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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その③

「しかし君らも飽きないな。毎日毎日何にも無い空間に手ェ伸ばして。退屈しないの?」
ルチルのその言葉にネコメの動きが止まり、口元をニタリと歪ませてルチルの顔を覗き込んだ。
「『何も無い』? 何も無いだって? そう見えるのかい? ハハハ、そうかそうか! ボクらが何も無いところを手探りする狂人にでも見えてるわけか! クォーツのひとでも聡い奴ばっかりじゃないんだねェ!」
「死にたいようだな?」
核に水晶針を突き付けられ、息を呑むようにネコメの笑いは途切れた。
「ぃやァーゴメンナサイ調子乗りました……。いやね? 違うんですのヨルチルのひと。ボクら、そうこのネコメちゃんとクリスチャンは、可視光しか感知できない残念な眼玉しか持ち合わせてない余所のメタルヴマらとは見てる世界が若干違うんですノヨ」
「……前にも聞いたな。どういう意味なんだ?」
ルチルの問いかけに、シシシと息を漏らすように笑いネコメは答える。
「いやほら、たとえばボクはクリソベリル・キャッツアイ。イワユル“猫目石”を核に持ちましてね。この猫目は現在絶賛生き別れ中の両の目玉とは違って、ゾクゾクするモノとワクワクするモノしか見てくれないんですノヨ」
「……つまり、どういうことだ?」
「ボクが触れたら死ぬような危険物の存在が、ボクには手に取るように分かる。距離も方位もね。『ワクワクするモノ』ってのはそりゃァルチルのひと」
ネコメはそこで言葉を切って、再び虚空に目をやった。
「“小さな世界”ミクロコスモスの外っ側でさァね」

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対怪異逃避行:鏡像の怪異 その⑦

(そうはさせるか……! それにテメエの攻略法なら、既に『複数』考えてあるんだよ!)
奴が完全にしゃがみ込み、普通にしていれば目が合わないなんてあり得ないほどに身体を折り曲げた。しかし生憎と、現実の俺と鏡の中の俺の目が合うことは無い。
咄嗟に出したスマホのライトで照らされて、反射光で完全に顔が潰されてるんだからな。ちょっと眩しいが、この程度はコラテラルダメージだ。
「ザマァ見やがれ」
鏡像に中指を立てて校舎を出る。向こうも中指を立てて返した。所詮は反射だ。

「やあ、お疲れ様」
「ん」
校舎を出て数歩、あいつが背後から肩を叩いて労ってきた。間違っても後ろは向かないようにする。また鏡面を見る羽目になっちゃまずいし。
「いやぁ、奴が勝手に動いた時にはもう駄目かと思ったよ」
「あんま俺を舐めんなよ? お前から怪談を聞いては『主人公もこうすりゃ良かったのに』なんて妄想してんだぜ」
「私が君の生存に一役買ってたわけだ。嬉しいことだね」
「身の程を弁えろ元凶」
「はっはっは。ところで奴の出現範囲は、『学校敷地内』だ。校門までもう少しだけ、気を張っていた方が良いと、私は思うね。……そういえば今日は午前中、雨が降ってたね」
「わーかってるって」
用済みになったスマホはうっかりオフになった画面を見ないようにポケットに仕舞って、校舎からは全力で目を逸らして、俺たちは無事に帰途についた。
ちなみにあいつは不法侵入について何のお咎めも無かったらしい。というか侵入を気付かれてもいなかったらしい。たしかに他の生徒や教師の姿は見なかったが、侵入者が全く気付かれず好き勝手歩き回るとか恐ろしいことだよなぁ。

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ひとりごと。

12月の終わりも近づいてきました、寒いです
最近あんまり来れてなかったし、ここから年末までも来られるか怪しいので、突然ですが、2022年の振り返りをしようと思います
ひとりでどーこー振り返るだけなんですけれども、よかったら読んでいってください

私の中の大きな出来事として、2月に受験がありました。前のアカウントの頃ですが、受験応援ポエムを色々投稿しました。
合格して、それからは、、あんまり覚えてないですね笑、全体的に、恋のポエムを書いていました。
今から見るとすごく恥ずかしいですね!!
いや今も恥ずかしい…来年こそは頑張ります…

この1年で嬉しいことも楽しいことも、悲しい時間も苦しい時期も、ぎゅっと密に経験してきました。とても満たされた1年間だったと感じています。
これらの日々を言葉に表すこと、抽象的なものを、脳内の語彙をひねりにひねって言葉に絞り出す力は少しはついたのかな、、ついたということにさせていただきましょう!

