ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 22.キリン ㉘
「良かったな、姉ちゃんの勇姿を見られて」
師郎がそう言って琳くんの肩を叩くと、琳くんは照れくさそうにはにかんだ。
それを見てふと、師郎はこう尋ねる。
「…それにしても、お前さん、あの時異能力が発現しただろ」
その言葉に彼はあ、そうですねとうなずく。
2人に近付くわたし達も、そういえばと足を止めた。
「せっかくだから、お前さんの”もう1つの名前”、教えてもらおうか?」
師郎がそう聞くと、琳くんはほんの一瞬瞳を薄黄緑色に光らせた。
「…ぼくのもう1つの名前は”キリン”です」
異能力は”周囲の人間の感情を読み取る”能力、と彼は答えた。
師郎はなるほどな、と腕を組んだ。
「…あ、次で最後の曲だってよ」
不意にネロがイベントスペースのステージとして区切られているエリアを指し示し言う。
おっそうか、と師郎は言うと、琳くんと共にステージの方へ向き直る。
わたし、ネロ、耀平、黎もステージの方へ近付くと、ZIRCONのフリーライブの最後の曲を楽しむ事にした。
〈22.キリン おわり〉