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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑨

「デーモン、穴が開いた!」
「ちょっと狭いな。まあ良いや、みんなも助けてほしいって言ってたし……」
怪物態に変化していたデーモンが、長い尾で民間人を数人巻き取り、軽く勢いをつけて投げ飛ばした。
「デーモン⁉」
あんな速度で投げたら、絶対怪我する!
結局、心配は杞憂に終わった。いつの間にか包囲の外に待機していたデーモンが、またもや尻尾で民間人たちをキャッチして、安全に地面に下ろしたのだ。
「え……ええ⁉」
さっきまでデーモンがいたはずの場所を見て、思わず声をあげる。そこには相変わらず、怪物態のデーモンが立っていたのだ。
「え、デーモン⁉ 分身……?」
包囲の中と外のデーモンを交互に見ながら、疑問が自然と口から出る。
「いや? 僕は一人だけだけど。……それじゃ、僕は外に送った分の世話しなきゃだから、あとの人達は君が守るんだよ」
「え⁉ あ、了解⁉」
デーモンは言い残して、包囲の外に消えてしまった。またインバーダたちが襲い掛かってくる。私の能力でこれら全部を民間人を守りながら片付けるのは難しいと判断し、重くした拳を建物の壁に叩きつけて破壊した。
「皆さん、中へ!」
民間人たちは少しずつ、建物の中へ避難する。最後の1人が入っていったのを確認してから、壁の穴の前に仁王立ちになった。
「…………絶対に通さない。お前ら全部、叩き潰してやる!」

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 4日目

時、11時22分。場所、老人の家。
昨日の夕食から魚を食べさせてもらえていたこともあり、ダメージの回復は順調に進んでいた。少しなら立ち上がって歩けるようになったので、家の中を歩き回って運動能力の回復・維持も並行することにした。
廊下を往復していると、玄関の引き戸が勢い良く開いた。あの老人は扉に鍵をかけるということをしないのだ。
扉を開けたのは、40代後半程度と見られる中年の男性だった。この漁村の住人だろう。男性は慌てた様子で、海に妖怪が現れたと言った。彼の話す内容からして、おそらくインバーダが現れたのだろう。
しかし、彼は『インバーダ』ではなく『妖怪』と言った。つまり、この漁村はインバーダ、並びにモンストルムを知らないということ。モンストルムとインバーダ対策課の守護は、この漁村に届いていないということ。
老人は中年男性の言葉を聞いて、玄関に立てかけてあった鉈を手に家を出た。
たしかに彼は漁業従事者なだけあって、痩せこけているようで全身に無駄なく筋肉が付いており、実戦に出てもそれなりに良い動きができる事だろう。
しかし、相手はインバーダ。しかも、中年男性の話から推測するに、全長約十数mの中型。軍事訓練すら受けていない一般人に、どうこうできる相手では無い。
だから、老人に申し出た。わたしも連れて行ってくれと。当然、老人はそれを許さず、わたしには大人しく寝ていろと言いつけて出て行ってしまった。
そして当然、わたしもそれに従う訳は無い。彼らと20秒ほど時間を置いて家を抜け出し、海岸に向かう。
大蜈蚣のような外見のインバーダを、村中の漁師が手に手に武器代わりの農具を持ち、追い返そうとしていた。決して力のあるわけでは無い、それどころか非力とさえ言える人間が、決死の覚悟で勝ち目のない脅威に立ち向かっている。肉体が戦闘に堪えられなくとも、わたしの能力が彼らを救う以外の選択肢を取らせてくれなかった。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑧

