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Trans Far-East Travelogue㊴

「やっぱり,伊豆もいいけど温泉は関東の黒湯に限るな」「そらそうよ。俺の時は烏来がダメで代わりに行った北投が散々だったからなぁ…草津も合わなかったけど、黒湯との相性は抜群よ」
そう言って男2人,風呂から上がり談笑して帰り道,「俺は川向こうで嫁と合流するけど,兄さんはどうする?彼女さんと和解するもよし,昔の俺みたいに復縁拒否して新しい恋を探すも良し。そちらに任せるよ」と切り出すと兄貴は暫く黙っていたが「俺,アイツと話し合うよ。アイツがやったことは確かに許されないけど,中正の息子さんや岩里さんがなさった政策のように、和解に近づきたい」と言ったので俺は「台湾のことを引き合いに出すのも兄さんらしいな」と返す間に駅が見えた
「信号トラブルのため,八丁畷から京急川崎の間で京浜急行は運転を見合わせています」と言うアナウンスが聞こえる
切符の特性,もとい制約上逆方向に行くことはできないので,嫁は一駅隣の川崎でJRに乗り換えることができない
そのため,「蒲田で少し歩くけどそこから東急が出るので、多摩川か自由が丘で合流しよう」と一言送り,兄貴には「横浜で乗り換えて迂回するぞ。東横線乗れば多摩川か自由が丘で会える」と囁く

京急お得意の逝っとけダイヤが発動したな

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Trans Far-East Travelogue㊳

俺に遅れること5分,兄貴も弘明寺に姿を現した
「兄さん,呼び出してすまない。気持ちは落ち着いたか?」と訊くと「呼び出したのはこっちの方さ。でも,新幹線のおかげで落ち着けたよ」と返ってきた
ここからは歩きながら話すことに
「俺さ,どうしても知りたいんだよ」と言って兄貴が切り出すので「俺が今日の件についてどう思うか,ってこと?」と訊くと「その通りだ。俺はさ,台湾で日本時代の前から生活してきて日本語教育を受けた世代の人達やその子孫と仲が良いから彼らを傷つけたあの事件を知らずに爆弾発言をした彼女を許すことができない」と返ってきた
「俺は兄さんと違って,昔から台湾で暮らしてきた人々,本省人と俗に呼ばれる人々と縁が深い訳ではなくて、2・28は教育格差や偏見と言った根深い問題とその問題のせいで苦しんだ人々の不満があって,あの闇タバコ事件でそうした起爆剤に火がついて爆発した,歴史の悲劇だと思ってる。
ここからは完全に俺の話だけど,俺の母親は韓国人で,韓国で教育を受けた経験の持ち主なんだ。そして,母方の従兄弟も皆韓国で教育を受けた。韓国といえば反日教育で有名なだけに,俺は韓国にいる日本嫌い人達の身内じゃないかと言う疑念だけでイジメられて傷付いた。だからこそ,俺は対立の歴史を学ぶことで自分と同じように対立の渦中,特に歴史や政治といった根深い問題に関する対立の渦中で生まれ育って苦しむ人を救うための手伝いをしたいと思った。それ故,俺は台湾について霧社の悲劇も学んだ。だからこそ,嫁から事の顛末を聞いた時は憤ったよ。いくら無知でも,大勢の大切な命が失われた惨劇を生き延びた苦労とバレンタインデーのチョコ作りは大変さのベクトルが違うし,一緒にしちゃいけないってことは常識じゃないかな?」と返すと「やっぱりそうだよな」と返ってきた
「でも,パートナーに不満があって,それが積もりに積もって爆発したのならともかく、この一件だけでいきなり突き放すのもどうかと思う。『惚れた女を愛し続け,時には俺達にしか分からないことを口頭にしろ背中にしろ何らかの手段で示し,教えてあげるのが男の仕事だ』って言っていたのは誰だっけ?」と訊くと兄貴が黙り込んでしまう
このどんよりとした空気感を何とかするため「話が重くなったな。温泉入ってリフレッシュしようぜ」と提案すると「それもそうだな」と言って兄貴も頷いている

