表示件数
0

対怪談逃避行9

蓮華戸さん(仮)が言うのと同時に、足元に振動が走る。
「これは……!地震、いや……」
橋の、『奴』のいる側と反対側を支点に、橋がゆっくりと回転しているのだ。それによって道は分断され、『奴』は岸に留まることになった。
「旋回橋だよ。船が橋のあるところを渡れるように、こうやって動くんだよ。いや、逆かな?船の通る場所に架ける橋だから、こうなるのか。まあ良いや」
突然の轟音。驚いてその方向を見ると、中型船が橋のあったところを通過しようとしているところだった。
「もう日が昇る。それで僕らの勝ちなわけなんだけど……。最後に『奴』に何か言っておきたい事とかある?」
言いたいこと、か。正直、恨み言なら山程言いたいと思ってる。こいつのせいで夜通し怖い思いしながら走り続ける羽目に陥ったわけだし。
けど、そういえば蓮華戸さん(仮)は言ってたっけ。『怪異を存在させるのは恐怖』って。だとしたら……。
私は、『奴』のいる岸を正面に立って、船が通り過ぎるのを待った。遂に船は通り過ぎ、『奴』と正面から向き合う。睨んでくるその目を真っ直ぐ見返してやりながら喉の左端に右手の親指を当てて、ピッ、と右に引きながら、言ってやった。
「失せな化け物。あんたの時間は終わったんだ」
恐怖が力になるのなら、『お前なんか怖くない』って気持ちは、きっと武器になるはずだ。
段々と東の空が明らんでいく中、人外の不気味な断末魔が響き、そしてそこには、何も居なくなった。
「…終わった……?」
「うん、お疲れ。しかし、最後の啖呵、なかなか格好良かったじゃないか」

0

対怪談逃避行8

それから、本当に3時間くらい、ひたすら走り続けた。スタミナを考えてか、蓮華戸さん(仮)は少しゆっくり走っていた(それでも十分過ぎるほど速かった)けど、やっぱり焦りが見える。ルートは大体一直線。少し離れてはいるけど、川に沿って移動してるみたい。
「はぁ……はぁ……、これ、どこに、向かって、るんですか……」
「………っはあ、えっと、ね……、………ッ、『奴』は今どこに!」
言われて双眼鏡を覗きながら後ろを向く。すぐに見つかった。『奴』はもう、300mかそこらしか離れていないところまで近付いていた。
「ああ!もうすぐそこに!このままじゃ追い付かれます!」
蓮華戸さん(仮)はそれに答えず、安っぽい腕時計を見ながら走っている。
「蓮華戸さん!」
「………大丈夫。ギリギリ勝った」
蓮華戸さん(仮)が急に曲がり、川に架かった橋を渡る。何とかそれに対応して、私もついて行く。『奴』の鼻歌のような声が聞こえてくるような気がする。
「だ、大丈夫なんですよね!?」
「……うん、もう大丈夫」
私が橋に足を踏み入れたと同時に、蓮華戸さん(仮)が言う。
後ろを振り向くと、『奴』がすぐそこまで迫っていた。
「ごめん、それ返してもらうね!」
蓮華戸さん(仮)が、さっき私に寄越してから放置されていたマックスコーヒーの缶を引ったくって、『奴』に思い切り投げつけた。それは見事に『奴』の頭に命中し、その足を止めるに至った。
「さあ、これでチェックメイトだ」