幸いにも、民間人は大体ひとまとまりになってある建物の傍に固まっていた。そして、そのせいかインバーダ達は彼らに一斉に襲い掛かっていた。
「この距離だと、ちょっと間に合わなさそうだな……ちょっと失礼するよ、ベヒモス」
「え?」
突然、デーモンが私の腰の辺りを掴んできた。
「デ、デーモン⁉」
「飛ぶよ」
そう言って、デーモンが“怪物態”に変化した。山羊の脚と角、蝙蝠の翼、長い尾を持つ、大柄で不気味な人型の怪物が私を捕まえたまま飛び上がる。咄嗟に私も能力を発動して、体重をほぼ0にまで軽くした。
「わ、軽い。こりゃ良いや」
デーモンは殆ど瞬間移動みたいなスピードでインバーダの群れをかき分け、人型に戻りながら化け物たちの前に立ち塞がった。
「やあ君達、君達の願いを叶えてあげる。だから望みをお言い?」
デーモンは何故か、民間人たちに向かって何やら言い始めた。
「デーモン、何やってるの⁉ インバーダが……」
「悪いけど、必要なことなんだよね。ちょっと時間稼ぎ頼める?」
「ええ……ああもう!」
仕方ない。とにかく私だけでもインバーダと戦わなきゃ。まずは飛びかかってきたクマのような姿のインバーダの突進を受け止める。能力で全身の質量を何十倍にも上げることで防御には成功した。そして、無防備に晒された鼻っ面に、更に質量を増強させた拳を、思いっきり振り下ろし殴り潰した。地面に伏せた頭をそのまま踏み潰し、続いて飛びかかってきた食肉目型のインバーダもパンチで吹っ飛ばす。この攻撃で、小さなインバーダがいくらか巻き込まれて吹っ飛び、包囲網に小さな穴ができた。

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE Act 9

「さーてどう奴を…っと?」
建物の屋上からワイバーンが地上を見下ろすと、2人のモンストルムが目に入った。
「イフリートにゲーリュオーン‼︎」
おーい!とワイバーンが大声を上げると、地上を走る2人は顔を上げた。
「お」
ワイバーン‼︎とイフリートは手を上げる。
「暴れ回ってるアイツー、あたいが倒しちゃってもいーいー?」
ワイバーンがインバーダを指差しながら尋ねると、イフリートはいーんじゃ…と答えかける。
しかし、いやまだだとゲーリュオーンがそれを遮る。
「本部からの指示が出てない」
「いやそんなのどうでもいいでしょ!」
イフリートはそう言い返す。
「指示ばっか待ってたら街への被害が広がるだけだ!」
お前だって分かってるだろ!とイフリートはゲーリュオーンに詰め寄る。
「…」
ゲーリュオーンはそっぽを向いた。
「という訳でワイバーン‼︎」
やっちゃえ‼︎とイフリートはワイバーンに向かってサムズアップをする。
その様子を見てワイバーンは了解‼︎とインバーダの方を見据えた。
そして雑居ビルの屋上から飛び降りた。
その瞬間ワイバーンの身体から光が放たれ、その影はみるみる内にインバーダと同じくらいの前足のない赤い飛竜の姿に変わった。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑦

「よ、お前も気の毒だったな。ご苦労だった、あとは俺ら『化け物』に任せてくれ」
地上階のエレベータの脇に倒れていたDEM社員に、フェンリルが声を掛けた。多分死んでるだろうけど。
周囲を見回してみると、屋内にも既に小型のインバーダが何体か入り込んでいる。
「あ、俺は中の連中片付けていくから、先に出てて良いぜ。言っとくけど、逃げようとは思うなよ? 撃たれるぜ」
フェンリルが言いながら、ガラスの割れた自動ドアを指し示した。
「うん。じゃあ、お先に失礼します」
手を振るフェンリルに軽く頭を下げて、外に出る。
外もまた、ひどい有様だった。大小さまざまなインバーダがそこら中で暴れていて、モンストルム達の能力でアスファルトも周りの建物もボロボロになっていて、ところどころ逃げ遅れた民間人の姿も見える。
「な……なんで、まだ逃げられてない人も居るのにこんな……?」
「まあ、気性難で閉じ込められた連中も結構いるからねぇ」
隣のデーモンが応じた。
「さて、せっかく出てこられたわけだけど、君はどうしたい?」
「…………まずは民間人を避難させる」
「僕もそうしたいと思っていたところだ。さあ行こうか」

