表示件数
0

キツネ

「…いるなぁ」
今日は近所の神社で縁日。つったって小さな小さな稲荷神社の縁日である。夏祭りの縁日に比べれば、ちっぽけでちゃちい。
それでも休日の暇を潰すのにはピッタリだった。
…ここは田舎で、遊べる場所が少ない。
あってショッピングモールくらい。
だからこういう縁日はちょっとでも遊べる良い機会なのだ。
…だが。
「…面倒なアイツらめ」
面倒な事に、クラスの男子たちの姿が見える。
正直言って、学校の外で関わりたくないメンツだ。
ここは田舎だからな~、みんな行くところは一緒なんだよね…
仕方ない、そう思いながら、わたしは狐の面を被った。

「…よぉ」
あぁ、やっぱりか、と心の中で呟いてわたしは振り向く。
そこには、昔から見慣れた男子の姿があった。
「なぁに、それでお前は化けたつもりなのか?」
彼はいつも通り意地悪気に言う。
「フン、あんたみたいなのにはバレるけど、ほとんどの人間にはバレないのよ」
そう言いながら、わたしは仮面を外す。
それと同時に、彼の目に見えるわたしの姿も陽炎のように揺れて変わったことだろう。
「実質この仮面は、わたしの顔を隠すためじゃなくて、うっかり何も知らない人間に、顔を見られないようにするためなのよ。そのためのカモフラージュ」
これは保険なのよ、とわたしは説明する。
それを聞き、ふ~ん、と彼はうなずいて、にやりと笑った。
「…もしや、自分の”力”に自信がないのか⁇」
「ちょっと! 別にそういうわけではないわ…アンタだって、指定した人間以外には化けが通用しないじゃない!」
そう言い放つと、彼は…面白い、と言うような表情をした。
そしてこう聞いてきた。
「…じゃあ、また勝負でもするか?」
「ええ、するわ」
わたしはいつものように答えた。
どっちがより優れてるか…なんて小学生みたいだけど、自分の力をなめられちゃ困る。
…なら。
「あ、でも、また今度機会がある時ね。今日はもう無理があるし…何より、審判がいないわ」
だからまた別の機会に、そう言ってわたしはにやっとした。
ああ、そうだな、そう応える彼の目は暗緑色だった。

0

緋い魔女 Part5

「…ていうか、何で報酬に”俺”を要求した?」
”使い魔”からの質問に、少女はぴた、と足を止める。
「やっぱり有名な魔術師の”最高傑作”だから? それとも…」
「別に、お前なんか欲しくなかったけど?」
想像の斜め上の発言に、…はぁ⁈と”使い魔”は叫んだ。
「大体、私に何か依頼してくる魔術師はねぇ、単純に自分の手元では手に負えない面倒ごとを、今話題の”緋い魔女”に解決してもらおうって考えてるのよ。魔術の世界で”神童”だの”魔女”だのって呼ばれてる魔術師が、自分の元に来るだけで立派な自慢にもなるし」
少女はくるりと振り向く。
「この間も1つ依頼を引き受けたのにまた依頼。しかも今度は面倒くさそうな精霊退治。だから、依頼を引き受ける代わりに報酬で、そこに”置いてあるだけ”になっている使い魔が欲しいって言ったら、依頼のこと考え直してくれるかしらって思っただけなんだけどね」
「でも実際、あの男はお前に退治を依頼したじゃねぇか」
”使い魔”は真顔で言う。
少女は、そうねぇ、と呟いてさらに続けた。
「…でも、少し気になっていたのよ。遠い昔、”孤高の天才”と謳われた魔術師の”最高傑作”がどんなものなのか。だから別に、お試しでも”マスター”やっても良いって思ってたわ」
…ふぅん、と”使い魔”は返す。
「まぁ、お前を報酬にしてもしなくても、あの依頼を受けるならお前を借りるつもりでいたわよ…その逆さ十字の耳飾りを見た時から」
少女はそう言ってにやりと笑った。
”使い魔”は、あのクソ野郎…と腹立たしげにつぶやいた。
その様子を見て少女はクスクスと笑う。
「造った人のことをそんなにひどく言う使い魔なんて初めて見たわ…まぁあんな悪趣味な名前を付けられたらねぇ」
その言葉を聞いた”使い魔”は少女を強めに睨みつけた。

