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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

先生の部屋の前を通ろうとすると、部屋の中から“ガタッゴト”と音がしたので、先生の部屋を2回ノックする。
何かを隠そうとする音がして、“バサッ”と羽音がする。
「先生〜??私〜。」
『なんだ、君か。入っておいで。』
私は扉から少し顔を出す。
「何してるの?」
『頼む、先に扉を閉めてくれ。』
「あ〜、ごめんごめん。」
私は部屋に入り、扉を閉める。

『内緒だぞ?』
「もちろん、秘密。」
私が人差し指を口元に持っていったのを確認すると、鳥かごを取り出す。
「えっ、羽根の生えた悪魔??」
『いや、これは妖精だ。』
「これが??私の想像とは違うな〜……。」
『こっちの世界と魔法が使える世界では勘違いしている事が多いんだ。』
「今日はなんでこの子を??」
『ほら、覚えてるか?梟の郵便屋さん。』
「覚えてるよ。いつもの窓のとこから飛ばしたよね。」
『あぁ。その梟が連れてきた。』
「ん?なんで?」
『こっちの世界に迷い込んだから探せと命令だ。』
「それ、先生の仕事なんだね?」
『こっちの世界に来ている魔法使いは少ないからな。』
そう言うと先生は、笛で梟を呼ぶ。

「久しぶりに先生が魔法使ってるの見た。」
『まだ魔法使ってないがな(笑)。』
「え〜、十分魔法だよ(笑)。」
先生は、窓にとまった梟に妖精が入った鳥かごを持たせると、窓から梟を飛ばす。
「これで、あの子は魔法の世界に帰れるの?」
『あぁ。もうここには来ないだろう。』
「ねぇ、先生?久しぶりに魔法の薬学見せてよ(笑)。」

私は、先生の事を手伝いながら新しい魔法の薬学を見せてもらった。
魔法の薬を作り終えた頃、開けていた窓から1通の手紙が降ってきたのに気づいたのは、片付けが終わったあとだった。

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〜二人の秘密〜長文なので時間があるときに読んでくださると嬉しいです!

『新しいクラスどうだった?』
いつもの窓辺で足を外に出しぶらぶらさせていると、先生が話しかけた。
「お〜、先生。忘れちゃった?私のクラスはクラス替えなしだよ?」
『忘れてない。覚えてるよ。ただ、前学期と変わったとこなかったかなって思って。』
「あ〜、そういう事ね(笑)!特に何も変化ないよ。」
私は少し笑う。
そして先生は、いつものように隣に腰掛ける。

『君は殻にこもり過ぎだ。』
「ん〜?……ん?You Too.でしょ(笑)?」
『何でそこだけ英語なんだよ(笑)。』
「なんとな〜く(笑)。」
『君は良い子なんだから少しだけ殻の外に顔を出してごらんよ。』
「私は十分顔を出してる。ただ誰も気づいてくれないだけよ(笑)。」
『君はもう少し笑うべきだ。』
「ん?十分笑ってるよ?」
『普段の話だ。ここの話じゃなく。君はいつも真顔だ。少し怖い(笑)。』
「え〜、でも先生の真顔もだいぶ怖いよ(笑)?」
『それは知ってるさ(笑)。ただ君が辛そうに見える。』
「そうかな?」
『自分を殺さなくたっていい。もう少し笑え。』

「りょーかい。もう少し笑えるようにするね(笑)。ただ1つ約束。先生も自分を殺さないこと!!!」
『わかった。約束だ(笑)。』
先生は小指を立てて私の前に差し出す。
「ゆびきり!!」
私は指切りをして先生の手を握る。

「大丈夫。私は先生の事、大好きだから本当の先生を知ってる。先生が自分を殺さないなら私は凄く嬉しい。だから先生、そのままでいいからね?」
『ありがとう(笑)。君は普段だけ、もう少し笑えばいい(笑)。』
先生はそう言うと、私の頭に手をのせる。
私は少しはにかむと、春の匂いを感じとった。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んでくださると嬉しいです。

「ふわぁぁぁぁぁ。」
私はあくびを一つする。
『今日は眠そうだな?』
先生はいつものように話しかけると、隣に座る。

「昨日、3時までドラマ見てたの。」
私はもう一度あくびをしながら答える。
『3時……?夜中のか??』
「そう、夜中の。」
『ここは寮だぞ?なんでテレビがあるんだ??』
「各寮に談話室あるじゃん?そこだとバレない。」
『今、私にバレたがな(笑)。』
「先生にはいいよ、バレても(笑)。」
『まぁ、早く寝ろよ?』
「わかってる。今日は1時までには寝るつもり。」
『明日から新学期だろう?遅刻するなよ?』
「わかってる。まぁ5分くらいのは許して(笑)。」
『新学期から遅刻は流石にやばいだろう(笑)?』
「そうね〜。頑張って起きる。」
先生は何か聴きたそうな顔で私の顔を見る。

「ん?何??」
『いや、なんのドラマ見てたのかなって思って。』
「あ〜、もともとは韓国のドラマなんだけど、それをリメイク?したやつ。」
『面白かったか?』
「そうね〜、一度見ると続きが気になってやめられないのよ(笑)。」
『君はよくドラマみてるよな?』
「ドラマは面白いからね。自分の知らない人生を知れるでしょ(笑)?」
『う〜ん、難しいな。』
「うん(笑)、先生はドラマあんまり見ないもんね(笑)。」
『今度、オススメでも教えくれ。』
「無理してみなくてもいいんだよ(笑)?」
私は悪戯に笑う。

『久しく見てないからな、見てみたいんだ(笑)。』
先生は恥ずかしそうに笑う。
「うわっ、何それ、可愛い〜(笑)。」

私は笑いながら空を眺めた。
雲一つない良いお天気で、燕が2匹飛んでいた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間があるときに読んでくださると嬉しいです。

