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復讐代行〜第10話 順調〜

“こんなに上手くいっていいのだろうか”
親にも同級生にも否定されてきた私にとってはこんなの初めての経験で、にやけるのを精一杯堪える。
「すみません!遅くなりました!」
“私”が教室に駆け込んでくる。
髪は乱れ、制服も着崩れとは違う乱れ方をしたその姿はさながら激昂した後といった感じだ。
“なるほどよくできている。ならばこれに合わせて”
「あーあー、大丈夫か?闇子ちゃん、何があった」
そう言って席を立ち、駆け寄ろうとする。
そして同時に2人に目配せをする。
大切なのはただ目立たせるのではなく、喪黒闇子が復讐する可能性があることをを強く植え付けることである。
「こ、これは酷い…」
三文芝居を演じる桐谷青路を演じる。
言っててもパニックになりそうな状況だ。
「先生!ちょっと3人で保健室まで運びます!」
小橋は教師を煽るように教室を出た。
「大丈夫だから!1人でいい!」
“私”の方も状況と狙いがわかったようであえて抵抗する
「サボるのに丁度いいだろうが、陰キャブスが口答えしてんじゃねーよ」
小橋は“私”の口元を掴む。
「ひ…ひひゃい…」
「顎を細く見せてもブスはブスだな」
執拗なまでの攻撃、なんなら悪口の勢いは増していた。
「一応、形式的には保健室まで連れてくぞ」
橘は面倒くさそうに会話を区切る。
「それにしても青路、お前一体何を」
そして俺に話を振った。
“なるほど、大人しくついて来たのはそれが狙いか”
2人は同じことを察し、目配せをする。
「なぁに、ただ罰告、つまりは嘘だったことを責めてきたから言ってやっただけさ、外見も中身もブスなお前が告られるはずないだろって」
言っていて涙は出なかった。何せ事実、いや、本音だったからだ。なのに、なぜか目の前の“私”は泣いていた。
“いやいや、なんで?なんでお前が…あぁ、演技か、いやそれにしては上手すぎやしないか?”
「あぁもう!分かったらこれ以上関わるな、いいなっ!」
小橋は居づらくなったのか、早く切り上げたそうだった。
しかしこのままでは復讐の理由はできても、復讐の機会が皆無だ。
「そこまで言ってやるなよ、元はと言えば俺らのノリのせいだ。今度何か奢ってやるよ」
橘…全てにおいて完璧すぎる…

to be continued…

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復讐代行〜第9話 始動〜

屋上に取り残された俺、もとい私は
その場に座り込み、数秒考えた。
“さてと…目立つって言ってもどうするか…”
あれこれと案は出て来るがどれも『いじめ』を連想するものばかりで想像するだけで吐き気がしてしまった。
「ひとまず、髪でも振り乱して遅れて行けば御の字だろ」
そう言ってゆっくりと腰を上げ歩き出した。
その頃教室では
「おい、青路、どこ行ってたんだよ」
「悪いな、少し朝から体調が悪くて屋上で休んでた」
屋上から来たことを見られていても大丈夫な嘘をつく
「あれ?屋上ってことは青路、あの陰キャにも会ったのか」
「え?あぁ闇子ちゃんか、うん、会ったよ」
隠せと言われたがここでわざとらしい嘘をつく方が疑われる気がして普通に答えた。
「朝のことといい、青路、あの時何があったんだ?」
「んー、秘密かな」
今度はわざとらしく誤魔化した。
たとえどんなに小さなことであってもあの場でのことを知られる訳にはいかなかった。
「かなって…お前そんなキャラじゃないだろ」
「可愛く誤魔化したって無駄だからな!」
そう言いながらも2人とも笑っていた。
「ほら、授業始めるぞ」
教師が入ってくる。当然闇子はまだ教室にはいない。
「あれ?青路、あの陰キャとあってたんだろ?まだ来てなくね?」
「青路、まさかお前…」
2人は予想以上にあっさりと
『桐谷青路が喪黒闇子に何かをした』
というイメージを浮かべてくれた。
しかも幸いなのは私がまだ何もしていないことだ。
「そんなに酷くはしなかったつもりなんだけどなぁ」
ここでもわざとらしくそのイメージに乗ってやる。
しかし今回はみんな信じるだろう。
これでいい、計画は怖いほどスムーズだ。