それから個人的な感想なのですが、2022年は掲示板での交流が活発でしたよね
スタンプをたくさん押していただいたり、レスでやり取りをしたり、他の人のことを身近に感じることができて嬉しかったです
特に今年は感想をレスしていただく機会が増えて、本当に私のポエムが届いているのだな、と感動していました。
来年は私もレスしていこうかな、と思ってます(突然お邪魔するかもしれませんがよろしくお願いします)


相変わらずまとまりのない文章ですが、長くなってきたのでこの辺で。
普段私のポエムを読んでくださっている方々、ありがとうございます
より成長した自分で、よりまっすぐに言葉を伝えていけるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。

La-la.

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ユーラシア大陸縦横断旅64

霧に包まれたタワーブリッジを渡り、第二次大戦中に対独戦のエースとして活躍し、ドイツ降伏後は対日戦に備え対空装備を充実させたが装備が整うまでに終戦を迎え、戦後には博物館としてロンドンに係留されて保存された歴史を持つ元軍艦の博物館船HMSベルファストに入る
甲板に出てみると彼女は川の対岸に広がる中世の伝統に則って建てられた歴史的建造物群に見惚れている
俺はというとそんな彼女の横顔を見惚れて即興の替え歌を口ずさむ
「川面に〜渋く光る〜♪ロンドンの守り人なのに名前はなぜかアルスター由来」と歌うと、彼女が反応して「アルスターってどういうこと?」と訊いてくる
「このベルファストをはじめとした巡洋艦というジャンルの軍艦の総称知ってる?」「タウン級でしょ?」「そうさ。ちなみに、ベルファストは北アイルランド、つまりアルスター地方の大都市が由来だから、イングランドの都を守った軍艦の名前がイングランドとは関係ないアルスターの町から付けられたことをちょっとネタにしたんだ」
「それを言ったら、レイテ沖で沈んだのは東京由来の軍艦でしょ?」という反論のしようがない正論を返され「一本取られたなぁ」と言って笑うと彼女も笑い出す
そして、しばらくして「たかだか80年ちょっと昔に敵対していた国の軍艦のことをネタにして笑えるほどの平和ってのはありがたいな。当時の戦争を体験して、かつての敵国を未だに憎む人だっているのに、友達のように扱ってくれる国が多いのは外交努力の賜物だな」と呟く
「そうね。アメリカに至っては震災の救出作戦で日本語の『友達』をそのまま作戦名に使ってくれたのは知ってるでしょ?」と返ってくる
「そうだな。東郷神社も記念艦三笠もアメリカの援助がなければ戦争で消えてそのままだったし、震災が起きるとすぐに救助隊出してくれたから感謝してるよ。それに、東郷平八郎とアメリカ海軍の話題が無ければ君とは海外の話で盛り上がれなかった。そういう貴重な経験をくれたという意味でもアメリカには感謝している。ただ、言葉は別だね。あんな癖の強い英語は俺には合わない」と言うと「私にはマーマイトみたいに癖の強い英語は合わないんだけどね」と言って彼女が苦笑いを浮かべる
「マーマイトとハギスは俺にも合わんよ」と言って俺も笑うと何度目かわからないお馴染みの鐘が鳴る

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復讐代行〜第24話 塑性〜

「排除って…でもどうやって?」
「知らないよ」
「随分雑だな、人に頼むならもう少し具体的なアイデアを出してくれよ」
あえて返信はしなかった。あくまで主導権は私だというのに…どいつもこいつも…
「わかったよ、受けないのはこっちとしても損しかない、その頼みは俺に任せろ」
追ってLINEが届く。小橋はアレで結構素直だ
“ハナからこっちにすれば良かったかなぁ”
そうほくそ笑みながら携帯の画面を閉じ、改めて家を見渡す。
だいぶこいつのこともわかってきた。
世にいう八方美人のサイレントマジョリティー…
まぁそこは薄々、いやかなりわかっていたんだけど。
驚いたのはこいつにはいじめを受けていた過去があるってことだ。私のイメージの中ではそんな素振りは見たことがなかっただけになかなかの衝撃だった。
部屋にある写真から察するに…
人畜無害故にいじめっ子の小手調べ、いや踏み台といった方が正しいか、
それにあてがわれたのだろう。
“私とは違う、全然違う…だけど思いは同じ…”
なんでだろう…なんでこいつの復讐心が…私の中で燃え上がるの…?私の心が彼の体を刺激してるとでもいうのか…
それとも…
それとも私の方が…?
私の中で燃え続ける彼の復讐心は私に小さな疑問と大きな可能性を植え付けた。

