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終末を巡る_13

琥珀はそのまま落下した。…が、途中で落下が止まり、尻あたりに痛みが走る。
「きゃんっ!!」
_林檎、林檎をあのまま落とすわけには…!
振り向くと、蜘蛛がその脚で尻尾を掴んでいた。蜘蛛の背中の上で背中合わせになって脱力している人間を見て琥珀はぞわぞわした感覚に陥る。
「ガルルルルッ!!」
琥珀が思い切り威嚇をすると、人間は意識を取り戻したように飛び起きた。その反動で蜘蛛の顔が上へ上がり、尻尾を掴んでいた脚が離れる。


できるだけ風の抵抗を受けようと努力する林檎の首根っこを、琥珀はぎりぎり甘噛みすることに成功した。琥珀はそのままかなり無茶な体勢で林檎を庇いながら地面に墜落する。
『こはく』
『……すまん…しばらくは、動けそうにない…』
『んーん、あやまることない。こちらこそごめん、ありがとう』
たどたどしくも林檎はそれだけ言って、琥珀の顔や身体を舐めてやった。
『…更に下に来ちまったな…』
『あんぜんならいい、やすもう』
『…ああ』
林檎の温かみを感じながら琥珀はゆっくり尻尾を振りつつ目を閉じる。
林檎も目を閉じて琥珀のお腹に頭を乗せた。

誰も入りたがらないような真っ暗な穴の中、世界の真相に触れかけた狼と兎は、寄り添って寝ていた。

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皇帝の目・回復魔法のご利用は適切に_設定

前回のやってないですね。やってないのでどっちもまとめて書きます。

回復魔法のご利用は適切に
シオン:中学1年生、13歳。魔法はほぼ無知、あんまり頭はよろしくなく、ちょっと(かなり)脳筋な女の子。とにかくでかい。運動神経は全校一で回復魔法の持ち主。怪我を治したり壊れたものを直したり結構幅広い能力。一部の人に看護師呼びされている。出てきてないけどお兄ちゃんがいる。かっこいいので慕っている。

エリザベス:中学1年生、14歳。良家のお嬢様なので魔法に詳しく勉強もできるが残念ながら変人。ドリルな縦ロールでハーフツイン、しかもゴスロリでかなり目立つが上品な性格でもある。爆発魔法の持ち主。「シルバーバレット」と詠唱することで爆弾を銃弾のように打ち出せる。家族が過保護で面倒。

レオン:28歳教員。生徒との距離が近い。(物理精神ともに)重力・引力操作魔法の持ち主。

皇帝の目
梓:人付き合いの下手な中学2年生。自由人だが環境は大事にしたいタイプ。面倒事は嫌いで結構ズボラなところがあるため家族に呆れられている。小さくて貧弱で、ある日ビーストの襲撃に巻き込まれてなんか目も悪くなったので生きづらさを感じている。チトニアのことは好きなので彼女に対しては愛想が良く、可愛がっている。

チトニア:とにかく喧しくてよく叫ぶ元気なドーリィ。テンションが高く物理的距離も近く若干束縛気味なのでマスターになる人がいなかった。皇帝ひまわりのドーリィで、皇帝という名にふさわしく蝶や蜂の眷属がおり、ひまわりらしい明るい金髪と黄色の服が目立つ背の高い少女。武器などもいろいろ持っている。今は梓にべったり。