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はるかぜと共に現れた旅人と過ごすのんびり生活 EP.1

少しずつ暖かくなっているが、まだ寒さが残っている今日この頃。
僕は山を散歩している。
僕の名前は「空野 蒼」。15歳だ。
たまに時間がある時はこの山によく来て考え事をしたり、ボーッとしたりしている。
今日はボーッとしようと思っている。
「うーん。やっぱり暖かくなってきたなぁ。過ごしやすい季節だよほんと。」
なんて呑気なことを言いつつ、山頂へ登る。
この山は道がちゃんとあってそんなに山が高くないため、軽装でも問題がない。
「さて、何かしようかな…ボーッとしようと思ってたけど、こんな天気だと何かした方が良さそうだもんな。うーん…よし、最近やってるアレをするか。」
そう言って取り出したのは小型のメモ帳と鉛筆。
今から作詞をするつもりなのだ。いつからハマり出したかは覚えていないが最近のマイブームとなっている。
思いついた時には馬鹿みたいに進むが、大体は詰まることが多い。
それでも何曲かは出来ている。
「えーっと…うーん…違うな。こうか?いや、こっちの方が…」
時間を忘れ考え続け、いつの間にか夕方になっていた。
「ん?もうこんな時間か。あっという間だな。」
そう言って立ちあがろうとしたその時、空に何か光るものが見えた。
「え?流れ星?この時間に見れるなんて珍しいな…」
しかし、その光るものはなかなか消えず、気のせいか段々近づいてきているように見えた。
「あれ、流れ星ってこんなんだったっけ…?」
そう思った瞬間、光は消え、しばらくすると桃色の小さな丸が見えた。
「何だアレは…?」
僕が気づくと同時に声も聞こえてきた。
「………ぽよおおおおおおお!!??」
聞き覚えのある声。見覚えのある姿。その時僕は、空から何がやってきたか分かったが、それと同時に猛スピードで落ちてきた『アイツ』と衝突した。
ガンッ!
強い衝撃音と同時に、僕は気を失った。

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理外の理に触れる者:だいぶ遅れてご挨拶

先月いっぱいを目安として「理外の理に触れる者」という企画を立ち上げたナニガシです。だいぶ遅れてしまいましたが、終わりの挨拶くらいはしておこうと思いまして書き込もうというわけでして。
今回は未完成の全知全能さん、赤い思想さん、テトモンよ永遠に!さんの3名に参加していただけました。
登場人物を「時の異能者」のみに絞り、戦闘シーンを重点的に描写してくれた未完成の全知全能さん。ナニガシは男の子なのでバチバチの戦闘シーンとか大好きなので助かりました。
怪奇・ホラー的要素の中に異能者の設定を混ぜ込んだ赤石奏さん。ナニガシは少し前からホラーやら怪談やらにお熱なので好みの世界観で楽しかったです。
そして、よく長編小説を投稿していらっしゃるテトモンよ永遠に!さん。人外の異能者の存在は最初の設定でほんのちらっと示唆していたんですが、どうやら拾っていただけたようでたいへん嬉しかったです。
また良さげなもの思いついたら何か企画しますし、他の人が何か企画してくれたら参加させていただきたいと思っております。
そういうわけで今回はこれっきりです。参加してくださった皆さんありがとうございました。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 連載開始4周年記念! 作者からのごあいさつ

どうも、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の作者です!
この度、おとといの3/4をもちまして「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は連載開始4周年を迎えました!
めでたい!
と言うワケで前回のごあいさつで募集した質問の回答をしたいのですが…
質問が集まらなかったので今回はパスします(笑)
なので今回は「ハブ ア ウィル」のこれからについてお話したいと思います。

この物語はそんなに長くない物語の積み重ねでできているのですが、最近になってやっと物語の半分くらいまで辿り着きました。
でも正直な所、これからが本番です。
これからメインキャラ達の過去が明かされたり、新たな異能力者が登場したりで、物語は大きく動いていくと思います。
メインキャラ達がピンチに陥ることもあるかもしれません。
それでも、彼らの物語は続いていくのでどうぞよろしくお願いします。

さて、今回の「ごあいさつ」はこれくらいにしたいと思います。
いつもより短めですが、長々と自分語りをしてもどうしようもないのでね。
何か質問などあればレスからお願いします。
ちなみに今日の22時台から新エピソードを投稿します。
どうぞお楽しみに。
ではこの辺で!
テトモンよ永遠に!でした〜