6

とっても頭の軽いお話です。

「なんでこんなに散らかっているの!勝手に部屋に入られるのが嫌ならちゃんと掃除してよね!
……なにこれ…30点のテスト⁉どうしたらこんな点数が取れるの⁉どうしてこんなことになった⁉さすがにこれは言わなきゃ……せめて問1は答えようよ……問1.春は[    ]なんて、小学生だってわかるよ……むしろ何が合っていたの…」

「ただいまーおなかすいたー」
「おかえりなさい。おやつの前にそこに座って」
「? 何かした?」
「ベッドの下にあったあれは何ですか」
「んー……?(なんかあったっけ…?あ、昨日もらったラブレターかな。そういえば昨日読んで、広げたまんま寝ちゃったっけ。ベッドの下に落ちてたのかー)あーあれね」
「どうしてあんなことになったの……」
「え……おれがカッコいいからじゃん?」
「すごい開き直り方!!!先生が嫉妬して点数下げたってこと……?そんなことあるの……?」(ぶつぶつ)
「母さん?」
「……そうだとしてもよ…、問1くらいは答えてほしかったな……」
「問1?(1行目ってことか?なんて書いてあったっけ。『めっちゃかっこよくてまじあげぽよ~ってカンジ』……?)ああ、あげぽよ?」
「随分と現代的!むしろ書かなくてよかった!!!」

 問1.春は [ あげぽよ ] 。

0

緋い魔女 Part4

「…こちらにございます」
雪に覆われた村外れ。この辺りを治める領主―あの屋敷の主人は、人気のない森の入り口で立ち止まった。
「…どうぞ先へお進みください、わたくしはここで見張っておきますから―何も知らない一般人に、魔術のことなど知られる訳にはいかないので」
そう言って屋敷の主人は少女らを促した。
「…ご案内どうも」
少女はすれ違いざまに屋敷の主人に言った。
”使い魔”もその後に続く。
…暫くの間、少女らは黙って新雪の中を進んでいたが、ある程度進んだ所で少女は立ち止まった。
「…あいつ、逃げたわね」
呟いて、少女は振り返る。
「…まぁ、あれでも貴族なのよね。貴族同士の覇権争いでいつ命を狙われるか分からないのに、ただの精霊に殺されるのは死んでも御免よね」
言い終えた後、少しの間沈黙が下りた。
が、すぐに思い出したように少女は言った。
「…そういえば、お前…名前は?」
”使い魔”はフッと顔を上げた。
「名前を知らなければ、何て呼べば良いのか分からないでしょう?」
少女はにこにこと笑いながら尋ねる。
暫しの間、”使い魔”は黙っていた―が、不意に口を開いた。
「…”ナハツェーラー”」
ふーん、と少女はうなずいた。
「あの魔術師らしいわね。自分が作ったモノに、”吸血鬼”の名前を与えるなんて」
「何か文句?」
間髪入れずにそう訊かれて、少女は笑いながらいいえ、と答えた。
「ただただ、あの人らしいと思っただけよ」
少女はそう言いながら、また歩き出した。

0

緋い魔女 Part3

その様子を見て少女はふふっと笑うと、目の前のモノに向き直った。
そしてこう呟いた。。
「…そういえば、”依頼”ってどんなでしたっけ」
”依頼”のことをすっかり忘れかけていた屋敷の主人は、ハッとしたように答える。
「えぇと…簡潔に言えば、領内で害を為す精霊の退治ですが…」
「…並の魔術師では対処できないから、私に依頼したのよね…」
少女はそう呟いた後、少しの間考えるかのように黙っていたが、不意に口を開いた。
「貴方も太刀打ちできなかったのよね?」
尋ねられて、屋敷の主人は恥ずかしげに、まぁ…と答えた。
…そう、と少女は答えると、突然屋敷の主人の方を向いた。
そしてこう言った。
「…その依頼、私が受けるわ。―ただし、報酬にコイツをくれないかしら?」
「…へ?」
屋敷の主人は想定外の言葉にぽかんとする。
「別に良いでしょう? 別に貴方が”マスター”というワケではないのだし。それと、依頼にはそれ相応の報酬が必要でしょう? 私みたいな、”お雇い魔術師”は特にね」
…駄目かしら?と彼女は笑いかける。
屋敷の主人は暫くの間、少女を見ながら呆然としていた、が、すぐに我に返って彼女に依頼するか考え始めた。
そして、屋敷の主人は口を開いた。
「…では、お願いします」
それを聞いて、少女は目を細めて笑った。
「…そう。じゃぁ領内の案内をお願い。精霊の出現場所とか、被害を受けた場所とかね。あとコイツを借りるわ」
あ、はい…と答えてから、屋敷の主人はへ?と呟いた。
「この使い魔を借りるのよ。便利な”武器”なのに、使わないでいるのは勿体ないわ…」
そう少女は言うと、広間の出入り口の方へ歩き出した。
「あぁ、ちょっとお待ちください」
そう言って、屋敷の主人も歩き出した。
少女はその言葉を聞かないフリして進んでいたが、ふと立ち止まって振り返った。
「…”お前”も行くわよ」
そう言われて、”お前”と呼ばれた使い魔は、ハッとしたように少女の方へ向かって歩き出した。
それを見て、少女は少しだけ笑うと、また向こうを向いて歩き出した。