to be continued…

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復讐代行〜第8話 遅刻〜

「優しいとしたら?」
「俺の体に対してだ!お前、俺の体で何をメソメソしてくれてるんだよ、なんか気持ち悪いわ!」
言っていて恥ずかしくなって思いっきり顔を背けた。
「あ…あんたの体が悪いんでしょ!私こんなんで泣くような女じゃないもん!」
「女って言うな!パニックになる!」
「私は女だもん!なんなら明日女の服きてやろうか!」
まるで友達かのようにテンポよく言い合いが始まってしまった。
「あぁ!もう!なんでお前とこんな楽しく話さなきゃいけないんだよ!俺とお前はあくまでも体を入れ替えた、というより体を入れ替えられただけなんだぞ!」
むず痒くなったのともしも他人に見られたらという不安から突っぱねたくて仕方なかった。
「…もしかして?意識しちゃってる?しちゃってるんだ!自分の体にー!」
「気色悪いこと言うなー!」
俺が言い返した瞬間にとてもタイミングよく予鈴が鳴った。
「まずい、授業遅れる!」
駆け出して1歩目で気がついた。
「お前、先帰れ…俺が遅れる分には目立つという目的のためにもなるが、お前が俺と会ってて遅れたなんて知れたら計画はオジャンだ」
「わかった!じゃ、お先に!」
足を止めることも無く“俺”は走っていった。
その抵抗の無さと俺の体が明らかな女の子走りしている姿に改めて現実を感じた。
「少しは遠慮しろよ」

to be continued…
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前回の話数間違ってましたね
失礼しました。

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復讐代行〜第6話 進歩〜

「とにかく目立って欲しいの、私たちが入れ替わってるなんて誰も気づかないし思いつくはずもない、だから私にあいつらの目を引き付けて欲しい、そしてできるなら奴らの弱みになりそうなこと、この際、いじめの決定的証拠でもなんでも構わないわ」
「とにかく目立てって、ここまでは用意周到だったのにここだけ急に人任せだな」
ここまで惹き込まれていた自分が情けなく感じられた。
「しょうがないでしょ!自分なんてどうなったっていいっていうメンタルで考えてたんだから!」
さっきまでの毅然とした態度から一転普通の女の子のような甘え様だ。とはいえ、自分の姿でやっていることがどうしても気になってせせら笑うことすら叶わない。
なんとももどかしい…というか気持ち悪い。
「はぁ、まぁ俺のやることはわかったよ、どちらにせよお互いのことを知らなければこの計画は成功しない。下手なバレ方をして面倒なことになるのも避けたいから、お前のことを一通り教えろ、学校での振る舞いはもちろん家の事、家での会話、部屋の使い方、その他諸々だ」
理想やら革命やらという輝かしい言葉に失望した途端に冷静になって必要なことが次々に思いついた。
「やっぱり話して正解だった、私だけじゃ私を大切にできない…だからあなたの…他人の体なら、きっとまだ生きたいって思えるって…」
“俺”は泣きそうな顔だった。
「でも出来なかった…結局私は私のことが嫌いで!自分じゃない誰かになりたくて!自分の体を誰かに押し付けたかっ…」
自分でも何故かわからなかった、しかし俺、もとい私の体は“俺”の体を抱きしめていた。
“何をしている…?俺の意思?違う…体が…勝手に…”
「何?あなた、そんなに優しかったっけ?」
「勘違いするな、俺じゃない、優しいとしたら…」
お前だ、という言葉は出す前に飲み込んだ。
言ってしまったら関係が変な方向に行ってしまう
そんな気がしてならなかった。