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輝ける新しい時代の君へ Ⅴ

 数十秒経って、少年が口を開いた。
「一年ごとにとくべつにやることってあんまりないから」
「エ、色々あるじゃない」
「たとえば?」
「例えばね、誕生日とかは分かりやすいね。あと年末年始もあるし、端午の節句と桃の節句も大事だ。正月は流石に俺も仕事は休めたね」
 少しだけ楽しそうな男の横顔をジッと眺めて固まった。それに気が付いた男が少年に顔を向けて、朗らかな微笑を浮かべたままいささかばかり首を傾げる。少年はそれで思い出したように話し出した。
「あ、たんじょうびと正月はあったかも。たんじょうびは、おめでとうって言われた。正月にはうちのかみさまにあいさつする。でもどっちもお母さんもお父さんも夜しかいない。もものせっくと、たんごのせっくもお父さんとお母さんいない。しごとがたくさんあるから」
 折角考えた話す内容を忘れないように早口で並べ立てた。
 少年は先程までと変わらず、無表情で言った。少年はこの状況にあることが別段寂しいと思ったことは無いし、同世代の子供と関わることが少ない彼が一般的な状態など知る由もないので変だと思ったこともない。だからこれは状況報告に過ぎなかったのだが、聞いていた男は途端に慌てだした。
「何てこった……ウウ、これ……」
 最後の方はよく聞き取れなかったが、男は呟きながら後頭部を掻いて考えあぐねるような顔をした。
「ええっと、おばさんの家でも他には何もないのかい」
「あったけど、忘れちゃった」
 少年は首を数度傾げて答えた。
 確かに子供の、しかも未就学児の記憶力ならその程度なのかもしれないが、大したことをしていなかったから覚えていなかったのだと考えることも十分できた。
男は小さく唸ると「何かごめんね」とばつが悪そうに笑った。少年にとってはよく分からない内に相手が悩み始め、よく分からない内に謝られるという、今の彼の脆弱な情報処理能力では処理に困る状況だ。どう反応していいか分からなくなって、ただ一度、何も言わずにコクリと頷いた。

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三話 マニプール河流域の白骨街道にて

「あぁ……」
 俺は遂に倒れ込んだ。
 昨晩までの雨で川の様に泥水の流れるのも気にしないで。俺の右半身は泥にめり込んで、温い水が滲みて身体がいつもより幾倍も重く感じた。
 白骨街道。
 抜け出せぬ牢獄だ。人々はインドに渡る前にバタバタ死んでいった。道端には死体や、もうすぐ死体になる者があちこちに落ちていた。皆瘦せ細って泥だらけになり、異臭を放っていた。1週間続いた雨はそれらの腐食を早め、ふやけた皮膚を大量の虫が食い千切り体内に潜り込む。俺もその一員になるのだ……。
 体中が痛い……力が入らない……熱帯熱にもやられているらしい……意識が朦朧としている。しかし目を瞑ったら死ぬ気がする。腹は減っているのに吐き気がする。固形物はもう身体が受け付けなくなって久しい。昨日も胃液を幾度か吐いた。ああ……水が飲みたい、綺麗な水が……。
 俺は泥水を啜りながら思った。
 夢中になって二口三口する。だが少ししか飲み込めず吐き出してしまう。液体でも駄目になったか……。
 ……俺ももう死ぬな……そんな考えが脳裏をよぎった時、気が楽になった気がした。
 ああ……帰りたい……帰って綺麗な水が飲みたいなァ……彼らもそうだったんだなァ……この水は、泥と、彼らの体液と、腐臭と、怨念とを混ぜて……俺はそれを飲んだ……。
 それが俺を生き永らえさせた……そして俺は今……死ぬのか?
 死ぬことは、許されるのか?

