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メインエベント

「なあ兄よ」
「どうした弟よ」
「皮肉なもんだと思わないか。今日はクリスマスだってのに、街はもうお正月気分だぜ」
「昨日が一番のクライマックスだったな」
「前夜祭が当日よりメインってなんなんだよ」
「まあそういうな、弟よ。しかし考えても見ろ」
「なんだよ」
「そんなのクリスマスに始まったことじゃないだろ?」
「まあ、そうかもね」
「誕生日に買ってきたケーキなのに前日に食べちゃったり」
「うんうん...うん?」
「学校の創立記念日を今日だと思い込んで前日に休んだり」
「お、おいちょっと待てよ」
「父さんと母さんの結婚記念日を一日間違えたり」
「それ全部俺のことじゃねえか馬鹿兄貴ィ!!!」
「ああ、そうだったけか」
「てかよくもまあそんなに覚えてるもんだな」
「記憶力だけは良い方なんで」
「でもさ」
「うん?」
「やっぱりよく考えると、寂しいよな」
「そうだよなあ」
「そうだよ」
「うんうん.........平成もあと四ヶ月そこらで終わりだからな」
「そうそうそのとお...ってその話してねえッ!!!」
「みんな『平成最後』『平成最後』って騒いでるけど来年の五月まであるからな」
「良いんだよそんな話は」
「というわけでよいお年を」
「今年もまだあるよッ!!!」

7

LOST MEMORIES~Christmas ver.~

「瑛瑠、付き合ってくれないか。」
帰り道、時はクリスマス。ケーキを囲む家族や甘やかな時間を過ごす恋人たち、かたやクリスマス商戦に追われたバイトとクリスマスなんていらないと追い込まれた受験生。
そんな喧騒に飲み込まれていた瑛瑠は、英人の言葉に応える。
「いいですよ、どこへいくんですか?」
薄暗い帰り道さえ光で彩られ、浮き足だった街並みを体現している。
ふっと笑った英人は、デートと一言。瑛瑠は呆れたようにため息を吐く。
「行き交うカップルのクリスマスムードにでもあてられたんですか。」
「横に何の申し分もない女がいて、見せつけたくないわけがないだろう。」
瑛瑠はじとっと横目で見てやる。その目を見て、肩を竦める英人。
そうして瑛瑠はふと思うら、
「たしかに、隣にイケメンを置いてクリスマスの街を闊歩できるのは光栄なことですね。」
すると、今度は英人が好戦的な目を瑛瑠に向け、艶やかに微笑む。
「お手をどうぞ、プリンセス。」
ダンスパーティーにおけるマニュアル通りのエスコートを演じられてしまったので、瑛瑠はその手をとる。
「ほんと、いい性格してますね、王子様。」
どちらともなくきゅっと握った手は、冬の帰り道にも関わらず、あたたかかった。

2

Advent 12/23

あたしの学校の冬休みは、昨日から始まった。
先生たちは、「冬休みが正念場だ」とかなんとか言ってたな。
もちろん、冬休みは、さすがのあたしでもがっちり勉強する。けど…
「…」
受験生で大変なのに、宿題を出す学校なんて、もうどうかしてんな~と思う。まぁどこも同じかもしれないけど。
おかげさまで、何も言えない。
「頑張らなきゃ…」
そう言って、あたしは机に突っ伏してた身を起こした。早いとこ片づけなきゃ。それで、受験勉強やんなきゃ…
やることが多い。それでもあたしはクリスマス当日、クリぼっちでないことを鼻にかけたいと思う。
今年も、12月25日は、クリスマスフェスに参戦できることが確定したのだ!
つい昨日、親との激しい戦いを制し、どうにか行くことができたのだ。
その分、今までで一番やったってぐらい、勉強しなさいって言われたけど。
まぁそのつもりだよ。だから12月中に宿題を片付けようとしてるんだけど。
今クラスのみんなは何をしてるんだろう? ふと思った。
今日は祝日だから、塾がある人は少なそうだけど…自習室とか、行ってる人はいるんだろうな。
冷ちゃんとかどうだろう。あの子塾は行ってないって言ってるから、家でせっせと頑張ってるのかな…?
やっぱし冷ちゃんはすごいな。さすが秀才と呼ばれるだけある。
あたしも負けないようにしなきゃ!
そう自分を奮い立たせたところで、スマホが鳴った。
「…?」
見ると、メッセージアプリに新着メッセージ。
「クリフェス、楽しみだなぁ~」
あたしも超楽しみ、みんなで会える瞬間を楽しみにしてるよ、とあたしは打ち込んだ。
しばらくして、また着信。
「そうだね鈴ちゃん! あと、お互い勉強頑張ろ

