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五行怪異世巡『きさらぎ駅』 その⑨

3人は駅のホームから線路へ飛び下り、元来た方向に向けて歩き始めていた。
「カオル、質問良い?」
線路上を歩きながら、青葉が尋ねる。
「んー? ワタシの可愛い青葉、もちろん良いよ」
「さっき言ってた『一番薄いところ』って?」
「そうだなぁ、ワタシ達はどうやってこの駅に来たっけ?」
「そりゃ、電車に乗って……」
「なら普通に考えて、線路を辿れば元の場所に帰れるはずだよね」
「これがオカルトな異次元だったりしたら、そう上手くはいかないけどねー」
水を差す白神を鋭く睨み、カオルは言葉を続ける。
「『辿ってやって来た道』。その事実自体が『外』との繋がりなんだよ。ついでだから、もう一つくらい条件が揃ってくれれば嬉しいんだけどねぇ……」
そのまま数十分ほど歩き続けていると、線路の先にトンネルが見えてきた。
「見つけた。トンネル、良いね。隔たりを越えるための道。彼我を繋ぐ穴。最高に近い」
歩みを速め、3人はトンネルの目の前で立ち止まった。
「さっさと終わらせようか。おい妖怪、あの電撃、こっちに撃ってきて」
「りょーかい。アオバちゃん、離れてた方が良いんじゃない?」
「平気。ワタシが守ってるんだから、ほんのぴりっとだって痛みやしないよ」
「それじゃあ……それっ」
白神が腕を振るい、電撃を青葉とカオルに向けて飛ばした。青白いその電光はカオルが翳した右手に吸い込まれ、刀剣のような形状に固定される。
「……失せろ、怪異。ワタシの可愛い青葉を、解放してもらうぞ」
そう呟きながら、カオルが雷の刃で虚空を切り裂く。その軌道に沿って空間上に亀裂が走り、3人の姿は強い光に包まれた。

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Flowering Dolly:Bamboo Surprise キャラクター紹介①

・ササ
モチーフ:Sasa veitchii(クマザサ)
身長:130㎝  紋様の位置:左の鎖骨近く  紋様の意匠:クマの掌
ロリータ風の衣装に身を包んだ、黒髪ショートヘアのドーリィ。肌はかなり白い。
固有武器はピンク色のテディベア「クマ座さん」。常日頃から抱えており、他人とのコミュニケーションには、腹話術人形のように使う。戦闘時には牙や腕・爪など一部が瞬間的に巨大化し、敵をボコボコにしてくれる。極度の人見知りで、マスターのサヤ以外とは腹話術でしか話せない。フィロさんとは共闘したからセーフ。
得意とする魔法は、対象の外見変化。見た目だけを変えるある種の幻覚魔法であり、対象と異なる大きさの外見を貼り付けても当たり判定は対象の元々のものを参照する。ちなみにこの幻覚はあらゆる感覚器や観測設備・手段によってその外見と認識されるため、看破は不可能。赤外線とかX線とか透視とか正体看破の魔法でも貼り付けた外見の方でしか認識できない。質量で違和感に気付くくらいしか方法が無い。

・サヤ
年齢:11歳  性別:女  身長:130㎝
ササのマスター。幼い頃(大体5歳になる少し前くらい)に自分以外の家族全員をビーストに殺されており、それ以来かつての生家があった廃墟群を拠点にストリート・チャイルドのような生活をしている。対策課に行けば助けてもらえるはずなのだが、そんなこと幼子が知っているわけは無いので。
ササとは完全な鏡映しレベルで瓜二つで、全く同じ外見の衣装を作ってもらい身に付けている。さながら双子。テディベアももらった。戦闘時は自身も前線に出て、ササと同じ外見を利用して敵を翻弄する。幼少期に十分な愛情を受ける前に両親が亡くなったために自分の身体に大して執着が無いので、怪物が目の前に居ても怖くない。だから囮役も平気でこなせる。

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Flowering Dolly:釣り人の日常 その①

早朝から釣りをしていたが、4時間経って周囲が明るくなっても、雑魚の1匹も釣れなかった。
まあ、釣りは成果ばかりが全てじゃ無し。この辺りは頻繁にビーストが現れるということで誰も寄り付かないから、1人でのんびり過ごすことができる。まあ実際には海上に現れるだけで上陸してこないからあまり問題無いんだが。
「………………」
不意に、背後から軽い足音が聞こえてきた。足音の主は自分から少し離れたところで立ち止ったようだ。そちらに目を向けると、病的な白い肌をして目の下に濃いクマを作った、貧相な体つきの少女がこちらをじっと見つめていた。バケツと釣り竿を携えているところを見るに、彼女も釣りにやって来たようだ。
「……お隣、よろしいです?」
「…………いやまあ良いッスけど……」
しぶしぶ了承すると、2mほど離れたところに腰を下ろして釣り糸を垂らし始めた。
「…………」
「…………」
たいへん気まずい。取り敢えず、2mほど追加で距離を取る。
「?」
横から何かが動く気配を感じ、彼女の方を見ると、こちらに少し近付いて来ていた。再び離れる。彼女の方を見ていると、こちらを見もせずに再び距離を詰めてきた。
「………………」
「………………」
離れる。近付かれる。それを何度か繰り返しているうちに、いつの間にか彼我の距離は1m程度にまで縮んでいた。
「何なんだお前ぇっ!」
「……うひひ」
「笑って誤魔化すな!」
その時、沖の方で何かが海面から勢い良く飛び出した。そちらに目をやると、巨大なウミヘビのようなビーストが暴れている。
「……またビースト。最近特に多いですねぇ」
目を離した隙に至近距離まで接近していたあの少女が話しかけてくる。
「お陰で、最近じゃ余所に引っ越す人たちも増えちゃって……」
「まあ仕方ないんじゃないか? あと近付くな」

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 キャラクター紹介

・アリー
モチーフ:Allium fistulosum(ナガネギ)
身長:149㎝  紋様の位置:右の手の甲  紋様の意匠:ネギ坊主
ブロンドヘアをツインテールにまとめた、やや幼い外見のドーリィ。本作開始時点では誰とも契約していなかった。
固有武器はフィスタロッサム(先端が二股に分かれた片手杖。中が空洞になっており、振ることで音を鳴らすことができる管楽器としても使える)。フィスタロッサムの演奏によって万物の「魂」を震わせ、曲目に応じた変化を発生させる。音色の届く範囲であればすべて射程圏内でありすべて対象内。回避方法は音楽に『ノる』こと。好みに合わなかった場合は防御不可の攻撃を食らうことになる。対象に音楽を解する知能が無かった場合(たとえば無生物には魂はあっても知能がないので確定で命中)は必中です。
ちなみに自称が「アリウム」じゃないのは名前感が薄くて可愛くないから。縮めたことでより人名っぽく、可愛らしくなったので気に入っている。


