなたでしょう?涼香さんを殺したのは。」
と言うと
「ああ。そうだよ。悪い?」
春樹が返した。
「お前!」
美月が言うと同時に、時雨ちゃんが美月を止めた。そして時雨ちゃんは、
「裁判長、これで分かりましたよね?
高嶺涼香を殺したのは、川上春樹です。
これで、御影結月の無罪が証明されましたよね?」と言った。
そして、裁判長は、
「これより、判決を言い渡す。
被告人御影結月は、無罪である。」
この言葉により、僕は釈放、関係者の人に、めっちゃ謝罪された。人が、自分にヘコヘコ謝ってるのってなんか、こっちにも、罪悪感が芽生えてくる。
けれど、僕は、体調不良で、涼香が殺されたショックで精神疾患になりかけていたため、入院した。


【続く】
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私、イカとにゃんこは、志望校に合格できました!なので、これからもガンガン書き込んでいきます。
これからもよろしくお願いします!

イカとにゃんこ

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或る青年の幽霊噺2

青年「おーい来たぞ霊能者」
霊能者「また来ましたか貴方。敬語を使いなさいな」
青年「エセに使う敬語は無い」
霊能者「だからエセじゃないって…。で、何の用です?」
青年「また憑かれた」
霊能者「またですか」
青年「ああそうだよ」
霊能者「今度は女の人ですねえ…」
青年「お前は次に『何か実害はありましたか?』と言う」
霊能者「何か実害はありましたか?…はっ!」
青年「まあ茶番はこのくらいにして。今度の霊は体のところどころから血が流れてて、それが僕の後をついてくる時にぽたぽた垂れて正直言って不気味でならない。さあ祓え」
霊能者「そのくらい我慢してあげましょーよー」
青年「お前ふざけてんだろ」
霊能者「すいません、今日は別の予約がこの後あるので、また後日」
青年「逃げやがったな…」

青年「おい霊能者、また来たぞ」
霊能者「今度は何の霊ですか?男、子供、女と来て、次は…あらまあ、可愛らしいネコちゃんじゃあないですか!」
青年「まあぱっと見はな。でもこいつの腹を見てみろよ」
霊能者「どれどれ…お、おぅ。腹が…内臓さんこんにちは…」
青年「どうにも不気味だ。さあ祓え」
霊能者「それだけなら良いじゃないですか。見た目は可愛いネコでしょう?」
青年「何なんだよお前。一度に四人、いや、三人と一匹に取り憑かれた方の身にもなってくれよ」
霊能者「どれも無害なんだから良いじゃないですか。また取り憑かれたら来てくださいね」
青年「これ以上憑かれてたまるか。そもそもお前祓おうとしないじゃねーか。もうこれっきりだ。もう来ないからな!」
霊能者「はいはい、それじゃあまた」

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或る青年の幽霊噺

青年「霊能者さん霊能者さん、どうやら霊に取り憑かれたようなのです。祓ってください」
霊能者「ああ、貴方のすぐ後ろにくっついて来てるその男ですね。それに取り憑かれて何か実害はありましたか?」
青年「そうですね。特に実害は無いのですが、僕から10cm以上離れようとしないのです。それが寝るときも例外ではなくて、狭苦しくて少し不快です」
霊能者「それなら問題ないですね」
青年「ええ…」

青年「霊能者さん霊能者さん、また違う霊が憑いてきたのですが」
霊能者「またですか。この間のもまだいますね。で、今回のは…ああ、その幼子ですか。何か凄いもの持ってますが」
青年「ええ。この霊、何故か巨大な鉈なんて持ってるんですよ」
霊能者「その子に取り憑かれてから、何か実害はありましたか?」
青年「いえ、実害は無いのですが、物騒な刃物持って周りをうろうろされると、精神衛生上よろしくありません。前の奴もろとも祓ってください」
霊能者「実害無いなら別に必要無いでしょう」
青年「おいこら待てエセ霊能者」
霊能者「エセとは失礼な。ちゃんとその二人も見えてたでしょう?」
青年「とっとと祓えっつってんだよ」
霊能者「嫌です!」
青年「何故だ⁉金ならいくらでも出すぞ。予算内で」
霊能者「それでも嫌です!」
青年「だから何故⁉」
霊能者「だって面倒なんだもの!」
青年「いっそくたばれえェッ!!!」

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もののけがたり

A:うがあああぁぁぁ…ふぐしゅるるるるる…

B:え、何?何だって?

C:え、まじか。

A:あぐぅぅぅるるるる…ふがらぁ

C:へえ、そうかい。

A:あぐ……うらがああああ!

C:ほお、そりゃあ良い。

A:が…ぐるる…ぎぎ?

C:いや、そこはもう片方のやり方でね…

B:ちょっと待って。C君なんで分かるの?

A:あぅぁ…えがららああ!!!

C:え、君分からないのか?そいつは奇遇だな。僕もだ。

B:お前も分からないで言ってたのか…。
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D:おーいA!お前いったい誰と話してるんだ?