3

なぞなぞリスペクト続き

と、そこで、使用人の一人が、ワゴンを押して客間に入ってきた。ワゴンには二つのクロッシュと二本のペットボトルが乗っている。
「昼食を用意させました。どうぞ召し上がってください」
「はあ、それはどうもすみません。ありがたくいただくことにしましょう」
使用人がクロッシュをとると、そこにはきれいに盛り付けられたクリームパスタ。
「ウニとアボカドのクリームパスタでございます」
「ああ君、ちょっと待ってくれ」
使用人が下がろうとすると、原垣内氏は彼を呼び止めた。
「少し毒味をしていってくれないか」
「構いませんよ」
返事をすると、使用人は皿の前にあったフォークを手に取り、少量をするっと絡めて音もたてずに口にはこんだ。
「恐らく大丈夫でございます」
「ありがとう、下がっていいよ」
使用人は客間からそそくさと出ていった。原垣内氏は安心したようにパスタを口にはこぶ。こちらも全く音をたてない。流石、育ちが違うというのだろうか。
「こんな風にものひとつ食べるのにも過敏になってしまってね。飲み物でも買ってきたもの以外は飲まないようにしているんだよ」
そういうと原垣内氏は置いてあった◯やたかのペットボトルの蓋を、これまた音もたてずに開け、口にはこんだ。
「ささ、刑事さんもどうぞ召し上がってください」
「はあ、ではお言葉に甘えて」
そういって観音寺も(流石に音をたてずにというわけにはいかなかったが)その絶品のパスタの味を楽しんだ。いつも安い飯ばかり食べている彼からすれば異文化の食である。

「今日はごちそうさまでした。近いうちに調査のためにもう一度お邪魔させてもらうと思いますのでまたよろしくお願いいたします」
「ええ、わかりました。お待ちしております」
そういって観音寺は帰っていった。
その晩、原垣内氏が毒殺されたとの情報が入った。その日の話を観音寺がすると、案の定先輩刑事の五十嵐にとことん絞られたのである。

2

This is the way.[Ahnest]19

「雪崩だ」
「え、何て?!」
「これはまずいぞ...!」
音はだんだん大きくなってくる。間違いなく、この岩屋の入り口の真上から来ている。
「...嘘、この音雪崩なの?!」
「そうだ!」
「でも普通雪崩ってこんなに音しないんじゃ...!」
「この雪崩は普通じゃないんだよ!!!」
そう、トルフレアでは滅多に起きないが、オヅタルクニアではしょっちゅう起こるこの雪崩。尋常ではない轟音を響かせ、近くにいた小動物はあまりの音に気絶するという。人々はこれを、『ティルダの怒り』と呼んだ。
「いいから耳を塞げ!!!!」
「...何て???!!!!!聞こえない!!!!!」
轟音はますます近づいてきている。アーネストは素早くシェキナを抱き寄せると、左耳を自分の胸に押し当て、右耳を右手で塞いだ。同時に左手で自分の右耳を、肩で左耳を塞ぐ。
パッと、岩屋の中が暗くなった。雪が入り口を塞いだのだ。シェキナがキュッと身を縮める。アーネストはいっそう強くシェキナを抱きしめた。

暫くすると、塞いだ耳に聞こえていた微かな轟音もおさまり、入り口を塞いだ雪の向こう側の日が薄く見えるほどになった。アーネストはホッと胸を撫で下ろすと、シェキナを抱き締めていた腕を解き、入り口の方へ向かった。少し雪をかくと、光が一筋差し込んだ。
「うん、閉じ込められはしなかったみたいだ。良かったな、シェキナ.........シェキナ?」
振り向きながらアーネストがそういうと、シェキナは顔を真っ赤に染めてへたり込んでいた。心做しかアーネストを睨み付けているように見える。
「どうしたんだ、シェキナ。あっ、まさか息できてなかった?」
「......何でもない!」
むすっとした表情のまま、シェキナはすくっと立ち上がると、入り口の方へツカツカと歩き、入り口を塞いでいた雪を蹴飛ばした。と、雪がドサドサッと崩れ、乾いた雪が舞い上がる。当然のように咳き込むシェキナ。「なんなのよホント...」とブツブツ言いながら岩屋の外に出ていってしまった。
「あっ、おいちょっと待てよー!」
慌ててアーネストが追いかける。薄暗い岩屋に、燃え残った焚き火のあとだけが残された。