「こんにちは。」
いつもの窓へ向かう途中、新しく赴任してきた先生とすれ違った。
“今日からこの学校に赴任してきました。わからないこともあると思いますがよろしく。”
「そうですか。よろしくお願いします。」
私はそっけない挨拶をして窓辺へ向かう。

窓の外を眺めていると、いつもの声がする。
『今日はまた一段と悲しそうな顔をしてるな。』
「先生、やっほ。そう??」
先生は隣に座る。

『さっき、新しく赴任してきた先生に会っただろ?』
「うん、若い男の人だった。」
『そいつと話した。挨拶してくれたけどそっけない女子生徒がいたって。』
先生はそう言うと、怪しく笑う。
『私はそれが誰かを知っている。君だろう(笑)?』
「先生、先に答え合わせしちゃったよね(笑)?」
『いいや、若い男の人としか聞いてない。』
「先生、天の邪鬼ね(笑)。その人、どんな人だった?」
『今日はスーツ来てた、確か赤色のネクタイ。』
「あ〜、それ私だわ。さっき会った人。」
『やっぱりな(笑)。新しい先生は不満か?』
「不満ではない、というかまだ話してないからわかんないよ(笑)。」
『じゃあなんでそんなそっけないんだ?』
「学校って嫌いなんだよね。今更だけど(笑)。」
『それは知ってるさ。君の事はなんでもとは言わないが知ってるつもりだ。』
「私は、学校のそっけない感じが嫌いなの。バイバイする先生の扱い酷すぎない?だから、新しく来る先生も初めは警戒しとくの。」
『じゃあ、嫌いという訳ではないんだな(笑)?』
先生は可愛らしくニコッと笑う。

「好きか嫌いかはこれから決める。」
『私のことは好きか?嫌い?』
「どっちかというと嫌いかな〜。」
『え、、こんなに話してくれるのにか!?』
「嘘、嘘(笑)。好きよ。大好きな先生(笑)!」
『からかわないでくれ(笑)。』
先生は恥ずかしそうに笑う。
「ごめんごめん(笑)。」

私は先生の事をからかいながら笑った。
そして舞い落ちる桜の花びらを掴もうと手を伸ばした。

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〜二人の秘密〜長文なので時間があるときに読んでくださると嬉しいです。

「先生っ!!!」
私は先生を見つけたので駆け出し、後ろからハグをして捕まえる。
『なんだ?珍しい捕まえ方をするな?』
先生は顔だけをこちらにむける。

「まぁここ、誰も来ないしいいかなって(笑)。」
私が手を離すと、先生は私の正面に立つ。
『君の挨拶は不思議だからな(笑)。』
「他の地域では、ハグとかキスは挨拶でしょ??私なりの挨拶はこれだから(笑)。」
『君は本当に不思議だ(笑)。』

「まぁこれ、いつもは男の人にはしない挨拶なんだけどさ、今日は先生にお願いがあってさ。」
『お願い?』
「うん。絶対に断らないって約束できる??」
『どんなお願いなんだ?』
「先に約束して!!」
『あぁ。わかったよ。約束する。』
「ありがと(笑)。」
『ほら、お願いは??』
「今度はさ、後ろじゃなくて、前からハグして?」
『前?』
「そう、普通のハグ。」
『いいよ。』
「え?いいの?」
『いや、君が断るなと言ったのだろう(笑)?』
「確かに(笑)。じゃあ、ハグしていい??」
先生は両腕を広げ、私は先生の胸の中に飛び込む。

『何かあったんだろう?』
「私のハグはね、私に気づいてほしくてするの。」
『気づいてほしくて?』
「存在をわかってほしいっていうかさ。温もりを感じたいというかさ。まぁ、いろいろあるのよ。」
先生は少しギュッとする。
『ほら、温かいだろ?』
「うん、あったいね。生きてるって感じ(笑)。」
私は笑うと、先生から離れる。

「いや〜、久しぶりにガチのハグしたわ〜(笑)。」
『君の“ガチ”のハグはこれなんだな(笑)。』
「私、このハグは嫌いな人にはしないから(笑)。」
『君は本当に不思議だな(笑)。』

私のハグはすべての人には受け入れてもらえない挨拶だ。
それ故に先生のぬくもりは嬉しかった。
私達はいつもの窓へ行き、雑談を楽しんだ。

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〜二人の秘密〜

私はいつもの窓から、桜の木を眺めていた。

『満開になったな。』
先生の声がしたので振り返ると、先生はお盆を数センチ上にあげた。
『満開になったら花見って約束しただろ?』

「約束したけど、どこからそのお盆持ってきたの(笑)?」
『私の部屋からだが?』
「ここに来るのに誰にもみられなかったの(笑)?」
『あぁ。』
「先生が廊下でお盆持って歩いてたら変な人だよ(笑)。」
『今日は休みだから誰もいないさ(笑)。』
先生は笑うと隣に座る。

『お茶とお菓子。好きなの食べろ。』
「ありがと〜。」
私はお茶とチョコレートを手にとる。

「もう花びら散ってきちゃってるね。」
『それはそれで綺麗だ。』
「私も満開よりは、散ってるときが好きよ。」
私がそう言うと、先生は散ってきた花びらを一枚掴む。
『ほら、花びら。』
「先生って可愛いことするんだね(笑)。ありがとう(笑)。」
『私も散っているときが一番好きだ。人間は満開の時にしか見てくれないだろうが、桜が散るのは人間にない儚さがある。』
「要するに、綺麗ってことでしょ(笑)?」
『あぁ(笑)。哲学っぽくなっただろ(笑)?』
「う〜ん、どうだろ(笑)。」
先生はチョコレートをひとかけら口に放り込む。

