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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 21

「ジェミニの起動方法はわかってる⁈」
「あ、うん!」
 薄桃色の髪のリニアーワルツの言葉に、駆け寄ってきたミラは慌てて頷く。薄桃色の髪のリニアーワルツは「それなら」とミラにそれを手渡した。
「これを起動させてごらんなさい」
 「そしてもし起動できたら私と戦いなさい」と薄桃色の髪のリニアーワルツはコノハナサクヤを肩に担いでディソーダーの方を見る。クモのような姿のディソーダーは、分離・合体を繰り返しては先ほど攻撃してきた二人のリニアーワルツ——インテとフォーを苦戦させていた。
「私は奴を足止めして時間稼ぎする」
 「その間に、あなたはジェミニを起動させるのよ‼」と薄桃色の髪のリニアーワルツはコノハナサクヤを構えなおして、ディソーダーの方へ走り出した。その場に取り残されたミラは近くに立つ平坂管理官の方を見やる。平坂管理官は「ま、やってみたら~?」と笑って、路地裏へ去っていった。
「……よし」
 ミラは頷いてしゃがみ込み、受け取ったケースの鍵を開ける。その中には、黄緑色の折りたたまれた状態のジェミニと、小さな箱が入っている。ミラは迷わず小箱を開けると、そこには銀色の指輪が収まっていた。
「これが、起動リング……」
 リニアーワルツがジェミニを起動させるために必要な起動キー……確か利き手の人差し指にはめて色が変わったら、ジェミニを起動できる状態になって戦えるようになる。
 ミラはラボで教わったことを思い返し、恐る恐る指輪を右手の人差し指にはめようとする。しかし辺りに轟音が響き、ミラはハッと顔を上げる。クモ型ディソーダーが近くの建物に光線を当てたのだ。薄桃色の髪のリニアーワルツはコノハナサクヤでディソーダーの脚部を切り落とそうとしているが、外皮が硬いのかあまり攻撃が効かない。インテやフォーもそのそばで援護するが、ディソーダーは相変わらず光線を吐き出しリニアーワルツを阻んでいる。

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LINkerWorld LINearWaltz / MIraculous-Ephemeral 20

「ジェミニなら、あるわ」
「えっ?」
 ミラはその言葉にポカンとする。薄桃色の髪のリニアーワルツは立ち上がり、耳に装着している通信機に手を当てた。
「こちらエフェメラル、大至急イワナガをこちらに寄越せないかしら?」
『おや、どういう風の吹き回しかい⁇』
「そんなことはいいから早く!」
「わたしはここにいるよ」
 ミラと薄桃色の髪のリニアーワルツが声のする方を見やると、通りの路地から大きな黒いケースを右手に提げた、男とも女ともつかない大人が現れる。薄桃色の髪のリニアーワルツは「平坂管理官」と駆け寄った。
「なんでそんなところから」
「君が迷子になっちゃったから探してたんだよ?」
「うっ」
 平坂、と呼ばれる人物はにやけるが、薄桃色の髪のリニアーワルツは気まずそうな顔をする。だが平坂管理官は「ほら」と薄桃色の髪のリニアーワルツに黒い大きなケースを差し出した。
「もしかしなくても、君、あの子にこれを起動させる気でいるでしょう」
 平坂管理官の言葉に、薄桃色の髪のリニアーワルツは静かに頷く。平坂管理官はにやりと笑った。
「もうペアを失いたくないから新しいペアはいらないって言ってたのに、まさかペア候補を見つけてくるなんてね」
「本当にあの子がこれを起動できるかなんてわからないわよ」
 「起動できたらペアにする、ただそれだけ」と薄桃色の髪のリニアーワルツはケースを受け取り、ミラに向かって「あなた!」と呼びかけた。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 19

「!」
 薄桃色の髪のリニアーワルツは慌てて背後を見やるが、すでに分離したディソーダーたちはクモの姿に合体しており、その姿で光線を放とうとしている。薄桃色の髪のリニアーワルツはそれを回避しようとする。だが、突然ディソーダーの右側から青と紫の光線が飛んできて、ディソーダーを横倒しにした。
 今のは、と薄桃色の髪のリニアーワルツが光線の発射された方に目を向けると、青髪のリニアーワルツと紫髪のリニアーワルツがジェミニの合体を解除している。薄桃色の髪のリニアーワルツは驚くが、そこへ「おーい‼」と聞き覚えのある声が耳に入った。
 薄桃色の髪のリニアーワルツがハッと我に返ると、黄緑色の髪のリニアーワルツが抱きつく。薄桃色の髪のリニアーワルツは驚いて身体を硬直させた。
「やっと見つけた~!」
 「探したんだよ⁈」と黄緑色の髪のリニアーワルツ——ミラは薄桃色の髪のリニアーワルツの顔を見て声を上げる。薄桃色の髪のリニアーワルツは「なんで……」と呟くが、ミラは「だって!」と続けた。
「きみのこと、心配だったんだから‼」
 その言葉に、薄桃色の髪のリニアーワルツは「えっ」と小さく呟く。ミラは気にせず「一人で苦しんでる人を放っとけないもん!」と笑顔を浮かべる。薄桃色の髪のリニアーワルツは「そんなこと……」と俯く。しかしミラは「そんなことじゃないよ!」と相手の両肩に手を置いた。
「きみ、ペアの話をしたらすごく苦しそうにしてたでしょう?」
 「それに一人で戦うなんて、無茶だよ!」とミラは薄桃色の髪のリニアーワルツの肩を揺する。薄桃色の髪のリニアーワルツはハッとしたように顔を上げた。ミラは続ける。
「だから、自分が、きみと一緒に戦う!」
 「ペアがいないからジェミニを持ってないけど……」とミラは苦笑いしたが、薄桃色の髪のリニアーワルツは不意に「いいや」とこぼした。