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Trans Far East Travelogue89

嫁と2人,昼下がりの済州島西部の砂浜を歩いていると嫁がポツリ「あんたはうちんことどう思うと?本音ば教えてや〜うち、あんたん理想ん妻になれとるかなぁ」と切り出すので嫁と目線を合わせながら「正直言って,君と結ばれて幸せだよ。元カノと比べるようでアレだが,アイツは口では『大好き』とは言ってくれたけど行動では全く俺のこと大切にしてくれなくて2度目のデートの時点で別れる覚悟をしていた。でも,君は積極的に愛情表現してくれるだけかと思いきや,ほぼ毎日試合があるプロ野球のその日の試合次第でメンタルがブレまくる俺に君はずっと寄り添ってくれるでしょ?その対応が嬉しいし、おかげで君のこともっと好きになるし、もっと大切にしたいと思うんだ」と笑って返すと、嫁は堰を切ったように泣きはじめ,俺は反射的に嫁を抱きしめる。そして,暫くして落ち着いた嫁が「うち、元カレと付き合うとった頃に散々酷かこと言われてキツから頑張って彼ん好みに合わせようと色々頑張ったと。ただ,結局短期間でん努力では彼ん期待に応えきらんで見限られてフラれちゃったけん、次ん彼氏は優しか人が良かて思うとった矢先、傷心旅行んつもりん旅であんたに出会うたと。そしたら,今はほんなこつ幸せやけん、どげん大変な時も自殺なんかしぇず生きとってくれてありがとう」と言うので流石に照れるが,「俺、1人でアレを乗り越えることなんかできなかった。でも,最初の希望をくれたのがプロ野球の巨人なんよ。『今年も日本一になれなかった。でも,来年こそは勝つからその時までは信じて生きていよう』の繰り返しでずっと足掻いてきて,10年目に例のオープンチャットで君と知り合って恋に落ちた。そしたら,その時から辛い出来事をを乗り越える大義名分が『巨人の日本一を見届けるため』というのと『九州の想い人に会うため』の2つになったんだよね。それから2年後に入った大学では上手くいかなかったけど巨人は12年越しの悲願を叶えたし,そこから更に2年後に君と結ばれたからな。こんな俺を選んでくれて本当にありがとう。これからもよろしくな、俺だけの女神様」と伝えると嫁が「生涯バッテリー宣言したけん,支え合うのは当たり前や」と笑い、その後真面目な顔で向き直り,「改めて,こちらこそ不束者ですが末永くよろしくお願いします」と言ってお辞儀している。
そして,気付いたら巨人交流戦優勝のニュースが入っていた。

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五行怪異世巡『肝試し』 その②

集団の最後尾を歩いていた青葉は、背後から肩を叩かれ、立ち止まって持っていた杖を強く握りしめながら振り返った。
「…………あれ」
「や。青葉ちゃん、だっけ?」
「どうも、こんばんはです、犬神さん」
彼女の背後には、犬神が笑顔で立っていた。
「花火大会に来たら偶然見かけちゃったもんだから、ついて来ちゃった」
「そうですか」
「どしたの?」
「……クラスの馬鹿な連中が肝試しするって話してたんで。ここがガチのスポットってことは知ってたので、〈五行会〉として護衛につこうと同行している次第です。……あ」
青葉は不意に思い出したように声を上げ、同じくほぼ最後尾を歩いていた少女を呼んだ。
「犬神さん、ちょうど良い機会なので紹介します。彼女は最近〈五行会〉に入った……」
「特別幹部《陰相》。“霊障遣”の榛名千ユリ。あんたは?」
自ら名乗った千ユリに、犬神は握手を求めるように右手を差し出しながら答えた。
「や、私は《土行》の犬神だよ。キノコちゃんが言ってたのはあなただったんだね」
「キノコ?」
「あれ、会ってないの?」
「……千ユリ。多分種枚さんのことだと思う」
青葉に言われ、千ユリはしばし考え込んでから手を打った。
「あぁ、アイツか」
「ところで2人とも、ここで話してて良いの? 他の子たち、かなり上まで行っちゃったけど」
「あっしまった」
すぐに振り返り、急ぎ足で上り出す青葉を、千ユリと犬神は焦ることも無く悠々と追った。

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五行怪異世巡『肝試し』 その①

8月某日。世間の子供たちが夏休みの只中にあるとある日の夕方ごろ。
数人の中学生の男女が連れ立って、河原への道を歩いていた。
その河原は、この日19時から始まる花火大会を眺めるには絶好のスポットであり、夜店なども多く出店し、ある種の祭りのような様相を呈していた。
しかし、彼らの主目的はそこには無い。出店の隙間を埋める人ごみの中を彼らは迷い無く通り抜け、上流の方向へ、ひと気の少ない方へ只管歩き続ける。
土手を上がり、まばらな街灯の下を進み、深い木々の中に埋もれた石段の前に辿り着き、そこで一度立ち止まる。
先頭に立っていた少年が腕時計を確認し、残りの面々に向き直る。
「現在午後6時40分、花火大会が終わるまでは1時間以上余裕である…………それじゃ、行くぞ! 肝試し!」
少年の言葉に歓声を上げ、子供たちは石段を上り始めた。

“廃神社”と呼ばれるその心霊スポットは、その呼称の通り数十年前に放棄された廃神社である。
周辺をオフィス街や住宅地、幹線道路などに囲まれている中、不自然に小高く盛り上がった丘の上に建っており、丘陵全体は雑多な木や雑草に覆われ、辛うじて名残を見せる石段と境内も、処々に荒廃や劣化が現れ、不気味な雰囲気を演出している。

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Trans Far East Travelogue 88