・ケーパ
年齢:18歳  性別:男  身長:170㎝
アリーの飼い主というか何というかなあれ。本作開始時点では約8か月も半同棲状態にあったにも拘わらず別にアリーと契約していたりしているわけでは無かった。好きなものは料理と音楽。DEXが低いのでクオリティは何とも言えない(悪いわけでは無い)。アリーの音楽性と奇跡的なレベルで高い親和性を持っており、如何なる状況でどのジャンルが奏でられようと問題無くノれる。ただの節操無しともいう。
ちなみに住所は辛うじて街の外。今は亡き両親が建てた家だけど今回ビーストに壊されてしまった。父親はビーストと無関係の事故死、母親は病死というちょっとコメントしにくい過去を抱えてはいるけれど、今日も元気に生きています。
Q,なんで頑なに「フィスタ」呼びしてたの?
A,『ソード・ワールド2.0』ってゲームがあってぇ…
 〈フィスタロッサム〉っていう武器としても使える楽器があってぇ…
 見た目が完全にネギでぇ…
 魔動機文明時代(SFな時代)のとある女性吟遊詩人が使った楽器の模造品でぇ…
 要するにTRPG楽しいよって話です。
 けーちゃん視点でいうと多分最初に「Allium fistulosum」って名乗られたんだと思う。

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Flowering Dolly:Bamboo Surprise その⑪

「ただいまァー、おタケちゃーん」
SSABに帰還したフィロは、真っ先に机上の籠の中で眠る赤子に駆け寄った。赤子タケはそれに気付き、彼女に両手を伸ばす。
「無事に帰って来たよぉおタケ、お前がいてくれたお陰さ。お前は生きているだけで偉いし可愛いねぇ。人間の子どもってのは本当に素敵な生き物だ……」
タケを抱き上げるフィロの背後で、ササとサヤは興味津々の様子で2人の様子を眺めていた。
「ああそうだ、サヤちゃんとササちゃんにも紹介してやろうね。この赤子が私の“マスター”可愛い可愛いおタケちゃんさ」
「ふおぉ……」
「あかちゃん……」
「赤ん坊ってマスターになれるんだ?」
「なってるってことはなれるんだねぇ」
2人が赤子をつついていると、SSABの入口扉が開き、事務員が入ってきた。
「ぴひゃあ⁉」
裏返った悲鳴をあげ、ササはサヤの背中に隠れる。
「あ、フィロスタチスさん。お疲れ様です……その双子は?」
「ん。今日拾ったドーリィとそのマスターだよ。どうも孤児の宿無しらしくってさ、私のところで引き取るが構わないね?」
「え、ええまあ、はい……それじゃあ色々と手続きするから君達もちょっと協力してくれるかな?」
事務員に手招きされ、サヤは臆さず、ササはその背中に貼り付いてびくびくとしながら、それに応じた。

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その⑮

結局、SSABに相談したらケーパは仮住居を支給してもらえたので、あいつと二人してその住居に入り、私はベッドで休憩、あいつは台所の確認を始めた。
「けーちゃんどーぉー?」
「んー、結構良い感じだな。地味にコンロが3口だ。すげぇ」
「へー……3口だとどうすごいのさ」
「数は力だぞ。無限に料理作れる」
「なにそれ最高じゃん!」
「……しっかしさぁ」
あいつが私の方に振り向いた。
「お前、めっちゃ怒られてたな」
「あー……うん……」
SSABの破片回収のために近隣住民はしばらく町の外に出ていたから、私の魔法で人間が捻じ曲がることは無かったけど、流石に町一つねじねじ前衛アートの瓦礫山に変えてしまったのはやり過ぎだって偉い人に怒られたんだよね。地面もボコボコぐちゃぐちゃのクレーターまみれにしちゃったから……。やってることだけで言えば私も十分人類の敵といえるかもしれない。
「まぁ、代わりにSSAB就職すれば許してくれるってんだからねぇ……破格破格」
「ついでに給金も出るんだから助かるよなぁ……」
「ねー。けーちゃん何もしないのに」
「お? 俺が契約したからそのパワーに目覚めた奴が何か言ってんな?」
「うひひ、大丈夫大丈夫。感謝はしっかりしてるから……」
「それは知ってる」
言いながら、ケーパが台所から出てきた。
「どしたのけーちゃん」
「あん? 設備の確認は終わったからな。買い物行くんだよ。1曲分の対価をまだ出せてないからなー」
「ぃよっしゃぁ、引っ越し祝いも兼ねて派手にやろうよ。私もサービスで何曲かつけてあげる」
「やったぜ」
ぐいっ、と身体を起こし、早足で出て行こうとするあいつの隣に並び立つ。
互いの手の甲を打ち合わせ、2人して晩ご飯の買い出しに出かけた。

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Flowering Dolly:Bamboo Surprise その⑩

歪みの中から現れたのは、ピンク色のテディベアの頭部。数十倍の大きさに膨張し、鋭い牙の並んだ口が大きく開かれている。
ソレがこの奇襲的攻撃に対応できたのは、殆ど奇跡といって良かった。
テディベアの顎が高速で噛み合わされる直前、そのビーストは反射的に身体を丸め、尾で地面を打つことで僅かに加速する。結果として尾の先端を僅かに噛み切られたものの、その全身は口腔内にすっぽりと収まった。
「よし、成功!」
テディベア越しに、くぐもって少女の声が聞こえてくる。ビーストの『捕食』に成功したと確信しているらしい。口内で姿勢を整え、テディベアの舌を足場に強く踏み切り、口蓋を蹴り破る。
「⁉」
生物的な体組織が突き破られる感覚とは異なる、綿と布地を突き破る感触と共に、ビーストの身体はテディベアの外に解放される。その瞬間、ビーストの頭部をフィロの短槍が貫いた。
「完璧な誘導だったよ、サヤちゃん。ササちゃんもよくヤツをこっちに引きずり込んでくれた」
「うん。クマ座さんはやられちゃったけど……」
ササは頭部の弾け飛んだテディベアの手足を、小さな手でぴこぴこと弄り回す。
「……よし、ギリギリ使える」
「オーケイ。そォら!」
フィロが槍を引き抜き、支えを失って倒れ始めたビーストの身体に、“クマ座さん”の両手の爪が迫り、無抵抗の肉体を細切れに引き裂いた。
「しょーりっ」
「よくやった」
空間歪曲を通って、サヤも2人のドーリィに合流する。
「サヤ! 勝ったよ」
「ほんとぉ? やったぁ」
「ん、これで全員集合かい。じゃ、治すからね」
フィロはそう言い、魔法の仕込みで細切れにしていた左腕を瞬時に再生させた。