2

緋い魔女 Part2

「…ああ、あれですか?」
屋敷の主人は少女が指さす方に目を向ける。
「…あれは…えぇ、まぁ…我が家の”家宝”みたいなモノにございます」
ふぅーん、と少女はうなずくと、静かにさっき指差した方へ歩き出した。
あ、ちょっと…と屋敷の主人はうろたえたが、少女は気にせず広間の隅へと向かった。
そこには、奇妙な人影が立っていた。
―足元まである真っ黒な外套を着、頭巾で顔を隠した、少女と同じくらいの人影。
豪奢な屋敷の広間の中で、それはあまりにも異質に見えた。
少女は人影の前まで来ると、後を追ってきた屋敷の主人の方を振り向いた。
「これ…」
「えぇ、まぁ…知り合いから貰ったモノなのですが…」
極まりが悪そうに喋る屋敷の主人から少女は目の前のモノに目を向けると、何を思ったかその頭巾に手をかけた。
「…!」
一瞬のうちにひっぺがえされた頭巾の下から、少年とも少女とも似つかぬ顔が現れた。
その目は驚きで大きく見開かれている。
「…そう、やっぱりね」
少女はそう呟いてニヤリと笑った。
「…コイツ、あの有名な魔術師の”使い魔”でしょう」
…えぇ、と屋敷の主人は小声で答えた。
「しかも貴方はコレの”マスター”ではない…」
「…まぁ、そうですが…どうして…」
屋敷の主人が尋ねると、少女はクスクスと笑いながら答える。
「だって普通の”ヒトのカタチをした”使い魔は、大抵主人のそばにいることが多いでしょう? 貴方のような貴族なら殊更… でも、コイツは広間の隅で放し飼い…ならマスター契約せず、何か適当な魔法石から魔力供給させていると考えるでしょう」
間違っていて?と少女が訊くと、屋敷の主人はいえ…と答えた。

0

緋い魔女 Part1

「おぉ、よくぞいらっしゃいました。ささ、な…」
出迎えの挨拶を無視するように、赤毛の少女は屋敷の重い扉を押し開けた。
「あぁ、そんなに急がなくても…」
出迎えに来た屋敷の主は慌てて制止したが、少女はそれを気にも留めず、そのままズカズカと中へ入っていく。
屋敷の主人は早歩きする少女の後を追いかけるが、少女は振り向くことなくこう呟いた。
「…別に、まだ依頼を受けるとは言っていないのだけど」
「えぇ、それは分かっています。ただわざわざこんな所まで…」
屋敷の主はつらつらと長話を始めたが、少女は気にすることなく歩き続けた。
だから屋敷の広間に辿り着くまではあっという間だった。
「…あ、とりあえずどうぞお座りください。具体的な話は座ってしましょう」
いつの間にか広間に辿り着いていることに気付いた主人は、慌てて少女に椅子を勧め、給仕に茶を出すよう命じた。
だが少女は座るわけでもなく、ただ広間を黙って見まわしていた。
「…では依頼の話を。ここ暫く、領内では家畜の不審死が相次いでおります。最初はそこいらにいる鹿なんかが死んでいたりしたのですが、やがて家畜にも被害が出るようになり…」
少女は主人の話を聞き流しながら、大きな広間を見渡していた。
今までこういう貴族の屋敷に立ち入ることはあったが、ここまで広いのは初めてかもしれない。
「…調査したところ、やはり精霊の仕業のようです。しかも、土着のモノではなく、外来のモノで、かなり強力なモノらしく…」
だだっ広い広間を見まわしていると、少女の目に、何かが止まった。
それは広間の奥の方、カーテンの近く…
「配下の魔術師や外部の魔術師に対応を依頼しましたが、誰一人とて歯が立たず…て、聞いています?」
もしや自分の話を聞いていないんじゃないかと、屋敷の主人は少女の顔を覗き込む。
「…あれは」
屋敷の主人の質問には答えず、少女は広間の隅を指差した。