                        終

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Trans Far-East Travelogue㊲

「もうこんな時間だと?」そう呟き焦って風呂から上がるも2人とも長風呂してタイムリミットに間に合わずにバスを逃すという失態を犯してしまった
「どうしよう…この次のバスまでかなり時間あるよ」と嫁が心配そうに言うのに反応して「今,何分だ?俺、この先の坂を下りた先の集落のバス停から駅に戻れること知ってるから、時間が合えばそっち使おう」と声をかけると「今,45分ね」と返ってきたので「風呂上がりに汗かきたくないけど,仕方ない。走るぞ。10分以内にバス来るけど,坂が長いんだ」と返すと「分かった」と返ってきた
野球のベーランの要領で坂道を駆け下り、見えてきた集落のバス停に着くと俺の予想通りに三崎口行きのバスが来た
「これで引き揚げれば大丈夫さ。この先は三崎口の駅で考えようか」と声をかけると「何か鳴ってるよ」と嫁が一言言うので自分のスマホを手に取る
画面を見て思わず「え?兄貴,やってくれたな」と呟くと「どうかしたの?」と嫁が訊くので「新幹線,のぞみに乗りやがった。今さっき熱海通過だから、新横浜まで20分弱で着く。俺が待たせる格好になるな」と返すと「新横浜から弘明寺って近いの?」と返ってきたので「あの兄貴のことだから、1番早い地下鉄の優等で上大岡に出て京急で一駅だろう。それだと20分もあれば上大岡に行ける。今から15分だと俺たち,まだ久里浜線内だべ?そこから20分で上大岡までは行けないよ」と言って頭を抱えると「大丈夫。ほら、駅が見えたし時刻表だと2分で特急出るから、それ乗ろ?」と嫁が言ってくれたおかげでパッと動けて無事特急に乗れた
それも、コンセント付きの新型車両だ
「ボックス空いてて良かったな」と言って嫁に語りかけるが嫁はスマホを見つめて「ブルーラインは…信号トラブル?」と呟いている
「となると、兄貴は横浜線乗らないとな…ギリギリかなぁ」と俺も呟くと「上大岡でエアポート急行に接続するってさ」と嫁が言うので「助かるよ。そっちは川崎で乗り換えたら一駅さ。お互いの幸運を祈る」と返す
間も無く、俺達を乗せた特急は堀之内に着き、通過駅のある区間に突入する
一方、時刻表通りなら兄貴は横浜線を待っている筈
果たして、待ち合わせ場所の弘明寺に着くのはどちらになるのか

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復讐代行 あとがき

復讐代行を読んでくださった皆さん!
本当にありがとうございます!
当初の予定よりも長くなり、更新の空く期間もあり
と散々な形ではありますが
先程の最終話を持って無事に完結しました!
皆さんいかがだったでしょうか?

今作は初め、「宇宙を駆けるよだか」という作品を見てこんな設定の作品を書いてみたいなぁというところから始まりました。
この作品はクラスでブスといじめられる女子と主人公が入れ替わる物語で、ただパクるのもつまらないので、主人公の方を男にしてみました。
ですが
「いじめ」をテーマにするとついつい色々詰め込みたくなるのが悪い癖ですね笑
登場人物それぞれに考えがあるようにして自分の中にある全てを書こうとも思ったのですが長くなるので避けました。なので実はまだ小橋と橘のお話が少し残ってます
もしかしたら来週辺り書くかもしれません。
最終的に書きたかったこととしては
「いじめ」は人を壊してしまう。
それは時に、優しさすら信じられなくなるほどに
でもその優しさを信じることこそが生きる希望
それをどうか自分の中に確かに持っていて欲しい

ちょっと隠しすぎたかな?
あんまりまっすぐだとクサくなっちゃうから
少し遠回しにしたり、素直な言い方をしなかったり
そんな僕の小説…に限らず詩も
これからも楽しんで頂けたら幸いです

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復讐代行 最終回 後編

「うん、そうだね」
俺は…というより身体の主は素直に頷いた。
「え?」
「お…おい…」
「確かにこの身体はあなたが使ってた、ほんとにその全部が罰?私は楽しかったよ?」
「なんで…?なんでそんなこと言うの?」
「だって生きてるんだよ?何度も諦めようとしたこの身体をあなたが生かしてくれた、わがままだけど生きる希望だった。あなたがいるから今の私がいる」
「希望か…」
闇子は涙が溢れた。
「今、この主はあの時の私と同じ過ちを犯そうとしている、だから闇子ちゃん…今度はあなたが変え…」
次第に光の声は小さくなる。
「待って!」
「あとは俺が聞く」
「もういいよ、命を賭けた復讐じゃ意味がないってわかったから…」
少し肩を落とし、ため息気味に言った。
「…ならいいけど…」
「あと、身体もきちんと返す」
そう言って闇子は両腕を広げた。
“そうすればまた話せるよね?”
「え?あ、あぁ」
あっさり返すと言われ、青路は少しリアクションに困りながらも闇子の胸にそっと身体を委ねた。
「ねぇ、最後にひとつ教えてよ…生きる希望って何?」
「希望ってきっと誰かを信じられるってことだ、時にそれは裏切りっていう災いになることもある。でもそれでいい、希望と災いはいつも波みたいに繰り返す。それにどう乗るか、そんな赤ん坊みたいな他力本願を生きる希望って呼ぶんじゃねーの?」
「そうだね…それってもう1人の自分なのかな」
「さぁな…でもそういうのもありなんじゃね?」