0

対怪談逃避行7

「今、3時過ぎ。夜明けまであと……3時間半ってところか。マズいな………」
「ええ……?あれ、追い付かれたらどうなるんでしょう」
「さあ?けど、『んー、んー』って声が聞こえてきたら、それが奴だ」
聞こえたら手遅れなやつでは?
「今の奴の状況は!」
蓮華戸さん(仮)が、さっき奪った双眼鏡を私に返して後ろを指差す。それを取って、これまでに辿ってきた道を探す。
居た。これまでよりもかなり距離が縮まっている。どうやら私達の通った道をそのまま辿っているようだ。
『奴』と目が合う。これまではニタッと笑っていたのが、口を一文字に結んで、目だけギョロッと開いてこちらを睨んでいる。
「こ、こっちを睨んでますけど!」
「そうか、困ったな……。『奴』が変質した。捕まったら何されるかは分からないけど、十中八九逃げ切らなきゃ詰みだよ」
ええ……。とはいえ、なってしまったものはもうどうしようも無いので、ひたすら走る。
「どこか、良い場所あったりしません?」
「良い場所?隠れるのに?逃げるのに?」
「どっちでも!」
蓮華戸さん(仮)は少し考え込んで、何かを思い付いたように手を打った。
「………これから3時間、休まずに走り続ける元気、あるかい?」
「やるだけはやってみます」

0

対怪談逃避行6

しかし、話しながら走ったせいか、脇腹が痛くなってきた。止まるわけにはいかないのに、痛みで足が鈍る。
「ちょ……まっ……待って………、脇腹が……」
「む、なら少し休もうか。十分距離も開いただろうからね」
「ありがとう、ございます……」
脇腹を押さえてへたり込む。深呼吸しながらマッサージをするが、まだ痛みは引かない。
「だいぶ冷めてるけど、マックスコーヒー飲むかい?糖分とカフェインが同時に摂れるよ」
蓮華戸さん(仮)が、コートのポケットから缶を引っ張り出し、差し出してきた。受け取るだけ受け取って、とりあえず放置しておく。
「……『奴』は、またあの辺でキョロキョロしてるんですかね……」
「それなら良いんだけどね……」
蓮華戸さん(仮)は、今来た方を睨みながら、半ば上の空で返す。さり気なく双眼鏡がスリ取られてるけど、責める気もしない。
「どういうことですか?」
「君は、三度同じ方法で『奴』から逃げた。これ以上、騙されっ放しでいると思うかい?僕はそう思い込み切れない。『奴』がただのプログラムから、自律行動する完成品になるかもしれない。そして、多くの怪異は、標的との間にできた『縁』を、決して見逃さない」
蓮華戸さん(仮)が双眼鏡で、さっき居た方を見る。不思議なことに、首を回してさっきの場所以外の場所を見ている。
「………しまったな、『奴』が完成したぞ。僕達を、いや、正確には君を追ってきてる。嗅覚で指名手配犯を追い詰める警察犬のように、道に残った『縁』を辿って。あ、目が合った。これで僕も標的だ。……さあ、もう休んでいられない。走るよ」
「は、はい……!」
だいぶ楽になってきた。これなら走れる。蓮華戸さん(仮)を見失わないように、急いで立ち上がり、私も走り出す。

1

つき (3) (Side 真月)

どうやら彼奴…龍樹は俺が入り込んだ事に気付いた様だ。
あ〜あ、もうちょっとだけ気付かれなければ上手く行ったのにな。
小豆を救う事が。
小豆は俺の猫だ。ちゃんと愛していたつもりなのに、つい最近身体の不調が目立つ様になった。
獣医に見せるも、時すでに遅し。
"この子の寿命は…5ヶ月持ったらラッキーだと思ってください。動物は強くありたいが為に自分の体の不調を自分から訴えないから初期発見は難しく、貴方のせいではないです"
嘘だ。
俺が悪い。
俺が…鈍感だから。
俺のせい。
駄目だ…
現実に苛まれながら寝たその日に、俺は不思議な夢を見た。

ねぇ、
あずちゃんだよ。小豆。
ねぇ、私ね、死んじゃうのはしょうがないと思うんだ。
だからね、最期に私の願いを聞いて欲しいな。
あず、好きな子が居るの。
近所の龍樹さんって人の猫で、ゆつきくん。
5年前に散歩してて出逢ったの。
うち、最期にゆつきくんに気持ち伝えてから逝きたい。真月にぃなら会わせてくれるよね?強いもん。