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創作のタネ(その2)

その1の続き。

D:Aの取り巻きの1人。Aに憧れていて、Aに気に入られたくて背伸びしまくった結果Aの友人になった。Aに心酔しており、Aのヤバさにはあまり気づいていない。Aと付き合いの長いBにちょっと嫉妬しているし、Aから目の敵にされているCのことは嫌いで、Aのご命令とあらばなんだってやってしまう。最終的にAを見捨てて逃げ出し、BやCの協力者になったり。
E:いわゆる第三勢力。Aのヤバさに気づいているが、そのヤバさ含めてなぜかAのことを心の底から気に入っており、隙あらば絡みに行っている。そのためAからはよく思われていないし、B以外のAの取り巻きからは嫌われている…が、マゾヒスト(?)なのでウハウハしている。Aのお気に入りであるBが羨ましいけど、別に嫉妬していないしAに近づくため積極的に接近しているし、Cにもなぜか興味を持って絡みまくっている。なに考えてるか本当にわからない奴。最終的にBやCに協力し、Dなど友人や周囲の人に見捨てられてズタボロになったAに近づき、共依存みたいな関係にしてしまう。

…走り書きと言ったのに、すごい分量になっちゃった。
でもまぁいいか。
(ちなみにここで自由に使っていい設定。自分は今すぐに設定を使う予定はないけど、使うとしたら少年マンガ的なバトル×百合みたいな感じになりそう…)

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創作のタネ(その1)

さっきNHKのテレビドラマをたまたまちょっと観てたんだけど、なんか自分の義務教育時代を思い出して胸クソ悪くなるようなコドモキャラが出てきてたんだよね。
でもここから創作のタネが閃いたので、走り書き程度に残しておく。

とりあえず登場人物は5人。

A:すごくなんでもできる人気者だが、恐ろしいことに友達を自分の所有物やペットのように思っており、無意識のうちに自分の思い通りになるよう誘導したり工作したりしている。もちろん自分の思い通りにならない奴は徹底的に貶める。ただのやべー奴だが、周囲は意外と気づいてない。最終的になんやかやで自滅するが、後述のEとともに行動することに。
B:Aと付き合いの長い友人であるが、自分が所有物扱いされていることに薄々気づいている。が、Aとは昔からの友人でBの親など周囲の人間はAのことを「とてもいい子」だと思っているし、下手なことをすれば後述のCのようにAにいじめられると思っているので、とりあえず愛想笑いしてる。最終的にAと決別し、後述のCとともに行動するようになる。主役を張るならコイツ。
C:友人があまりいない一匹狼で、周囲からだいぶ浮いている。Aやその周囲のようにやたらめたら群れている奴らに興味を持たないこともありAから目の敵にされていて、なにかにつけて陰口叩かれたりヒドい目に合わされたりしている…が、諸事情で鋼のメンタルを持っているためあまり傷ついていない。とりあえずAやその周囲のことは「愚かだなぁ」と思っている。なんやかやBとともに行動するようになる。

長いからその2に続く。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 25.ヴァンピレス ⑫

「ぼくの異能力…”ヴァンパイア”は”他者の記憶を奪い取る”能力だ」
つまり、きみやヴァンピレスとあまり変わらない、と逢賀さんは目を光らせるのをやめて続ける。
「だからきみは、ぼくのアシストをしてくれればそれで良いんだ」
最後に手を下すのは、ぼくだけで十分、と逢賀さんは前を見た。
「あの子…ヴァンピレスが異能力を発現させて、人々の記憶を奪うようになってから、ぼくはずっと罪悪感を抱いてきた」
ぼくの妹のせいで多くの人が困っているのを、見ていられなかったんだと逢賀さんは呟く。
「最初は説得で何とかしようって思ってたけど全然上手くいかなくて、もうほとんど諦めてた」
でも、きみ達…ネクロマンサー達の存在を知って、ぼくは希望を持つことができたんだ、と逢賀さんはネロの方を見やった。
「きみや、その仲間達みたいな強力な異能力者がいれば、きっと彼女を止められる」
だから、ぼくの手助けをしてほしい、と逢賀さんは言う。
「これ以上、彼女によって、記憶や異能力を失う人をなくすために」
そして、きみ達自身が、安心してこの街で暮らせるように…と逢賀さんはネロの目をじっと見た。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 18