fin

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復讐代行 最終回 前編

あの子は…
私を助けて死んだ…
私はその時に入れ替わり方を知った。
それからはこの体の預け先を探す日々だった。
「やっと見つけたんだよ光ちゃん、だからもうすぐ私もそっちに行くね…」
屋上の風が気持ちいい。
同じ場所とは行かなかったけど、高校の屋上、体を預けた場所で私は消える。それで今度こそ儀式は完了する。
「待って!」
“光ちゃん…!!”
でもありえない…彼女のはずがない…
だって今あの体は…!
「なんでここが?」
「お前は最初、ここで俺と体を入れ替えた、そしてもう一度入れ替えろと言うと今すぐは無理だと言った。ここでひとつの仮説が立つ。あの時の体の入れ替わりは…お前の命を賭けたものだったんじゃないのか…」
的を射ていることがバレないようなるべく素知らぬ顔を通す。
「ん?」
「とぼけんなよ、お前は魂を移して体を入れ替える。古くから伝わる物心二元論的考えだ。そしてそれを引き起こすには物体つまり身体から、非物体ここでは魂が分離する必要がある。そこに飛び降りなどの浮遊感はうってつけだ。屋上ならそれに近い感覚を共有できる。どうだ?間違ってないはずだぜ」
完璧で流れるような説明に思わず笑みがこぼれた。
「随分理路整然だね、誰かの入れ知恵?」
「まぁな、でも認めるんだな」
「だってもう死ぬからね」
脅しのようにフェンスに手を掛ける。
「だからそうはさせないって」
“まただ…光ちゃんに見える…”
「俺…何言ってんだ…?」
どういうこと?本人も自覚がない…
まさか…身体の人格…?
「前にも言ったでしょ、全力で思いやるって!」
“やっぱり…でも”
「なんで?」
「身体と魂が同じことを思ってれば…な!」
同じこと…
「今だ!」
その一瞬の逡巡の間に闇子の体は引きずり落とされた。
「なんで邪魔するの!あなたなら…2人ならわかってるでしょ!私は…この命を賭けて…」
「命を賭けて『いじめ』を犯罪として見られるきっかけを作る…ってか?そしてその復讐の相手はいじめを行うやつじゃない、いじめを学校内の揉め事にまとめるカリスマ性を持ったやつだ…この大橋光みたいな」
「そうだよ!こいつらの善意が罪を揉み消すんだ!だからそれを身を持って味合わせる。それがあの時決めた私が下すあなたへの懲役よ!大橋光!」

to be continue

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Trans Far-East Travelogue㊱

駅に戻り、三崎口に着いてから3分の接続で乗り込んだバスの車内で少し先程の件を話すことにした
「何が原因だったか、訊いた?」そう尋ねると「名古屋で、彼氏さんが台湾にいる少し年配のお友達の親御さんに会ったんだって。そしたら、彼氏さんがその親御さんに日本語で『ホンショーのお二人が僕らくらいの頃は大変でしたよね。特に、2月のあの日は酷かったと聞いてます』と言って会話してるのを聴いて、彼女さんは『ホンショーって何?2月って何かあったの?バレンタインのチョコ作りが大変ってこと?』って言っちゃって、彼氏さん御立腹からの喧嘩別れだそうよ。でも,台湾で2月に大変なことあったの?昭南島占領しか知らないんだけど」と返ってきたので「2・28か…あれは気の毒だよなぁ…にしても、そんなセンシティブな話題をいきなり切り出すのもどうかと思うが、そんなボケかますかね…いくら無知でも、そんな反応されたら俺でも怒るよ。大勢の人の命が失われた悲惨な事件で生き延びることの大変さをバレンタインのチョコ作りと比べるのかよ…」と溜息混じりに返すと「2・28事件?2・26の間違いじゃないの?」と返ってきたので「2・26は日本の軍隊の暴走、2・28は終戦後の台湾で起きた事件で、立場によって見方が変わる、近現代の台湾を語る上で絶対に避けられない、非常にセンシティブな話だから避けるのが無難な話題さ。教育の大切さを教えてくれる歴史的事件でもある」と返す間にバスが目的地の温泉施設最寄りの停留所に着いた
「さぁ、降りるか。このことは後で兄貴とも話すよ。ここでは短時間で入って上がるけど、良いかな?」と声をかけると「そうね。私も彼女さんと話してみる。一応、持ち帰れるようならタオルはドライヤーで乾かすから、時間かかるかもね」と返ってきたので「なら、念の為今乗った奴の折り返しの2本後に乗ろうか」と返すと嫁も頷いている
バスの時間まで、タイムリミットは残り45分だ