to be continued…

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復讐代行〜第6話 真歩〜

「どういうことだよ!俺しかいないって!」
「あんたは人の話を聞かないね、言ったでしょ?誰も下克上を考えないことって!そのためには野心溢れる奴らは根こそぎ淘汰しなきゃならない、橘や小橋じゃ女子辺りに新たな火種を産みかねない、その点あんたはそういう火種になりそうな取り巻きがいないから」
絶妙に貶されてはいるが納得できた。
いつか歴史か何かで聞いたフレーズ
“流血、闘争を伴わない戦争”
矛盾するようだが、“俺”の革命はまさにそんな感じだ。
「橘、小橋を黙らせてあなたがトップになり、解放を宣言する。それが最も美しい」
「お前の理想はまぁわかった、それで俺にわざわざそれを話したのはなんでだ?今のところ、俺、正しくは今の喪黒闇子がすることはないようだが」
その切り返しに“俺”は少し驚き、そして笑った。
漫画によくある余裕を振りかざすアレだ。非常に気に食わなかった。
「何がおかしい」
「いや、まさかあなたがこんなにノリ気になってくれるとは思ってなかったからさ」
言われて初めて気がついた。2人に復讐をするということに対しての反対意見がいつの間にか通り過ぎていることに。気づきはしたがもはやどうだってよかった。この入れ替わりだってきっと復讐のひとつなのだろう、こうして深く関わってしまった以上は俺が、喪黒闇子としてこの復讐劇に幕を降ろすのも悪くはない。
どこかそう開き直った。
「別に同情したわけでもないし、お前のとばっちりを喰らうのもごめんだ」
「じゃあどうして?」
「悪くない話だからだ」
「嬉しいよ、わかってくれて」
“あなたも復讐の対象だってこと忘れてくれて”
「改めて俺は何をすればいい、ただ漠然と生きろというわけじゃないだろう、そもそもお前らしい生き方なんて知らないしな」
「そうね、なら頼まれてくれるかしら」


to be continued…

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復讐代行〜第5話 真意〜

「復讐を代行?どういうつもりだ?俺はそんなもの望んでないし、矢面に立つのはまっぴらごめんだ」
「別に逆恨みの矢面にするつもりじゃないわ、それにそんな悪い話でもない」
「いや、今のところ怪しさしかない、この状況含めて」
「まぁとりあえず人の話を聞きなさい、私達のクラスにヒエラルキーがあるのはあなたもご存知でしょ?あれのせいで私のようにレッテルを貼られた人間は『陽キャに遊んでもらえる』という立場で“イジり”を受け入れなければならないのが現状。かと言ってヒエラルキーを崩すだけの力もなければ改革を起こすだけの人数を集めることすら叶わない」
まるで小さい政党の演説を聞いている気分だった
「しみったれた言い訳だな、何が言いたい?」
思わず口を挟んでしまった。
「結果、“陽キャ”にとって都合のいい現状に泣き寝入りすることしかできないでいる。」
“俺”、もとい闇子は語気を荒らげて言い切った。
「そこで内部崩壊を狙って俺の体に目をつけた…」
「順序が若干違うけどね」
「え?」
「あの日、あなたが罰告をすることになったことを知って私はこの復讐を決行することにした。あなたとなら私の復讐を、理想を成し遂げられる!そう思った!」
(勝手に)ヒートアップした熱量を持った目が俺の方に向いた。その迫力に一瞬たじろいたが、平静を装い見つめ返した。
「理想?また随分飛躍したな」
“元々飛躍してるのに”という言葉は何故か飲み込んでしまった。
「飛躍?どこが、まさか私が単純な恨みで復讐しようとしてるとでも思ったの?」
違和感が何か形を結んだ気がした。
「理想のための復讐…」
「そうよ!」
完全に“俺”のペースになっていた。
「このヒエラルキーを崩壊させるにはトップがその解放を宣言すること、そしてそこに誰も下克上を望まないことのふたつが揃わなきゃいけない。そのためには今のような安定したトップが必要、」
「なら俺でなく、橘を狙う…いや、実質“陰キャ”をイジっているのは小橋か…」
いつしか俺も積極的に意見を出すようになっていた。
「あんたバカなの?だからあんたしかいないんでしょ?」
「はぁ?」