…目覚める。
起き上がると、足腰も弱くなって階段すらも登れない筈の小豆がベッドに上がってきていた。

まさか、ね

でも…

俺は計画を練り始めた。
龍樹の記憶を断片的に失くして行けるなら、ちょっとだけ"ゆづきくん"とやらを借りて来よう。
手始めに俺の龍樹の共通点…龍樹の元彼女と俺の彼女が同一人物なことを利用する。
いわば実験の様なものだ。
そして俺の勤務先が病院である事も。
彼女に仕掛け人を頼めば事故が起きる確率を増やせる。経過観察にも丁度良い。
その他にも、色々と。
俺の特殊能力をありがたいと思ったのもこれが初めてだ。
僅かながら理性は叫んだが、小豆は長く生きられないという事実が俺を駆り立てた。

《お詫び》
つき (2)でタグに『長編小説』いれるの忘れてました。すみません。

0
0

対怪談逃避行4

「………どういうことですか?」
「君ねぇ、あんな化け物が、結末も分からぬまま野放しにされて、安心して生きていけるか?無理だろう?怪異に出会った際に注意すべき点の一つ、『怪異を存在させるのは恐怖と認識』だよ。びくびくしているばかりでは、奴はますます力をつけ、いずれは恐ろしい化け物……もうそうか。まあ、もっとヤバくなるかもなんだ」
「じゃあ、どうすれば!」
男が双眼鏡を指差しながら言う。
「それで見るんだ。君の家、ここから見える?多分、奴は今そこで、君を怖がらせようとしているはずだ」
私の住むアパートは、高台にある。ここから見ることは不可能じゃない。恐る恐る双眼鏡を覗いてみると、確かに居た。あの不気味な少年姿の何かが。部屋の戸を狂ったように手で叩いている。目が離せないでいると、急にキョロキョロし始めた。そして、私と目が合い、口角が吊り上がった。この双眼鏡の倍率の高さが憎らしくなる。『奴』が走り出した。明らかにこっちを目指している。
「あ……き、来て……」
「よし、じゃあ走るよ」
男が私の腕を掴み、立ち上がった。
「ほ、本当に行くんですか!?」
「勿論。多分あれは、道なりにしか進まない。だから、どんなに足が速くても少しは時間がかかる」
階段を降りながら男は私に説明してくる。
「あっちから来るんだよね?じゃあ、逃げるなら向こうだ」
男は団地の奥に向けて走っていった。私も後を追いかける。

0

対怪談逃避行3

「……はあ?」
「ネットだとね、主人公は恐怖で部屋の中でガタガタ震えるしかできなかったのだよ。そいつが家まで来るが、扉をバンバン叩いて喚きまくって、それで主人公は気絶。朝になったら居なくなってた。そういうお話」
見た目通り頼りにならない男だ。話に付き合って損をした。今こうしているうちにも、奴はすぐ近くまで来ているかもしれないというのに。
拗ねたように外を見る私に、男が続けて話しかけてきた。
「まあまあ、でも、対処法の予測はついてるからさ」
「……それなら早く言ってくださいよ!どうやって倒すんですか!」
「倒す?そりゃ無理だ」
キョトンとした態度がまた腹立たしい。
「けど対処法はあるって……!」
「うん。けどこれは、飽くまで『やり過ごす』ための方法だからね」
「……じゃあ、どうするんですか?」
「簡単だ。夜通し逃げ続けるだけ」
今度という今度は、流石にブチ切れた。そんな私でも簡単に思い付くようなことが聞きたかったんじゃない。驚くほど自然に、男の胸ぐらを掴んで締め上げる。
「まあまあ。良いかい、怪異に出会った際に注意すべき点がいくつかある。一つ、『怪異に近付き過ぎてはいけない』、二つ、『怪異から遠ざかり過ぎてはいけない』、三つ、『物語は終わらせなければいけない』。まあ他にもあるんだけど、とにかく大事なのは、人の手で物語を終わらせることなんだよ」
話が全く見えてこない。とりあえず手は放す。
「これは飽くまで僕の考察なんだが、今回の怪異に関して、鍵となるのは『双眼鏡で見る』という行為だ。多分、これが奴の行動の鍵になってるんだ。生物学でいうところの『鍵刺激』。だから、『見る』。これが答えだ」