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その⑭

「さて……それじゃ、もう終わらせよっか」
“フィスタロッサム”を軽く持ち上げ、音楽を1回止める。
「2曲目行くよー! 〈S21g〉!」
続いてこの管楽器から放たれますは、荒々しいドラムセットのリズム。
「それ、打楽器も行けんのかよ。万能じゃん」
「そうだねぇ」
そこから始まるハード・ロックが、捻じれた家屋群に到達するのと同時に、それらに深い亀裂が走り破裂するように崩壊していく。
「そして当然お前も……『破砕』する!」
ヤツの全身に罅が入り、主旋律が一層激しくなったのに合わせて吹き飛んだ。その破片もまた、1拍ごとに細かく砕け続け、最後には塵とすら呼べないほどの微粒子にまで細分しきってしまった。
「討伐完了っ!」
「……いやすげえな。マジであっという間じゃん」
「へへん、凄かろう。褒めてくれても良いんだよぉ?」
わざとらしく胸を張ると、彼は私の頭をぐしぐしと撫でてくれた。
「手つきが乱暴ぉー。DEXクソ雑魚めー」
「悪かったな……ところでお前の魔法」
「ん?」
頭を撫でていたあいつの手が、髪の表面を滑って持ち上げ、私の眼前に持ってくる。彼の手の中にあったのは、ツインテールにまとめられた、私の「鮮やかな緑色のロングヘア」。
「……何これ? アリーちゃんブロンドなんだけど? 長さもこの3分の1が標準だし」
「魔法で変わったんじゃねーの? ついでに服も」
その言葉に視線を下に移すと、着ているものが普段の簡単な衣装とは全く違う、ごてごてしたパンクなファッションに変わっていた。
「え、何これ⁉ やだ見ないで恥ずい!」
「いや恥ずかしいこと無くねーか? 似合ってるし」
「いやだってぇ……いつもと違う格好ってちょっと恥ずかしいじゃん……取り敢えず元の格好にもーどれっ」
魔法で髪と服を普段通りに戻し、あいつに背中を向ける。
「ほら、行こ? 帰ってご飯にしようよ」
「帰る家も台所も食材も残らず食われたけどな。さーて、これからどう生活すっかなー……SSABに相談したら何とかなっかなー」

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崩壊世界の円環魔術師 3 +お知らせ?

「ところで、君は何してるの?避難所も近いのに。」

次は私が質問される番だった。

「お父さんとお母さんが居るから。」
「どこに?」
「そこ。」

私は、2人の寝ているベッドを指した。

「あぁ...」

その魔術師?の子供は何かを察した様な顔になった。

「ねぇ、何であなたみたいな小さい子が出歩いてるの?」
「ちいさ...っ?!」

一瞬顔を引き攣らせ、子供ではないと訂正した。

「もう、軽く30は超えてるよ。」
「ふうん...じゃあお姉さん、何でここにいるの?」
「もうそろそろ別の土地に行こうかな、と思って。」

確かに、お姉さんは小さな肩掛け鞄をもっていた。

「でも辞めた!もう少しここに居ることにする。」
「何で?」

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皆様こんばんは、宿題に追われるやたろうです。
しばらく投稿が止まっていてすみません。 
「魔術師月間」にあるまじき愚行ですね。
リンネ達も本当にごめんな。
言い訳をさせて頂きますと、ただただサボっていた訳ではなく、体調を崩して(夏風邪だったぽい)、田舎から帰って、その他にもバタバタ(?)しておりました。本当にすみません。
今週(あと1日だけど)から投稿再会します。
これからもどうぞよろしくお願いします。

追伸
宿題が終わらず追われている同志諸君!
絶対一緒に乗り切ろうな!

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Flowering Dolly:猛獣狩りに行こう その⑦

「……マスター」
「ん? どうしたハルパ」
「ちょっと、移動するね」
「ああ、うん」
ハルパは男を担いだまま短距離転移でビーストの背中の上に腰を下ろした姿勢で移動した。唯一無傷だった竜頭が2人の方を向いて牙を剥くが、ハルパは片足で鼻面を押さえる。
「このまま死ぬまで待ってよ」
「ああうん……せっかくだから下ろしてほしいな」
「ん」
男はハルパの隣に腰を下ろし、転落防止にハルパを抱き寄せた。
「ちょっと掴まらせてね……っと」
「んー……」
男を押しのけるようにハルパが頭を押し付ける。
「待って押さないで」
「にゃーお」
「『にゃーお』じゃなく……」
2人が背中で騒いでいるにも拘らず、ビーストが動く気配はない。竜頭を除くすべての部位が、隙間ない〈ガエ=ブルガ〉の侵食を受けて完全に固定されていたためである。
「……そろそろ…………かなぁ……」
ふと、ハルパが呟いた。
「ん、そうかい」
ハルパが男を抱え、瞬間移動でビーストから離れた直後、その全身から黒い棘が突き出し、唯一無事だった竜頭ごと肉体をズタズタに引き裂き殺した。
「かった」
「よくやった」
ハルパから解放された男は、彼女とハイタッチを交わした。

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その⑥

ヤツが家の残骸からのっそりと這い出してくる。まずは軽いドロップキックを仕掛けて、一度反発で数m距離を取り、向こうの動きを見る。契約なしの私には大したことはできないから、あまり不用意なことはできないけど……。
ヤツのことを注意して見ていると、さっき生えてきた両腕の表面がうぞうぞと動き、瞼が開くように複数個の穴が開いた。中身は眼球じゃない、むしろ……。
「ッ⁉」
咄嗟に背後、ケーパのいる場所を確認する。今いるのは、私の真後ろ約20m。問題無いはず。首と心臓を腕で庇った直後、その『目』の中身が、ミサイルのように一斉に射出された。
生体ミサイルは滅茶苦茶な弾道で大体こっちに飛んできている。弾速はなかなかのものだけど、直線軌道じゃないから回避する余裕は十分…………
「……なっ……!」
ミサイルのうちいくつかは、私の横や上を通過していった。この先にいるものといえば。
「けーちゃん!」
あいつの目の前に瞬間移動し、身体で受け止めた。
けど、受けてみて分かった。これは駄目だ。
威力が、貫通力が高すぎる。
体内を、まるで何の障害も無いかのように掘り進む感触。それでも着弾の瞬間の衝撃で、体内で破裂する感触。それらが加速した走馬灯の思考にスローモーションのように襲ってくる。
せっかく私が盾になったのに、これじゃまるで無意味じゃないか。それどころか、爆発のせいで受けなかった時以上に守りにくくなってしまっている。
こうなると、多少の無理でもするしか無い。