to be continued…

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復讐代行〜第4話 真実〜

「まさかそっちから呼んでくれるなんて、よっぽど私のことが好きなのね」
「まぁ、俺たちは体と中身を入れ替えた間柄だからね」
“俺”は今大事なことをさも何事もないようにサラッと言った。それ故にその事に気づくのに時間を要した。
「入れ替えた!?」
「あれ?まだ気づいてなかった?」
驚いた顔を面白がっているようだった。
「ほんとだ、振り回されてる私の顔、最高に面白い」
俺が『入れ替わり』に混乱していることがそんなに面白いか、しかも自分の顔で言われると何もかも見透かされているようで…経験のない苛立ちを覚えていた。
「なんてね、どう?イラッと来たでしょ、私の体で味わう苦しみ、私の視点で見るいつもの景色は」
煽っていた目は急に共感を求めるような目に変わった。
「イラッと来るも何も、色々パニック過ぎて頭が追いつかねーから、だから教えろ、一体何がどうなってんだ」
半分は“俺”にのせられないための演技だが、もう半分は本音から出た言葉だ。もう何が何だかわからない。
「教えるも何もこれが現実ってだけなんだけどなぁ、要はあなたが罰告することを知って、あなたと入れ替わることを決めた。それだけ」
「それだけって!」
俺はピシャリと閉じられた真実への扉を強くノックするように“俺”に怒鳴りつけた。
「要は元に戻る方法が知りたいんでしょ?それなら生憎だけど今すぐは無理、私がしたくないっていうのもそうだけど物理的に無理」
聞きたかったことではあったが内容は聞きたかったようなものではなかった。もっとなにか条件とかを提示してくるとばかり踏んでいた。
「…わかったよ…けどせめて次のチャンスには変われよ」
苦し紛れだったが必要なことだ。
「なら私の復讐に協力してね、次のチャンスが早く来るように」
いよいよ“俺”が何を言っているのかわからなくなってきた。次のチャンスが早く…?
「どういうことだ?」
「興味を持ってくれたみたいだね」
「いや、興味も何も必要らしいからな」
「あなたに、いえ、“あなたの体”に私の復讐を代行させてあげる。」

to be continued…

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復讐代行〜第3話 学校〜

「おい!どうなってんだ!てめぇ、一体誰なんだよ!」
思わず“俺”の胸ぐらを掴んでしまった。
「おいおい、陰キャが青路に何の用だよ!」
近くにいた小橋健太郎が嘲るように俺を蹴り飛ばす。
「痛…何すんだよ!健!」
「あぁ?クソ陰キャが気安く名前で呼んでんじゃねーよ」
今の姿のことも忘れて思わずいつもの名前で呼んでしまった。
「あ、ごめん…」
「そういうとこがキモいんだよお前!」
いつも見てきた健太郎の顔がこんなにも怖く感じるものだったのかと改めて置かれた状況に困惑する。
「はっ、ちょっと責めたらすぐこれだよ!陰キャとのコミュニケーションは難しいなぁ!」
俺、いや私が困惑した隙をつくように健太郎は煽り立ててくる。これでこちらが殴りかかりでもしたら完全にアウトである。だからといって黙ってる訳には…
「まぁまぁ、その辺にしておいてやれよ」
教室に現れたのは橘蓮だった。彼もまたいつも一緒にいたメンバーだったが今は輝くヒーローにすら見えた。
「蓮もこう言ってるんだからさ、“闇子ちゃん”を攻撃すんのはやめてあげようよ、元はと言えば俺の“罰告”が原因なんだろうからさ、でしょ?闇子ちゃん?」
彼の言葉に続いて“俺”が健太郎を制した。しかも何やら言いたげな表情だ。
「う…うん…」
「まぁなんだ、悪かったな喪黒さん」
「え?あぁ…うん」
もはや状況への混乱と“俺”の表情に何も頭に入らず、生返事が精一杯だった。
そうして授業中は慣れない席、慣れない道具に四苦八苦しながらどうにかやり過ごした。
昼休み
「闇子ちゃん、昼一緒に食べない?」
“俺”から声をかけてきた。
「何の用だ、こないだの“罰告”の続きか?」
用があるのは明らかに私の方だったが、周囲の目もあったため“俺”は俺らしく“闇子”は闇子らしくなるように意識して返答した。
「それもいいね、でももっと大事な…」
そっとメモを私の目の前に見せてきた。
『体の入れ替わり』
その言葉に思わず反応してしまう。
「気に入ってもらえたみたいだね、また屋上でいいかな」
「わかった」
もはやそう言う以外の選択肢はなかった。
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露骨な表現を含みます。
苦手な人は見るのを避けてください。

