表示件数
0
2

魔法少女学園都市レピドプテラ あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
企画「魔法少女学園都市レピドプテラ」の開催期間が終わり、参加作品の投稿も落ち着いたということで「あとがき」です。
今回もお付き合いください。

今回の企画の世界観は、紆余曲折を経て誕生したものでした。
まず、有名ソシャゲ「ブルーアーカイブ」の情報を何気なく追っていた時に、「ブルアカ」みたくかわいい女の子たちが学園都市で戦う物語を作ってみたいと思ったんです。
しかし「『ブルアカ』のように弾丸の撃ち合いじゃなくて登場人物は「魔法」を使う設定にしよう」と思ったのですが、それ以上は話がイマイチ広がりませんでした。
そのためなにかいいアイデアが見つかったらいいなぁと思って、自作のタイトルに使いたいと思っていた言葉「魔法少女学園都市」という言葉でプチ企画を立てたのが去年の6月頃。
その後、忙しかったこともありますが暫くそのアイデアを放置していました。
ですが去年の終わり頃くらいに、その年の初め頃に思いついたけど没ネタになった「特殊能力を発現した少女たちが閉鎖された学園に集められ、その能力を大人たちによって治安維持に利用される時以外は能力を失うまで外へ出られないお話」の世界観を「魔法少女学園都市」に一部混ぜてみればいいんじゃないかってことに気付いたんです。
それで件の没ネタが「鳥」をモチーフにしていたから今度は「蝶」モチーフにしようとか、学園都市内ではモチーフの蝶の名前を名乗る設定にしよう、「ブルアカ」のように色々な陣営に分かれている設定にしよう、などと設定を膨らませた結果、現在の形になりました。

さて、今回はこれくらいにして。
次の企画も一応用意はしてあるのですが、今回の企画がこうだったので投稿期間の撤廃をしてみようかなと思ってます(だって皆さん忙しいし遅筆でしょうし)。
他にも「こうしたら参加しやすくなるかも」というご意見があればぜひレスからどうぞ。
ちなみに今度の企画は「鳥」をモチーフにするので、参加してみたい方は鳥の学名を調べておいてくださいね。
テトモンよ永遠に!でした〜。

0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ㉒

「もうすぐZIRCONの単独フリーライブが始まるだろ?」
始めからみたいならさっさと行った方がいいぜ、と師郎は琳くんに笑いかける。
彼の有無を言わさぬ雰囲気に押されて、琳くんは…うんとうなずく。
そして彼はイスから立ち上がると、休憩スペースの後方にある階段へと向かった。
「あら、逃げるの?」
逃さないわよ?と言ってヴァンピレスは自身の周りに分身を生み出す。
すると彼女の分身の内の1体が、琳くんが去っていった方に駆け出した。
しかしその分身に向かって黒い大鎌が飛んできて直撃する。
分身は大鎌と共に消滅した。
「…わらわの邪魔をするの?」
ヴァンピレスは腹立たしげに首を傾げて目を細め、分身たちと共に右手の中に白い鞭の具象体を出す。
「あぁ、そうさ」
アンタに同族の邪魔をされるワケにはいかねぇんだよ!とネロは両目を赤紫色に光らせ、その右手に黒い大鎌を出した。
そしてネクロマンサーは大鎌でヴァンピレスに斬りかかる。
しかしヴァンピレスの周りの分身たちがネクロマンサーの前に立ちはだかり、白い鞭でネクロマンサーの斬撃を妨害する。
ネクロマンサーは一旦飛び下がり、大鎌を構え直しつつわたし達においアンタら‼と声をかけた。
「早くあの琳を追え!」
アイツを1人にしたら危ない‼とネクロマンサーはこちらを見つつ言う。
耀平は分かった‼と答えると、行くぞ!とわたし達の方を見る。
わたし達はそれぞれうなずくと、荷物を持ってその場を離れた。