4

LOST MEMORIES ⅢCⅥⅩⅢ

「みんなも薄々気付いていたとは思うが、このイニシエーションには裏があると踏んでいる。
通過儀礼として送られたことをまず確かめたいんだが。」
そう言ってこちらをみるので、先に口を開いたのは瑛瑠。
「私も、成人においての通過儀礼と言われました。人間界の視察と情報共有が主な目的。」
瑛瑠の言葉に、歌名と望も頷く。伝えられている大まかな内容は、4人とも同じようだ。
英人は引き継ぐ。
「視野を広げることや情報を扱うことについてが最終目的なら、疑問はない。これは僕の推察だが、僕らは将来的に上に立つべくして教育されてきたはずだ。もっともなイベントであるとも思っている。
本当に、それが目的なのであれば。」
英人の鋭く光る黒い瞳は、今日はいつもに増して研ぎ澄まされていて、目にハイライトがあるにも関わらず感情とは程遠い表情をしていた。
「疑わしい理由は主に2つ。1つは、期限がはっきりしていないこと。あくまで儀式の体なのに、ここまで弛いのはおかしい。絶対と言ってもいい。」
さらに続ける。
「もう1つは、僕が成人しているということ。既に成人の儀を終えている僕を人間界に送る理由は、」
「成人においての通過儀礼じゃないから。」
歌名が、神妙な顔で引き継いだ。

3

No music No life #4 うみなおし

結月視点

「それはね、人を切る音を聞きたくなかったからかなぁ。ひどいよね。音楽耳栓がわりにしてさあ。」
「でもさ、結月はその頃から音楽好きだったんでしょ?」
「うん。あれだけが癒しで、あれだけが生きがいだった。まあ、今もそうだけどね。」
「じゃあさ、こうすればいいんじゃない?」
そう言った時雨ちゃんの方を見て、僕は首を傾げた。
「大好きな音楽を肌身離さずにいるっていうことにすれば。」
「…‥」僕は黙り込んでしまった。
本当にそれでいいのだろうか。でも、それも一理あるかもなぁって思う。だから、
「なるほどね」って言って笑っといた。
「まあ、その理由をつけるか、つけないかは結月次第だけどね。」
続けて時雨ちゃんは言った。
「でも、どっちにしろ、君は何も悪くないぜ。多分。」
そう言って部屋から出てしまった。
あ、あれってうみなおしの歌詞か。
口調変だなと思ったら、そういうことか。

僕は悪くないといいけどね。

#4うみなおし【終わり】
#5 TOGENKYO に【続く】

——————————————————————
4話終わり早いな!(作っといて言うなよ)
それはさておき、作って欲しい曲のリクエストください!番外編などで書けると思うので。
それと、もう一つあるのです。
学園祭の話を書こうと思っているので、セットリストのリクエストもください!
多くてすみません!これからも頑張ります!

2

This is the way.[Ahnest]18

轟音とは、こういうもののことを言うんだと知った。

明くる日のこと。
「うーんっ、よく寝たあ」
「ホント?私体がカチコチなんだけど...」
「まさか、今まで岩の上で寝たことがなかったり...」
「ま、普通に暮らしてたらそうある話じゃないわよ」
そう言ったシェキナが首を横に曲げて手で引っ張ると、ゴキゴキっと音がする。うわあ、と顔をしかめるアーネスト。
「どっか折れてるみたいだ」
「何言ってんのよ」
肩、腰、脚と順番に体をほぐしていくシェキナ。そのたびにすごい音がなる。
「さあ、朝食でも探しに行くわよ」
「そうだな、登ってくるときにおそらく鹿の足跡っぽいのが向こうに続いてたからいるかもしれないな。昨日の晩の雪でだいぶ消えちゃってるけど」
「そんなの見つけてたの?」
「まあ、ね。確かあっちの......」
アーネストが岩屋の出口に近づき、外に出ようとする。と、そのとき、はっとアーネストは足を止めた。
「どうしたの、アーネスト」
「シッ.........。何か聞こえないか?」
「??いえ、何も...待って、なんだか低い音がなってるみたい。重たい家具を動かしてるときみたいな......」
「やっぱりそうか、聞き間違いなら良かったんだが...」
「え、何、どうしたの?」
「これはまずいかもしれん......どうする...?」
「ちょっとなんなのよ教えてよねえ!」
オヅタルクニアではこんな音を聞くのは日常茶飯事だった。でも、こんなにも大きな音を聞いたのは初めてだ。それもそうだ、いつも遠くから眺めているだけなのだから。そう、この音の正体は............。