「あの子、ここにいたの⁈」
 ミラがそう訊くと、フォーは「うん」と頷く。
「じゃ、じゃあ、追いかけなきゃ!」
 「どこに行ったの⁈」とミラはフォーに尋ねるが、ここでインテが「ちょっと待ってください」と間に入った。
「ミラ一人を行かせるなんて、ちょっと危ないんじゃ……」
「いや、ミラを一人で行かせるなんて言ってないよ?」
「えっ?」
 フォーの言葉に、インテはついポカンとする。フォーは「えへへへへ」と笑った。

 一方そのころ、薄桃色の髪のリニアーワルツはディソーダーの群れの中を走りながら、迫りくるディソーダーと戦っていた。ただでさえ不気味な見た目なのに、けばけばしい色合いが余計恐ろしく見える敵を薄桃色の髪のリニアーワルツは手に持つ刀型ジェミニ・コノハナサクヤで切り伏せ続けている。小型のディソーダーたちは悲鳴を上げながらコノハナサクヤによって両断されていった。
「;***+`*:#%&(+>=)‼」
 薄桃色の髪のリニアーワルツが次々とディソーダーを倒していくと、不意に前方からつんざくような雄叫びが響く。薄桃色の髪のリニアーワルツが顔を上げると、大型のクモのような形をしたディソーダーが飛びかかってくる。薄桃色の髪のリニアーワルツはコノハナサクヤを突くような体勢で構えて、ディソーダーに向かって駆け出した。
 しかしクモのようなディソーダーは、薄桃色の髪のリニアーワルツの目の前で翅のある甲虫のような姿にばらばらと分離して、薄桃色の髪のリニアーワルツの攻撃を避けてしまう。薄桃色の髪のリニアーワルツはハッとしたように目を見開いた。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 17

「誰だかわかんねーけど、まさか……」
 パッションがそう言いかけたとき、リニアーワルツたちの後方から「みんなーっ‼」という大きな声が響いた。パッションとグリッタが振り向くと、黄緑色の短髪のコドモ——ミラが走ってきている。
「えっミラ⁈」
 驚くパッションに対し、ミラは「大丈夫だった⁈」と尋ねる。パッションは「いやそんなことより……」と言いかけるが、ここで「ミラ」と落ち着いた声が飛んできた。ミラが声の主の方を見ると、ポセイドンを抱えたインテが駆け寄ってきている。
「どうしてここに来たんです⁇」
 「基地にいるようにと言ったのに……」とインテは心配そうな表情をする。ミラは「ごめん」と謝るが、「でもね」と続けた。
「これを落としてった子が心配になっちゃって」
 「それでいても立ってもいられなくて……」とミラは手の中のキーホルダーをインテに見せる。インテは呆れたように「ミラ……」と呟くが、それを遮るようにミラは「だけど」と口を開く。
「自分はあの子を放っとけないんだ」
 「だってあの子、ペアのことを訊いたら様子がおかしかったし……」とミラは手の中のキーホルダーに目を落とす。インテは「そんなこと言っても——」と言いかけるが、ここで「別にいいんじゃない?」という声がミラの背後から聞こえた。ミラが振り向くと、弩型ジェミニ・アンフィトリテを持った紫髪のリニアーワルツ・フォーことフォーチュネイトが微笑んでいた。
「ミラは、その子のことが心配なんでしょ?」
 「なら、追いかけなよ」とフォーは笑う。
「さっきの見たことないリニアーワルツ、きっとミラが拾ったキーホルダーの持ち主だろうし」
「えっ⁈」
 フォーの言葉に、ミラは思わず声を上げた。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 16