『まぁ、いいじゃないか(笑)。花見を楽しもう。』
先生はそう言うと、太陽に手をかざす。
『今日は良い天気だな。』
「風も気持ちいいしね。」

私達は太陽の光や風を浴びながら雑談し、とても素敵な花見をした。

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〜二人の秘密〜

私は先生を見つけて駆け出す。
「先生〜!!!写真撮ろ!!写真!!」
『あぁ。』

「スマホ?デジカメ??どっち?」
『今持ってるのか?』
「うん、どっちもあるよ?」
先生は私の手を引いて、隅の方へと行く。

『一応、スマホは禁止なんだ。今日だけだぞ?』
「うん!ありがと!!」
私は何枚か写真を撮る。

『なんで今日なんだ?』
「ん?写真撮るのが?」
『あぁ、写真撮るのが。』
「ほら、さっきまで離退任式だったでしょ?今日はみんな写真撮ってくれるんだよね〜(笑)。」
私はイタズラに笑う。

『私は退任も離任もしないが?』
「次、いつ撮れるかわかんないでしょ?成長記録だよ(笑)!」
『私の成長記録か?(笑)』
「うん(笑)。」
『私の容姿はもう変わらないよ(笑)。』
「それはわからないよ(笑)?」
私はもう一度イタズラに笑う。
『本当に可愛いことを思いつくもんだ。』
先生は頭をぽんぽんする。

「あまり子供扱いしないでよね〜!!」
『まだ子供で良いじゃないか(笑)。』
先生は笑いながら頬をつつく。
私は先生の人差し指を掴んで言う。
「よし。このまま先生の部屋に連行だっ!!」

私は先生を部屋に送り返した。
私はこの写真を大切にしようと思いながら、先生の部屋を後にした。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

誰もいない大広間でお菓子の振り分けをしていた。

『今日はここにいたのか。何してるんだ?』
先生は近くまで来て座る。
「明日、離退任式でしょ?1ミリでもお世話になったなら差し入れ?してもいいかな〜って。」
『手伝ってやろうか?』
先生は私の顔を覗き込む。

「お菓子の振り分けは手伝ってもらおっかな(笑)」
『君は偉いな。』
「ん?何が?」
『だって、担任でもなんでもないだろう?』
今回離退任する先生は一年、もしくは二年、授業を担当してもらった先生ばかりだった。

「あっ、先生、勘違いしてる。私、担任だったら絶対に何もあげないよ?(笑)」
私はイタズラに笑う。
『君は本当に人間嫌いだな(笑)。』
先生は笑いながら、頭をなでる。
「先生も人間嫌いのくせに何言ってんの(笑)?」
『さぁ、私の話はいいさ(笑)。どうやって分けるんだ?』
「大体同じ数になるように、とりあえず平等にわける!」
『手紙も書くつもりなんだろう?君は手紙を書けばいいさ。』
「よくわかったね?」
『便箋出しっぱなだぞ(笑)。』
「あっ…。」
『ほら、喋ってないで書け(笑)。』

私は手紙に手をつける。
「先生がどこにも行かなくて良かったよ。」
『ん??』
「先生、離任しなくて良かった。」
『そうか。そう言ってくれると嬉しいな(笑)。』
「せめて卒業するまで、この学校にいてよね!」
『卒業しても会えるさ(笑)。』
先生はニコッと笑い、私も笑って答える。
「じゃあ、約束だ(笑)。」

私達はもう一度自分の“仕事”へと手を戻す。
お菓子を分けながら袋に詰めていく先生を見て、
この時間が永遠に続けばいいのに、とそう思った。

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『ん?そんなに、はしゃいでどうしたんだ?』
「あっ、先生!!先生、先生、みてみて!!」
私は窓の外を指差す。

『あぁ、そういう事か(笑)。やっと花が咲いたな、桜の。』
「そうなの!満開じゃないけど、可愛い花がちらほら咲いてるの!!」
先生は子猫を見るような目で笑う。

「何??なんでそんな顔で笑うの!?」
『いやいや、珍しいなと思って(笑)。』
「何が??」
『そんなにテンションがあがってるの(笑)。』
「そうかな〜??いつも割とテンションあがってると思うんだけど……?」
『いつもと違うあがり方だ(笑)。』
「いよいよ春が来たって感じしない(笑)?」
『そうだな。春を感じるようになる時期だ(笑)。』
「私は季節の変わり目が好きなのかもしれない(笑)。いよいよ変わりますよって香りが好きなのかも(笑)。」
『ならば、年に4回程しか見れないテンションのあがり方だな(笑)。』
「も〜、いじらなくていいから!!桜見ようよ〜!」
『今度は満開になったら花見をしよう(笑)。』
先生はニコッと笑うと、私の隣に座る。

「次は、春休みに入ってからだね〜!」
『そうなるな。』
「楽しみにしてる(笑)。」
『あぁ。なにか食べたりしよう。……あっ、そうだ。良いものがあるぞ。』
先生はそういうとポケットの中を漁る。

『ほら、チョコレート(笑)。』
「なんでそんなとこに入ってるの(笑)?あっ、貰うけどね(笑)。」
『ぷち花見(笑)。』
「先生だって可愛いとこあんじゃん(笑)。」

私達はお互いの事を笑いながらぷち花見をした。
花が満開になる頃にはもう春休み。
先生の横顔を眺めながら、新たな学年へ向けての不安が少し募った。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

『髪の毛、くるくるしてどうかしたか?』
髪をくるくるしながら触っていると先生が、心配そうに声をかけた。
「おっ!先生。なんで?」
『今までに、見たことが無い手癖だなと思って。』
「先生、よく見てるね〜(笑)。」
『そりゃそうさ。何かあったのか?』
先生は私の隣に座る。