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復讐代行〜第2話 現実〜

「あなたは学校の屋上で桐谷さんと倒れているのを発見され3時間ほど眠り続けていたんです。」
もはやどんな言葉も雑音にしか感じられず、内容は微塵も入って来なかった。
“だって…俺はあの時…白い光に包まれて…”
しかしその光のあとの記憶がまったくなかった。
そうやって回想するのを医者と看護師は待っているようだったが、その沈黙を突き破るように喪黒の母が病室に乱入する。
「闇子!なんで人様に迷惑かけるの!」
問答無用の怒号が飛んだ。
わかりやすい恐怖を感じてるわけではないがひたすらに理不尽に晒されるのもここまでくると新手の悪夢である。
「まぁまぁ、お母さん、娘さんもおそらく倒れた衝撃で記憶が混濁しているのでしょうし、ここはひとつ我々にお任せいただけないでしょうか」
自分がその怒号の対象者であることすら忘れて完全な他人のヒステリーを見ている気分で、医者の対応に感心していた。
しかしその瞬間に当事者に引き戻される。
「すみません、先生、あんたも!頭下げなさい!」
「っつ…」
頭を捕まれ起き上がったばかりの体が強く曲げられた。
どうにかその場は収まる形に収まり、
その後俺、もとい、私は脳への影響の懸念からMRIなどの検査を受けて、1泊だけ入院し翌日、あのヒステリー母に連れられる形で退院した。
自分が別人になっているというこの状況は到底受け入れられるものではなかった、それでも、形はどうあれ生きられただけでも良かったと思うことにすることでどうにかやり過ごした…つもりだった。
しかし、次の日学校に行くとそこには
いつもと変わらない生活を送る俺の姿があった。
“あれは…一体…誰なんだ?”

to be continued…

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復讐代行 設定

喪黒闇子
県立TT北高校の2年生。2年A組
幼い頃に両親が離婚してからネグレクト気味の母と暮らしている。
ある時期以来クラスでは「陰キャ」と呼ばれ、クラスのヒエラルキーを強くコンプレックスに感じている。

桐谷青路
クラスメート
小学生の頃に「陰キャ」と呼ばれていじめられて以来いじめ、仲間はずれに対して強い恐怖を感じている。
高校デビューでどうにか陰キャ脱却はできたもののその恐怖は拭えず、陽キャのグループと少し無理しながら一緒にいる。

橘蓮
クラスメート
ずっと「陽キャ」で居続けるカリスマ的存在でクラスのヒエラルキートップ。
クラスのまとめ役もこなし、いじる時とそうでない時の使い分けもはっきりしていて信用も厚い。だが、そこにはただならぬ覚悟があり少し残酷な1面も?