「ま、おれとしては戦えればどうでもいいんだけどよ!」
 「おもしれーことになりそうだし?」とパッションは目の前のディソーダーにエンキドゥを突き立てようとする。だが左側から光の矢が複数飛来し、ディソーダーに突き刺さった。
「⁈」
 急に自分の獲物を取られたパッションは、驚いて矢の飛んできた方を見る。パッションの視線の先にある建物の上からは、弓型ジェミニ・ギルガメッシュを持った金髪ボブカットのリニアーワルツ・グリッタことグリッタリングが飛び降りてきていた。
「ちょっとパッション‼」
 「戦えればどうでもいいとか言わないの!」とグリッタはパッションの服の襟首を掴む。パッションは「ちょ、ちょっと」と慌てるが、グリッタは「ちょっとじゃない!」と言い返す。
「前線都市でディソーダーなんて前代未聞なのよ⁈」
 「フツーに大ピンチなの、あたしのペアならわかるでしょぉ⁈」とグリッタはパッションの襟首を掴んだまま前後に揺さぶる。パッションは「落ち着け落ち着け」とグリッタを止めようとした。しかし不意に二人はなにかの気配を感じ取り、パッと顔を上げる。
 二人の目の前には、体長数メートルほどあるムカデのようなディソーダーが頭部をもたげていた。
「……ひぇっ」
 パッションとグリッタは小さく悲鳴を上げる。ディソーダーに潰される——と二人は青ざめるが、そこへ一つの人影が飛び込んできた。
 人影は近くの建物の上から飛び降りつつ、手に持つ刀のようなものでムカデ型ディソーダーに斬りかかる。ディソーダーは悲鳴を上げてのけぞり、そのまま地面に倒れた。
「……」
 人影は地上に着地すると、刀のようなものを一振りしてから背後を見る。そこにはケンカをしていたパッションとグリッタが呆然と立ち尽くしていた。周囲のリニアーワルツたちも、ポカンとした様子でその人物を見ている。薄桃色の長髪をなびかせたその人物は周囲の者たちを一瞥すると、次々と向かってくるディソーダーたちの方へ駆け出した。
「ねぇ、あの子って……」
 グリッタが恐る恐る口を開くと、パッションは「あ、あぁ……」と呟く。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 15

 前線都市内でディソーダーの出現が確認されてから暫く。ヘスぺリデスの商店街では派手な色をした体長数メートルほどのディソーダーが、周囲に大小さまざまなディソーダーを引き連れて暴れまわっていた。ディソーダーは口のような器官から光線を放って街を破壊しつつ、ヘスぺリデスの大通りを進んでいる。基地の避難指示によって街中には人影がなく、ディソーダーが侵攻する地鳴りのような音だけが響いていた。
 しかしディソーダーの群れが大通りの交差点にさしかかったとき、群れの横から光の矢や光弾が複数飛んでくる。突然の攻撃に小型のディソーダーは悲鳴を上げてひっくり返り、大型のディソーダーは動きを止めて光の矢や光弾が飛んできた方を見た。
 交差点の角の向こう、商店街の建物の屋根の上や道路上には、華やかな容姿にカラフルな衣装を着込んだコドモたち——リニアーワルツが、弓や銃器の形をした武器——ジェミニを構えて立っている。敵の出現に気づいたディソーダーたちは雄叫びのような声を上げて、リニアーワルツたちの立つ方へ方向転換した。
 しかしそんなディソーダーの目の前に、商店街の細い横道や建物の陰から刃物や鈍器の形をしたジェミニを持ったリニアーワルツたちが現れる。近接武器を持ったリニアーワルツたちは、群れの前方に固まる甲虫のような姿をしたディソーダーに飛びかかっていった。ディソーダーたちは口から光線を吐いたり攻撃を避けようとしたりしたが、次々とリニアーワルツたちに撃破されていく。そんな中で、青い長髪をバンスクリップでまとめたリニアーワルツ・インテことインテリジェントは、三叉矛型ジェミニ・ポセイドンを振り回して小型のディソーダーたちを串刺しにしていた。
「……それにしても、前線都市内でディソーダーが出るなんて、随分妙な話ですよ」
 「ねぇ?」とインテが近くで大剣型ジェミニ・エンキドゥを振り回すリニアーワルツ・パッションことパッショネイトに話しかけると、パッションは「そうだな!」とディソーダーを斬り捨てつつ返す。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 14

「だってそのキーホルダー落としてった子、リニアーワルツなんでしょ~」
 「ペアもいるみたいだし、きっと平気だよ~」とフォーはニコニコしながら続ける。それでもミラは不安げだったが、「なによりも」とインテは笑みを浮かべた。
「ミラは、それをその子に返すんでしょう?」
 「なら、ここで待っているのが正解だと思いますよ」とインテはミラの頭を撫でる。ミラは「……うん」と苦々しく頷いた。
「じゃ、おれたちも行くかね」
 ミラとインテ、フォーの会話を見てから「早くしねーとこの街が壊されちまう」と、パッションはグリッタの方を見やる。グリッタは「そうね」と返す。
「あたしたちペアで、この街を守りましょ!」
 そう言って、パッションとグリッタはラウンジを飛び出していく。
「では僕たちも」
 「行ってきます、ミラ」と言って、インテはミラの頭から手を離した。そしてフォーとともに、ラウンジを去っていく。
「……」
 再び自分一人になったラウンジで、ミラは再度ポケットからあのキーホルダーを取り出す。照明の光にかざすと、相変わらずきらきらしていた。
「あの子、大丈夫かな」
 一人でディソーダーを軽々と倒していたとはいえ、ペアの話をするとひどく苦しそうにしていたあのリニアーワルツ。
 本当に大丈夫だろうかという思いが、ミラの中をよぎる。
「やっぱり」
 ミラはそう呟いてソファーから立ち上がる。そして、キーホルダーを力強く握りしめて、ラウンジを飛び出していった。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 13

