LOST MEMORIES~付き人の午後~
「ねえチャールズ。」
リビングのテーブルでノートを広げ、ペンを走らせながら同じ部屋にいる付き人の名を呼ぶ。
「なんでしょう。」
こちらも本を読みながら、顔を上げずに応える。
「私、疲れてしまったのだけれど。」
「お茶にします?」
「いいえ、チャールズにします。」
は?
思わず顔を上げたチャールズが瑛瑠の方を見ると、ペンを置いてうんと背伸びをしていた。
そして、深呼吸したと思ったら、手を広げている。
チャールズは思わず笑ってしまう。意図を汲み取り、本を置いて手を広げた。
すると彼女は嬉しそうに笑って飛び込んでくる。ぎゅうっと込められた力は、苦しいくらいだ。
「疲れはとれそうですか?」
「ん、もうちょっと。」
ハグには癒しの効果があるなど、どこかで聞いたフレーズを思い出した付き人の午後。