A:いや、何でもない。ちょっとオバケっぽい何かを見かけたから適当に話しかけてみただけ。

D:おいおいまたかよ。あんまり怖いこと言うなよな。

A:あいつら面白いんだぜ。何言っても変な鳴き声でしか返さない。「がるるー」「うしゃああ」ってさ。
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B:人間って、変な言葉使うよな。

C:本当にな。何言ってっかまるで理解できん。
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解説
A、Dは人間です。Aにはオバケの類が見えます。Dには見えません。B、Cは人外の何かです。何かは分かりません。彼らはお互いが何言ってるか理解できていません。お互いに相手の言葉は変な鳴き声で聞こえます。

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星談議

A「夏の大三角は、ベガ、アルタイル、あと何だっけ?フォーマルハウト?」
B「馬鹿、それは南の魚座だ。デネブだよ。むしろよくフォーマルハウト知ってたな」
A「そうだったね。じゃあ、冬は?」
B「シリウス、プロキオン、ベテルギウス」
A「じゃあ春」
B「アルクトゥルス、スピカ、デネボラ」
A「じゃあ秋は?」
B「ペガスス座の星4つが秋の大四辺形ってことになってる」
A「じゃあ、冬のダイヤモンド、全部どうぞ!」
B「リゲル、シリウス、プロキオン、カペラ、ポルックス、アルデバラン」
A「おー。さすがだ。けど僕は、他のどの三角形よりも、冬のダイヤモンドが一番好きだな」
B「ほう。その心は?」
A「だって、ただでさえ綺麗な冬の星を、6つ並べてダイヤモンドに喩えてるんだぜ。これ以上無くロマンチックってもんだろう?」
B「そうですね」
A「なぜ敬語?」
B「いやさ、冬のダイヤモンドのポルックスって星あるじゃん?双子座の弟サイド。神話でも兄に先立たれて、ダイヤモンドでも兄さんと分断されるって、ちょっと可哀想だな〜、て思ってさ」
A「君はそんなことを考えて生きてたのかい?」
B「それが何?」
A「星が綺麗で素敵だね、それで終わりで良いじゃないか」
B「お前はものを考えなさ過ぎなんだよ」
A「君こそ難しく考え過ぎだぜ。もっと楽天的に生きろよ。シンプルは美徳だぜ」

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或る自殺志願者の説得

自殺志願者(これ以降は志願者と略す):
唐突ですが、この世界に絶望しました。死にとうございます。
説得者:本当に唐突ですね。
志願者:自殺をすると地獄に堕ちるらしいのですよ。死んだ後も辛い思いするとか真っ平なので、どうか私を殺してください。
説得者:殺人罪はかなりの重罪なので嫌です。
志願者:じゃあ、自殺幇助あたりで何とか。
説得者:結局犯罪じゃねーか。
志願者:じゃあ、どうすれば良いのさ。
説得者:簡単だ。生きれば良い。人は生きればいつか死ぬ。
志願者:それが面倒くさいっつってんだよ。
説得者:そう言うなよ。小説だって、悪いことがあった章の次の章には良いことがあるだろ?
志願者:「赤いくつ」
説得者:命は助かるじゃん。
志願者:「とっぴんぱらりの風太郎」
説得者:良いことがある章もあっただろ。
志願者:「人間失格」
説得者:う……あ、あれは…例外だから……
志願者:良いか君、これは現実なんだよ。
説得者:そう言わずにさ、生きてれば良いことあるよ。
志願者:今のところ嫌なことばっかりだよ。
説得者:僕という友人が居るじゃないか。
志願者:君、良いやつだな。
説得者:と言う訳でさ、死ぬなんて剣呑なこと言うなよな。
志願者:だが断る。
説得者:ここで使っちゃ駄目だろ。
志願者:あ、そろそろ門限だから、今日のところは帰るわ。絶対に明日は殺してもらうぜ。
説得者:嫌だね。
志願者:サラバ。また明日。
説得者:……少なくとも明日までは生きている訳だな?
志願者:あ………
説得者:………
志願者:………
説得者:…まあ、何だ、じゃあな。
志願者:お、おう。

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或る探偵たちの賭け事

私は私立探偵をやっている者だ。といっても、大抵はペット探しや不貞調査ばかりで、小説や漫画に出てくるような事件の捜査などはしたことがないが。
余り知名度も無いので、基本暇で、行きつけの喫茶店で同業の友人とだらだらしていることが多い。
今日もそうしていたのだが、突然友人がこんな提案をしてきた。
友人「推理勝負しようぜ!」
私「どんな風に?」
友人「ほら、窓の外にいるあの人が、何をしているのか当てるんだよ」
見てみると、なるほど確かに、若い女性が明らかにそわそわしながら立っている。誰かを待っているようだ。ファッションに疎い私にも、相当めかし込んでいるのが分かる。
友人「負けた方が会計持つってことで」
私「了解」
友人「俺から言うぞ。ありゃあ十中八九、待っているのは恋人だな。あんなにお洒落して、それ以外に考えられないね」
私「そうだな…。あれは多分、待ってるのは同性の友人だな。見たところ大学生ほどのようだが、学校が違うか何かで、中々会えないんだろう。それであんなにそわそわしてるんだ。相当親しいんではないかな?その友人とは」
結果は…友人が私に奢ることになった。
友人「なんで分かったんだ?あんな考え普通思い付かないぞ」
私「まさか適当に言った答えが当たってしまうとは」
友人「え…?」
私「何?」
友人「賭けをしてる場で、適当答えたっていうのか…?」
私「適当言った方が何故かよく当たるんだよ」
友人「理不尽だ…」