「先生は髪の色、どう思う?」
『髪の色?』
「うん、そう。先生はキレイな黒髪でしょ?」
私は先生を見上げる。

『あぁ、そうだな。キレイかは置いといて黒髪だ。』
「私はね、自分黒髪だと思ってるんだけど、結構茶髪でさ。髪の毛染めたんじゃないかって言われたの。」
私がそう言うと、先生は私の髪をすくって太陽にかざす。
「先生?」
『太陽にかざすと茶色。陽が当たってないときにはちゃんと黒髪も混じってる。』
そう言うと先生は私の頭をポンポンした。

「先生はどう思う?地毛が茶髪なのに、地毛の人が地毛登録しなきゃいけないの。」
『私はもっと、生きやすい社会になればいいと思うよ。ハーフでも外国人でもなんでも。髪の色、肌の色、そんなものを気にしなくていい世の中になればいいと思う。もし学校が、染める事を駄目だと言うのなら、染めた人に罰則を与えるべきだと思ってる。』
「だよね(笑)。」
私は静かにニコッと笑う。

『ただ、これもまた倫理だ。自分の事を捨ててはいけないが、世間様と同じようにしなければならない。』
「わかってるよ(笑)。だから私も地毛登録出したんだもん。」
そう言った私を見て、先生は頭をなでる。
『偉いな。私は、君が髪を染めていない事なんてとっくの昔から知っている。』
「ありがとう、先生。私の髪の色、認めてくれて。」
『最初に言っただろう?私は君の事をよく見ている(笑)。』
先生は優しく、でも悪戯っ子のように笑った。

私は先生に笑顔を返し、太陽に手をかざした。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

「ねぇ先生、見て!!新入生。」
私は新入生を指差して、先生の方を向く。

『今日は、制服の採寸の日だ。』
「へぇー。もうそんな季節か……。」
『なんだ?その言い方。不満か?』
「そりゃそうでしょ!先生が他の人と仲良くなったらどうするの!?」
『そんな事気にしてるのか(笑)?』
先生は笑いながら、私の頭をぽんとする。

「そりゃ気にするでしょ!!!」
『君は私の性格を知っているだろう(笑)?』
「えぇ。でも、本当は先生、凄く優しいって事も知ってる。悪いとこだけじゃないでしょ?」
『だが私は、他の人とは仲良くする気はない。君は私の格言を知っているだろう?』
「尊敬してくれる人を尊敬するだけ。でしょ?」
『君は私を尊敬してくれているが、他の生徒はどうだ?新入生もきっと同じだ。』
「でも私は違う。それって、新入生の中にもそういう人がいるかもしれないって事だよ?」
『私の噂は悪いものばかりだ。仲良くする生徒はいないさ。』
「も〜!先生ってばマイナス思考すぎ!!!!先生、凄く良い人なんだから、もうちょっと自信持てばいいのに!」
『私は自信満々だぞ!』
「も〜、そういう意味じゃないってば!!」
『自信満々だからこそ、個人主義を貫き通しているのだ(笑)。』
先生は悪戯っ子のように笑う。

「私もそうだけどさ(笑)。先生、他の人と仲良くなってもいいから、この時間だけは変えないでね。」
『あぁ。もちろん。心配するな(笑)。』
「先生、ほんとうは優しいから(笑)。」
『私にとっても、君と喋る時間は大切だ(笑)。』
「ありがとう(笑)。」

私達は微笑みながらニヤニヤお互いを見つめた。
笑いが収まった頃には、新入生は見えなくなっていた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

『今日も何か考えているのか(笑)?』
外を眺めていると横から顔を覗かせる。

「いいや?まだ花、咲いてないのに桜の香りがするなぁ〜って。あと少しで開花しそうだなって考えてた。」
『そうだな〜。蕾もふくれてる。咲くのは時間の問題だな(笑)。』
「だよね!私もそう思ってたところ(笑)。」
先生は私の腰掛けていた場所の隣に座る。

「先生、いっつも私に“何考えてる?”って聞いてくれるけど、先生は何考えてるの?」
先生は少し考えて口を開く。

『守る価値のある人は誰か。』
「素敵なこと考えるんだね。」
『私はこれでも教師だ。“生徒”に守る価値があるのかぐらいは考えるさ(笑)。』
「あっ、そっち(笑)?でも、私はそういうの好きだよ(笑)?私も考えるもん。この教師との関係は保たないといけないのか。命をかけて守る価値のある人は誰か。」
『考えることは一緒だな(笑)。』
先生はニコッと笑う。

「私の出した答えは、命をかけて守りたい人は少人数ってことかな〜。心臓1つしかないからそんなに沢山の人は守れないけど(笑)。」
『私も少人数だ(笑)。そんなに命はかけられんだろう(笑)。』
「確かに(笑)。」
私は先生の微笑みに微笑みを返す。
『ただ1つ言える事は、この事を考えないといけないのは少し寂しいと言う事だ。』
「大切な誰かが危ない目に合うってことだもんね?」
『それももちろん。だが、君の場合は特に、君が危ない目に合うぞ。』
「わかってるって、自分も死なない程度に命をかけるんでしょ(笑)?」
『あぁ。それでいい。』
「私は先生のほうが心配だけどね(笑)。」
『君には心配はかけないさ(笑)。』
先生はイタズラをする少年のようにニコッと笑った。

私は心の中で“先生こそ100%命かけるくせに。”と呟いた。
そして私はもう一度、桜の香りを探した。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

