表示件数
0

太陽

貴方は太陽。
周りを明るく照らし輝かせ、
自分自身を眩しく目が眩むほど輝かせる。
照らされた周りをかき消すかのように。
天性の才能。生まれ持ってした“特別”な人。
そんなあなたに憧れ焦がれて私はこの世界へと
小さな一歩を踏み込んだ。

貴方に近づきたくて、なりたくて。
徹底的に真似っ子をする。
それなのに、それなのに…
あの時の貴方のことは忘れない。
初めて会ったあの時。
いつも見ている貴方とまるで別人で。
本音を隠しているような。
わからなかった。
わからなかったからたくさん“勉強”した。
貴方を理解するために。
たくさんたくさんたくさん…
今なら少しわかる。あなたの気持ちが。
「怖かった」…違う?
少しは貴方を理解できたのかな。
少しでもわかってあげられたのかな…

今私は貴方と並んでいる。
貴方を目指して登ってきたこの世界の頂点への道中で。
お互い競い合い、切磋琢磨しながら。
貴方を頂点として登ってきたはずだったのに。
隣に並んで見えてきた。
貴方は強く振る舞っているだけで、
本当は弱いってこと。
そんな貴方をみていると
少し安心する。自分に近い存在なのだと。

今日も私は貴方と競い合う。
決着のつかない戦い。
それでもあの日あの頃目指していた貴方を
近くで支え、支えられること。
どんなにも嬉しいこと。
いつまでも続けばいいと思っている

0
0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 24.ヴァンパイア ㉒

「俺達みたいな頻度で会っているっていうなら、友達を優先するかもしれないが…」
人による、って奴かねと師郎は呟く。
わたしは人による…?と反復した。
「そう、相手にもよる」
ソイツが自分にとって大事な存在であるかどうかが問題だな、と師郎は続ける。
「世の中には友達っていっても、ちょっと一緒にいるのがメンドいな~って奴もいるし、ずっと一緒にいたいって奴もいるだろ?」
だから自分にとってその友達が大事な奴かっていうのが重要なんだ、と師郎はテーブルに肘をつくのをやめてイスに座り直した。
「え~師郎珍しく良い事言うじゃーん」
不意にネロがそう言ったので、師郎は笑いながら、なんだよ普段はもっとテキトーだって言うのか?と彼女に言い返す。
「俺はこれでもこのメンツの中で一番年上なんだぞ⁇」
「それそんな関係ないでしょ~?」
そこの一般人は置いといて、ボク達は過去の異能力の持ち主の記憶を引き継いでいるんだしー、とネロは師郎に対し口を尖らせた。
師郎はそうだなと笑う。
と、話がひと段落した所で、耀平がわたしの方を見やって、ま、師郎の言う通りだと言った。
「友達を優先するか、自分を優先するかは、その友達が自分にとってどういうものか次第だ」
耀平はわたしの目を見ながら続ける。

0
0
0
0
0
0
0
0

結び目

また今日もどこかで
命が始まる
誰かを愛するために
生まれてきたの

また今日もどこかで
命が終わる
根強さを諦めずに
生きてきていた

泥まみれになりながらも
貴方は今日まで生きている
どこかで綺麗に拭わずに
抱えてきたの

確かにまだここにあるよ
見えないくらいの希望が
どうにか探し出してほしい。
暗闇のなかに堕ちていこうとも
いつも側にあるから
人には知り得ないほど
我々は弱いから
いつの時代にもある
何かのリレーを繋いでいる

また今日もどこかで
終わりが始まる
誰かに愛される
涙が聞こえる

また今日もどこかで
星が増える
誰かに愛されてた
涙が届いてる

大きなものを
体いっぱいに詰め込んで
貴方は今日までここにいる
どこかで全て置かないで
抱えてきたの

ちゃんとまだそこにあるよ
見えないくらい大きな愛が
どうか知っていてほしい。
空の上に昇っていこうとも
必ず側にあるから
人には知り得ないほど
我々は美しいから
守り続けてきた
尊いリレーを繋いでいる