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なぞなぞリスペクト

「遅くなりました!!」
 観音寺隼人は、車から慌てて降りると、先に待っていた先輩刑事に頭を下げた。五十嵐剛。規律にはめっぽう厳しいので有名だ。
「遅い!もう七分も遅刻だぞ!」
「すっ、すいません!」
「…まあいい。事情聴取だ。いくぞ」
 凄まじく早い五十嵐の徒歩に、観音寺は必死でついていく。
 今回のガイシャは、上殿敬子、四二歳主婦。場所は自宅のリビングで、何者かによって後頭部を殴られた後に失血死。争った形跡はなく、現場からは犯人を特定できるものは何も見つからなかった。死亡推定時刻は、昨日一月一三日午後7時頃。目撃証言もなく、捜査は非常に難航していた。
 今回事情聴取を取るのは、ガイシャの夫である上殿凛太郎、四五歳会社員。近隣の住民によると、最近あまり中は良さそうには見えなかった、とのこと。

 以下が事情聴取の様子だ。
「上殿さん。あなたは昨日の午後七時頃、どこにいらっしゃいましたか」
「刑事さん、まさか私を疑っているんですか?!」
「いえ、あの、この質問は皆さんにお答えいただいているものでして…」
「…ふん。まあ、良いですけどね。じゃあお答えしますよ。私は確か、まだその時空の上でした」
「…空の上、ですか」
「ええ。私はここ二週間休暇をとってオーストラリアに旅行に行っておりまして、昨日の夜十時にやっと帰国したんですよ。そしたら、まさか妻が、あんな目にあっているなんて…」
「そうでしたか。それはお気の毒に。ところで、オーストラリアでは何をなさっていたんですか?」
「別に、観光ですよ。色んな所を見て回りました」
「良いですねー、オーストラリア。僕もいつか行ってみたいものです。何が一番良かったですか?」
「やっぱり海ですかね。一月なんでちょっと寒かったですけど、夕日の沈んでいく様は圧巻でしたよ」
「そうでしたか。それでは一応確認を取らせていただきます。ご利用になられた旅行会社はどちらでしたか」……

 その後、旅行会社などに問い合わせてみたが、上殿氏がオーストラリアに行っていたことは確からしい。これは難しい事件になるぞ…。そんな話を五十嵐刑事にすると、
「おい、何をぼさっとしているんだ。どう考えてもその凛太郎ってやつが怪しいじゃないか」

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エドヴァルド・ムンクにささぐ

 ムンキーな気分だったので会社を休んだ。嫌味を言われたが平気だ。なぜなら上司は社会制度、社会的慣習に従順な権威に弱い自分の頭でものを考えられない他者の心を想像することができないモンキーだから。
 わたしはモンキーではない。人間には好きに休みを取る権利がある。このところ、疲労により、脳の一部しかはたらかなくなっていたのだ。脳の一部しかはたらかないとどうなるか、視野狭窄になる。
 人間は脳の機能低下により神経が過敏になったり、感受性が鋭くなったりする。情動脳の抑制がゆるくなるため、情動脳にたくわえられた記憶にアクセスしやすくなる。遠いむかしのことをくよくよしたり。いつまでも嫌味を言われたことを気に病んだり。
 すべての精神疾患は脳の一部だけが活性化することによって生じる。脳全体が活性化しなければ精神疾患は治らない。仕事とは常に距離をとっていたい。でないと本格的に頭がおかしくなってしまう。そろそろスーパーが開く時間。ビールと、韓国海苔と、チーズとキムチを買おう。今日は一日、動画を見るのだ。
 スーパー行ってついでに日用品買って帰ってタブレット、テーブルに立ててとりあえず旅番組チョイスしてソファーに座って韓国海苔でカマンベールチーズ巻いて食べてたら悪魔が現れた。わたしの母の姿で。
「お母さんだよ〜」
「さっさと消えてください。わたしは動画を見るのです」
「そんなだから彼氏ができないのよ。同僚の男の子とLINEの交換とかしてるのかしら。してるわよね。ほらあなたにしつこく言い寄ってきてるあの人、何ていう人だったかしら。とりあえずチャットでもしてみたら?」
「……わたしは暇つぶしに好きでもない男の人とチャットするような志の低い人間ではないので。ではさよなうなら」
「あなた会社休みすぎなんじゃないの〜」
「わたしは奴隷ではありません。日本人は先進国の住民であるにもかかわらず、主体性がないのです。わたしはわたし。わたしのことはわたしが決めます。そもそもあなたはわたしにアドバイスできるような就労経験などないでしょう」 
 つい本当の母には言えないことを言ってしまう。  
 わたしの母は幸せである。なぜなら向上心がないからである。向上心がないのは足りないからである。
 向上心があるから人は病む。母は病まない。