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「円環魔術師録」達による他作品所見 2

リンネ「で、『人工精霊は魔力の塊』ってところなんだけど...すごいねぇこれ。魔力の実体化でしょ?
錬成者は未来人か何か?」
ミル「魔力の実体化...魔力は目に見えないし、魔力単体で出すことはできないから、そもそも無いんじゃないか、なんて言う学者さんも居ましたね。」
リンネ「一応、魔力によって魔術や魔法を行使してる、というのが現段階での有力説だね。あと、この地名だけど...なんて読むんだろうこれ。東方の国かな?ミル君、君の出身この辺でしょ読んで。」
ミル「無理ですよ!そもそも混血だし、物心ついたときには帝国の孤児院ですよ!そんな無茶苦茶な!」
リンネ「そっかぁ、じゃあやたろう、読んで。」
ミル「もう帰りました!」
リンネ「酷いなぁもう。まぁ良いや。あと、『異能』と言うのは魔術や魔法とは別物なのかな?」
ミル「字面だけ見たらそうでしょうけど...。」
リンネ「コレも後でやたろうに聞こうか。話しを戻すけど、魔力の実体化が可能なら、何もない所から何かを出す事も可能なんじゃない?だとしたら革命だね。騎士団の荷物持ちが要らなくなる。」
ミル「規模ちっさ!」
リンネ「ま、こんなところかな。最後まであの小娘は来なかったね。」
ミル「小娘って...。まぁそうですね。異世界の魔術も面白かったです。」
猫町「ではお二人ともお疲れ様でした。また呼び出すので覚悟しやがれください。」
リンネ「なんでキレてるの?」
ミル「確実にアンタのせいだよ!」

以上、「『円環魔術師録』達による他作品所見」でした。リクエストをくださった「テトモンよ永遠に!」さん、ありがとうございます。
リクエストはまだ受け付けていますので、是非ご参加下さい。

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魔法をあなたに その⑨

僅かに遅れてヤツに追いつくと、【フォーリーヴス】は怪物の目の前に立ち止まり、目を見開いて何かを凝視していた。怪物を、じゃねェな、どっちかってーと、その足下、の……。
(オイオイマジかよ!)
最高だ。怪物が今にも踏み潰そうとしていたのは、【フォーリーヴス】、いや、千代田ツバメを普段イジメてた主犯のガキじゃねえか!
『なァツバメちゃんよォ』
魂への囁きを、【フォーリーヴス】に差し向ける。直接ヤツの魂に触れることで、その「欲望」を剥き出しにさせる、生物学的標準技術だ。
『コイツはどうしたことか、最高のシチュエーションじゃねェか。目の前にはテメエを虐めてるクソガキが、化け物の手で殺されそうになっていやがる。喜べ、テメエの願いは叶うぜェ? しかも、テメエが手を汚す必要も無ェ』
「っ…………」
【フォーリーヴス】が硬直していると、ヤツが、あのイジメッ子がこっちに気付いた。
「なっ、千代田……!」
イジメッ子の目は如何にも「助けて><!」って言いたげだ。
『キヒヒ、テメエの願いを言えよ。イヤ、言う必要も無ェ。ただ願え。心の底に眠る願いを。己を取り巻く悪環境の終結を。何たってテメエの名は【フォーリーヴス】』
“幸運の四葉”? いいや違うね。 テメエのその名に与えた意味は、“復讐の白詰草”。
『名は体を表す』、テメエらの諺だ。体を表せよ。
復讐に堕ち、人道を外れたその瞬間! 昏く鈍く擦り減り切った魂は、最ッ高に上質の“魔力源”となる。
さあ。
さァ!
『サアァッ!』
ヤツが徐に歩き出した。それに応じて、手の中のブローチも輝きを放ち始める。
学校制服はやや和風の衣装に、学校鞄は刀身を持たない日本刀の柄に、陰気な黒髪は若草色のツインテールに、ヤツの姿が魔法少女のソレに変身する。
「………………ごめん」
ヤツがそう呟き、柄を握る手に力を込めると、そこに光の刀身が現れた。何だ、マサカ自らの手でヤるつもりか? 思ったヨカやるじゃねーの。
「色々、話したいけど……全部終わって、2人とも生きて帰って、その後」
『……ァン?』

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その①

「フィスタぁー! どこだー!」
私を呼ぶ声が、正確には『あいつが私を呼ぶときの名前』が聞こえる。
「………………」
寝ていたハンモックから身を起こし、あいつの姿を遠くに確認してから自分の身体を隠すようにぬいぐるみの山を崩し、だんまりを決め込む。
「フィスタぁー? おいフィスタ!」
声がだいぶ近付いてきた。多分もう何mも無い。
「やっぱりここにいたか……おいフィスタ、いるなら返事しろよな」
ぬいぐるみバリアが崩されて、光が差し込んできた。
「フィス……」
「だっかぁらあっ! そう呼ぶなっつってんでしょうがぁっ!」
不用心に覗き込んできたあいつの顎に蹴りを食らわせてやる。
「痛っ…………てえなぁフィスタてめえ!」
「私のことは『アリー』って呼べっつってんだろクソガキ!」
「てめえも外見はクソガキだろうが!」
いつものやり取りを済ませ、渋々ハンモックから抜け出す。
「それで? どうしたのさ」
「あぁ、ビーストが出たんだよ。“ドーリィ”の出番なんだろ?」
「そんなのお役所に任せとけば良いじゃん……」
「おま、せっかく“ドーリィ”の力があって、見ないふりするってのかよ」
「『力』っていってもねぇ……」
再びハンモックに仰向けに倒れ込み、掌を太陽に向ける。ちょうど私の方に向いた手の甲には、契約済みの紋様が…………。
「浮かんでれば、考えたんだけどねぇ……」

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五行怪異世巡『こっくりさん』 その⑦

「皆さん、終わりました。もう目を開けても良いですよ」
4人の生徒は、平坂の言葉に恐る恐る目を開けた。霊感の無い4人には、目に見えた変化は確認できない。
「お疲れ様でした。これで脅威は去ったと思いますが……念のためにこれを持っていてください」
そう言って、平坂は4人に1つずつ、真鍮製の小さな鈴飾りを渡した。
「あの、これは?」
女子生徒の1人が尋ねる。
「お守り代わりの品と思っていただければ。常に肌身離さず……とまでは言いませんが、しばらくの間、可能な限り身近に置いておくことをお勧めします」
「はーい……神主さん、今日はありがとうございました」
その生徒の言葉に、あとの3人も感謝の言葉を続けた。
「リホちゃんも、呼んできてくれてありがとうね」
「良いの良いの。私は今回のことについてこの人と少し話さなきゃだから、みんな帰って良いよ」
犬神が追い返すように手を振りながら言うと、4人の生徒は頭を下げながら教室を出て行った。
「……お疲れ、『神主さん』」
「とどめを刺したのはお前だろう」
2人だけ取り残され、平坂と犬神は軽く拳を突き合わせ互いを労った。
「あ、砂返すね」
「要らん。持っていろ。あって困るモノじゃ無いだろ」
「うーい」
犬神が能力で砂を操作し、巾着袋の中に一粒残らず納め、口を締める。
「そういえば『アレ』、何だったんだろうね? こっくりさんってキツネじゃないの?」
「分からん。凡そ四足動物のようではあったが……あの生徒ら、何を呼び出したんだ?」
「分かんない。やってるところ実際に見てたけど、大体普通の『こっくりさん』のやり方だったよ?」
「……そうか。俺はもう帰るから、結界の片付けを手伝え」
「ほいほい」