俺たちを乗せた船が先程着いたソグィポ(西帰浦)の港は韓国で最も高い山,ハルラ(漢挐)の南麓に位置しており,また韓国で2箇所しかない火山島のチェジュ(済州)島南部の観光拠点だ。
入国審査を済ませ,わざわざフェリーで韓国本土から8人乗りの大型車を運んで迎えに来てくれた従兄と4年越しの再会を果たして色々話し込み、車に乗って目的地の海岸に着いてもなお話は弾んでいた。
この様子を遠目から微笑ましく見ていたのは,韓国に留学した経験があり,ソウルに着いてすぐのまだ韓国語に慣れていなかった時期に偶然通りかかった人(当時中学生だった俺)に英語を交えて手助けしてもらった縁からその人と交際に至ったという経歴の持ち主であり、俺達夫婦,特に嫁と船上で会話し野球で直接対戦したこともあった元カノだ。
一方,それを見ていた嫁は自身は韓国語が分からないだけに俺と従兄の韓国語の会話が長すぎて待ちくたびれたのか、それとも俺達の会話を微笑ましく見守る元カノに対する嫉妬からか「世界で熱く光る♪都育ちの主役♪自慢の旦那と♪デートへ♪GO now」となぜか往年の横浜の選手の応援歌を替え歌しているので,俺以外の野球が好きな日本人メンバーもつられてプロ野球の応援歌を替え歌し始め、俺もつられて「さあ行こうかチュンナム♪우리 어머니의ふるさと♪恋実り幸せだ♪니 옆이 최고야♪」と韓国語も交えて即興で替え歌すると,一気にスイッチが入ったのか各々の応援歌替え歌の原曲は誰のものかを当て始め、気付いたら嫁の手を握って歩いていた。
「福岡育ちの♪自慢の嫁さん♪なぜこの美人が♪今,そばにいる」とか「光り輝き♪歴史も長い♪あゝ不滅なり♪嫁のふるさと♪九州・福岡県」と続けて替え歌すると,嫁が「夢が〜溢れる♪韓国滞在♪круто ♪мой муж ♪都の〜宝♪行くぞ行くぞどこでも世界中♪愛しの旦那の側にいて♪一緒がいいな♪貴方が大好きです♪」と替え歌で返すので俺も「福岡目指し駆け抜けた♪恋の思いは届き♪僕らの笑顔が今♪すぐそこにある♪」と返す。
済州名産の柑橘の花と磯の香りが天然の香水としてお互いをより一層魅了しあっていることや一連の替え歌メドレーの映像がSNSで流出し日本の野球ファンを盛り上げていたことに俺たちはまだ,気付いていない。

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五行怪異世巡『霊障遣い』 その⑯

「ふゥーん……? 大分おイタを働いたようじゃあないか。ンで、青葉ちゃんに負けたと」
「何か悪い?」
「いやァ? ……で」
少女千ユリから離れ、種枚は青葉の顔を覗き込んだ。
「そんな危険人物連れて私の前に現れて、どうしたいのさね」
「彼女を〈五行会〉に引き入れます。彼女の『悪霊を封じ、使役する』異能は、必ず人類のためになりますから」
「…………へェ。青葉ちゃんや、随分と強くなったねェ?」
「……そうですかね?」
「いや、元からタフなところはあったっけか……。あー、ユリちゃんだっけ?」
「千ユリだバカ野郎」
「女郎だよ。千ユリちゃんね。じゃ、青葉ちゃんの下で面倒見てもらうとするかね……」
「はぁ⁉」
種枚の言葉に、千ユリが食い気味に反応する。
「誰が誰の下だって⁉」
「いや実際負けたんじゃあねェのかィ?」
「こんな霊感の1つも無しに外付けの武器だけでどうこうしてる奴の下とかあり得ないんだけど⁉」
「えー……面倒な娘だなァ…………」
種枚はしばし瞑目しながら思案し、不意に指を鳴らした。
「じゃ、いっそ新しく役職作っちまうかィ。面白い異能持ってるようだし、たしかに誰かの下につけとくべきタマじゃねェやな」
「ようやく理解したか……」
半ば呆れたように溜め息を吐く千ユリにからからと笑い、種枚は天を仰ぎながら考え始めた。