1

魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 ロノミア・オブリクァの扱う『刀』一覧

・破城(ハジョウ):全長3m超の斬馬刀。攻撃対象の『防御の意思』に反応し、その防御を破壊する。

・幽鱗(ユウリン):全長90㎝程度の日本刀。刀身の損傷を、表面だけが割れるように剥がれることで完全に修復する。修復の度に刀身自体の耐久力が少しずつ落ちていくので、実質的に修復が使えるのは50回程度。

・血籠(チゴモリ):赤い刀身を持った全長85㎝程度の日本刀。使用者の血液を媒体にして、深紅の流体が刀身の傷を埋める、本質的に不壊の刀。流体の生成効率は、消費した血液の10倍程度。
・異称刀“稚児守”(イショウトウ:チゴモリ):“血籠”の別側面。使用者より年齢の低い者を守る際、刀の耐久力と使用者の身体能力が更に向上する。

・緋薙躯(ヒナギク):赤い刀身を持った全長80㎝程度の日本刀。直刀だが刀身にうねるような刃紋が刻まれている。刀身を自在に伸縮・変形させられる。
・異称刀:否凪駆(イショウトウ:ヒナギク):“緋薙躯”の別側面。この刀を振るった場合、完全に振り抜くまでその斬撃は止まらない。”否凪駆”の能力使用中は、刀身の変形効果は使えない。

・癖馬(クセウマ):奇妙な形状の刀身をもった刀。刃渡り75㎝程度、全長100㎝強。その形状と刀身の密度の僅かな差から、一度振るうと標的を捉えるまで遠心力によって無限に、不規則に回転し続け、速度と威力を増していく。制御は極めて困難であり、十分に勢いの乗った刀身の挙動を読むことは不可能に等しい。

1

地下にて

暗がりに水が滴り落ちる音がする、それをかき消すように2つの小さな足音が響いていた。
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ…」
「ここまで来てそれはなしだろ」
魔法学園レピドプテラの地下下水道、入るのを禁じられたその場所の最深部にあった扉の前にリョウとレイナは立っていた。
「行くって言ったのはレイナだろ?それにほら、多分僕たちでもこの結界は解除できるぜ」
「そんなことある?私達まだ1年生だよ?」
「まぁまぁ、とりあえずやってみるぞ」
二人は扉に向けて手をかざす、扉が怪しく光り輝き真ん中が回転して何かが外れる音がした。
「ウソ…」
「な?言ったろ?」
リョウは満面の笑顔で扉を押す、するとそれなりに響く音を立てながら開いた。
「お宝かなんかあれば面白いんだけどな」
「あっまってリョウ!」
二人は扉の向こうに駆け出した。
そこそこ長い道を抜けると広いところに出た。
「何だここ?下水を溜めとくってところか?」
「り…リョウ…あれ…!」
レイナが指差す方を見ると大きな瓶のようなモノの中に一人の大男が正座していた。
「な…なんだよコイツ…!」
「や…やっぱり帰らない?これは…私たちは関わっちゃダメなやつじゃないかな」
「き…奇遇だな…僕も今そう思ったところだよ…うわっ!」
リョウが何かにつまずいて尻もちをつく、と同時に振動で何かが噛み合ったような音がした。
「…これ…やばいんじゃ…」
大きな瓶の中に光が灯る、その光が部屋の中のあらゆる所に循環して歯車が動き出した。

2

円環はみだし魔術師録 杖 解説編3

昨日の続きです。
読まずとも本編に影響は御座いませんので御安心ください。

6、杖の作り
大抵の杖は「芯」となるクリスタル、大部分を占める木、留め具や装飾としての金属類で構成されています。
主に木で杖を作り、その先に金具でクリスタルを取り付ける、というデザインが定番です。
定番のデザインはあるものの、使う魔術や本人の特性、職種によってデザインは異なり、多種多様なデザインが存在します。
例えば、対人戦闘の多い騎士団所属の魔術師は、「芯」であるクリスタルの損傷を防ぐため、杖を太めに作り、中を空洞にしてクリスタルを入れる、というデザインを好む人が多い様です。
他には、杖の先に吊り下げる型、杖にはめ込む型などがあります。
杖は基本的にオーダーメイドで作られるため、他者の杖を使うのは至難の業です。
芯であるクリスタルの位置や個体差によって、魔力の流れる方向や流れやすさが異なるためです。