「なぁミラ、そのディソーダーが出たところってヘスぺリデスのどの辺だ?」
 「管理官たちに報告して、おれたちが……」とパッションがテーブルに身を乗り出したとき、不意にラウンジ内のスピーカーからサイレンが流れ始めた。
「⁈」
 リニアーワルツたちが思わず顔を上げると、ラウンジの出入口から背の高い女性……ウェスト管理官が飛び込んでくる。
「大変よ‼」
 「ヘスぺリデス内で、 ディソーダーの出現が確認されたわ‼」と管理官は大声を上げた。ミラは「実は今その話を……」と言いかけるが、ウェスト管理官は気にせず続ける。
「司令官は、ヘスぺリデス基地所属の全ペアの出撃を命令したわよ‼」
 「だから訓練終わりに悪いけど、あなたたちも出撃しなさい‼」とウェスト管理官は叫ぶと、そのままほかのリニアーワルツを呼びに行くのか廊下へ飛び出していった。ミラは管理官の言葉に思わず青ざめるが、パッションの「……行くか」という言葉を聞いて我に返る。仲間たちの方を見やると、四人は既にソファーから立ち上がったり、ラウンジの出入口の方に向かったりしていた。
「……みんな」
「大丈夫ですよ」
 言いかけるミラに対し、インテは優しく声をかける。
「僕たちは、いつも通り出撃するだけですから」
 「安心してください」とインテはミラの肩に手を置いた。ミラは「だけど……」とインテの顔を見上げる。
「このキーホルダー、あの子にまだ……」
「それもきっと大丈夫だと思うな~」
 ミラの言葉を遮るように、今度はフォーが口を開いた。

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LINkerWorld LINearWaltz / MIraculous-Ephemeral 12

「街中で落とし物を拾っちゃって」
 ミラの言葉にフォーは「落とし物か〜」と呟く。
「どんな落とし物⁇」
「えっ、あぁ……こういうの」
 ミラはズボンのポケットから、先ほどまで眺めていたキーホルダーを取り出してフォーに見せる。フォーは「へー」と頷いた。
「道端に落ちてたの?」
「あっ、いや、知らないリニアーワルツにぶつかったときに落としていって……」
 ミラがそう言いかけたとき、「えっなにそれ!」とパッションが近寄ってくる。ミラは思わずそちらに目を向けた。
「知らないリニアーワルツって……ミラのペア候補⁈」
「ちょっとパッション、そんなわけないでしょう」
「えーでも知らないリニアーワルツが来てるんだろ〜?」
パッションとパッションに続き近寄ってきたグリッタはそう言い合うが、ミラは「あっでも」と声を上げる。
「ペアがいるのかジェミニを使ってたよ⁇」
 その言葉に、その場にいるリニアーワルツたちは「えっ」と呟いた。ミラは少し不思議そうな顔をするが、グリッタは「それって……」とこぼす。
「ヘスペリデスの中にディソーダーが出たってこと⁇」
「あっ、まぁ、うん」
 ミラが驚いたように頷くと、グリッタは「マジ……?」と呆然とした。ミラは「そんなに驚く⁇」と首を傾げるが、「いやいや驚くとかそういうレベルじゃねーよ」とパッションが腰に両手を当てる。
「防壁に囲まれているこの前線都市にディソーダーが出るとか、かなりヤバい状態だぞ⁈」
 「一般人に被害が出るよ……」とパッションは呟いた。ミラは「確かに」とこぼす。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 11