1

1話しかない物語。

朝。冬休み明け初日の朝。白い息を吐きながらホームで電車を待つ。電車に早く入りたい、、、しばらくしてやっと電車が来た。いつもの場所に友達がいる。「おはよ」そう言って私も隣に座る。冬休みのほんの少し残った宿題をやる私。隣でそれを見てる友達。終点だ。乗り換えなくては。急いで片付ける。またまた寒い空気にさらされてしばらく待てば電車が来る。今度は座れない。いつもの事だけど。次の駅。もう2人と合流。まぁその次の次で降りるんだけどね。「あけおめ、ことよろ」そんなベタな事挨拶を交わしていると駅に着く。いつもどうり、学校までの坂をせっせと並んで歩く。私たちは、早く歩くのが好きだ。信号が変わった瞬間前に出る。そういう性格なのだ。「宿題テストの勉強した?」「いや、全く」そんな会話を続ける。空は分厚い雲に囲まれ、ただでさえ下がっている気分を上から下へどんどん押されていく感じがする。


3時間目。数学。
あぁヤダな、雨降ってきちゃった。
4時間目。英語。
残り時間15分。見直しをしようか。急に光が差し込んだ。眩しいほどに。思わず外を見てしまう。あれだけ分厚い雲だったのに青空が見える。そこに風が吹いた。木が揺れる。なんて綺麗なんだろう。まるで木の先っぽにダイヤモンドがついたみたいに木が揺れるたびに太陽の光を反射したダイヤモンドがキラキラと輝く。綺麗、では表せなかった。美しかった。誰か見てないかな~。時計を見るフリして周りを見渡す。っっ誰も見てない、、、みんなにも見て欲しいと思った。あと10分、風に負けずに落ちないでいて。お願いだから,,,
10分後…
鐘がなった。やばい、見直ししてないじゃん!あっっっ!太陽がまた雲に隠れちゃった!!!しかも鐘がなった瞬間!


その後も雲から太陽が覗くことはなかった。
みんなにも見て欲しかったけど、
これは私だけが見れた特別な景色だったのかもしれないと思った。
明日からも頑張れますように。





ー[完]ー


1

NO MUSIC NO LIFE #9 ワルシャワの夜に

結月視点

「瑠衣にあったことあるのか?」
僕が玲に尋ねると、玲は顔を顰めて
「…わからないんですよ。でも、きっと瑠衣ちゃんなんだと思います。私が実家を出たのは、中学校一年生の時なんです。それから、私がもともと居たあの犯罪集団に拾われました。でも、私たち姉妹が離れ離れになった理由は確かに覚えています。」
と、答えた。
「どうしてなのか言えるか?」
「…それは、少し待ってもらえますか」
そう言い放つ玲の表情はどこか辛そうだった。


玲視点

 思い出したくもない、あの両親。憎悪の念があふれてくる。顔だって覚えていない。結月さんに質問をされていたことを思い出し、結月さんの顔を見る。私と同い年だとは思えないほど、大人びたその行動。不安そうなその表情。嗚呼、また誰かを困らせてしまった。こんな有様だから捨てられてしまうんだ。
 意を決して結月さんに向き合う。
「私の昔話、聞いてくれますか?」
そう尋ねれば、一歩私に歩み寄って微笑みながら彼女は頷いた。どうしてだろう、いつからだろう、人から向けられる優しさが怖くなったのは。また、私のせいで傷つけてしまうのだろうか。どうして、その瞳はそんなに澄み切っているのだろうか。
 そんなことを考えていれば、彼女は口を開いた。
「怖がらなくていいよ。辛かったら、途中で言うのをやめてもいい。大丈夫、玲も瑠衣も僕が守るから。」
その目は真っすぐ私を見つめていて。どうしてこんなにもこの人は優しいのだろうか。その優しさですら、不快に感じてしまうほどに私は愚かで。
 でも、この人は信用してもいいのかもしれない。