1

星談議

A「夏の大三角は、ベガ、アルタイル、あと何だっけ?フォーマルハウト?」
B「馬鹿、それは南の魚座だ。デネブだよ。むしろよくフォーマルハウト知ってたな」
A「そうだったね。じゃあ、冬は?」
B「シリウス、プロキオン、ベテルギウス」
A「じゃあ春」
B「アルクトゥルス、スピカ、デネボラ」
A「じゃあ秋は?」
B「ペガスス座の星4つが秋の大四辺形ってことになってる」
A「じゃあ、冬のダイヤモンド、全部どうぞ!」
B「リゲル、シリウス、プロキオン、カペラ、ポルックス、アルデバラン」
A「おー。さすがだ。けど僕は、他のどの三角形よりも、冬のダイヤモンドが一番好きだな」
B「ほう。その心は?」
A「だって、ただでさえ綺麗な冬の星を、6つ並べてダイヤモンドに喩えてるんだぜ。これ以上無くロマンチックってもんだろう?」
B「そうですね」
A「なぜ敬語?」
B「いやさ、冬のダイヤモンドのポルックスって星あるじゃん?双子座の弟サイド。神話でも兄に先立たれて、ダイヤモンドでも兄さんと分断されるって、ちょっと可哀想だな〜、て思ってさ」
A「君はそんなことを考えて生きてたのかい?」
B「それが何?」
A「星が綺麗で素敵だね、それで終わりで良いじゃないか」
B「お前はものを考えなさ過ぎなんだよ」
A「君こそ難しく考え過ぎだぜ。もっと楽天的に生きろよ。シンプルは美徳だぜ」

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This is the way.[Ahnest]17

「ほんで、はっきのはなひのふどぅきなんだけど」
「なんて言ってんのかわかんないわよ」
口一杯にパイを詰め込んで話すアーネストを、シェキナが窘める。アーネストは近くの雪を一掬いすると、口に含んで流し込んだ。
「っん゛、さっきの話の続きなんだけどさ」
「さっきの話って?」
「ほら、君は僕のことよく知ってるようだけど」
「ええ、アーネスト・アレフさん」
「だから、イナイグム・アレフだっての」
「ああ、そうそう、イナイグマレフ」
「うん、けど、僕は君のことなんにも知らないなって」
「アーネストのスペルってErnest?」
『Ahnest』
「あら、そうなの」
「えっ、いましゃべったの誰?」
「さあ、なんだか上から聞こえてきたけど」
ちなみにこの世界に英語の概念はない。彼らが喋るのはフレア語である。
「て言うかそんなこと訊いてない。僕が知ってるのは、君がシェキナ・アビスタシだってこと、貸馬屋の娘ってこと、僕と同じ経済学の講座をとってるってこと」
「それだけ?」
「それだけ」
「それはひどい話ね」
あぐらを組んでいた足を投げ出し、少し仰け反ってシェキナが言った。
「私はあなたがネウヨルク出身ってことも知ってるのに」
「いやごめんっ...てなんで僕の故郷知ってんだよ」
「ライネンさんに聞いたわ」
「おしゃべり......」
「ともかく、別に私のことをわざわざ話すこともないわ。どうせ二週間近く一緒なんだし」
「確かにそうだけど、なんか不公平って言うか...」
「そんなことないわよ。あなた、私の故郷知ってるでしょ?」
「......ソルコムだろ?」
「ほら、おあいこじゃない」
「うーん、なんか煙に巻かれた気が...」
アーネストは焚き火の火をつつきだした。火の粉が再びパッと上がる。
「ま、良いか」
「わかってくれたならいいわ。それより、この間来てた旅の楽士、あの人凄く良くなかった?」
「ああ、覚えてる覚えてる、盲目の六弦琴弾きだろ?」
「そう、私あの声どこかで聞いたことが......」