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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 おまけ 壱

「理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫」のおまけ…と言うか解説編です。

・黒羽(くろは)
異能:死の指揮者
一応この物語の主人公。
作中ではあまり描いてないが長い黒髪で黒地に柄の入った和服を着ている。
明言し忘れたが、一応男。
元々は街で有名な地主の子どもだったが、妾の子だったために家族から疎まれていた。
そのため実母の元で幼少期を過ごしていたが、母親が亡くなったことで父親の家に引き取られることになった。
しかし幼い頃から異能を持っていたために、無自覚の内に小動物や植物を殺すことを繰り返していたため、家族から恐れられ、最終的に実家から追い出されてしまった。
実家から追い出された後も実家の人間から命を狙われることは多く、一度死にかけたこともある。
その時にカラスに出会い、カラスの異能によって傷の治りが早くなる“性質”を与えられたことによって生き永らえている。
現在は街外れの古民家に住んでいる。
なお、カラスに出会うまで異能と言う概念は知らなかった模様。
異能“死の指揮者”は触れた生物を死なせることができる異能。
ただ、人間に使おうとすると抵抗されることが多い。
黒羽自身はあまり制御できてないようだ。

・カラス
異能:カタチの支配者
黒羽の友達(?)。
ただの気まぐれで黒羽を助けた結果、黒羽と連むようになった。
カラスの姿をしているが、喋ったりするようにその正体はカラスではない。
真の正体は物質の身体を持たない神霊のような存在。
遠い昔から存在し、その異能で長い時を過ごしてきた。
カラスの姿をしているのは、今はそういう気分だから。
異能“カタチの支配者”はありとあらゆる生物・非生物に様々な性質を与えることで、性質や見た目を変えることができる異能。
回想では黒羽に“傷の治りが早くなる”性質を与えることで死の危機から救ったりした。
カラス自身には“不死身”とか“発話”とかの性質を与えることで現在の姿を保っている。
ちなみにカラス自身に“名前”は存在しない。
“カラス”という名前自体は通称みたいなものである。

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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 捌

「…大丈夫」
ぼくの異能なら…と黒羽は己の手に意識を集中させる。
ネコはジタバタと黒羽の手の中で暴れていたが、やがて糸が切れたように動かなくなった。
「…ふぅ」
黒羽はその場に座り込む。
「お前随分と無理したろ」
カラスは黒羽の足元に舞い降りる。
「ただでさえ異能の制御がおぼつかないのに、無理矢理使うなんてダメじゃないか」
失敗したらどうするんだ、とカラスは呆れる。
「だって身体が勝手に動いたんだし」
仕方ないよ、と黒羽は手の中のネコを地面に下ろしながら言う。
その手にあったはずの傷跡は、いつの間にか治っていた。
「…“死の指揮者”か」
触れた生物の命を絶つことができるとは、いつ聞いても物騒だ、とカラスは呟く。
「お陰様で、ぼくもずっと苦労してるよ」
黒羽はそう言って苦笑する。
「オレ様は自分に“不死身”の性質を与えているから大丈夫だが…大抵の動物はお前に触れただけで容赦なく死んでいくもんな」
全く、困ったもんだ、とカラスは呆れる。
「でも人間に使おうとすると結構な確率で抵抗されるから使いにくいんだけどね」
だからこの異能は好きじゃない、と黒羽は苦笑する。
「まぁまぁ、その影響でオレ様と連めているようなモンだけどな」
ハハハとカラスは笑いながら黒羽の肩に乗る。
「…さて、家に帰りますかね」
「うん、帰ろう」
そう言って、1人と1羽は元来た道を引き返していった。