7、杖のシステム
杖のシステムは、持っている部分から魔力を流し、クリスタルを経由させて先端に集める、というのが基本的なシステムです。
杖を使うことのメリットとしては、魔術の照準を合わせやすい、魔力の純度を上げる、などがあります。
また、魔術陣の組み込まれた杖であれば、その魔術の詠唱を省略できます。

8、特殊な杖について
この世界には幾つか特殊な杖が存在しているため、御紹介します。
まずは先述の詠唱省略系の杖です。
こちらは主に召喚魔術の魔術陣が組み込まれている場合が多いです。
理由としては、召喚魔術は時間がかかり、詠唱が長くなりがちで、かつ長時間一定の魔力量を保つ必要があるため、詠唱省略が大きなメリットとなるためです。また、それに付け加え、召喚魔術以外の魔術は基本的に訓練によって無詠唱展開や省略詠唱展開が修得できることも大きな要因です。
次は剣で作られた杖です。
基本的に剣と魔術を同時に使う場合、銀などで作られた魔力伝導率の高い剣を杖代わりにするか、普通の杖を使用した魔術で剣を操るか、の二択となります。
それは、杖のシステムを組み込んだ剣は剣として機能せず、剣の機能を組み込んだ杖は魔力が流れづらかったためです。
しかし、この世界に一振りだけ、どちらの機能も完璧に備えたものが存在します。
その名は「エスト・アンバ」。

0
1

魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑮

ボンビクスが『繭』を生成する前から、ロノミアは既に、結界術を解除していた。しかし、彼女に絡みつく細糸が、操り人形のように彼女の『時間』を動かしていた。
(ん、繭? モリ子の魔法か。)
「……嬉しいねぇ、自分の弟子が成長してくれるってのは」
ササキアの拳を“血籠”の刃で受け止め、ロノミアは呟いた。
「……この程度の魔法、ニファンダ・フスカにかかれば軽く捻り潰せる」
「どうだか」
迫り合う二人に割って入るように、繭の内壁から白糸の帯が放たれた。
「おっ、面白いことやってくれんじゃん!」
ロノミアが跳躍し、糸の帯を蹴ってササキアの背後に回る。ササキアは即座に反応し、身を翻して手刀を打ち込んだ。ロノミアは沈み込むように回避し、反動で跳躍して膝蹴りを打ち込む。ササキアはそれを片手で受け止め、投げで地面に叩きつけようとした。その直前、新たに現れた白糸の帯が、クッションのように受け止める。
「助かったぁ!」
足をばたつかせることでロノミアはササキアの手を逃れ、態勢を立て直す。
(さぁて……困ったことに、私は手を出し尽くした。どうやって押し切ったものか……っつーか、疲れてきたなぁ……)
ロノミアは既に大量に展開されていた白糸の帯を蹴り、空中に逃げる。新たに展開された帯に掴まり、息をつく。
「やーい、ここまで来てみろ生徒会長」
挑発するロノミアを見上げながらも、ササキアはその場を動かない。
(この『繭』が形成されてから、明らかに動きが重くなっている。『絡みつく魔力』に、補正がかかっているのか?)
「……まあ良い」
ササキアが、双子に目を向ける。その瞬間、ロノミアが糸帯の足場から手を放し、落下の勢いを乗せて斬りつけた。ササキアはそれを、籠手を身に着けた片腕で受け止める。
「可愛い弟子の大仕事、邪魔させるわけ無いだろ!」
「問題無い。貴様を倒してから、あの双子も捕える。それで片付く」
2人は再び、至近距離での激しい白兵戦を開始した。