小橋健太郎
クラスメート
橘蓮の幼馴染で同じくクラスのヒエラルキートップ
橘と違うのはカリスマでないこと。歪んだ正義感を持ち、それ故に「陰キャ」に対して嫌悪感を持っている

三浦祐介
県立TT北高校2年B組
桐谷青路の幼馴染で「陰キャ」というものに対して理解があるが揉め事が苦手なため、いじめに対して強くは出れていない。それでも陰ながらにサポートをしている。
(桐谷青路が立ち直ったのも彼のおかげ)

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復讐代行 ~第1話 異変~

目が覚めるとそこには見知らぬ天井が広がっていた。
どうやら死なずに済んだようだ。
「あ、目が覚めたんですね、喪黒さん」
そう言って看護師が歩み寄る。どうやらここは病院らしい。それにしてもよくある展開だ、記憶喪失モノだと大体ここから…
「自分の名前、言えますか?」
ほら来た、しかし幸か不幸か僕の記憶は鬱陶しいほど鮮明だった。
「桐谷青路です」
問題なく答えられた。
「…」
しかし看護師はどこか困惑した表情だ。
なぜだ?何も間違っていないはずだ、それとも上手く発音できていなかったのか?
「桐谷青路!20XX年5月N日生まれ!なんなら住所だって言えるよ!」
長めに喋ったが反響して帰ってくる言葉に発音のおかしな点は見受けられない…
でも、そろそろ気がついていた。
なんだ…?この違和感…
少し体を起こして感じる胸元の重み、
でもこれは気絶明けで体が慣れていないだけだと言い聞かせることができた。
男の声が…聞こえない…
こればかりは言い訳が出来なかった。
気絶の影響で声が出づらいなら喉の異変でわかるし、何より発音に問題がないことからも異変がないのは明らかだった。
そんな自問自答の間に病室に医者と思しき白衣の男が入って来ていた。看護師がその医者と話している内容までは聞こえなかったが、何やら不思議そうな顔でこちらを見ていることだけはひしひしと感じられた。
「担当医の福原です、もう一度お名前を言って頂けますか?」
「だから!桐谷青路!記憶には何の異常もないんだってば!何なんだよさっきからさ!」
「あなたの名前は喪黒闇子なんです」
俺は全ての辻褄が合うその情報にただただ目を丸くすることしか出来なかった。

to be continued…

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小説的鏡

これは高校の頃、ある日の話

次の倫理の授業で「アイデンティティの確立」というテーマでディベートを行うことになった。
それに先だってヒントとして
「他者は自分を映す鏡だ」
と教師は言った。
「自分は他者を映す、他者は自分を映す」
そういうことらしい…

課題とはいえ、家に帰ってもなかなかその言葉が頭から離れなかった。
だって理解が出来なかったから…
他人は何を考えられるかわかったものじゃない…
いつ自分を攻撃してくるかわからない…
他者という言葉にそう怯えることしかできない自分も嫌で仕方なかった。
考えることをやめたかったけど課題だから丸っきり考えるのを辞めるわけにもいかず考えはグルグルと同じような所をめぐり始めた。

ピコンッ

そんな時にインスタの通知がなった。
ストーリーがいい加減溜まってきたらしい、
さっさと見ろという例の通知だ。
課題に追われていたとはいえ久しぶりにこんな通知に出会った。それでも見る余裕はないのですぐにスマホの電源を切った。

その一瞬、スマホの黒い画面から目が離せなくなった。

電源を切ったスマホは鏡同然だ…
自分がよく打つ文字の形に指紋がベッタリと付き
上部には醜い自分の顔が映る。
スマホがいつもレンズとフィルターを通して自分を美化してくれていたことに改めて気づいた。
美化された写真にいいねがついていく様は
この写真が自分の現実から離れていっていることをいつも雄弁に伝える。
所詮他人は他人でしかない
私の1面しか見てないけど褒めたり貶したりする
けどそれでいいんだ…
他人は歪んだ鏡だ
その歪みは自分を美しくも醜くも映す
スマホよりもよっぽど人間らしい
でもそこに誰の意思もない
だから私は集団の中で私でいられる

初めてわかった
これがアイデンティティなんだ!