〈おわり〉

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Trans Far-East Travelogue㉟

昼食をとった後、すぐ近くの三浦海岸の砂浜に降り立った頃に俺のスマホが、すぐに嫁のスマホも着信音を響かせるので互いに背中を向けて電話に出る
兄貴が泣きながら「おい、今どこにいる?」と訊いてきたので「神奈川県の三浦海岸だ。そっちは今…浜松かな?」と訊き返すと「名駅まで進んだが、トラブル発生。彼女と喧嘩別れだ」と返ってきたので「兄さん、運転は副長さんに任せて油壺来れそうか?油壺なら、温泉で話聴くぜ」と返すと「油壺?あの特典付きの切符使ってるって聴いたけど,俺が着く頃には日帰り入浴の入場時間過ぎるぞ。弘明寺にも温泉施設あるだろ?そっちで集合にしよう」と返ってきたので「分かった。新横浜着いた時に連絡して。ただ,地下鉄より京急側が近いから京急の駅で会おう」と返すと電話が切れた
同じ頃、嫁の方も電話が切れたらしく、「どんな内容だった?」と訊いてきたので「兄貴が彼女さんと喧嘩したんだとよ」と返すと「同じね。こっちは彼女さんの方から」と返ってきたので「どうする?俺は上大岡の次の弘明寺って駅で待ち合わせになったけど」と返すと「私達は六郷土手って所ね。六郷って何があるの?」と返ってきたので「六郷は…関東ではお馴染みの塩気がある茶色く濁ったお湯が特徴の温泉だね。俺が行く弘明寺の温泉施設にも黒湯はあるそうだ」と返すと「残ったこの一枚,どうする?」と嫁が訊いて来たので「近場で済ませるか…」と呟くと「あっ!ここ良いかも!温泉でタオルプレゼントって書いてある」と嫁が言うので「バスは…今から駅戻って三崎口行けばちょうど良いね」と返すと「決まりね。じゃあ,行こうか」と返ってきた
後に知ることになる
俺達のこの判断は正解だったと

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余り者

 小学校、中学校、高校。
 年代が上がるにつれて、グループというものができるようになる。【学校】という狭い社会で生きていく上で、それに属さなければ、周りから変な目で見られてしまう。

 年代が上がるにつれて、私はこの、グループというものに苦しめられることになった。

 小学生の時。いつも一緒に遊ぶ子がいたこともあったし、そうでない時もあったような気がするが、もうあまり覚えていない。

 中学生の時。いつも一緒にいる子たちがいた。何かグループを作るときはほぼ100%その子たちと一緒にいた。お互いにお互い以外の選択肢がない状態だったように思う。

 高校生の時。クラスで行動を共にする子はいた。が、毎年メンバーが変わっていった。その子たちと十分に仲良くなったかと言えば、そうではなかったと思う。いつも絶妙に上辺だけの会話だった気がするし、お互いに奥深くまで触れることを避けていた気がする。
 そんな高校時代の私を一番苦しめた要素は、「中学時代のような関係の友達がいなかった」ことだった。私が、とても仲良くしていると感じていた子はイツメングループの繋がりが強かったし、クラスで行動を共にしていた子は部活のグループの繋がりが強かった。私の周りを見回せば、部活の仲間たちにはそれぞれにグループがあった。仲良くしている子にもグループがあった。その子たちにとって、私はいつも優先順位が下だった。こんな書き方をすると誤解を招くかもしれないが、決してあの子たちに悪気があったわけではなかった。なぜなら、私が一人になっていることに、誰も気づく余地がなかったのだから。誰も、誰も悪くなかった。

 それでも、私が“余り者”だという残酷な事実が在り続けた。

 今でもわからない。グループとは何?なぜみんな変える方向が一緒の人から一緒に帰る人を見つける?私はどうしてこうなった?私はいつになったら、誰かの唯一になれる?

 “余り者”という事実は、高校時代の私を暗い闇の底に突き落とすが、それはまた別の話。

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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 漆

「おい、おい!」
お前大丈夫か⁈と誰かの声が耳元で聞こえる。
ハッと目を覚ますと、カラスが黒羽の顔を覗き込んでいた。
「あーよかったー」
てっきり死んじまったかと思ったぜ、とカラスは言う。
「ぼくは死なないよ」
黒羽はムクッと起き上がりながら呟く。
「君の異能のお陰で傷の治りが早くなったからね」
黒羽がそう言うと、ああそうだったなとカラスは笑った。
「…それで、“あいつら”はどうなったの?」
黒羽が尋ねると、カラスはそうだな、と答える。
「アイツらは全部オレ様が倒したぜ」
この通り、とカラスは黒羽の肩に飛び乗る。
黒羽が辺りを見回すと、あちこちに黒ネコの亡骸が転がっていた。
「まぁ今回は数が少なめだったからすぐ片付いてよかったよ」
もっといたら大変だったぜ、とカラスは笑う。
「さ、そんな所に座り込んでないで立てよ」
今日はもう帰ろうぜ、とカラスが促す。
そうだね、と黒羽は立ち上がった。
その時だった。
「ニ゛ャーッ」
鳴き声が聞こえたので振り向くと、黒いネコが1匹襲いかかってくる。
咄嗟に黒羽は避けたが、手を引っかかれてしまった。
「やべぇ‼︎」
カラスがそう叫んで飛び上がる。
ネコはサッと方向転換してこちらに飛びかかってきた。
「!」
黒羽は思わず飛び込んできたネコを捕まえた。
「おい!」
お前何やって…と塀の上でカラスは言いかけたが、黒羽は気にせず黒ネコをがっちりと掴む。