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑥

迷路のように入り組んだ廊下を進む。いくつかの独房はフェンリルの仕業か、扉が破壊されていて、残りの扉は普通に開いている。そして、中には誰も居なかった。
「これ、何がどうなってるんですか?」
スレイプニルに尋ねる。
「フェンリルが言ってた通り。外に出られるからみんな喜んで外に暴れに出てるの。ここにいる奴って、結構好戦的なのも多いから」
「へえ……」
「あと、敬語じゃなくて良いよ。ちょっと無理してるでしょ。フェンリルもデーモンも別に気にしないから」
「え⁉ あ、うん、ありがとう……」
しばらく歩き続けるうちに、大きな金属製のスライド扉の前でフェンリルが立ち止まった。
「このエレベータで地上まで出られるんだぜ。大体2分くらいかかるけど」
フェンリルが壁のボタンを押すと、すぐに扉が開いた。そしてエレベータの中には2つの影があった。
「……おいおいマジかよ。警備はどうなってんだ警備は。インバーダにここまで入られてるのは結構詰んでるだろ」
フェンリルが苦笑いしながらこぼした。
エレベータの中にいたのは、頭蓋骨の露出した馬のような姿をした2体のインバーダ。1体は痩せ型だけど体高のある栗毛、もう1体はそれより小柄だけど筋肉がしっかり付いた真っ黒なの。
何となくスレイプニルの顔を見上げると、目をかっと見開いて舌なめずりをしていた。
「……フェンリル」
「ああ、行ってこい」
「ありがと」
「ベヒモス、伏せて」
デーモンに頭を押さえられてうつ伏せに倒れる。直後、すごい破壊音が響いて横の壁が粉砕して、広大な空洞ができた。音の聞こえ方からして、今の一撃でできた穴なんだろう。
「おいで、お馬さん達。速いんでしょ?」
スレイプニルが顎でそちらを指し示すと、2体のインバーダは大人しく空洞の方に向かって歩いて行った。
「よっしゃ、行こうぜ」
いつの間にかエレベータに乗り込んでいたフェンリルに言われて、私たちもエレベータに駆け込んだ。

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企画:ピッタリ十数字 レギュレーション補足

こんばんは、ナニガシさんです。
先日ナニガシさんが立ち上げたポエム企画「ピッタリ数十字」ですが、参加作品を書いている最中に、レギュレーションに穴を見つけたので、埋めていこうと思います。
まずはレギュレーションの振り返り。

・本文の文字数が「10字」「13字」「15字」「19字」のいずれかのポエムを制作し、投稿する。
・参加投稿には、指定タグとして「ピッタリ〇字」を付ける事。
※「〇」の部分には選択した文字数を入れてください。
・期間は2月中。それより前の投稿は指定タグが「ピッタリ〇字習作」に、3月以降の投稿は指定タグが「ピッタリ〇字遅刻組」になります。
・英数字や記号は、半角全角に拘らず全て1文字としてカウントする。
・句読点、「!」、「?」も全部1字カウント。なので「⁉」は2字だし「!!!」なら3字になります。使い方には気を付けて。

ここに1つだけ追加させてください。それがこちら。

・空白(スペース)や改行は文字数にカウントしない。

例を示すなら「カエル」も「カ エ ル」も「カ エ ル」も全部3文字としてカウントされます。
「 カ
 エル」 ←これも3文字。

本番前に気付けて良かった。新ルールも上手く使って、ポエム掲示板を盛り上げていきましょう。

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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その④

少女が種枚さんから離れて、かなりの距離を取ってこちらに向き直った。
「……おい君、5歩以上下がった方が良い」
ビーチサンダルを脱ぎ捨てながら種枚さんが私に言ってきた。それに従って、念のため10歩ほど下がる。
直後、地面に巨大な穴が開き、種枚さんと少女は穴の底に落下していった。
「ありゃ、遅刻しちまったか」
聞き覚えのあるその声に振り返ると、鎌鼬くんが自分の背後から穴の底を覗き込んでいた。
「あ、どもッス」
「鎌鼬くん、ひさしぶり」
「ッス」
「この穴、何が起きて……?」
「あの子、師匠は犬神ちゃんって呼んでるんですけどね。あの子は所謂『犬神憑き』の家系の出なんですよ」
「……それが、この穴とどう関係が?」
「それは俺にも分からないけど、どうもあの子は『土砂や岩石を操る』力を持ってるみたいなんですよ」
「な、なるほど……」
再び穴の底に目をやる。しかし、二人の姿は見えなかった。2人の上方に、それまで穴のあった場所を埋めていた土砂が塊状に集まって浮かんでいたためだ。
「あ、もうちょい離れた方が良いですよ」
「えっ」
鎌鼬くんに引きずられるように下がって数秒後、穴から途轍もない破壊音と振動、土煙が上がってきた。