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 解説編 3

企画参加作品「魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white-」の解説編その3です。

・マイセリア サイアニリス Myscelia cyaniris
所属:リーリアメティヘンシューラ
学年:高等部2年
固有魔法:周囲の空間に溶け込む
メディウムの魔法:変身、武器(銃器)の生成、身体能力強化
一人称:私
ラパエを狙って襲来したリーリアメティヘンシューラの諜報員。
性格は生真面目で堅苦しく、上からの命令に従順。
サルペとは諜報員仲間だった。
魔法少女姿は青紫色の軍服のような服装。
髪はボブカットである。
通称はサイア。
名前の由来だが、和名がまだついていないような蝶のようだ(一応英語名は『blue wave』とか『blue-banded purplewing 』とのこと)。
ちなみに本編では「サイアニス」と表記していたが、正しくは「サイアニリス」である。

〈学園〉
・櫻女学院 Sakura Jogakuin
レピドプテラに所在する学園の1つ。
いわゆる無名の学園の1つではあるが、それ故に他の学園とのトラブルは少ない。
制服は桜色のセーラーワンピース。

・リーリアメティヘンシューラ Lilie Madchenschle
レピドプテラの有力な学園の1つ。
レピドプテラ内での勢力維持のため、生徒会直属の諜報員が存在し、レピドプテラ内で暗躍している。
制服は黒い軍服のようなもの。

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 解説編 2

企画参加作品「魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white-」の解説編その2です。

・ポリゴニア シーアウレウム Polygonia c-aureum
所属:櫻女学院
学年:高等部1年
固有魔法:周囲の空間に溶け込む
メディウムの魔法:変身、武器(鉄扇)の生成
一人称:あたい
騒がしくてざっくばらんな魔法少女。
グッタータ、ピレタとともに都市伝説同好会に所属している。
レピドプテラに来たばかりのグッタータに優しくするなど親切な一面もある。
魔法少女姿は山吹色のキャミソールにバルーンパンツ。
髪をサイドテールにしている。
通称はシーア。
名前の由来はキタテハ。

・パルナラ グッタータ Parnara guttata
所属:櫻女学院
学年:中等部1年
固有魔法:高速移動
メディウムの魔法:変身
一人称:わたし
気弱で不器用な魔法少女。
シーア、ピレタとともに都市伝説同好会に所属している。
櫻女学院に来たばかりのころにシーアと出会い、以降慕っている。
魔法少女姿は緑と黄土色の和服のような衣装。
髪は黄土色である。
通称はぐっちゃん。
名前の由来はイチモンジセセリ。

・チタリアス ピレタ Citaerias pireta
所属:櫻女学院
学年:高等部2年
固有魔法:透明化
メディウムの魔法:変身、身体能力強化
一人称:私
真面目で現実主義者の魔法少女。
シーア、グッタータとともに都市伝説同好会に所属しているが、櫻女学院の生徒会長でもある。
魔法少女姿は赤いロリィタ服。
髪を三つ編みお下げにしている。
名前の由来はベニスカシジャノメ。

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 解説編 1

企画参加作品「魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white-」の解説編その1です。

・ピエリス ラパエ Pieris rapae
所属:櫻女学院
学年:中等部2年
固有魔法:分身
メディウムの魔法:なし(持っていない)
一人称:あたし
当エピソードの主人公。
明るくて夢見がちな、櫻女学院の転入生。
元々は外の世界の“テロ組織”のようなところで魔法を利用されていたが、組織が国際警察によって壊滅させられた際に保護され、レピドプテラにやってきた。
過酷な環境に身を置いていたが“いつか魔法少女学園都市に行ける“と信じてレピドプテラに憧れを抱き続けてきた。
しかしその強力な固有魔法を持つが故にレピドプテラの勢力均衡を乱しかねないと判断され、レピドプテラの有力な学園”リーリアメティヘンシューラ“の諜報員・マイセリア サイアニスに襲撃されることになる。
髪を二つ結びにしている。
名前の由来はモンシロチョウ。

・グラフィウム サルペドン Graphium sarpedon
所属:櫻女学院
学年:高等部2年
固有魔法:見えないものを見る
メディウムの魔法:変身、飛行、身体能力強化、武器(刀)の生成
一人称:ボク
スポーティな印象を受ける落ち着いた魔法少女。
ラパエと同じ日に櫻女学院へ転入してきた。
以前はレピドプテラの有力な学園・リーリアメティヘンシューラの諜報員としてレピドプテラ内で暗躍していたが、リーリアのやり方に不満を持って学園を離れた。
マイセリア サイアニスはリーリアメティヘンシューラ時代の仲間。
魔法少女姿は黒と水色のサイバーパンク風ファッション。
普段は制服の上に黒いパーカーを羽織っており、髪をポニーテールにしている。
通称はサルペ。
名前の由来はアオスジアゲハ。