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復讐代行〜第29話 手掛〜

死ぬ気なのはわかったけど
どこでどう死ぬ気なのか…
分からないこの状況がもどかしい。
「何かないのか?」
一瞬抵抗はあったが俺は部屋を漁った。
「何か…早くしないと…あいつは…」
なぜこんなに焦っているのかは分からない。
小学校の卒アル…
そうだ!ここになら何かあいつの過去について分かるものがあるかもしれない!
さすがにいじめの実態までは載ってないだろうけどこの体でなら多少は感じ取れる自信があった。
卒アルのページを捲る手が震える。
そこにあったのは驚きの事実が載っていた。
「嘘だろ…これが喪黒闇子…?」
そこに喪黒闇子として集合写真の隅に載っていたのは見たことのない人物の顔だった。
しかも…既に亡くなったとされている。
急いで見たことのある顔、正しくは今の自分の顔を探すと、その顔には大橋光という名が書かれていた。
「まさか…この時にも…体を入れ替えていたのか…」
恐る恐る、卒アうルに書いてあった喪黒闇子の亡くなった日付でその事件を検索してみた。
《小6女子児童2人飛び降り、いじめが原因か》
そんな見出しの新聞記事が表示される。
「これか…でもなんで2人…?」
そんな疑問も詳細を読んで納得した。
どうやらこの体の本来の主は世に言う優等生。息をあげて屋上に向かう様子を同級生が目撃していたことや、喪黒闇子に関する目撃証言が付近の時間にないことから、喪黒闇子が自殺しようとしたのを止めようとしたが、なにかのはずみで落下してしまったと考えられている。
ここに矛盾はない。むしろ喪黒闇子のイメージとしてもしっくりくるほどだ。
気になるのはその自殺の動機として挙げられているいじめの内容が予想と違っていたこと。
彼女を襲ったのは想像より残酷な…そして理不尽な犯罪だった。

to be continued…

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二話 長野の列車内にて

 列車内には私以外にも、10人か20人くらいの傷痍軍人が乗っているようだった。そこに幼い少年と父親が今日も乗ってきた。少年は綿入れで、父親は国民服姿だった。2人はリュックを背負っていた。そうやって、1週間に1度乗ってくる。
 それから2人は決まって、リュックからいっぱいに詰めた餅を取り出して1つずつ乗客に配っていく。あの親子も生活は楽ではないだろうに、毎週。何だか嬉しそうでもあった。
 前の人から順々に配っていって、私のところにもやってきた。
「どうぞ」
 少年が餅を差し出した。私は相当酷い顔になってしまって、子供からすれば恐ろしいだろうに、彼は物怖じしなかった。
「私は……怖くないか?」
「こわくないよ」
「酷い顔だろう」
「いたそう。でも、お母ちゃんとみっちゃんはもっとかわいそうだったの。こわくないよ」
「そうかい」
「うん。じゃあね」
 屈託のない笑顔を見せて次の列に行こうと身体を向きなおした。そこに私は「少年」と声を掛けた。
「なあに?」
「ええと、その、餅、ありがとう」
「うん」
「これ、売ればいいじゃないか」
「いいの。おとうふとか、おさかなとか売ってるから」
「何で売らないんだ」
「かうのはたいへんってぼく、ちゃんと知ってるからね」
 得意気に言って、もう他の人に配りに行ってしまった。
 買うのは大変。確かにそうだ。でも、それをひとに言って自分のものを分け与えられる者など、今の時代にいくらいようか。彼らも貧しい思いをしてきたろう。今だってきっとそうだ。働けなくなった我々に見返りは望めない。それは明々白々であるというのに。与えないことは悪ではないのに。物乞いに施さなかったところで誰も責めやしない。皆苦しんでいるからだ。なのに、あの親子は何と無垢なのか。
 あの親子の純粋な笑顔を見ると、涙が溢れて仕方がなかった。
         
                              終