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 2日目

時、5時10分。場所、老人の家。わたしが寝かされている部屋は、客間だということだった。
合計で1日以上眠ったおかげで、全身の痛みはかなり楽になっていた。代わりに全身が怠くて、鉛でできているかのように重かった。布団から出られるような余力は残っていなかったので、耳を澄ませて家の中の様子を探った。家の中からは電化製品が動く音以外、何も聞こえない。あの老人は不在のようだった。漁師のようだから、早朝家にいないことは何もおかしくないが。
しかし、改めて思い返してみると、一人でいるというのはあまり無い経験だ。普段、待機中はいつも、相棒のダキニがぴったりと寄り添っていたから。
そういえば、わたしの相棒は無事だろうか。少なくとも、戦闘中に目に入った死体の中に彼女のものは無かった。まあ、ダキニは強いし、きっと大丈夫だろう。相棒との再会の為にも、今負っているダメージを早急に回復しなくてはいけない。とにかく眠って、自然回復に努めなくては。
12時5分、老人が部屋に入ってきた。手には粥の皿が載った盆を持っている。
食べるように言われたので、その通りにした。食事を摂れば、肉体の原料とエネルギーが手に入る。有難いことだった。

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE Act 6

「#{;;“}*}$=[€‼︎」
火炎をもろに食らったインバーダは喚き声を上げながら燃えていく。
「*{’;“;%]<<;|‘+]$>[+\{$|‼︎」
他のインバーダはイフリートに飛びかかろうとするが、イフリートが撃つ火炎で次々と焼かれていく。
イフリートはあっという間に4体のインバーダを屠ってしまった。
「これで雑魚共は片付けたぜ」
さぁこの先にいる大物を…と言いながらインバーダの亡骸の傍を通り抜けようとした時、ふと殺気を感じた。
「?」
イフリートが顔を上げると、先程倒したものと同型のインバーダが近くの建物の上から襲いかかってきていた。
避けきれない、そう思った瞬間イフリートの目の前に光のバリアが展開した。
「‼︎」
インバーダはバリアに弾かれそのまま地面に落下する。
「イフリート!」
大丈夫?と長髪のコドモがイフリートの所に駆け寄った。
「お、おう」
ありがとう、とイフリートは長髪のコドモ…デルピュネーに向かって言う。
「デルピュネー!」
デルピュネーの後を追いかけていた二つ結びのコドモことビィも2人に走って来る。
「どうしたのビィ」
デルピュネーが尋ねると、ビィはあ、あそこ!と先程バリアで弾いたインバーダの方を指す。
インバーダは唸り声を上げながら3人の方へ近付いていた。

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ちょっとした企画:ピッタリ十数字

どうも、ナニガシさんこと何かが崩壊している者です。またもやちょっとした企画をぶん投げようと思います。
その名も「ピッタリ十数字」。今回はポエムの企画ですね。

ルールは簡単。企画名の通り本文の文字数がぴったり十数字のポエムを投稿していきましょう、というもの。
ただし、別に10文字台なら何でも良し、というわけでもありません。今回のレギュレーションで許された文字数は、「10字」「13字」「15字」「19字」の4種類のみ。
また、英数字や記号は全角、半角に拘らず1字にカウントします。句読点も1字。
「!」や「?」も単体で1字になります。「⁉」の場合は2字ってことになりますね。「!!!!!」なら当然5字にカウントされますが、字数調整が簡単になり過ぎちゃうので、できれば気軽にそういう真似はやらないでくれた方が嬉しいなー……。

期間は2月1日~2月29日まで。
参加者は、タグに「ピッタリ〇字」と入れて投稿してください。〇の部分には自分のポエムの文字数を入れてください。だから「ピッタリ13字」とか「ピッタリ15字」とかそんな感じ。
ちなみに、企画期間より前や終了後に投稿しても良いんですが、その場合は企画の指定タグの後ろに、前なら「習作」、後なら「遅刻組」と入れてください。
つまり1月中に出すなら「ピッタリ19字習作」みたいな、3月以降に出すなら「ピッタリ10字遅刻組」みたいな、そんな感じになります。
簡単なような面倒なような、そんな企画ですがどうぞ奮ってご参加ください。

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CHILDish Monstrum 〈企画要項(再掲)〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
1月も折り返し地点に達したので企画「CHILDish Momstrum」の要項の再掲です。
まだ企画の存在に気付いてない人がいるであろうこと、企画投票で1番の票を獲得したのに参加者が自分以外1人しか確認されていないこと、などから要項だけ再掲したいと思います。
要項を読んで、参加してみたい!と思った方はぜひタグから世界観・設定などを探して作品を作り、投稿してみてください。
では要項です。

タイトルは「CHILDish Monstrum」。
異界からやって来る侵略者“インバーダ”に対抗するために作られたヒトの形をした怪物“モンストルム”たちの戦いと日常の物語を皆さんに描いてもらう企画です。
開催期間は1/1(月)15:00から1/31(水)24:00まで。
ルールは設定と公序良俗を守り、投稿作品にタグ「CHILDish Monstrum」を付ければそれでOK!
作品形式・長さ・数は問いません。
皆さんのご参加楽しみにしております!