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 16

こうして、リーリアメティヘンシューラのマイセリア サイアニス率いる魔法少女たちによる、櫻女学院襲撃は失敗に終わった。
生徒会長のピレタがレピドプテラ総務局に連絡したことで現場には総務局の局員が駆けつけ、サイアたちは連行されていったのである。
そうやって、櫻女学院に平穏が戻った。
「……あのサイアって人、このあとどうなるんでしょ?」
去り行く総務局の関係者を校舎の玄関から見送りつつ、ラパエはふと呟く。それに対し制服姿に戻ったピレタは「ま、良くも悪くも大事にはならないでしょうね」と返す。
「レピドプテラではかなり有力な学園の魔法少女だから、学園側が総務局に圧力をかけて、あの子たちもすぐに普段通りの生活を送れるようになると思うわ」
ピレタが呟くと、ラパエはなんか複雑ですねとこぼす。それに対し制服姿のサルペは仕方ないよと苦笑する。
「このレピドプテラにおいて総務局はそんなに強い存在じゃないから」
正直総務局よりも強い学園なんていくつもあるしね、とサルペは伸びをする。ラパエはへーと答えた。
「まぁまぁ、そんなことは置いといて……もうそろ帰ろうぜ」
日も暮れちゃうし、と制服姿に戻ったシーアはラパエの顔を覗き込む。制服姿のグッタータもそうですねと頷く。
「じゃー、もう帰ろっか」
みんな、とサルペはラパエたちを見やって笑う。ピレタはそうねと返し、シーアはおうよ、グッタータははい、と言う。そしてラパエは「帰りましょ、サルペ先輩」と微笑んだ。
そして5人は櫻女学院の校舎をあとにした。

〈おわり〉

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 14

「こんな子ども騙し、私には通じない!」
そう声を上げながらサイアは“ラパエ”たちが消失したことでがら空きになった場所を走り抜ける。それを見たサルペは「させない!」とサイアに飛びかかろうとするが、サルペの目の前でサイアの姿は見えなくなった。
「まさか、固有魔法‼︎」
サルペはそう叫ぶ。“周囲の空間に溶け込む”魔法を固有魔法とするサイアは姿を見せないまま校舎内に突入し、玄関を見回す。すると、柱の陰に座り込む二つ結びの少女が見えた。
サイアはそのままその少女……ラパエに近付こうとするが、不意に「シーア!」とサルペの声が後方から飛んでくる。その次の瞬間、サイアは誰かに横から体当たりされ、地面に倒される。
「⁈」
驚きの余り魔法を解除してしまったサイアの目の前には、山吹色のキャミソールとバルーンパンツを身に纏った、サイドテールの魔法少女が姿を現した。武器である鉄扇を突きつけているその少女……シーアに気付いた時、サイアは自身が罠にはめられたことに気付いた。
「そんな、無名の学園生ごときに!」
サイアはそう言ってマシンガンを構えようとするが、手に持っているマシンガンが突然飛んできた何者かに奪われる。混乱するサイアが飛んできた人物が着地した方を見やると、マシンガンを持った黄土色の髪で黄土色と緑の和服のような衣装を身に纏った少女……グッタータがサイアの方を振り向いていた。
「……これでキミたちの負けだね」
不意にそんな言葉をかけられて、サイアは玄関の扉の方を見る。ちょうど校舎の外からサルペが入ってきている所だった。
「キミが連れてきた魔法少女たちはみんなラパエの分身が無力化したし、キミもその状況じゃ動けない」
「もう、諦めた方が……」とサルペは言いかけるが、サイアはそうかと呟く。サルペは言葉を止める。
「これで私を無力化できたと思っているのか」
サイアの言葉に、サルペはまさかと目を見開く。その次の瞬間サイアは右手にマシンガンを生成し、サルペに突きつけようとした。
しかし彼女の腕は突然誰かに押さえつけられたように上がらなくなる。
「⁈」
サイアが困惑したように自らの腕を見ると、透明な手が自身の腕を掴んでいることに気付いた。