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ロジカル・シンキング その⑫

怪物は暴れ続けるうち、足下の瓦礫に躓き、横倒しに倒れ込んだ。建物の残骸はその質量に押し潰されて容易に崩壊する。
「ホタ! 目隠し!」
「はいはーい!」
アリストテレスの声に答え、フレイムコードが指揮棒よろしくスタッフを振り上げると、炎の渦はうねるように変形し怪物の頭部周辺を取り囲んだ。
(破壊力を意識した〈CB〉とはずらして、硬度と弾速に割り振った貫通力特化型のプリセット)
「〈Preset : Wedge Bullet〉。ホタ、目隠しと外壁一瞬消して!」
「うえぇ? い、いややるけどなんで……」
炎の壁が一瞬分断され、外の空気が流れ込んでくる。それと共に、弾丸のように一つの影が飛び込んできた。ドゥレッツァだ。
「そおおおおおおおおお、りゃああっ!」
勢いのまま、炎の覆いが取り払われた怪物の頭部にドロップキックを直撃させ、跳ね返る勢いで真上に跳躍する。
「カウント3!」
ドゥレッツァの合図に頷き、アリストテレスは〈WB〉と〈CB〉を連続で怪物に向けて射撃した。〈WB〉の着弾と同時に、ドゥレッツァの魔法によって衝撃が炸裂し怪物の頭部が大きく揺さぶられる。その揺り戻しと同時に、銃創を正確に〈CB〉が貫いた。
魔法弾は怪物の体内でその破壊力を発揮する。頭部、ひいては脳という生命と行動管制を司る器官を、外皮装甲の無い内側から直接破壊されたことで、怪物はその身を一度大きく痙攣させ、やがて脱力し動かなくなった。

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ただの魔女 終

“魔女”が目を覚ました時、最初に見たのは彼女を見下すヤヨイの顔だった。
「あ、おはようございまーす……この度はうちの姉上がお世話になりましたぁ」
「ぅ……誰……?」
身を起こそうとする“魔女”の眼前に、ヤヨイはメイスを突き付ける。
「悪いけど、動かないでいただいて…………。私は中山ヤヨイ。あんたが散々痛めつけてくれた中山サツキの実妹だよ」
「……へぇ?」
再び頭を下ろし、“魔女”はヤヨイと睨み合う。
「それで、妹が何の用? お姉さんの敵討ち?」
「別に……死んだわけでも無いし」
「何だ、サツキ死ななかったんだ。私が死んでなかったから、てっきりあっちが死んだものかと」
「あんた戦闘狂か何かなの? ……まあ良いや。用件はまあ、一つだけでさ」
「ふーん?」
ヤヨイの言葉を待つ“魔女”の顔面を、鎚頭が鋭く打ち据えた。顔面の骨が砕ける感触と共に、“魔女”の顔は打撃の勢いで横方向に弾かれる。
「痛……あれ? 痛くない……?」
ダメージが一切残っていないことに困惑する“魔女”の顔面を、更に正面から叩き潰す。
「ぐっ…………⁉」
メイスが持ち上がった後の“魔女”の顔にはやはり、傷の一つも無い。
「私の魔法だよ。『外傷の治癒』。流石に身内が殺されかけて黙っていられるほど私も優しくなくってさぁ。お姉ちゃんが友達だって言ってたからこのくらいで済ますけど……」
“魔女”の胸倉を掴み、引き寄せる。
「今度私の身内に手ぇ出してみろ。お前の精神がベキベキに砕けるまで殴り続けてやる」
「…………っはは。私、あんたのことも嫌いじゃないよ、中山ヤヨイ」
「……はぁ?」
「あんたの信念はきっぱりしてるから聞いてて気持ちが良いや」
ヤヨイから解放された“魔女”は、徐に立ち上がり、衣服についた埃を払った。
「そうだ。中山サツキに託ってくれる?」
「……何を」
「『富士見ヒカリ』。私の本名だよ。私だけ名前を掴んでるのは不公平だからね」
“魔女”――ヒカリはヤヨイに手を振り、屋上の落下防止柵を乗り越え、飛び降りた。
慌ててそちらに駆け寄ったヤヨイが見たのは、校舎の壁に貼り付いていた大型ゴーレムの手の中に納まったヒカリの姿だった。
「……あんのクソ魔女が」
ゴーレムに抱かれて去っていくヒカリに悪態を吐き、ヤヨイは変身を解除した。

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日々鍛錬守護者倶楽部 その⑥

立ち上がろうとする怪物を前に、サホはその場でスタッフを振り回し始めた。その軌道上には闇を凝縮したようなラインが残存し、空間を少しずつ侵食するように広がっていく。やがて直径約10mの半球状に暗闇が広がり、タツタはその闇に溶け込むように姿を消した。
(サホの生み出した“エフェクト”……暗闇と、私の魔法で操る“霊”は相性が良い。この霊障は今、闇に溶けている)
無数の霊体腕が、怪物を“空間上”に“縫い留める”。
「お前の『魂』を掴んだ。この“霊体”と同様に、『障られた』お前もまた、闇と一体化する。そして……」
タツタは素早く闇の中を滑るように移動して、サホの背後に着地した。同時に、サホの振り上げていたスタッフの先端を飾る宝石が光を放ち始める。
「『闇』を切り裂く光の一閃」
振り下ろされて生じた光の軌跡が、一筋の斬撃として空間を占める暗闇を両断し、吹き飛ばす。一瞬遅れて、怪物の残骸が無数の肉片となってその場に降り注いだ。
「…………いやァ……決まったね」
タツタがサホに声を掛ける。
「うん。実践は初めてだったけど……上手く決まって良かったよ…………」
サホも額の冷や汗を拭いながら答え、肉片を回収するタツタの霊体腕に近付く。
「……バラバラだねぇ」
「うん、バラバラだ」
「タツタちゃんが闇から抜け出したタイミングに合わせて斬らないと、タツタちゃんもこうなるってことだよね?」
「ま……そうなるね。スリル満点だ」
「こわぁ……。真っ暗だから、私からはタツタちゃんがどんな状態か見えないんだよ?」
「ダイジョブダイジョブ。何年一緒に戦ってきたと思ってるの。私らの息の合い方なら失敗確率0パーだよォ」

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五行怪異世巡『竜』 その④

「我らが祭神、爽厨龍神大神でありましたか。ここまでの無礼、こちらの娘の分も含め、深くお詫びしたい」
「えっ、あ、お、おお我が忠臣よ、ようやく理解したか大馬鹿者め」
「面目次第も無く……」
子どもは武器を下ろし、元の和装の普段着の姿に戻った。
「いやしかし、強かったねェ祭神サマ。何つったっけ?」
2人に近付いてきた種枚が、どちらにとも無く話しかけてくる。
「爽厨龍神大神。人の子は我をそう呼ぶのだ」
子どもの答えに、種枚は複雑な表情をした。
「長いな。もっと縮めた愛称とか無いのか?」
「貴様、仮にも神格を『愛称』で呼ぼうって言うのか⁉」
「殺せば死ぬ奴ァ何でも人間と同格だろ?」
「な、お、貴様ぁ⁉ 最早清々しい奴め!」
「で、どう呼べば良い? 『さっちゃん』とでも呼んでやろうか?」
「やめいやめい! そのような我の威光の欠片も感じられぬ渾名を使うのは!」
「チィ……なら『リュウ』で。龍神だから『リュウ』。強そうだしこれで良いか?」
「むぅ……まあ、良かろう。では、我はもう帰るからな! まったく、せっかく顕現してやったのに、こんな手荒な真似をするとは……」
ぼやきながら、リュウは姿を消した。
「……しかしよォ、潜龍の」
「何だ」
「ここの祭神って、龍神だったんだな。“潜龍神社”の名前は祭神とは無関係だと思ってたよ」
「無関係だぞ。祭神が龍なのは単なる偶然だ。そもそもこの街の北にそこそこの川が流れているだろう。龍神信仰が興ること自体は自然な地形なんだよ」
「あー……たしかに」