廊下を歩いていると、前の方に先生がいたので駆け出す。
「先生!」
『あぁ。』
そう言うと先生は振り返り、ニコッと笑う。

「あれ?先生、その足どうしたの?」
『えっ?』
「そこ。いつ怪我したの?」
『……薬学の研究をしていたとき…か?』
「え?そんなに血、出てズボンも破れてるのに気付かなかったの?」
『…あぁ。』
「もう、しょうがないな〜。こっち来て。先生の部屋行くよ!」
私は先生の手を引き、部屋へ連行する。
『気にし始めたら、なんか痛くなって来た。』
「先生バカだなぁ〜、もう!早く行くよ!」

部屋につくと私は、救急箱を探した。
「先生、薬学するのはいいけど、もうちょっと道具片付けてよね!よくわからないものが多すぎる!!」
『だが、こっちでも使うものばかりだぞ。理科の授業で使った事あるだろう?』
「あるよ。ビーカーに…メスシリンダー?」
『それは試験管だ。』
「今それはいいから!」
『いや、君が言ったのだろう(笑)?』
「確かにそうだけど(笑)。ほら、救急箱あったよ。」
『ありがとう。』
「ほらほら、座って!」
『仰せのままに(笑)。』
「よろしい(笑)!」

私は先生の手当をする。
「先生は時々、集中すると周りが見えなくなるから気をつけないとね!」
『そうだな。熱中しすぎないように気をつけるよ。』
「まぁそういうおっちょこちょい?な先生が好きなんだけどね(笑)。」
『いじってるだろ?』
「いじってないよ(笑)!」
私は最期の仕上げに包帯を結ぶ。
「ほら、できた!!」
『命拾いしたな(笑)。ありがとう。』
「先生、大袈裟だから(笑)!」
私は救急箱を戻しながら言った。

「あっ。その代わり、指切りげんまんしよ?」
先生は小指を立てて私の前に差し出す。
「先生は無茶な事をしない!指切りげんまん嘘ついたら……。高級チョコレート奢らせる!指切った!」
『それは守らないとな(笑)。』
「楽しみにしてるからね(笑)。」

指切りをしたあと、少しの間笑っていた。
そして私は先生の部屋で、またキレイな魔法の薬学を見せてもらった。

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〜二人の秘密〜

『まだ何か気になるものがあるのか?』
今日もまた、いつもの窓辺にいると後ろから先生が声をかけてくれた。

「今日は何もない!!」
『今日は?じゃあ、今日は何をしてるんだ?』
そう言うと、先生も腰掛ける。
「今日はね、春のにおいを楽しんでたの。」
『春の匂い?』
「うん。春のにおいがする。」
『花のにおい……っていう事か?』
「う〜ん、花の匂いとか、空気の匂いとか、暖かさとかかな〜?」
『まぁ確かに、何かの花の匂いはするし、暖かくなったな。春はもうすぐだろう。』
「だよね(笑)!!私、季節の変わり目の匂いって好きなの。」
『楽しくなるか?』
「そうね〜。それもある。なんて言ったらいいかわからないけど、好きなんだよね〜(笑)。」
私はニコッと笑う。

先生はニコッと笑い返すと、春のにおいをかいだ。
私も深呼吸をして空気を肺の中へ入れた。

『確かにこれは、春のにおいなのかもな(笑)。』
先生はもう一度笑うと校舎の外を指差した。
『桜の花ももうそろそろ咲きそうだ。』
「楽しみだね!」
『あぁ。桜が咲いたら、ここで花見をしよう。』
「おっ!いいね!!楽しみだ!!」

私はこの春のにおいを楽しみながら、
明日からまた頑張ろうと背筋をしゃんと伸ばした。
先生は、猫のように日向ぼっこを楽しんでいた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

お気に入りの窓がある所に行こうと廊下を歩いていると後ろから左手首を掴まれた。
私は驚いて振り返ると、そこには先生がいた。
「っ先生!!びっくりした…。どうしたの急に?…ん?」
私は先生の顔を覗き込む。
「今からいつもの所行くけど、一緒に来る?」
『あぁ。』
私はニコッと笑って、先生の手を引き駆け出す。

窓の前につくと、くるっと振り返る。
「到着!」
そう言うと、またニコッと笑う。
『今日は私も座っていいか?』
「何で聞くのよ(笑)?もちろんだよ。一緒に座ろ?」
私達は窓の外に足を出して座る。

「何か聞いてほしい事があったんでしょ?」
『聞いてほしいというか…。普通の話をしたくてな。』
「世間話とか?」
『あぁ。』
「先生は相変わらず可愛いねぇ(笑)!」
『別に可愛くはないと思うが…?』
「いいや、可愛い!!」
『…ありがとう(笑)。』
「あっ、照れたっ!!!可愛いっ…。」
私はニコニコ笑みを浮かべながらマジマジと先生の顔を見る。
『そんなに見ないでくれっ!』
先生はそう言いながら手のひらをこちらに向けて顔を隠す。
「ちょっとは元気になったじゃん。先生(笑)。」
今度はイタズラにニコニコ笑った。
『やはり、君には上手に隠せないな(笑)。』
「先生、隠す気なかったくせに(笑)。」
私はケラケラともう一度笑った。
すると先生が口を開いた。
『バレたか(笑)。』

先生は本当に隠す気はなかった。
それは、皆にバレないように私にSOSを送ってくれていたからだ。
私は、先生が真っ直ぐな目でSOSも、助け舟も出してくれることをとても嬉しく思っていた。
そして、今日も私の前だけで笑顔を見せてくれる先生にとても感謝している。