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 13

一方、サルペを櫻女学院の校舎内まで吹っ飛ばしたサイアや彼女に従う魔法少女たちは、校舎の目の前で武器を構えてサルペたちを待っていた。学園の入り口付近で違う学園同士の魔法少女が戦うことはまだしも、武力をもって櫻女学院の校舎に入ればそれこそ学園間の大問題になるため、サイアたちは下手に動けず暫く様子を見ていたのだ。しかし校舎内でサルペたちは話し込んでいる様子であるため、そろそろ校舎内に立ち入ることもサイアは考えていた。
「そろそろ、頃合いか」
早くしないと我が学園の生徒会長に怒られかねないからな、とサイアは校舎外壁に掲げられた時計を見やる。
「それに、あの魔法少女は早く捕縛せねばなるまい」
なにせあのまま放置すれば有力な学園同士での勢力均衡に影響が出かねん、とサイアは校舎の玄関口に目を向けた。
いつの間にか、サルペたちは玄関の柱の陰に隠れている。それを確認したサイアは周囲に従えた少女たちに対し声を上げた。
「総員に告ぐ!」
「これより……」とサイアが言いかけた時、不意に「サイア‼︎」という声が校舎の玄関から聞こえた。サイアが声のする方を見ると、そこにはサルペとラパエが玄関口から外に出てきていた。
それを見てサイアは驚く。
「どうした、気でも変わったか」
それに対しサルペは「まぁ、そんな所だよ」と返す。
「キミたちに、ピエリス ラパエを引き渡そう」
「……ただし」とサルペは続ける。
「“本物”を見分けられたらだけどね‼︎」
サルペがそう言った途端、周囲の地面に突き刺さった状態で水色の刀が何本も現れる。その直後、玄関の中から大勢の“ラパエ”が現れ、地面に刺さった刀を手に取ってサイアたちの方へ駆け出していった。
「まさか‼︎」
サイアは思わずそう叫ぶ。サイアに従う少女たちは一斉に銃器を構えるが、どの“ラパエ”が本物か分からず引き金を引くことができない。その隙に“ラパエ”たちはサルペの生成した刀で少女たちの銃器を弾き飛ばしていき、あっという間にサイアが従える少女たちの陣形は崩れていった。
しかしサイアはすぐに冷静さを取り戻し、マシンガンで“ラパエ”たちを撃ち抜いていく。“ラパエ”たちは魔力弾を喰らうとすぐに消えていった。

0

魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 12

「……それが、ボクの信条だから」
そして彼女は再度刀を構えた。
ラパエは暫く黙っていたが、やがて「……先輩」と呟く。その言葉にサルペが振り向くと、ラパエはお願いがありますとサルペの目を見た。
「あたしも、先輩と一緒に戦いたいです」
ラパエがそう言うと、サルペは「えっ」と驚く。
「でもキミはここに来たばかりでまだメディウムを持ってないじゃないか」
「どうするっていうんだい?」とサルペは尋ねる。するとラパエは「先輩って、刀を作る魔法を使えるんですよね?」と続ける。それに「まぁ、メディウムの効果で使えるんだけど」とサルペが答えると、ラパエは「じゃあそれをいっぱい作ってください!」と言った。
「あとはあたしがなんとかするんで!」
ラパエがそう明るく言うと、少しの沈黙ののちサルペは分かったと頷いた。
「あと、シーア先輩とぐっちゃんも、一緒に戦って欲しいです!」
さらにラパエがシーアとグッタータに目を向けて言うと、グッタータこそ驚いたもののシーアは「お、おうよ!」とサムズアップをしてみせた。
「とにかく皆さん、行きましょう!」
あたしたちの平穏を守るために!とラパエがいうと、サルペはうんと大きく頷いた。