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Side:Law in Black Market 世界観

舞台は近未来の世界。自律ロボットもサイボーグも多分いる。
約200年前、人類は滅亡の危機に瀕した。理由は不明。紙媒体の資料はポスト・アポカリプスにおいて『燃料』として消えてしまったから。デジタル・デバイスは生きているが、重要な情報は大部分が厳重に保管・秘匿されているため、真相を知る人間は少ない。
人類は世界各地のメトロポリスの高層建造物群を利用し、上へ上へと逃げるように移住していった。やがて彼らはそれぞれの役割に応じて、そのスカイ・スクレイパー群に3層に住み分けるようになる。
地表から100m以上の上層〈アッパーヤード〉。総人口の約2割、主に有力者や権力者が住み、デジタル・メモリを利用した情報・記録の保存と各スカイ・スクレイパー群の統治を目的としたエリア。
〈アッパーヤード〉より下、地表から40m以上の〈グラウンド〉。建造物の隙間に橋を渡すように増築された『地表』が総面積の約7割を占める、一般市民の居住区。
そして、〈ブラックマーケット〉。正確な規模や面積は一切不明で、地表から〈グラウンド〉や〈アッパーヤード〉の高さにまで食い込んでいることすらある、人格や思想故に民衆から『あぶれざるを得なかった』ドロップアウター達が最後に辿り着く危険地帯。
〈ブラックマーケット〉の領域内において上層の『法』は適用されず、ただ『商品価値』を示せる限り生を許されるという『掟』だけで回っている。『価値』を失った人間は、最後に残った『肉体』と『生命』を『価値』が分かる人間に『活用』されることになる。

物語の主な舞台は〈ブラックマーケット〉。ドロップアウター共が己の『価値』を武器に現世の地獄を生き抜く、そんな歴史の端にも引っかからないような、ちっぽけなお話。

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五行怪異世巡『天狗』 その⑬

数分して、青葉と天狗のもとに種枚も合流してきた。
「うぁー……? おや青葉ちゃんよ、捕まえたのかい?」
「あ、はい。どうにか」
「そりゃめでてぇや。そこ、代わってくれるかい?」
「はい、どうぞ」
天狗から離れた青葉に代わり、種枚が天狗の身体の上に腰を下ろし、〈薫風〉の柄に踵を乗せた。
「そんじゃ、オイ天狗」
「な、何だよ……?」
やや怯えた表情の天狗の眼前に鋭い爪を具えた指を突き付け、種枚は顔を寄せた。
「現状、貴様の命は我々が握っているわけだが……ここは上位者らしく貴様に死なずに済む可能性を提示してやる」
「なっ、『上位者』だと……⁉」
反抗しようとした天狗の顔を片手で掴み、僅かに握力を込める。
「馬鹿め、話は最後まで聞け雑魚妖怪が」
「…………!」
「良いか? おい天狗、私たちの仲間になれ」
「ナ、ナカマ……?」
「ああ。本来なら人間相手に悪さする阿呆は容赦なくブチ転がす所存なんだが……。安心しろよ、同類なら身内にいる。悪いようにはしないさ」
「……何をすれば良い?」
既に抵抗を諦めて脱力していた天狗に問われ、種枚はニタリと笑った。
「良い子だ。人間相手に悪さする阿呆を懲らしめてくれりゃあ良い。貴様はあの子……青葉ちゃんの下につけ。貴様の生死は単に、貴様があの子の機嫌を損ねないかにかかっている。ふざけた真似はするなよ?」
天狗の額に、出血が起きる程度に爪を強く押し付け、肩の〈薫風〉を抜いた。

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ミセコエ:〈五行会〉のイカレたメンバーを紹介するぜ!

前シリーズ『視える世界を超えて』略して”ミセコエ”ですが、最終的なキャラクター紹介をしていなかった気がするので、夜中のうちに雑に投げとこうと思います。取り敢えず〈五行会〉幹部連中だけ。

・〈木行〉“雷獣”白神鳴
年齢:自称19歳  身長:170㎝くらい
人間に化けて人間社会で生きている妖怪。静電気を溜め込んで自由に放電できる。千葉さんはお友達でお気に入り。その辺にいる妖怪や幽霊やオバケを拾っては仲間にしている。

・〈火行〉“鬼子”種枚
年齢:不明  身長:160㎝くらい
〈五行会〉の発起人にしてフリーの怪異狩り。普段何をしているのかは一切不明。生物学的には霊感があるだけのただの人間のはずだが、身体能力やその他の特徴がどう見ても人外。本名は誰も知らない。

・〈土行〉“犬神憑”犬神
年齢:中学生  身長:150弱
種枚さんの親友で理解者で同志でその他いろいろな子。月一で殺し合うだけで相思相愛。犬神憑きの家の出で、土砂や岩石を操る力がある。5人の中で唯一余所の街在住。本名は種枚さんしか知らない。

・〈金行〉“常人”岩戸青葉
年齢:13歳  身長:チビ
『最も人街に近い家系』岩戸家の当代末子。霊感が無く、各代で最も人外の才が弱い女子が受け継ぐ家宝〈薫風〉を手に夜な夜な武者修行していたが、最近は落ち着いてきた。

・〈水行/代表〉“潜龍”平坂
年齢:23歳  身長:172かそこら
”潜龍神社”の神職を務める霊能者。〈五行会〉のリーダー役を押し付けられた人。先日、無事に当代”潜龍”を正式に継承した模様。ちなみに”潜龍神社”は飽くまで霊能者家系が代々管理しているだけで、”潜龍”の対怪異技術は神様とは無関係。