私達は二人でいつまでも笑い続けた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

「先生!!捕まえたっ!!」
私は先生を見つけると、右腕を後ろから引っ張った。
『おぉ、なんだ?今日の授業わからなかったか?』
「いや、全然わかったよ?なんで?」
『君がいつもと違う捕まえ方をするから聞いただけだ。』
「あれ?いつもこんな感じじゃないっけ?」
『掴まれたことはなかったはずだ。』
「あ、痛かった?」
『いいや、痛くはないさ。そんなことより、私に用事があったのだろう?』
「あぁ、そうそう。倫理についてなんだけどね。」
『倫理?』
「うん。私のクラスは選択科目で成り立ってるでしょ?だから、その選択科目のせいで倫理の授業が受けられないの。」
『そうだったな。選択科目のせいで、私も君と授業ではなかなか会えないのだったな。』
「別に選択したくて、選択したわけじゃないよ。やりたくないものをやってる。嫌だって言ったら、学校辞めて働けって言われるし。やりたいことできないのにここにいる意味は、先生に逢えるっていうそれだけよ(笑)。」
『そうか。』
「そう。それでね、先生に倫理を教えてほしいの。」
『私は倫理の担当ではないが?』
「でもそういうの得意でしょ?」
『あぁ。確かに。教えられなくもない。』
「先生。約束ね。放課後、先生の空いてるときに授業してよ(笑)。」
『もちろんだ(笑)。』
「そういう先生大好きよ(笑)。じゃあ、また後でね(笑)。」

『待て。』
先生は次の授業に行こうとした私を呼び止める。
「何??」
『辛くなったら、またおいで。いつでも私は待ってる。いつもお互いがお互いを必要としている(笑)。』
「知ってる(笑)。私もこの間、先生の事待ってるって言った気がする(笑)。じゃあ、授業始まっちゃうから行くね!!」
『あぁ。』
「私、先生の事は大好きだよ(笑)。」
イタズラに笑うと教室の方向に足を向ける。

次の授業は選択科目。
先生の笑顔が、私をそっと救ってくれる。
もう少しだけ頑張ろう。
そう決意して教室の扉を開けた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

今日はなんとなくだがいつものようにお気に入りの窓がある廊下へと向かっていた。
いつもは私が先にいるが、今日は先客がいた。
「先生??今日は用事ないのにいるんだね、珍しい。」
『あぁ。君が見ている景色を見たくなってな。』
「結構いいでしょ?ここ。」
私は先生の隣で、窓に手をつく。
『君がお気に入りにしている意味がわかったよ(笑)。』
「先生、何かあった??」
『何を言ってる?(笑)何もないさ(笑)。』
先生は誤魔化すかのように笑う。
「そっか〜。じゃあ、私の話聞いてもらおうかな〜。」
『もちろん。何だ??』
「あっ。1つ約束。途中で口挟まないでよね!」
私は先生を見ていたずらに笑う。
『あぁ、わかったよ。保証はできないが。』
「じゃあ、いくよ?」
『あぁ。』

「先生にはね、もう愛着しかないの(笑)。初めはね、嫌な奴って見てた所も、今となってはもう、あぁ〜好きだなぁ〜って見てる。こんなにも愛おしくなる人なんだなぁ〜って(笑)。先生、自暴自棄になってたでしょ?でも、その事憎めないな〜って(笑)。なんて素敵な人なんだろうって。もう好きすぎて心臓持たないよ(笑)。あっ、好きって先生としてだからね〜?(笑)。」
言いたい事を放った後に先生を見ると、頬から涙が伝っていた。
先生が何を思って何に悩んでいるかなんて実際にはわからないけど、一度は伝えておきたかった事だ。

「だからね、先生の事だけは信用してるの。先生、これからもよろしくね。」
『何で今、それを言うんだ?(笑)』
先生は涙を隠して笑う。
「なんとな〜く、なんとなく言いたくなっただけ〜。」
『ありがとう。ここに来て良かったよ。』
「先生、悩む前にここ来たらいいよ。私はいつでもここにいるから。」
『言っただろう?悩んでないさ(笑)。』

先生は嘘が下手くそだ。
私の言ったことが少しでも先生に届いていれば私の出番は終わりだ。
「私は先生の事見てるからね(笑)。」
そう言ったとき、春の温かい風が二人を包み込んだ。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

屋上の踊り場で、舞のようなダンスを踊っていた。
裸足でペタペタ、トンと音を立てながら飛んだり回ったり、まるでバレリーナかのように舞っていた。
『そのダンス、嫌いじゃない。』
後ろから先生の声がしたので振り返る。
「私も、このタイプのダンスだけは好きなの。」
『裸足で踊るんだな。』
「裸足だと、何か悪いものが身体から出ていきそうで(笑)。」
そう言った私に缶のおしるこを差し出す。
『まだ寒いだろう?差し入れ。』
私達は階段に座っておしるこを飲む。
「おいしい。」
『糖分は大切だ。』
「っていうか、よくわかったね?この場所。」
『音がした。踊ってるんだろうなって音。』
「まぁ、屋上とかほとんど人、来ないもんね〜。」
私はもう一口、おしるこを飲む。
『何でここにいるんだ?』
「人がいると自分が死にそうだから…??」
『わからないこともないな(笑)。』
「人の声が私には雑音にしか聞こえない(笑)。」
『わからないこともないが、一人でいるからだろう?君は何で1人でいるんだ?私とは違うだろう?』
「先生とは違うよ。でも私は、、私は、仲良くできない。」
そう言うとまたダンスに戻る。
『何か嫌なことでもあったか?』
私は踊りながら答える。
「何もないよ。でも、ただただ上手に馴染めないだけ。」
『私には話しかけるのに?』
「みんな私の事はいない存在だと思ってる。」
『そんな事ないだろう?』
「私には、クラス全員の声は大きすぎる。」
私は舞っていた足をとめる。
「先生。私はどうすれば良かった?どれが正解だった?」
『“私と話す事。”それが正解だ。』
「何それ(笑)?変なの(笑)。」
私はもう一度先生の隣に座る。
『1人だけ話す相手がいればそれでいい。君にとってその相手は私だし、私にとってそれは君だ。』
「先生、本当に変な事言うね〜(笑)。でも、ありがとう。あっ、そうだ。先生も一緒に踊らない?ダンスパーティーみたいなの。」
『ダンスパーティーみたいな踊りならできる。』