夜は更けるばかり。焚き火が崩れて、三度火の粉を上げた。

5

雪が、落ちてゆく。

                   ゆ       こ
                    き      の
                     が     ゆ
                     ひ     き
                     と     が
                    ひ      お
                   ら       ち
                           き
                           る
                 ゆ         ま
                き          え
                が          に
                ふ
           あ     た
           な      ひ
           た       ら
           に
           あ
           い         ゆ
           し         き
           て         が
           る        み
           と       ひ
                  ら     つ
                        た
                        え
               ゆ        ら
               き        れ
               が        る
                よ       だ
                 ん      ろ
                  ひ     う
                   ら    か



                あ    わ
                な  と た
                た    し

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Advent 12/10

「あ、の~」
「?」
ノートから目を上げると、小柄な女子生徒が僕の顔を覗き込んでいた。
「これ分かんないんだけどさー…ヒマなら教えてくれる⁇」
「おい、今は暇じゃないでしょ…」とギャラリーの女子生徒たちがあきれている。
「あー…別にいいけど…」
「うわ、ありがと!」
そういうや否や、女子生徒―文野霜菜(そうな)は僕の前の席に座った。もし、前の席に人がいたら、彼女はどこに座っただろう。
「いや~郡クンに勉強教えてくれるなんて~アタシついてるな~」
そうのんきなことを文野さんは言っている。この調子だと、こっちの解説を聞かなさそう。
「とにかく本題だよ文野さん、まず…」
「あ~待って! さん付けはカタいよ。メンドいからソナでいい。おあいこでアタシ、ゆっきーて呼ぶからさ」
「正直それは嫌なんだけど…」
「嫌だった⁉ じゃー雪夜くんにする」
「じゃあゆっきーでいい」
「OK、じゃ解説続けて」
正直この人はめんどくさい。クラスの人気者だけど、マトモに付き合える人間は限られる。僕はマトモに付き合えない、っていうか付き合うことはないと思ってたんだけど。
解説を続けるうちに、ギャラリーの数は減っていった。多分飽きたとか…そんな感じだろう。
「お~、やっぱ学年トップはすごいな~ ありがとうゆっきー」
「どうも」
「そういやさー」
思わず「?」と聞き返した。
「クリスマスは、何するタイプ?」
「え」
「あーアタシは、みんなで受験勉強かな。六華(りっか)とか、サクラコとかと。ゆっきーは?」
「…行きたいライブあるけどな~…」
「えマジ⁉ ライブとか行くんだ~ いがーい」
だけど…と言ったけど、全く聞いてない。
「じゃー今度教えて! 約束だよっ!」
「…」
もはや僕は何も言えない…

今回ちょっと長くなりすぎた。まぁ、このお話、最初の方会話少なめだったからな~

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This is the way.[Ahnest]16

「今いるのが、ここ、テ・エストの中腹だ。テ・エストは三山脈で一番標高が低いから、明日か明後日には越えられるだろう。そんで、ここに集落がある。今歩いている道はこの集落に繋がってるんだ。ここで少し食べ物を買うなりして、休む」
アーネストはそう言うと、一番右の楕円っぽいもの(おそらくテ・エストなのだろう)を指さして、その奥の麓をグリグリと塗りつぶした。
「ただ、小さい集落だから、大したものはないかもしれない。憲兵も最近は視察にいってなかったみたいだからな。まあ、気性の荒い民族ではないから、きっと大丈夫だろう」
燃えさしを焚き火に戻した。火の粉がパッと上がる。
「言ってることはわかったわ、でも、」
シェキナが口を開いた。
「ほんとにそんなところに何かあるの?そんなところに集落があるだなんて聞いたことないわよ」
「ま、無いなら無いでいいさ。少なくとも廃墟ぐらいならあるだろ。薪ぐらいあるって」
「そうね、通り道だし、別になんてこと無いんだけれど」
「あったらラッキー、くらいだな。さ、ミートパイ食おうぜ」
話している間にパイは少しばかり焦げてしまっていた。それでもパイの中身はまだしっとりしていて、レンコンの歯応えも効いている。パリッとした皮の食感も楽しめた。雪の日は食べ物が傷みにくいのがいいよな、などとアーネストは独りごちる。