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五行怪異世巡『霊障遣い』 その⑮

「潜龍さん? 何をしているんですか?」
短刀の刃を掴み、青葉が低い声で尋ねる。
「……こいつの異能は危険だ。その根源たる十指を、切断する」
平坂は平然と答えた。
「……そうですか。なら、私の手諸共、斬ってみますか?」
「……離せ」
「離しません」
平坂が短刀に込める力を強め、それと同時に青葉の握る力も強まる。
「こいつの遣う霊障によって、既に人が死んでいる。こいつの異能は封じられなければならない」
「だとしても、私はその手段を許しません」
青葉の掌と刃の隙間から、血が滲み出る。
「……ほう。ならば、何か他の手段があるとでも? こいつの力を、確実に封印できる手立てが」
「はい。『私達』が手段です」

翌日。
少女の手を引いて街中を歩く青葉の前に、種枚が現れた。
「あ、クサビラさん。ちょうど探してたところだったんですよ」
「そりゃちょうど良かった。で、その娘は何者だい?」
少女に顔をずい、と寄せながら、種枚が青葉に尋ねる。
「えっと、最近悪霊について騒ぎが起きていたことについては、御存じで?」
「そりゃあ、ここいらで起きる怪異絡みの出来事に関しちゃ大体把握はしてるがね」
「その犯人です」
「……へェ? お前、何て名だい?」
種枚に臆する事無く睨み返しながら、少女は答えた。
「榛名千ユリ(ハルナ・チユリ)。霊障遣い」

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エッセイ的な何か

世の中には「孤独が耐えられない!」「ひとりぼっちだと死んじゃう!」って人、結構いるよね。
それに対して今のウチは、ずっと1人でもなんとも思わないし、むしろ1人の方が気が楽な時があるのよ。
「孤独を好むのは発達障がいのせい」と言えばそれまでなんだけど、正直それじゃあ腑に落ちない。
じゃあなぜか、色々調べたり考察したりしてみると「自己を肯定できているか」って所に行き着く。
「孤独を感じない人」は自分のことを1人で評価できているから自己肯定感が高くなるが、「孤独を感じる人」は他人にばかり己の評価を求めているから寂しがってるそうなんだ(ネット調べ)。
まぁホントかどうかはさておき、寂しがってる人って他人に肯定されたがっているのかなとは思える。
そういう人って、認識の有無を問わず自己肯定感が低そうだしさ。
自分が一時期友達が欲しくて仕方なかった時も、自己肯定感が低かったんだよね(あと普通の人間は友達がいて当然という思想)。
それがどうでもよくなったのって、ある意味学力とか他人への信頼とか色んなものを失って最後に自分の中に己が愛した創作活動しか残らなくて、ひたすらそれを続けていたからだし。
あと歳の近い妹に「大学では好きなことをやっていい」って言われたこともある。
好きなこといっぱいやってる内に気付いたら寂しさを感じなくなっていったんだ。
だから孤独を感じる人は“(コンプライアンスに抵触しない程度に)1人でもできる”好きなことを見つけることから始めてみようぜ。
きっと好きなことに没頭してれば寂しさなんて感じないはずだからさ。

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五行怪異世巡『霊障遣い』 その⑭

少女が叫ぶように言うのと同時に、背後から青葉の心臓近くを武者霊の刀が貫いた。更に、女性霊の手が後ろから首を掴み、力を込める。
「…………」
「ッハハ、ザマァ見ろ……! 霊障は直接魂を害し、肉体にダメージを誤認させ、現出させる!」
「なんだ、結構斬ったのにまだ動くのか。そういう力か?」
「……は?」
悪霊2体の攻撃を意にも介さず前進する青葉に、少女は呆然とする。その隙に、青葉は少女の胸倉を掴み、仰向けに転がした。
「な……おい、やめろ……止まれ!」
少女の言葉を無視し、青葉は片足を高く持ち上げ、勢い良く振り下ろした。
「…………悪いけど、こっちも才能以外は数百年分背負ってるんで」
失神した少女の頭の真横に下ろした足をゆっくりと退かしながら呟き、背後の悪霊たちに目を向ける。それらは呆然と立ち尽くしていたが、やがて倒れた少女にじりじりと近付いていき、そのまま掻き消えた。
「……はぁ、緊張した…………」
腰を抜かしてその場にへたり込んだ青葉の隣に、平坂が歩み寄って来た。
「あ、潜龍さん」
「すまんな。お前に最も危険な仕事を任せることになった」
「いえ別に……潜龍さん?」
平坂は徐に地面に捨てられたままになっていた短刀を拾い上げ、刀身をしばらく眺めてから握り直し、少女の前に屈み込んだ。
「潜龍さん?」
青葉の呼びかけには答えず、平坂は脱力して開かれた少女の右手の指の付け根に、刃を当てた。