「ミラにデリカシーのない発言はダメでしょ〜」
「ちょ、ちょっと待てグリッタ」
 「おれそこまで言ってな……」とリニアーワルツ・パッションはグリッタと呼ぶリニアーワルツから離れようとするが、グリッタはぐいとパッションの襟を引っ張る。
「他人は意外なところで傷つくものなの」
 グリッタがパッションを睨むと、パッションは「ひぇっ」と小さく悲鳴を上げた。
 その様子をミラは苦笑いしながら見ていたが、ふと右隣を見ると紫髪でツインお団子ヘアのリニアーワルツが座ってニマニマしていることに気づく。
「フォー⁇]
ミラが不思議そうに尋ねると、フォーと呼ばれたリニアーワルツは笑顔を崩さぬまま「ミラ」と口を開いた。
「なんかあった?」
「えっ?」
 「どうして急にそんな……」とミラは驚くが、「いつもの勘ですよ」と優しげな声が飛んでくる。ミラが声の主の方を見やると、青い長髪を金色のバンスクリップでまとめたリニアーワルツがミラの左隣に座ろうとしていた。
「フォーは昔から他者の心の機微に敏感ですから」
 「ね?」と青髪のリニアーワルツが訊くと、フォーは「うん」と頷く。
「そしてインテはそんなフォーを理解してくれる」
「そうですね」
 「ラボで造られたころから、僕たちはずっと一緒ですから」とインテと呼ばれたリニアーワルツは、いつの間にか目の前のテーブルの上に用意していたティーカップにティーポットの紅茶を注いだ。ミラはその様子を静かに見ていたが、「あっ、もちろんミラもずっと一緒ですからね?」とインテは思い出したように呟く。ミラは「それはわかってる」と笑った。
「……で、なにかあったんですか?」
 「管理官たちの立ち話を聞く限り、ウェスト管理官に怒られるようなことをしたみたいですが」とインテはティーカップを手に取ってミラに目を向ける。ミラは「ま、まぁ……」と苦々しく頷いた。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 10

 前線都市・ヘスペリデスの基地内にある、リニアーワルツの居住棟にて。
 リニアーワルツたちがくつろげるように家具が設えられたラウンジのソファーに座りながら、黄緑色の短髪のリニアーワルツ……ミラは退屈そうに足をばたつかせていた。先ほどウェスト管理官の付き添いで外出をしたのに、途中で管理官の元を離れてしまった上、予定していた帰宅時間を過ぎそうになってしまったので無理やり基地に連れ戻されたのである。せっかく外出したのに予定していた買い出しができずに基地に帰されたミラにとって、あまり面白くない状況だった。
「……結局、返せなかったなぁ」
 「これ」とミラはジャケットのポケットの中からキラキラしたキーホルダーを取り出す。外出したときに出会った、薄桃色の髪のリニアーワルツが落としていったキーホルダー……返すつもりだったのにと思いつつ、ミラはそれをラウンジの室内灯にかざして眺めていた。
「……たっだいま〜‼︎」
 突然の大きな声にミラが慌ててキーホルダーをズボンのポケットの中に隠すと、ラウンジの出入り口から色とりどりの髪色とファッションのコドモたち……ヘスペリデス基地所属のリニアーワルツたちが入ってくる。そのうち大きな声でただいまを言いながらラウンジに飛び込んできた短い赤髪のリニアーワルツは、ミラの姿を見ると「おっミラじゃねぇか」と明るく声をかけた。
「台所に行ってるんじゃないのか?」
「あぁ、それは……」
 ミラがそう言いかけると、赤髪のリニアーワルツは自身のジャケットの襟を後ろから掴まれる。「うぐっ」と間抜けな声を上げる赤髪のリニアーワルツに対し、「ちょっとパッション〜」と仲間の後ろ襟を掴む者……金髪をボブカットにしたリニアーワルツは笑顔を浮かべながら眉間にしわを寄せていた。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 9

「ってことは、きみ“ペア”がいるの⁈」
 その言葉に、薄桃色の髪の人物は目を見開く。ミラは気にせず「いいなぁー、自分はペアがまだ見つからなくてさ〜」と続けるが、目の前の人物が俯いていることに気づいてハッとする。
「あれ、だいじょ……」
 ミラがそう訊きながら相手の顔を覗き込もうとするが、相手は「来ないで!」と声を上げる。過呼吸になっている薄桃色の髪の人物を見てミラは「えっ」と驚くが、相手は胸に手を当てながら「なんでもない、なんでもないわ」と自らに言い聞かせるように呟いている。ミラは暫く困惑していたが、なにか声をかけようとしたときに薄桃色の髪の人物は路地の奥へと走り出してしまった。
「あっ……」
 「待って!」とミラは追いかけようとする。しかしそんなミラの背後から「見つけたわよ!」と聞き覚えのある声が響く。ミラが振り向くと、一緒に買い出しに出かけていたウェスト管理官が駆け寄ってきていた。
「もう急に走り出さないの‼︎」
 「あとで始末書書かされる私の身にもなりなさいよ!」とウェスト管理官はミラの腕を引っ掴むと、そのまま大通りの方へツカツカと歩き出す。「あちょっと……」とミラは言いかけるが、抵抗も虚しくそのまま引きずられていった。

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LINkerWorld LINearWaltz / MIraculous-Ephemeral 8