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次の倫理の授業はこんなみんなの承認欲求と自己嫌悪がおぞましく渦巻いたディベートとなり、私がポエムを始めるきっかけになったのはまた別のお話…

初めて書いたポエムのアレンジです
良ければそっちも読んで

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Daemonium Bellum : 用語解説

創作企画「Daemonium Bellum」の用語解説です。

〈天使:Angelus〉
秩序を以って地上に平和をもたらそうとする勢力。
基本的に人型で背中に羽根がある。
地上に巣食う悪魔とは敵対している。
少し前に全天使の三分の一が反乱、地上に逃亡・追放される事件が起きたせいで人手不足気味。
集団行動が多い。
人間からは崇められたり、迷惑な存在とされたりとさまざまな扱いを受けている。
悪魔と繋がっている者や人間に協力する者、悪魔に宥和的な者もいるらしい。
首と心臓が弱点で、これらを破壊すれば倒せる。
逆に弱点以外に攻撃しても怪我はその場で治ってしまう。

〈悪魔:Diabolus〉
混沌を好む地上の勢力。
本来は異形の姿をしているが、普段はほとんどが人間に近い姿をとっている。
天界に住む天使とは敵対している。
天使のように1つの勢力で動いているのではなく、個人個人で戦っている者がほとんどである。
人間からは崇められたり、迷惑な存在とされていたりと様々な扱いを受けている。
天使と繋がっている者や人間に協力する者、天使に宥和的な者もいるらしい。
首と心臓が弱点で、これらを破壊すれば倒せる。
逆に弱点以外を攻撃しても怪我はその場で治ってしまう。

〈堕天使:Angelus Lapsus〉
天界から諸事情で追放された/逃亡した天使のこと。
追放された者は大抵片方の羽根を切り落とされいる。
天使や悪魔に協力する者、第三勢力として動く者、人間に溶け込む者など様々な者がいる。

〈人間:Human〉
地上に住む無力な存在。
数だけが取り柄。
文明レベルは中途半端で停滞気味。
よく天使と悪魔の戦いに巻き込まれている。
天使や悪魔を崇める者、利用する者、協力する者と様々な者がいる。

以上です。
創作企画「Daemonium Bellum」は5月2日からスタートです!
どうぞお楽しみに。

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いい後輩

いつか先輩に聞いたことがある
「僕はいい後輩になれましたか?」
答えは返ってこなかった
別に答えを求めてたわけではなかったが、それ以来その質問は答えのない問いとして自分の中で膨らんで行った

その問いを抱えながら自分も後輩を迎え、先輩と呼ばれるようになったが、先輩と呼ばれるのはどうも慣れなかった。おそらくどこかに後輩気分が抜けてなかったんだろう。それでも後輩と過ごす時間はあまりにも楽しく、そしてあっという間だった。
引退まで来ても抱えた問いに答えは出なかった。
先輩として後輩を見ることで確信したのはこの問いに明確な答え、正解がないということだけ、肝心の答えはモヤがかかったみたいで全然見える気配がない。いつしか部活の記憶とこの問いは1括りになっていた。

後輩が先輩として活躍する姿を見る立場になりその活躍に刺激を受けるというよりも心躍ることが多くなった。おそらくようやく真の意味で先輩になれたのだろう。
そうしてついに後輩の引退を見守る日を迎えた。
別に先輩ヅラするつもりなんてないけど後輩の演奏を見てると何故か彼らが入部した頃の姿が重なる。この感動は今この場の自分以外の誰にもできないものだろう。
そんな感慨を感じながら彼らの演奏は盛り上がりを見せ展開されていく。曲の情景、後輩たちの顔がありありと目に焼き付いてく。曲間、目が潤んでいることに気がつき、思わず目を瞑る。その視界の先で先輩が待ってたような気がした。
先輩にこの感覚を話したい、そう思った。
自慢とかじゃなくて自分を見守ってくれた感謝を示すにはこれが1番な気がしたし、先輩としか共有できない何かが胸に溢れているのを感じていた。

しばらく時間が経って
“あれがずっと抱えてた答えだったんだ”
ふとそんな気がした。
あの時、初めてその領域に達したような
「2年もかかったけどようやく答えが出たよ」
誰にともなくそう呟いた。