to be continued…

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ユーラシア大陸縦横断旅48

シェンゲン協定加盟国のフランスと非加盟国のイギリスの間を往来するなら国境チェックを受けなくてはならない
だから、パスポートには船のイラストと外に出る矢印、そしてDunkerqueと書かれたスタンプが押された
それを見て、「シェンゲン協定圏ともお別れだな。Dankeschön,Europe.Auf Widersinn.」ドイツ語混じりに呟くと彼女も出国審査を終えて出てきた
「ここの砂浜、ダンケルクっていう題名の映画で見たことあるかも」と言ってる
「そりゃそうでしょ。ここ、第二次大戦の古戦場でその映画の元ネタの戦いが起きた街だもん。」と返す
しばらくして、ボーディングが始まる
内装の豪華さのあまり「山下公園から出るクルーズかよ」と思わず言ってしまう
「山下公園?どこそれ?台湾?」と想像の斜め上の質問が彼女から飛んできた
「台湾じゃなくて横浜ね。質問がまるで川上さん顔負けのエグいカットボールだな」と苦笑いを浮かべながら甲板に向かうと、上で「野球経験者ですか?」といきなり日本語で質問される
「プレー経験はほとんどなくてブランク長めですが、バリバリの巨人ファンです。」と答えると
「もしや、君はあの時の…」と返ってくる
そして、俺も相手が小学校時代の東北の姉妹校の同級生だと気付く
「そうさ。俺たちが小5の夏にホームステイでそちらにお世話になった、もう1人の男の子さ。アレから元気だったか?」「僕はいつでも元気さ。春は迷惑かけちゃったけど」「気にすんなよ。まぁスカイツリー行ったのはアレが最初で最後だったけど。そうだ、紹介するよ。俺の彼女で婚約者さ。」
近況報告とお互いの紹介が済むと「どうだい?バッテリー組んでみないかい?」と誘われる
「誘いはありがたいんだけど、俺、彼女と生涯バッテリーなんだよね」と言って断ると「メジャーかよ」と言って笑う
そうして談笑していると、彼女が「あれ見て、海面に夕陽と白い崖が反射して幻想的」と言って目の前に近づきつつある陸を指差しす
「そうだな。となると、そろそろドーバーだ。時間取らせちゃってすまない。また、東京で会おう」そう言ってさりげなくLINEのQRを差し出す
その画面には夕陽が反射して黄金に輝いていた
船が着岸すると同時にジャイアンツ勝利の一報が届き、最後まで笑顔が絶えない船旅だった

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ユーラシア大陸縦横断旅47

まるで韓国のKTXの鼻の部分を潰して平たくしたような顔の車両がガール・ドゥ・ノル10番線に20両編成で停まっている
カレー・ヴィル行きのTGVだ
「お二人さん、そっちは途中のダンケルクまでだけど僕は終点まで乗ることになってるのでよろしく」と幼馴染が声をかける
そして、4人がけのボックスに3人で座ると後の席の客の話し声であることに気付く
「これも運命か」と呟くと「運命?どう言うこと?」と訊かれたので「後ろの席の話し声、ロシア語だ。しかも、声の主からすると俺の元カノ4人組…絶対復縁迫ってくるだろうな」と答えると「池田屋かな?」と彼女がボケてくるので「それも、長州視点のね」と返し、様子を窺う
実際にその客が近くに来て元カノだったことが分かり、気付かれて復縁要請されたが、彼女に話を合わせてもらって福岡をはじめとした日本各地の方言を使い、俺は拙いロシア語で「俺は日本の田舎者で君たちが探している人じゃない」と言って無理矢理押し切った
「あんなのでよく乗り切ったね」と皮肉を込めて幼馴染が声をかけると「東京でもよく使われる相模弁とか多摩弁が自然と出ちゃってボロが出そうでめちゃくちゃ焦った」と返す
彼女からは「あんなの、思いつかん」と言われ、皆で笑っていた
それからおよそ20分、ダンケルクの港のすぐそばにある駅に着いた
俺たちは「ブリテンで会おうぜ」と決め台詞をかまして颯爽と降りる
かつて訪れたブルッヘやハンブルクを彷彿とさせる潮風が西から吹き抜ける