「ていうかきみ、この街じゃ見かけない顔だけどどこから来たの?」
「……」
「なんていうか、すごくかわいい服だねそれ」
「……」
「そういえば、さっきの武器、もしかして……」
「うるさい‼︎」
 ミラが背後から一方的に質問攻めにする中、薄桃色の髪の人物は急に立ち止まって叫んだ。その言葉にミラはびくりと身体を震わせるが、「……ごめん」と少しの沈黙ののち謝る。
「この前線都市で見ない顔だったから気になっちゃって」
 「嫌な気持ちにさせてたら……」とミラは言いかけるが、言い終える前に相手は振り向いた。
「どうして、私についてくるのよ」
 薄桃色の髪の人物は冷たい目をミラに向ける。ミラはその目に一瞬どきりとしたが、臆せず「いやだって……」と苦笑いした。
「さっき助けてもらっちゃったからありがとう言わなきゃって思ったし、それに……」
「感謝なら結構」
 ミラの言葉を遮るように相手は冷たく言い放つ。
「私はディソーダーがいたから義務として倒しただけよ」
 「別にあなたを助けようだなんて思ってない」と薄桃色の髪の人物はミラから目を逸らした。その言葉にミラは「えっじゃあもしかして……」と目を見開く。
「きみもリニアーワルツ⁈」
 その声に、薄桃色の髪の人物はびくりとした。ミラは気にせず「すごーい!」と飛び跳ねる。
「だって、ディソーダーを倒せたってことはきみはリニアーワルツで、さっき持ってたのはジェミニってことでしょう⁈」
 「カッコいい〜!」とミラは目を輝かせた。相手はその姿にポカンとするが、ミラは気にせず「あ」と呟く。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 7

「ぜ、前線都市って壁にちゃんと囲まれてるはずだよね……?」
 「なんで都市の外にいるディソーダーがここに……⁈」と、ミラはにじり寄る敵から逃れるため立とうとする。しかし驚きと恐怖の余りうまく立ち上がれず、後ずさるだけで限界だった。それでもディソーダーたちは容赦なく迫り、ミラ自身も後ずさるうちに建物の壁にぶつかってしまう。
 このままでは自分の身が危ない……そうミラは思い、思わず手の中のキーホルダーを握りしめた。そのときだった。
「€;$+|”|‘=・,‼︎」
 不意に目の前に人影が飛び込んできて、手に持つ刀のようなもので目の前のディソーダーを切り伏せる。ディソーダーは不快な悲鳴を上げて真っ二つになった。それとともに周囲のディソーダーたちが目の前の人物に飛びかかってくるが、その人物はディソーダーたちを避けたり、手に持つ刀のようなものでディソーダーたちを両断していく。ミラが呆然と見ている間に、目の前の人物はディソーダーたちを全て倒してしまった。
「……」
 ディソーダーを軽々と斬り捨てた人物は、ちらと座り込むミラの方を見やる。長い薄桃色の髪の一部を桜の形をした髪飾りで結わき、桜色の官帽と軍服のようなワンピースを着たその姿は、ミラが少し前に街中でぶつかった人物と一致していた。
 ミラはそれに気づくと「あっもしかして!」と声を上げる。
「さっきお店の前でぶつかった……」
 ミラがそう言いかけると、相手はミラに背を向けてその場をあとにしようとした。ミラは「ちょっと待って!」と立ち上がる。
「どこに行くのー?」
「あなたには関係ない」
 薄桃色の髪の人物は地面に投げ捨てていたと思しき革製ケースを拾うと、手に持つ刀のようなものをしまった。ミラはその中身をつい覗き込もうとするが、相手はミラの興味を吹き飛ばすように音を立ててケースを閉じる。そしてまたツカツカと歩き出した。
 ミラは思わずその人物を追いかける。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 6

「それにしてもここ……ちょっと怖いなぁ」
 路地裏を歩きつつミラはそう言って辺りを見回す。昼間とはいえ、ひと気がなくしんと静まり返っている小道は、普段表通りしか歩かないようなミラにとって不気味に見えた。
「……」
 ミラはつい立ち止まって、手の中にあるキーホルダーに目を落とす。いくら路地裏が怖くても、先ほどぶつかった人物が落としたキーホルダーを届けなければならない……
 「だからあの子を探さなきゃ」とミラが思い直して顔を上げたとき、目の前の道の角になにかが隠れたような気がした。
「?」
 「なんだろう」と思いつつミラは角の建物に近づく。さっきの子かなと思いつつ角の向こうを覗き込もうとすると、陰からなにかが飛び出してきた。
「‼︎」
 ミラは飛び出してきた“なにか”を避けようとするが、腰を抜かして尻もちをついてしまう。その“なにか”……けばけばしい色合いで多脚の大型節足動物のような生物は、地面の上をガサガサと動く。ミラがつい辺りを見回すと、周囲の建物の壁や地面には体長1メートルほどの節足動物のような生き物が複数うごめいていた。
「こ、これって、ディソーダー⁈」
 自身の周りを囲む奇妙な生き物たちを見て、ミラはつい声を上げる。まだ戦場に出たことのないミラにとっては初めて実際に見るが、自身が生み出され戦闘訓練を受けた“ラボ”の資料や仮想訓練シミュレータの映像で何度もその姿を見せつけられてきたため多少の見覚えはあった。禍々しい見た目をした、奇怪な存在……異界における人類の敵・ディソーダーだ。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 5