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日々鍛錬守護者倶楽部 その②

両手持ちのスタッフを構えて近付いてくるサホに対し、タツタは魔法で生成した2本の半透明な青白い腕を飛ばして応戦する。向かってくる2本の腕をスタッフを横薙ぎに一撃で消し飛ばし、勢いを落とすことなく更に突き進む。
タツタはその足下に腕を伸ばし、足を取ろうと試みたが、それは跳躍によって回避され、サホはそのままスタッフを振り上げ、勢い良く振り下ろした。
宝石で装飾されたスタッフの先端がタツタの脳天に直撃する寸前、背後から伸びてきた1対の腕が彼女の首と腰を捉え、後方に引き寄せることで回避させる。
「やっぱり強いなぁ、タツタちゃん」
「私としてはあんたの方が恐ろしいけどね」
「それじゃぁ」
「まだ時間はあることだし」
「「ギアを上げるか」」
タツタは、6対12本の『腕』を生成し、同時多角的にサホに差し向ける。
対するサホはその場でスタッフを横薙ぎに振るう。先端に飾られた宝石の軌跡は炎のエフェクトとしてその場に残り、彼女はそれを掴み新たな武器として『腕』たちを迎撃し始めた。
元々持っていたスタッフと炎の鞭による二刀流で、『腕』は次々と打ち据えられ、消し飛んでいく。タツタも絶え間なく腕を生成し続け、サホの動きを防御に専念させ続ける。
(まだだ…………もっと集中させろ……処理が追い付かなくなるまで、腕を増やしてやる!)
生成される『腕』の本数が、更に倍になる。サホはスタッフの軌道に炎のエフェクトを生成し、それらを壁として防御を続ける。
(…………今!)
「〈Pass Through〉」
足下から地面の下を通して伸ばした2本の『腕』が、地下から透過してサホの両脚を掴む。
「うげぇっ」
『腕』はそのまま彼女の足を引き、仰向けに引き倒した。その身体の上に、タツタが腰を下ろし、無表情でサホの顔を見つめる。
「…………」
「…………私の勝ち」
ニタリと笑い、タツタは魔法の『腕』で音楽の再生を止めた。
「ぬぁー負けたぁー」

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マホウショウジョ・リアリティショック 後編

ぬいぐるみが鬱陶しかったので、再び向き直り、目の前にしゃがみ込む。
「良い? ぬいさん」
「え、何……」
「私はね、今がすっごく楽しいんだよ。友達もたくさんいて、趣味も充実してて、勉強も頑張ってるし。これから多分部活にも入るから、もっと楽しく忙しくなる。そんな私の青春の時間と、仮に『魔法少女』とやらになったとして私が懸けなきゃならない命を、何の対価も無しにあげるわけが無いよね?」
「えっ……と……いや、そう、願い! 魔法少女になれば、何でも1つ願い事が叶うんだ! 君にもあるd」
「たった1つ? 私、自分の命と時間にはもうちょっと価値があるって自負してるんだけどなぁ」
「そ、それじゃあ……」
「ねぇぬいさん。1個だけアドバイスしてあげるね」
立ち上がりながら言う。
「そんなに無償の少年兵が欲しいなら、もっとコンプレックス丸出しの自己肯定感なんか欠片も無いネガティブな子を当たると良いよ。適当に甘い言葉並べて誘いたいならさ」
「うっ…………分かったよ」
思ったよりもあっさり引き下がってくれた。ちょっと意外で思わず振り返る。
「ためになるアドバイスをありがとう、ミチカちゃん。お礼にこれをあげよう」
ぬいぐるみは私に何かを差し出してきた。見たところ、髪飾りみたいだ。
「魔法少女に興味が出たら、それを使って。もちろん、ただのアクセサリとして使ってくれてもきっと君に似合うだろうし」
使って、と言われても……そこまで言うなら使い方まで教えてくれれば良いのに。まあ使うつもりは1ミリも無いけど。
ぬいぐるみは徐に立ち上がり、四足歩行でゆったりとした歩調でどこかへ歩き去っていった。それを見送ってから、もらった髪飾りをポケットにしまって私も帰途についた。

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鉄路の魔女:あんぐら・アングラー キャラクター

・ギン
日比谷線の魔女。固有武器はシックル・クロウ(足に取り付ける鉤爪)。「シックル・クロウ」とはもともと、小型肉食恐竜の後脚に発達した1本の爪である。鎌のように湾曲した長い爪がついた指は普段は持ち上げているため移動には用いられず、狩猟時に獲物に突き刺し、体重をかけて引き裂くために使われた部位である。ギンの装備するシックル・クロウはこれを再現した金属製の刃を具えた品で、足首に取り付けられたそれは普段は持ち上がった状態で固定されているが、使用時には発条機構によって勢い良く振り下ろされ、鉄板や岩石をも容易く貫ける威力を発揮する。こんな武器を使っていることから分かるように、基本戦術はアクロバティックな三次元機動から放たれる蹴り技。シックル・クロウは壁や天井に貼り付きよじ登るのにも利用できる。

・キン
有楽町線の魔女。固有武器はクロスボウ。様々な性質の矢弾を発射する。通常の鏃のついた矢、炸薬や粘液の入ったタイプの矢弾、着弾地点や軌道上で魔法的効果を発生させる特殊な矢弾など、放つ矢弾は本当に様々。何、本体は矢弾じゃないかって? いーやクロスボウが本体だねとは本人の談。

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鉄路の魔女:あんぐら・アングラー その④

超高速で飛び込むように大鯰に追いつき、ギンはシックル・クロウをその頭部に突き立てる。
(こいつのパワー相手じゃ、私ごと引きずり込まれるだけだ。私如きの力じゃブレーキにもならない)
「……だから」
踵落としの要領で、突き刺した足を勢い良く振り下ろす。彼女自身の落下速度と蹴りの威力もあり、大鯰の下降は更に『加速』される。
「もいっぱあああぁぁぁあッつ!」
まだ自由な状態にあった方の足もシックル・クロウを起動して突き刺し、下方向への勢いを更につける。
「まだまだぁあ!」
真上から地面を透過して、キンの放った矢弾が大鯰に直撃し、爆発してその勢いで更に下方へと押し出す。大鯰とギンが地下を通る線路をすり抜けた直後、地下鉄の車両が轟音を立てながら通り抜けていった。
「……ふゥー、間に合った。そして、このまま殺す」
地上からキンの放った徹甲矢弾が、大鯰の片目を正確に射貫く。ダメージで暴れ狂う大鯰の銃創を、ギンの精密な蹴りが更に貫いた。事前の射撃によって砕かれていた頭骨はそれを止めることはできず、柔らかい脳漿に足首まで深々と沈み込む。
「どんな動物でも、脳味噌をブチ抜かれれば死ぬんだ」
一度格納されていたシックル・クロウが、再び起動する。その威力と衝撃は大鯰の内部から破壊を引き起こし、一度大きくびくりと身を震わせてからその幻影は動きを止め、少しずつぐずぐずと消滅していった。

「おかえり。勝てたんだ?」
出迎えたキンに、地上へ這いあがって来たばかりのギンは無言でサムズ・アップを示した。その手を引いてギンを完全に地上に引き上げ、衣服についた汚れを払ってやってから、2人は車道を出て手近な商店の屋根によじ登った。
「お疲れ」
「いえい」
拳を突き合わせ、互いを讃え合う。
「助かったよキンちゃん。っていうかよく私の意図が分かったね」
「まぁ、付き合いそこそこ長いからねぇ」
「あと、地面挟んで見えないはずの相手によくあんなに正確に当てられるよね……毎度のことながらちょっと怖いよ」
「いやぁははは。慣れてまして」