1
0

対怪談逃避行2

『君の手にあるその双眼鏡。なかなかゴツくて倍率も高そうじゃないか。たぶん、真夜中くらいかな。君は部屋の窓かどこかから、その双眼鏡で街を見ていた。合ってる?』
その通りだ。そして……。
「そして、遠くを見ると、何か虫のようなものが見えた。何かと思ってよく見ると、明らかに人じゃない男の子が手を振りながらすごいスピードで走ってきてた。合ってる?」
「うわ、喋った」
「うん、面倒になってきてね」
「さいですか……。まあ、当たってます」
「やった。で、こっちに来てる。目もバッチリ合っちゃってる。奴の狙いは明らかに自分。それで家を飛び出して逃げてきたってわけか」
「……はい。なんで分かるんですか?」
「なに、ネットに似たホラーの小話があった、ただそれだけさ。まあ、あれを読んだことのある僕からすれば、夜中に双眼鏡で外を覗くなんて、絶対やりたくないけどね」
「………夜景を見ていた。ただそれだけだったんです」
「ふーん。やっぱりソレ使うと違うんだ。まあ問題はそこじゃない。『あれ』をどうやってやり過ごすかだ」
それを聞きたかった。思わず前のめりになって訊く。声はどうにか小さくできた。
「ど、どうすれば良いんですか?」
男は腕を組み目を瞑り、カッ、と目を開いて言った。
「まったく分からん」

0

対怪談逃避行

時刻はおよそ午前2時。点滅する街灯が不気味に照らす仄暗い交差点を、安全確認もせず全力疾走で突っ切る。どうせ車など通らないのだから問題無い。
しばらく走ると、ある団地の一棟が目に入る。ちょうど良い。その階段を駆け上り、一階と二階の中間に座り込む。呼吸を整えながら外の様子を確認する。どうやら今のところ、追ってくる気配は無いようだ。
「……上手く撒けたかな。もうこれ以上追いかけてこなきゃ良いけど。しかし、こんな時間に来るとか、常識外れも良いところだよな」
「はい、そうですね……ッ!?」
叫び声を上げそうになるが、声の主が咄嗟に口を塞いでくれたので、どうにか堪えられた。
声の主は、私より少し歳上の、痩せた頼りない男だった。髪も髭もろくに手入れしておらず、季節と合わない、薄い古ぼけたロングコートを羽織った男。あまり一緒に居たくないタイプの奴だ。
一体誰なんだ、と目で問うと、男は懐からスマートフォンを取り出し、何やら打ち込んでから見せてきた。
『ただのオカルトマニアだ。よろしく』
口から手を離してくれたので、とりあえず会釈する。
『君が何に追われているのか当ててやろうか』
「わ……分かるんですか?」
小声で言い直す。
『分かる。いや、分からない。正体を問われると、憶測と出鱈目ばかりになりそうだ。けど、どの物語かは分かる』
どういうことだろう。

1

つき (1)

ーねぇ、克紀。
うち、深調よ。
そのひとことが変に彼を狂わせた。
彼は"カツキ"でも、"ミツキ"でもない。
名前は…
「…龍樹…だよな」
彼…もとい龍樹は俯きながら何度も己の名を繰り返した。
確かめる様に。
そして、たかが夢と記憶から削ぎ落とした。
「はよ起きぃな、真月」
知らない声が呼ぶ知らない人の名に、龍樹は反応していた。
半ば本能的なものだった。
「あぁ…」
「もう、デート中に寝るとか最低〜笑
早く次、水族館!」
ああ、俺は真月か。
そして龍樹…もとい真月は面識のない彼女の手を取り歩き出した。
それからは覚えていない。
覚束ぬ足のせいで酷い事故に遭い、意識を失った。