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Advent 12/6

やっと、予定通りに書けます… 第6話”12/6”スタート↓

街はここしばらくの寒暖差で、人々の格好は、秋らしくなったり、冬らしくなったり…
今日は昨日と打って変わって、冬らしい陽気だ。
いつの間にやら、千賀橋の近くの銅像に、サンタ帽がかぶせてある。一体いつ、誰がかぶせたのだろう。落とし物なはずはないのだが―
「…、…くん、…コウくん、…入間コウ‼」
おもいっきりフルネームを呼ばれて、背中をカバンで殴られるまで、後ろに人がいることに気付かなかった。
振り向くと、久しぶりに見る顔がそこにあった。
「久しぶり」
吹奏楽部のOG…部活の先輩だった、光ヶ丘綺羅先輩が、そこにいた。
「…こんなところでフルネーム呼ぶのは、やめてくださいよ…」
「え~、だって名前読んでも振り向いてくれないからさ~もう実力行使しかないと思って~」
質問と答えが若干噛み合わない。この人はずっとこうなのだ。
「そーいやさ~、コウくんは、高校どこ行くの⁇」
「ここしばらくみんなそれ聞きますよ?」
高校の話は、あんまりしたくない、むしろ考えたくないんだよなぁ。
高校について考えてることといえば、入学したら軽音部に入りたい程度だ。
「いっそさぁ、ウチんとこ来る? ウチは大歓迎だよ? 軽音部あるし」
「え 先輩、その情報どこから…?」
「あーくららから~」
海月め、あのおしゃべりが…
俺は心の中で舌打ちした。この感じからすると、多くの吹奏楽部員がこの事を知っているに違いない。
「まぁ、頭の隅に入れときますよ」
「お、サンキュー。決まったら今度教えて」
この時ふと思い出した。例の約束のこと。みんなで集まる話―
「ねえねえコウくん、今度さ、”クリスマスフェスティバル”行くんだけど…行くの?」
俺は答えなかった。むしろ答えられない。
今日の町は冷えている―俺の未来も。

これで、「この物語」に出てくる、すべての主役を出せました。これからはその主役たちが、かわるがわる物語を語っていきます。
memento moriさん! 今日は今日中に書き上げられましたよ! どうですか!

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ひと口

 夜勤明け、コンビニで缶ビールとチリ味のポテトチップスを買い、歩きながら飲み食いした。いい気分だった。
 雨がぱらついてきた。僕はパーカーのフードをかぶり、足を早めた。
 部活の朝練だろう。ビニール傘をさし、テニスバッグをかついだ女子高生が橋の欄干から身を乗り出し、くんくんとにおいを嗅ぐような仕草をしていた。
 すれ違いざま、女子高生がよく響く低音で、「綿のフードパーカーって洗濯物のなかでいちばん乾きにくいよね」と言った。僕は立ち止まった。女子高生が欄干に背中を預け、こちらを見上げた。僕はすぐに稲荷大明神だと気づいた。
「稲荷大明神様。どうも」
「様はいらんよ。彼女とはどうだ」
「常連になったので、顔は覚えられました」
 数日前、好きな女の子(コーヒーショップの店員)とつき合えるよう願掛けした直後、僕の目の前に現れて以来、ちょくちょくからんでくるようになったのだ。神も最近は暇なのだろう。
「そうか。まあいい。がっついたら上手くいくものも上手くいかん。恋はあせらずだ。女性は一般的に安心感が得られなければ恋愛に進まんからな。まずはいい意味で害がないことをアピールすることだ」
 稲荷大明神はそう言ってから僕の顔をじっと見つめ、「君の両親はそれぞれ出身地が違うだろう」と、傘を僕にさしかけながら続けた。
「僕は大丈夫です。どうぞ、濡れてしまいますので」
「わたしは神だ。雨に濡れたりなどせん。さしなさい」
 言われてみれば少しも濡れていない。僕は傘を受け取った。
「父は京都、母は東京です。どうしてわかるんですか?」
「魅力のある人物は塩基配列が変化に富んでいる。両親の遺伝的距離が遠い可能性が高い」
「僕、魅力ありますかねぇ」
 まんざらでもない調子で僕が言うと稲荷大明神は、「まあまあだな」とこたえた。
「まあまあならよかったです」
 僕は取り繕うように言って缶ビールを飲んだ。
「以前と比べると少しは自信がついたように見えるな。何かあったのか」
「酔ってるからですよ」
「ひと口くれ」
「女子高生にビールを飲ませるわけには」
「この姿ではまずいか」
「まずいです」
「じゃあまたな」
 僕は後ろ姿を見送った。この話は、次回に続かない。