 暫くの間その場に微妙な沈黙が流れたが、やがてウェスト管理官が「行くぞ」とミラに声をかける。ミラは「うん……」と再度店内に入ろうとするウェスト管理官のあとに続こうとするが、不意に踏み出した足元になにかが当たる感覚がした。
「?」
 ミラが足元を見ると、そこにはきらきらした桃色の花のキーホルダーが落ちていた。
「これって」
 ミラが思わず拾い上げてそう呟くと、ウェスト管理官が「どうした?」と振り向く。ミラはそれに答えずじっとつまみ上げたキーホルダーを見つめていたが、やがて「ウェスト管理官」と口を開いた。
「ちょっと、行ってきてもいい⁇」
 ウェスト管理官は「は?」と呟いた。

 前線都市・ヘスペリデスの路地裏。ここを1人の小柄なコドモが歩いている。黄緑色の髪のその人物……ミラキュラスことミラは、手の中のきらきらしたキーホルダーを見て「どこ行ったんだろ、あの子」と呟いた。
 というのも、ミラは先ほど街中で不思議な人物とぶつかったときに、ぶつかった相手が落としていったと思われるキーホルダーを拾ったからである。とても綺麗なものだった上、もしかしたら相手の大切なものかもしれないと考えたミラは、監視役のウェスト管理官の制止を振り切ってぶつかった相手を追いかけているのだった。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 4

「ちょ、ちょっとミラキュラス!」
 「なにやってるのよ……」とウェスト管理官は転んでしまったミラに対してツカツカと歩み寄る。ミラは「ご、ごめん……」と苦笑いするが、ウェスト管理官は「謝るならぶつかった方にしなさい」とミラの腕を引っ張り立たせた。そのときになって、初めてミラはぶつかった相手を見る。
 その人物の姿は、どこか奇妙なものだった。
 というのも、薄い桃色の長髪の一部を桜の形をした髪飾りで結わいており、桜色の官帽を被って帽子と同色の軍服のようなワンピースを着た、随分と華のある容貌をしていたからだ。ついでに背丈もそれなりにある上、革と思しき素材でできたなにかのケースを持っていて、このヘスペリデスの街中ではミラと同じくらい目立っていた。
「……」
 ミラとぶつかった桃色の髪の人物はすでに立ち上がっており、ワンピースの裾を、汚れを落とすように少しはたいている。ミラは相手の華やかな容姿にわずかな間見とれてしまったが、相手がその視線に気づいて訝しげな目を向けたことでハッと我に返った。
「あっ、さっきはぶつかってごめんなさい」
 「どこか痛くなかった?」とミラは付け足すが、相手は「別に」と目を逸らす。
「そっか」
 「ならよかった」とミラは言いかけるが、ミラが言い終える前に相手はツカツカと先ほど進んでいた方向に向けて歩き出した。「あっ、ちょっと……」とミラはつい呼び止めようとするが、早歩きする相手はあっという間に通りの横の細い道に入って見えなくなってしまった。ミラはポカンとした様子で言葉を失う。

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LINkerWorld LINearWaltz / Miraculous-Ephemeral 3

「私が通行人の道案内をしている隙に、勝手に前へ進むんじゃない」
 「トラブルにでも巻き込まれたらどうするんだ」と厳しい表情で言うウェスト管理官に対し、ミラは「えーいいじゃーん」と笑う。だがウェスト管理官はますます厳しい顔をした。
「リニアーワルツはあくまで異界開発機構が保有する、対ディソーダー戦のための戦力なんだ」
 「だから前線都市内で行動する際は、管理官の監視の下でしか行動できないと……」とウェスト管理官は言いかけるが、ミラは「えー厳しい〜」と口を尖らせる。
「自分はペアがいないから戦力外なのにー?」
「こういうときにその話を持ち出すんじゃない」
「そんな〜」
 ウェスト管理官に諫められて、ミラはついがっかりする。そんなミラを見ても「お前が勝手な行動をすれば、私も処分の対象になりかねないからな」と冷たいことをウェスト管理官は言い、ミラに「ほら、突っ立ってないで」と声をかけた。
「訓練中の仲間たちのために焼き菓子を作るつもりでいたんだろう?」
 「店にさっさと入るんだ」と管理官はミラの肩に手を置いて、店内へ入ろうとする。ミラも「うん」と頷いてウェスト管理官に続こうとした。
 しかし急に歩道を通りに沿って走ってきた人物にぶつかりそうになってしまう。ミラは相手を避けようとしてよろけて尻もちをつき、相手も前方へ転んでしまった。