「…あ」
それから12日経ち、龍樹は目覚めた。
そこは見たところ病院の様だ。
彼はだんだんに記憶を手繰り寄せる様に取り戻し、その矛盾に気付いた。

『ま つ き』

誰だ。
龍樹は己に入り込んだ何者かを認識した。
記憶をもう一度しっかり噛み締める。
真月は何回確かめても消えなかった。

「あ、目覚めましたか。」
男が入ってくる。
服装からして看護師だろうか。
「看護師の羽山です。貴方は事故に遭…」
「な、名前は」
声に嫌な既視感を覚えて名を尋ねる。

「羽山…まつき。
真実の真に月…ムーンの月ですが」

こいつだ。


こいつが、

1

中年と犬#2

「……助けてもらってどうも」
 野良犬が頭を下げながらもごもごと言った。
「ほんとに感謝してる?」
「はい」
「いや、そんな感じしないなあ」
「してますよ」
「そうかあ?」
「してますって」
「またまた」
「してますしてます」
「嘘だあ」
「嘘じゃないって」
「そーお?」
「はい」
「じゃあ、証明してみせてよ」
 なるほど、そういうことか。野良犬は腹をくくった。 
「わかりました。おともしましょう。鬼退治に」
「そうこなくっちゃ。わたしの名前は太郎だ。よろしく」
 俺の名は、と野良犬は言いかけたが、どんな名前だったのか思い出せなかった。名前があったのかどうかもわからなかった。なのでかわりに、「きび団子は?」とたずねた。
「そこの茶店で、茶を飲みながら一緒に食おう」
 中年男、太郎はそうこたえて、あごをしゃくった。

    *

 図書館で本を数冊借りてはろくに読まずに返し、また数冊借りてはろくに読まずに返しを繰り返している。
 映画もそうだ。たまに無料動画配信サイトのおすすめなどを面白そうだと見始めるも、すぐに飽きてしまう。
 本にしても、映画にしても、有料であれば最後までつき合うのだろうが、そもそも金を払う気がない。
 なぜこのようなクールダウンを起こしてしまうのかというと、言うまでもない。ネットの弊害、情報に希少性がなくなった、に加え、年をとったからである。
 ネットの弊害というのはよくわからないけど、やっぱり年とるとそうなるんですね。嫌だなぁ。つまらない。なんて若者は言うかもしれない。そしてどこかに行ってしまおうとするかもしれない。が、待ちたまえ。そこが若者が若者たる所以。生きることはつまらないことなのだ。つまらないことを面白くしようとあがくみっともなさを自覚し、つまらなさを受け入れる強さを持たなければ未来は暗黒である。
 と、かようなことを考えながら近所のバーのカウンターで太郎は酒を飲んでいた。
 三十日ぶりのアルコール。ビールの中瓶を一本空けたが、気分の高揚はない。二本目を注文。三十日前の太郎だったら常連客の会話に割り込み、杯を重ね、ふらつきながら二軒目に行っていただろう。だがしかし、太郎は決心したのだ。日々を淡々と生きることを。

5

リクエスト企画をやりたい!