私は裸足のまま、先生と一緒に踊った。
先生の温もりは私が築いてきた壁を優しくノックしてくれるものだった。

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テスト週間に入った今日、教科書やノートを開いたままやる気にはなれなかった。
机に座って窓の外を眺めていると、先生が顔を覗き込んだ。
「うわぁ!びっくりした!」
『勉強、進まないのか?』
「やる気が出ないんだよね〜。」
『それなら、教えてやろうか?』
「1人よりはそっちのほうがいいかも。教えてくれる?」
『あぁ。もちろん。』

先生はノートにキレイな字を書いて説明をしてくれる。
時々色を使って、“自主勉ノート”のように完成させる。
『ここがこうなって。ここ、こうなる。わかるか?』
「わかるよ。先生の書き方わかりやすいから。このまま提出したら提出点貰えそう(笑)。」
『わかりやすいなら良かったが、提出はするなよ?私がやったとバレたら他の人にも教えなきゃいけなくなるだろう?』
「えっ?そっち??(笑)」
『どっちの「そっち?」だ?』
「これ、提出したらいけない理由が自分が面倒くさいからなのと、他の人にも教えなきゃいけなくなるっていうこと。 ん?どっちも一緒か??」
『教師として注意しない理由か?(笑)』
「そう、それ!!」
『別に自主勉強ならどうやろうが勝手だろう?私が教えたって自主勉強だ。』
「じゃあこのノート、先生に提出するよ!(笑)」
『私が私を採点する事になるじゃないか!(笑)』
「嘘、嘘(笑)このノートは秘密にしとく(笑)。」
『そうだな、二人だけの秘密だ(笑)。』
先生はニコッと笑い、立てた人差し指を口元に持ってくる。
私も真似して、人差し指を立てると先生が口を開いた。
『少しはやる気になったようで良かった。この時期のテストだ。留年するなよ?』
私は先生を見て、大きく頷いた。

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最近、窓辺にいる事が多くなった私を時々、先生が気にかけて訪ねて来てくれる。
『今日の君も見つけやすいな(笑)。』
先生がニコッと笑いながら言う。
「宝物探しゲームみたいに言わないで?学校狭いんだもん(笑)。すぐ見つかっちゃうよ。」
『また何かあったか?』
「特にないよ?な〜んにもない(笑)。」
ニコッと笑った私を見て先生は隣に座る。
『何かあったんなら、私には言え。私だけでいい。ちゃんと君を受けとめてやるから。』
「ありがとう(笑)。」
『笑いながら泣いてる。』
先生はそう言って私の頬に手を伸ばし涙を拭う。
「えっ?」
笑っていたつもりだったのに、先生が変な事言うからだ。
『何かあったか?』
「何もないよ(笑)。先生が変な事言うから(笑)。」
『私のせいか?(笑) ごめんごめん(笑)。』
「でも、ありがとう先生。嬉しいよ。」
『良かった。』
先生はニコッと笑顔を見せ肩を降ろす。

本当は沢山言いたい事があるし、先生に聞いてもらいたい事もある。
でも、先生にだけは迷惑をかけたくなかった。
それに、私の事をわかってくれるだけで、気にかけてくれるだけで良かった。
私は先生がいなかったら本当に1人になってしまう。
そう思いながら先生に言った。
「先生も何かあったら言ってね?私も先生をちゃんと受けとめるから。」

ただ1人、私の事を見てくれる先生には誰にも言えない秘密がある。
その秘密を二人で分け合った私達は、お互いを見つめていた。
私も先生もたった1人だけ、理解してくれる相手がいた。
それはきっと、どの星にいる誰よりも幸せな事なのだと思う。

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先生が窓辺で梟と話をしていた。
「先生?その子は??」
話しかけた私に気づき振り向く。
『可愛いだろう?この子が郵便配達をしてくれる。』
私は窓に腰掛ける。
「聞いたことある。伝書鳩みたいなお仕事よね?」
『あぁ。きっと鳩よりは賢いぞ。』
そう言って梟を差し出す。
「触っていいの?」
『この子は触っても問題ないさ。』
「この子がいるって事はお手紙、来たの?」
『いや、手紙を出すんだ。』
「へ〜、何処に?」
『そろそろ薬草がきれそうなんだ。』
「魔法の世界の薬草が必要なんだっけ?」
『あぁ。手紙を出せば送ってくださるからな。』
「あ、もしかして自分の事を尊敬してくれるから尊敬してる人?」
『よくわかったな。』
「先生、敬語になったから。」
『いつも人がいないときにこの子を送ってるんだ。』
「その人、きっと優しい人なんだろうね。」
『優しいさ。君は今、暇か??』
「えぇ、暇だけど?」
『ちょっとこの子を持っていてくれ、手紙を結びたいから。』
そう言って私の腕に梟を移す。
「お手紙はもう書いてるの?」
『あぁ。あとはこの子の足に結ぶだけだ。』
そう言って先生は手紙を足に優しく結ぶ。

『さぁ、おいで。』
先生は梟に話しかける。
『見ていろ。いくぞ?』
「うん。」
先生は少し手を引き梟が飛びやすいように助走をつける。
名一杯出した右手から梟が飛び出す。
「これでちゃんと届けられるの?」
『あぁ。向こうから来た子だ。あとは家に帰るだけだ。』
「先生も動物には優しんだね(笑)。」
先生は少し照れくさそうに笑う。
『バレたか(笑)』

