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LOST MEMORIES 414

司書さんからお静かにとたしなめられ、初対面の男子生徒からはぎょっとされ、自分でもらしくない行動に赤面しつつ、図書室からの帰り道、なぜかその男子生徒と並んで帰る瑛瑠。
「あの、すみません……この本、読み終わってからでも構いませんよ?」
図書室で読むはずだった本は、結局お持ち帰りコースとなったのだが、先の状況と違うのは、瑛瑠がそれを譲ってもらったこと。
「いーのいーの。俺興味ないんだけどさ、勉強しろって家のやつうるさくって。
なんかテキトーに持ってきただけなんだ。」
悪戯がばれた子供のような、ばつの悪そうな、恥ずかしそうな、そんな表情。
新しいタイプの人である。初対面の打ち解けやすさは歌名に匹敵するなと頭の片隅で思う。
とてもまっすぐで綺麗な目を持った人。
「にしてもアンタ、こんなん読むのか?面白い趣味してんな。」
面白いというわりに興味のなさそうな声。
表裏のない人だなと瑛瑠は苦笑する。
「あ、俺こっち。」
階段前で立ち止まった彼が指差したのは、瑛瑠の向かう階ではない。
「俺、2年だからさ。じゃあな。」
まさかの年上だったか。改めて敬語でよかったと瑛瑠は思う。
「ありがとうございました!」
片手を挙げた先輩。
しばらくしてから、名前を聞くのを忘れたことに思い至った。

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LOST MEMORIES~バレンタインver.~

例によって放課後。しかし今日いつもと違うのは、歌名も待ち組であるということ。望を待つ3人の間に会話はなく、しかし穏やかな時間が流れていた。
瑛瑠は本を読んでいた。肩まで下ろした髪はたまにこぼれ落ち、流れるようにそれを耳にかける。そして、ページをめくる。英人は瑛瑠のそんな様子を眺めていた。
伏し目がちな透き通った目、形の整ったつやめく唇。
また、ページをめくる。すると、優しい香りが鼻腔を擽る。
「……甘そうだな。」
思わず呟く。
瑛瑠が顔を上げ、視線をこちらへ向けたことで、自分の声が漏れていたことを悟った。
思考が停止してしまい、対応できない。歌名の視線が痛い。睨み殺されそうだ。
次の瞬間、瑛瑠はふわりと微笑んだ。
「なんだ、バレちゃっていたんですか。望さん来てから渡そうと思っていたのに。」
そう言って、可愛らしく包まれたひとつの小さな箱を取り出し、英人の机にことんと置く。
「甘そうに感じたのは、たぶんこのチョコレートの香りでしょう?こちらの文化に乗ってみました。英人さん、ハッピーバレンタイン。」
──そうか、今日はバレンタインデー。
同じように歌名からも渡された箱には、今挟めたかのような2つ折りのメモ。
“瑛瑠が鈍くてよかったね。今年は甘そうな瑛瑠が作った甘いチョコレートで我慢しなよ!”
今年は,なんてフレーズに友人の愛を感じ、甘いなと今度は苦笑してみせた。