2

世にも不思議な人々68 殴る人その2

その日の帰り。
(ふむ、通り魔、か……。凶器は鈍器の類なんだろうな、殴り殺されてたって話だし。ってかあいつはなんで分かってたんだ?あ、あいつなら何もおかしくないや)
そんなことを考えながら、那由多がある街灯の下を通ったとき、向こう側から一人の男が歩いてくるのが見えた。背丈190cmほどの長身だ。
二人がすれ違いそうになったその瞬間、男が殆どノーモーションで殴りかかってきた。
「なっ……!」
那由多は咄嗟に持っていたギターケースを盾のように構え(那由多は普段能力発動のための刃物を全てギターケースに入れて持ち運んでいる)、更に後方に跳ぶことで衝撃を和らげた。しかしその威力は恐ろしく高く、数メートル吹き飛ばされ、ギターケースはひしゃげてしまった。
「誰だお前!まさか!お前が例の通り魔か!」
那由多が何とか停止して叫ぶ。
「何だ、もう広まってたのか?すげすげ」
対する長身の男は楽しそうに応える。そのまま一瞬にして距離を詰めてきた。那由多はその拳を相手の懐に飛び込むようにして回避し、そのまま相手の背後5m程まで滑り込み、再び男に向き直る。しかしそのときには既に、男もすぐ側まで拳を迫らせていた。
「ぬわっ!」
それを仰け反ることでギリギリで躱し、後転しながら距離を取る。しかしそこに男の踵落としが降ってくる。それを横に跳んで回避するも、次は回し蹴りが飛んでくる。
「うおああああああああああ!!!!」
 その回し蹴りを跳んで躱し、続けて飛んできた右ストレートに回し蹴りを合わせ蹴りの勢いで回避する。

1

世にも不思議な人々65 間違っている人その3

阿蘇「しかし、山彦も鵺もどっか行っちまって、どうするよ?捕まえるも何も無いじゃんか……ってどうした一つ目?」
一目「ちょっと静かにしてくれ。今鵺を追ってるとこだから」
阿蘇「追ってるって……?ん、よく見たら何か出てるな……」
一つ目小僧の頭からはとても細い糸状の何かが出ていました。阿蘇さんがその糸に手を伸ばした瞬間、
一目「それに触るなァアッ!!」
思わず阿蘇さんは手を引っ込めます。
阿蘇「一体それは?」
一目「視神経に真皮の層でコーティングをしたものだ。これの先っちょに眼球を増やして鵺を追ってる。だから集中したいんだ」
阿蘇「そ、そうか」
数分後、一つ目小僧が叫びました。
一目「よっしゃ捉えたァ!」
阿蘇「どうした?」
一目「最高だ!鵺と一緒に山彦もいた!しかも変な奴のもとに集まってる!行くぞ!」
阿蘇「ふーん。よし、じゃあ俺ニ乗レ」
阿蘇さんが人外化して言いました。その姿はかつての姿以上に奇妙。身体の下の方から説明していきましょう。
背丈は6mほどで、蜘蛛を思わせる四本の脚が、一度下に曲がってから再び上に曲がって円盤状の腰に付いていて、そこから胴体が三つに別れて生えて、1mほど上で一つにまとまっています。胸部には一対の人間のようなのだけれどもやけに細長く地に届きそうな腕と、蜘蛛のような一対の腕が生えており、長さ1mほどの首に六本のうねる角の生えた頭がついている、という何とも不気味な姿でした。恐らく脚と背筋を伸ばせば10mを超えるでしょう。

0
1

世にも不思議な人々62 緊急招集

キタ「はーい全員集合ー」
初「何だ何だ」
キタ「朗報だよー」
真琴「だから何だ。早く言え」
キタ「なんとですねー、だいぶ前から出てたコラボの件、向こうからOKもらえましたー」
那由多「ぃよっしゃ!」
伏見「で、誰が向かうんだい?」
キタ「そうなんだよなー、問題はそこなんだ。まずあんまり多人数だといろいろ面倒だろ、こっちにも何人かは残しとく必要あるし。という訳で、まず一人、なっちゃんは確定としてー、あと三人くらいかな?」
那由多「じゃあ安芸ちゃんは連れていきたい」
キタ「了解、じゃああと二人。そういや移動要員はどうする?」
伏見「んじゃあそれは僕が務めよう」
キタ「良し、………んー、じゃあもういっそ残り一人は萩ちゃんで良いね?」
萩『……え、私?』
キタ「そうそう。折角だから親衛隊で揃えちゃうかなって。誰か異論は?」
初「無し」
真琴「無い」
阿蘇「無いナ別に」
キタ「ああ、君いたの。人間モードだと影薄いねー」
ヌエ「別に構わんよ」
キタ「お前もいたのか。何、みんな暇なの?」
ヌエ「自分で呼んどいて何言ってんだか」
キタ「まさか来るとは思わなかった」
ヌエ「だから来たんじゃないか」
キタ「本当、変な能力だよな」
ヌエ「変じゃない能力の方が少なかろうに」