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Advent 12/5

さーてさて、つい30分ほど目に過ぎ去った12/5… 第5話”12/5”スタート↓

「ねぇ冷ちゃん、これ分かる~?」
「いいよ、見せて」
やっぱりあたし、冷ちゃんの友達でよかった。そんな思いを噛みしめた。
冷ちゃんはあたしと違って、勉強ができて、周りへの気配りが上手で、ザ・秀才!って感じ。
対してあたしは、集中は続かないし、そそっかしいし…自慢できるのは、抜群の運動神経ぐらい。冷ちゃんみたいだったら、そこまで今は困らなかったんだろうな~
「…鈴ちゃん、いい?」
「あ、ごめん。いいよ」
冷ちゃんはあたしに丁寧に、よくわかんない比の定理やらなんやらを教えてくれている。
もうとうにテスト2週間前は過ぎている―今日で1週間前になったところだ。
実質、1学期中間・期末当たりは、みんなめちゃくちゃ頑張ってはいなかった、まあ普通通り。
だが、2か月前の2学期中間は驚きの事態になった。
「みんなが、やる気を出している…⁉」
衝撃の事態。あたしはいつも通りやってたから、いつもは点数で勝ってる人たちに、負けた。
今回のテストは、これで受験で使う内申確定、というわけで、いつもはさわがしい教室内は、少々物々しい雰囲気だ。
あたしも、頑張らなきゃ。その気持ちでテスト3週間前から勉強してる。だけど…
「わかんねぇーーー!」
わかんないトコが多すぎて、もはや大混乱。というわけで、ここしばらく、友達の冷泉(れいぜい)ミユキこと、冷ちゃんに質問しまくってるワケ。
まあ、ほかの人もなんだが。
「…なんだけど、わかった?」
「うー、もう1回!」
わからない、といえば、この間届いたメールだ。行ける・行けないだけでも返信したいけど、まだ「その日」の予定がわからないのだ。
(まぁ、この調子じゃぁ、無理そうだな)
あたしは心の中でため息をついた。ホントは行きたいけれど…
「…どう? 鈴ちゃん」
「あ~、ごめん! ワンモア!!」
いいよ、と冷ちゃんは笑ってくれた。やっぱ、あたし、冷ちゃんの友達でよかった。

2

目と目

「本当の事を言えば毎日は 君が居ないという事の繰り返しで」
って誰かの言葉繰り返して
君への愛の言葉にして

最低な夜を超えたとしても
君との距離は変わらなくて
つまらない日々の言い訳も
楽しさも君のせいにして

ByeByeByeByeByeもろくに交わさないから
明日会っても「おはよう」なんて言えないわけでございまして
「大大大大大嫌い」がない分ちょっとの好きもないよ。
じゃあね、またね、おやすみってさ。
言って。


「今日はアタリ 今日はハズレ そんな毎日でも
明日も進んでいかなきゃいけないから」
って処方箋独断で流して
君には届くわけもなくて

愛 ラブ 言う わけもなく
手繰り寄せるでもなくて
大抵午後4時の頃には
君とさりげなく別れて

ByeByeByeByeByeもろくに交わさないから
消しゴムの「ありがとう」がなんとも嬉しかったりして
「ないないないないないよ、そんな」そんな言葉が引っかかって
じゃあね、またね、おやすみってさ。
あいつには言ってても。


知らないフリして、今まで通りで
隠していたなら何も起こらない。
でも本当はさ。
「もう要らない もう要らないよ 君の他にはなんにも」
要らないよ。


ByeByeByeByeByeもろくに交わさないから
明日会っても「おはよう」なんて言えないわけでございまして
「大大大大大嫌い」がない分ちょっとの好きもないよ。
じゃあね、またね、おやすみってさ。
言って。

言って。