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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑬

「それは辞めといた方が良いんじゃねッスか、シラカミさんよぉ」
後ろから鎌鼬くんが声をかけてきた。白神さんが面倒そうに振り返り、彼の方を見やる。
「その人、種枚さんも目ェ掛けてますんで、あの人と喧嘩する羽目になりますよ?」
「やぁーだぁー! 千葉さんはわたしが囲うのー!」
放電しながら自分を抱き締め、白神さんは反抗した。電流で身動きが取れない。
「いやマジでお願いしますよ。俺、お目付け役任されたんで、2人に喧嘩されると100パー巻き込まれるンス」
「し、白神サン」
自分もどうにか口を開く。
「ここは間を取って、その、自分は不可侵ってことでどうですかね。いきなり白神さんのものになるのはちょっとアレだけど……白神さん以外のものにもならないってことで」
「む……それなら、良いかな……」
そう呟き、白神さんは自分を解放してくれた。電気にやられて完全に麻痺しきった身体がその場に崩れ落ちる。
「……そういうわけで、鎌鼬くん。種枚さんに言っておいてくれる……? そうしておかないと、自分が死にかねない」
「了解ッス。じゃ、俺は失礼します。お大事に」
白神さんに抱えられて帰途に就きながら、鎌鼬くんにどうにか会釈を返した。

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子供は適切な保護者に安全に教育されなければならない 後編

「たしか、テメェは…………まだ13歳だったか」
『ミネ』と呼ばれた男は、呟きながら足下に転がしておいた品を少年に向けて蹴り飛ばす。それに釣られて、少年の視線が足元に転がって来た品物に移る。それらは自動拳銃用のボックス・マガジンだった。
「…………?」
「どうした? ソレ使うなら替えの弾は無きゃ意味無ェだろ。拾えよ」
少年は一瞬の逡巡の後、素早くしゃがみ込んで弾倉を拾い上げた。そして立ち上がった時、ミネは既に少年の眼前にまで音も無く迫っていた。
「ッ⁉」
拳銃を向けた腕を、ミネは片手で掴み、照準から己の身体を外す。続けて少年が振るおうとした空いた片手も片手で押さえ、最後の抵抗に放たれようとしていた蹴りも、両脚を片足で踏みつけるように抑え、抵抗の余地を完全に潰す。
「銃1丁で強くなった気でいたか? クソガキが……」
もがく少年を意に介すこともなくミネは上体を仰け反らせ、少年の額に勢い良く頭突きを直撃させた。
「がっ……!」
拘束を解くと同時に、気絶した少年がその場に崩れ落ちる。倒れた少年の頭を軽く一度蹴ってから、ミネは通信用インカムを起動した。
「…………もしもォし、こちら〈番人〉」
『……はぁい、こちら〈医務室長〉。何だいミネさん先生』
「ガキが脱走しようとしてたから止めた。回収しろ」
『了解。今日は誰だい?』
「ロタ。……ああ、あと一つ」
『何?』
「拳銃と弾倉パクってやがった。没収はするなよ」
『良いのかい? また逃げる時に使われるよ?』
「ガキの鉄砲ごときで止められるなら〈番人〉やってねェ」
通信を切り、ミネは再び塀の上によじ登り、監視を再開した。

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鉄路の魔女:Nameless Phantom その④

ミドリちゃんの方に向き直ってみると、彼女は回り込むようにして私と一定の距離を保ちつつ、倒れたアオイちゃんに駆け寄った。
「アオイちゃん! 無事?」
「何とか……威力はそんなに無かったっぽい」
「良かった……」
ミドリちゃんがこっちを睨みつけてくる。
……しかし、これ以上撃たれるのも嫌だし、いつまでも戦い続けるのも面倒だな……。
「…………もう、終わらせようか」
私に残ったイマジネーションを確認する。貯蓄は十分。
棍棒を投げ捨てる。4脚を開いて強く踏みしめ、機械腕を大きく真横に広げる。
「……〈Iron Horse〉」
脚部と両腕の機械装甲が捻じれ膨らみ、私の全身を少しずつ覆い隠していく。『鎧』として、そして、敵を殺す『刃』として。変形しながら形成されていく。
「〈Bicorne〉」
最後に頭部が完全に覆われる。額からは大きく湾曲した悪魔のような角が2本。鋼鉄故の黒色の装甲も合わさり、これじゃあ丸っきり見た目が化け物だ。
「ま、良いか。今日のところはここで退散してね」
全力を4脚に注いで踏み切り、機械装甲の補助によって全身のバネの力が100%乗った加速で2人に接近する。
アオイちゃんが咄嗟に前に出て防御しようとしたみたいだけど、今の私には関係ない。闘牛の角のように構えた腕の片方で引っかけるように轢き飛ばし、ついでにその後ろにいたミドリちゃんも巻き込んで吹き飛ばした。
「…………ふぅ」
2人が見えなくなるまで飛んでいくのを待ってからブレーキをかける。
「ひゃく……いや300mくらいは飛んだかな?」
〈Iron Horse : Bicorne〉を解除し、2人の飛んでいった方を眺める。これだけ痛めつければ、今日のうちくらいはこれ以上突っかかってこないだろう。刃は立てなかったからきっと生きてるだろうし。そんなことより、散歩を再開しようか。

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Side:Law in Black Market:真黒な闇から真白な貴方へ 後編

そして3つ目。どんな世界でも、どんな社会でも、必ず「あぶれずにはいられない者」というのは現れるものですが、そんな人たちが追いやられ、死にさえしなければ辿り着ける最後の希望。“危険なセーフティ・ネット”……これは私だけが呼んでる異名ですけど。ヒロマレヒロマレ。そのエリアを人呼んで、〈ブラックマーケット〉。基本的には地表から広がっていますが、時々他のエリアが位置するはずの高さにまで侵食し、食い込んでいることもありますね。正確な規模や面積すら把握しきれていない、世界の暗黒面ですよ。
このエリアでは、“地上”や“天界”の法なんて意味を持ちません。ここで意味を持つのはたった一つ簡単なもの。『商品価値』です。
「才能」でも「人手」でも「物品」でも、価値ある『何か』が提供できること。それが〈ブラックマーケット〉で生きるための条件です。ああ、別に無くても良いんですよ? 『価値』は客観的なものですから。人間、生きているだけで如何様にも使えるものです。
……それで、何の話でしたっけ? ああ、そうでしたそうでした。戸籍も記憶も何も無い。そんな貴方に『世界』のことと『生き方』を教えてあげるって話でしたね。
ようこそ我らが唯一最後の居場所〈ブラックマーケット〉へ。私たちはあなたを歓迎しますよ。分からないことがあったら何でも聞いてください。私は“情報屋”ですから、あなたの『商品価値』の限り、喜んで私の『価値』―情報をお返ししましょう。