私は先生に魔法の世界での話を詳しく聞いた。
先生の横顔を眺めながら、私は新しい秘密を受け取った。
二人の秘密。
誰にも言わないようにそっと胸の中にしまった。

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最近、先生が校長になるという噂が流れている。
手を伸ばしてもスルリと抜けていく先生に、少し寂しく思っていた。

廊下の角を曲がろうとすると声が聞こえた。
現校長の声だったので、隠れて会話を聞く。
先生と話をしていた。
“先生、校長になる気はありませんか?”
『今、答えを出さなければなりませんか?』
先生は質問を質問で返す。
“いやいや〜。今でなくていいんです。考えておいて下さい。”
『わかりました。考えておきます。』
会話が終わりそうだったので、私は静かに、でも急いで、踵(きびす)を返した。

私はお気に入りの窓に腰掛け、空を眺めていた。
『またここにいたのか?』
先生の声がするので振り返る。
「あ〜、先生。なんか久しぶり?」
『昨日会ったばかりだ。』
「そうだった、そうだった。」
『何かあったか?』
「別に何もないよ?」
『またここに来てるし、何もないと言ったときは大体何かある。』
「じゃあ、本当に何もないんだけど、1つ聞いていい?」
『あぁ。もちろん。何だ?』
「先生は校長になるの?」  『え?』
「先生、校長になるの?」  『何で?』
「噂がウジャウジャしてる。」
『私が校長になると君に何か不都合があるのか?』
「別にないよ?」
『じゃあ何でそんな事を聞くんだ?』
「先生が昇格すれば、おめでたいよ、そりゃあ。でも、今みたいに一緒にいれない。先生がどんどん遠くに行っちゃう気がする。ただそれだけ。」
『そうか。ただ、私は校長になるつもりは無い。』
「本当?」
『あぁ。本当だ。君もそう言ってくれているし、踏ん切りがついたよ。』
「何でならないの?校長。」
『私には似合わぬ職だろう?笑 それに、今のままで私は十分満足だからな。』
「ありがとう。」
『何でお礼を言うんだ?』
「今のままで良いって言ってくれたから?」
『何なんだ?それ(笑)』
私達は少しの間笑い合った。

先生が、これ以上スルリと抜けてしまわないように私はそっと“レプラコーン”にお願いをした。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

今日の天気予報では曇りのはずだったのに、昨日の気温よりもマイナス10度以上で、大粒の雪が降りしきっていた。
服の袖や手の中に落ちてくる雪が、体温で溶けて水へと変わる。
窓から身を乗り出していたが、寒すぎたので窓を閉めて布団に潜る。
寝転んだまま窓から空を眺める。
真っ白な世界に吸い込まれてしまいそうだ。
出たくないなと思っていた時、ノックの音が聞こえた。
「は〜い。」
返事をすると扉が開く。
『今日、寒いから外に出ないつもりだろう?』
入ってくるなり先生はそう言った。
「出たくないな〜って思ってたとこ。」
『私と雪だるま作らないか?』
「小学生じゃないんだから嫌!!!」
そう言って布団に潜ったが、すぐに布団を取られた。
「あ〜!!寒いっ!!!」
『ほら、着替えて。でないと雪合戦に変更するぞ!』
「も〜、しょうがないな〜!!!」
私はコートを羽織って外に出る。
手袋をしている先生は手を振る。
片方の手にはまだ小さな雪玉がある。
「どれくらい大きくするの?」
『できるだけ大きくする。』
私は小さな雪玉を作り雪の上で転がす。
「今日は先生、小学生みたいね。」
『あまり降らないからな。雪。』
「そうね〜。外に出てしまえば楽しいんだけどね(笑)。」
『真っ白な世界は、私の持っている濁りもキレイにしてくれる。』
「どっちかと言うと、濁りをなすりつけてるよね(笑)。」
『そうか?』
「私達は真っ白を汚してる。」
『確かにそうだ(笑)。』
「でも、それで私達は温かくなれる。今日は誘ってくれてありがとう。」
『こちらこそ。誘ったのは私だからな。ありがとう。』

私は小さな雪玉を新しく作って投げつけ、そして笑った。
その後、少し雪合戦をして、大きな雪だるまを作った。
私達は少しだけ雪の上に寝転んでいた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

『何を覗いているんだ?』
ビー玉を覗き窓辺に座っていると先生が声をかけてきた。
「ビー玉、覗いてるの。上下反対に見えて面白いんだよ?」
『そこからは何が見える?』
ビー玉を通して先生を見る。
「逆さまになって、こっち見てる先生が見える。」
『私は逆さまではない。外がどう見えるのか教えてくれ。』
「そうね〜。校舎が反対になってて、海に浮かんでるみたい。まるで不思議な形の船ね。 校舎についている灯りがキレイよ。」
『楽しそうだな。』
「ビー玉を通した世界の方がキレイに見えるわ。先生も一緒に覗く?」
『ビー玉、ひとつだろう?私はいいさ。』
「先生。私、2つ持ってるよ?」
ポケットからもう一つのビー玉を取り出す。
『用意がいいんだな(笑)。』
「覗くでしょ?(笑) はいっ!」
先生は横に座ってビー玉を覗く。
『今日の君は小学生みたいだな。』
「そう?スプーンとかさ、私達が見ているものと違う景色って面白くて好きなの。」
『確かに、ビー玉の世界は面白いな。』
「でしょ?(笑)」
私は先生を見て笑う。
「少し違う視点から見ると、ずっと見てきたものも新しく見えるんだよ。」
『小学生みたいな顔して大人な事言うんだな(笑)。』
「だって小学生じゃないもん(笑)。」

私達は次のチャイムが鳴るまで、二人でビー玉を覗き込んでいた。