2
1

NO MUSIC NO LIFE 一周年記念番外編 天球、彗星は夜を跨いで ④

いつの間にか降り始めた流れ星は、四人の視界を輝かせては一瞬で消えていく。
そんな感じで時は過ぎ、気づいたときには深夜の一時を過ぎていたらしい。
「まあ、明日休みだしゆっくり帰ろうぜ」
と言う結月の言葉に三人は頷いた。
「アイス食べたいー」
という時雨のわがままにより、四人はコンビニに寄った。
道中、美月と玲が声をそろえて
「「疲れたー」」
と言ってたとか言ってなかったとか。
コンビニについた一行は、それぞれが好きなアイスを買い、食べ始めた。
他愛ない会話をしていると、美月が思い出したように
「でもやっぱり、一瞬で消えちゃうのは、さみしいですよね。流れ星って。」
と言い放った。
「じゃあ、彗星ならいいんじゃね?消えないし、きれいだし。「別離」の象徴でもありながら「再会」の象徴でもある。なんか素敵だしさ。」
そう言う結月の言葉に
「じゃあ、次は、彗星観察だね。」
と時雨が返す。
その言葉に反応して、玲がスマホを取り出し、次に彗星が来るのは何時か検索しだす。
そんな姿を、見ながら、結月は空を見上げながら考える。

彗星なら流れ星よりも強い光で、
夜空を切り裂いて、
真っ暗な天球を繋いで、
「別離」と「再会」という相反する意味を持って、
僕の願いを叶えてくれるのだろうか。
押し殺した悲しみを
寝静まった街に降らせてくれるだろうか。

いつかそんな日がくればいいと結月は考えた。


【一周年記念番外編 天球、彗星は夜を跨いで 終わり】

3

No music No life 一周年記念番外編 天球、彗星は夜を跨いで ②

「なんと今日、流星群が見られるらしくてさ」
気象予報のコーナーで言ってたよと時雨は付け足した。真面目な時雨は毎日ニュースをまめにチェックしている。意外にも世間にさといのが時雨だった。
「流星群! 私まだ流星群どころか流れ星一つ見たことないです」
一回くらい見てみたいなーと美月が目を輝かせる。
「僕は流れ星くらいは見たことあるけど、流星群はないなぁ」
「私は一回だけ見たことありますよ」
「そのときはどうだった? やっぱり綺麗だったの?」
玲も星を眺めることがあるのかと思いつつ、結月が質問する。
「小さいころに見たんであんまり覚えてないんですけど、正直なところあんまりすごいとは感じませんでした。ぶっちゃけただの流れ星でしたよ。ぽつりぽつりってかんじで、子供心にはやっぱりもっと一斉に星が降ってるところを見たかったんでしょうね」
「……そんなもんなんですか?」
ぽろりと零れるような声で結月が呟いた。シャッター連続開口写真のような壮大なやつを期待していたのだろう。
「まあ、そんなものらしいよ。”流星群”とはいってもたくさん降るって意味じゃないんだって。一時間に二、三個程度の流星群なんてざらみたい」
「二、三個!? 夢がないですね……」
今スマホでささっと調べたらしい時雨の言葉は美月の流星群のイメージを破壊して余りあるらしかった。
パンッという乾いた音が三人の注目を集める。結月が手を打ち鳴らしたのだ。
「まあでも美月は流れ星見たことないんでしょ? ……そうだな、新月で空は快晴とあることだし、今夜は天体観測といこう」
悪だくみをするときの顔とはまたちょっと違う気もするが、おおよそ小学生たちが浮かべているそれと大差ないよな、という感想を抱いたのは時雨だ。好奇心が止まらないといったような無邪気な笑顔である。もちろんそのことは口には出さず、代わりに肯定の意を示す。この話題を出した時点で結月がこの提案をしてくれることを期待していないわけではなかった。
「……それって警察に補導されたりしないかな」
「我々の身分を忘れたのかね」
美月の心配は結月の次の言葉で粉々に吹き飛んだ。