世の中には、百や千の長文にも勝るたった一つの名言があるんじゃないかな、などと思うナニガシさんです。しかし、そんな名言を百や千集めても敵わないほどの名作だって、あっておかしくないかな、などとも思うのです。
単刀直入に言うと、他人様の書いた長編が読みたい!某人外がわちゃわちゃする長編シリーズも、某異能力者がわちゃわちゃする長編シリーズも、いつの間にか自然消滅。何となく物足りなさを感じていた頃に、テトモンよ永遠に!さんが主催した魔法譚。つい先日(つってももう去年の話な気がする)、遂に最後の魔法譚が無事完結し、僕は思ったわけですよ。「また長編書けるような企画を誰かやらないかなー」と。そんなら自分でやってしまおうかと、そういう結論に至ったわけで。
前置きはこのくらいにして、本題に入ります。
今回リクエストするお題は、「長編小説」。最低でも完結に2話以上かかる作品をください。この時、条件として、非現実の要素を作中に入れてほしいです。
ファンタジーでも都市伝説でも、「こんなん現実であり得ないでしょ」な恋愛でも、無駄にトリッキーな手口の殺人事件でも、非現実的なら何でも良いです。
参加してくださる親切で意欲的な方には、この書き込みに対するレスに一言書いてもらった上で作るか、タグに「長編小説」と書いて投稿してください。両方でも構いません。
何か質問があったらどうぞ。
ご協力いただけると、とても嬉しいです。どうぞ皆様、奮ってご参加ください。

2

禁忌

禁忌、というものがあるらしい。
触れることも見ることも許されない、見ることができないからそれであるかも分からないけど。
君もよく知っているだろう。侵してはならない領域。ほら、白雪姫はりんごを食べてはいけない。ラプンツェルは塔から降りてはならない。
法律とかではないよ。あれは人と人とのお約束事。
禁忌とはそうではない。多分、私やあなたの本質を揺るがすのだろう。
人間の本質を損なうのだろう。そうなのかもしれない。
そういうものだ。禁忌とは。
侵してはならない。
侵してはならないよ、その先に何が見えようとも。奇麗な空や、ほら、花園が広がっていようとも。見てはいけない。目を背けよう。
目を背けなければならないよ。変な気を起こさないように。教育だよ。私とあなたのため。
言った通り、私やあなたの大事な柱が揺らいでしまうから。
とにかく。いけないことをしてはいけないよ。当たり前のこと。
見てはいけない。踏み入ってはいけない。指の隙間から覗くのもいけない。惰弱な精神が邪魔をするだろう、そういうものだ。人間とは。
人間とは、そういうものだ。脆弱な。
人間は脆弱だが、だからこそ禁忌を忘れてはいけない。
忘れるな。
真っ当な人間は、決して禁忌を忘れない。
私もあなたも、真っ当でいるのが正しい。
正しいことを、人はするべきだ。
正しくないことをしてはいけない。
禁忌を侵してはならない。
これは鎖ではない。私とあなたを守る命綱だ。
あなたを守るためだ。
禁忌に対して触れたいとか見たいとか、絶対に考えてはいけない。
絶対だ。

分かったら、さあ。
正しいことをしようじゃないか。

2

霧の魔法譚 #15 6/6

魔法使いたちを襲った大攻勢は、目立った損害もほとんどなく魔法使い陣営の勝利に終わった。
変わったことと言えば沖合に突如出現した謎の濃霧を偵察隊が捉えたそうだが、目立った動きはなくほどなくして消滅したらしい。おそらくファントム側の攪乱作戦が不発に終わったのだろうと多くの者がそう考えた。いずれにせよ勝ったのだから問題はないと誰も深く考えなかった。


霧に隠されたもう一つの大攻勢。一人の少女が抹殺したファントムは深海の底に消え、誰の記憶にも残ることはない。


霧の魔法譚<終>

***

大変大変長い間が空きました。覚えている方いるでしょうか。いたら嬉しいです。
夏からの課題(!)、何とか無事終わらせることができました。終わりましたよテトモンさん!
本当はもっと短く、こう、フランクな感じで終わる予定だったのですが、書き込みを引き延ばしているうちにグダグダと内容まで長くなってしまい……。お話の展開まで暗くなってしまいました。クリスマスイブにお目汚し失礼します。
霧の魔法譚は以上で終了です。見てくださった方、反応していただいた方、そして長文を載せてくれたKGBさん、長らくお付き合いいただきありがとうございました!