確かにまだここにあるよ
貴方を埋め尽くす愛が
どうにか受け止めてほしい。
終わりが待ち受けていようとも
最後まで付いてるから
少しずつだけでいいよ
歩んできた時間は残ってる
いつの時代にもある
「生きててほしい」を繋いでいる

0
0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 24.ヴァンパイア ⑫

「なんかあった?」
ネロの急な質問に、わたしはえっ、と飛び跳ねた。
「な、何って…」
「いやー、いつもの場所にいなかったからどうしたのかなーって」
ちょっと気になっただけ、とネロは呟く。
わたしは今の悩みが見透かされた訳ではないと分かって内心安堵したが、いつものようにショッピングモールの屋上に行かなかったことを若干不審がられているようで不安になった。
今日、ヴァンピレスがわたしに会いに来るということで、ネロ達に迷惑はかけられないと彼らに会わないよういつもの待ち合わせ場所に行かなかったのだが…やっぱり会ってしまう時は会ってしまうらしい。
地方の街だから仕方がない…そう思いつつ、わたしは何でもないよと作り笑いで返した。
そう?とネロは不思議がったが、すぐに耀平が、そうだネロ、ゲーセン行こうぜ!と声をかける。
「この前ネロが取り損ねたぬいぐるみ、また取りに行こう」
「そうだね!」
耀平の提案に、ネロは明るく答える。
それを聞いて師郎は、じゃー行きますかねと後頭部に両手を回し、その隣で黎はうんうんとうなずいた。
それを見てネロは不意に、あ、アンタも行く?とわたしに尋ねる。
わたしは急な提案に驚きつつも、とっさにそうだねと答えてしまった。
「…じゃ、行くか」
ネロがそう言って歩き出すと、耀平、黎、師郎が彼女に続く。
わたしもそんな彼らに続いた。

0

転生するのも案外良くないものだ p.6

 その上、記憶力の低下は著しい。
 必死で覚えた英単語や趣味だったギリシア語、難解な漢字熟語などは相当忘れてしまった。義務教育レベルの世界史も曖昧だ。

 中でも固有名詞に関しては深刻である。

 例えば、毎日の通勤に使った駅の名。愛読した書物の題名。よく飲みに行った同僚や高校時代からの旧友の名。気付いた頃には思い出せなくなっていた。今の、コマ=リャケット語を操る私にとっては馴染みなく規則性も意味もない文字列であるからだろうか。思い出せた名は全てリストアップした。あまり多くはなかった。家族、親しい親戚、何人かの友人。

 しかし日を追うごと名前と顔が一致しなくなった。

 出来事の記憶はあるが、それが誰との記憶だったのか、思い出せない。読者諸氏には、大事なことは何度も思い返すことを強くお勧めしておく。

 最近、私を産んだ異形の顔を見て、私は泣き崩れた。
 私の頭の中に、前世の母の顔がないことに気付いてしまったのだ。
 私の思い描く母親像は、全長二メートルの、硬い鱗に覆われた、鋭い爪の、大蜥蜴だった。私は名前のリストの一番上の『家族』の欄を確認した。不器用な文字の羅列は、私の全く知らないものだった。

 その瞬間、私は、私が人間である資格を完全に失ったように感じた。

 否、今まで醜く足掻いていただけで、実際はこの世界にコマ=リャケットとして生まれ落ちた時点で私は人間である資格を喪失していたのだ。今まで認めようとしなかっただけなのだ……。

 これからもっといろいろなことを忘れていくだろう。いつか日本人としての精神を失いコマ=リャケットの倫理に迎合せざるを得なくなる日が来るかもしれない。日本語もいつまで覚えていられるか分からない。今残っている記憶のどこまで忘れてしまうかも不明だ。

 だから私は、今のうちに、私が覚えているもの全てを書き残す。

 いずれここに記したことの一切を誰も解読できなくなったとしても、所詮私が、人間の振りをした化物であったとしても、私がかつて人間として、日本人として、生きていた証左となるなら。


×年×日 橋田勇作