この手の企画は難しいので「読み手」で参加する方が多いと思われますが、書き手がいないと読めるものは出てきません。
「文章が下手くそだから」と投稿を控えている方もいるかもしれませんが、下手でも企画者は嬉しいし誰かに見てもらわないと文章は上達しない(多分)なので良かったら投稿してみてください。
再度になりますが、皆さんのご参加楽しみにしております。

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CHILDish Monstrum:アウトロウ・レプタイルス キャラクター紹介

・サラマンダー
性別:男  外見年齢:15歳  身長:159㎝
特殊能力:自身に干渉するエネルギーを反射する
主な使用武器:なし
〈アウトロウ・レプタイルス〉のリーダー。壮絶なじゃんけんの末にこの地位を勝ち取った。元々はとある政令指定都市に配備されたモンストルムの1体だったが、その都市のインバーダ対策課がインバーダの襲撃により早々に壊滅し、流れで自由の身になってしまった。今は自分たちの意思で都市を守っている。渾名は「サラちゃん」。
・ラムトン=ワーム
性別:男  外見年齢:16歳  身長:165㎝
特殊能力:あらゆる事物が己にとって害とならない
主な使用武器:鉈
〈アウトロウ・レプタイルス〉のメンバー。能力の影響で外的要因による死がほぼ起きず、〈アウトロウ・レプタイルス〉の当初の目的に最も近いモンストルムであるため、パーティ内ではリーダーの次に偉い。ただし「害にならない」だけであって首が落ちれば神経の切断によって体は動かなくなるし、完全に炭化したりすれば細胞が使い物にならなくなるので、決して無敵では無い。けど怪物態になると回復力まで手に入れちゃうので、暴走したらちょっと手が付けられないので何も起きないことを祈るしか無い。ちなみに害にならない方法を用いれば、殺すことも可能。そんな方法があるのか? 僕は知らない。渾名は「ラムちゃん」。
・ククルカン
性別:女  外見年齢:12歳  身長:130㎝
特殊能力:大地をかき混ぜ、変形する
主な使用武器:折り畳み長槍
〈アウトロウ・レプタイルス〉のメンバー。神格存在の名なので実質一番偉い。僕も気付かなかったが人から褒められたり感謝されたりするのが好き。『勤め先』が壊滅して最初に「自分達の意思でこの街守ろうぜ!」って言い出したのがこの人。渾名は「くーちゃん」。
・蛟(ミズチ)
性別:女  外見年齢:14歳  身長:150㎝
特殊能力:あらゆる有機物を調理し、高い効果を持つ料理に変える
主な使用武器:包丁
〈アウトロウ・レプタイルス〉のメンバー。メンテナンスをしてもらえない分この子が頑張ってるおかげでどうにかなってるので、パーティ内でも別格に偉い。調理するという能力の特性上、行程で必要なら火も出せる。水や油や調味料は別途必要。渾名は「みーちゃん」。

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 1日目

時、15時25分。壁掛け時計に表示されていた。場所、知らない民家の一室。
目を覚ますと、見知らぬ部屋の風景が目に入った。身体中の切り傷や擦り傷の上には絆創膏やガーゼ、包帯で手当てが施されており、わたしは床に敷かれた布団の中に寝かされていた。
全身はまだ痛んだけれど、上体を起こして手足を軽く動かしてみる。幸いにも骨折したりはしていないようだった。ただ全身の筋肉をひどく傷めていて、大量に出血していただけだった。これなら動ける。自力でも帰ることができる。
掛け布団をどかし、立ち上がろうとする。脚には全然力が入らず、立ち上がるのには失敗したので、一応動かすことのできる両腕を使い、這うようにして部屋を出ると、板張りの廊下に出た。廊下の先には外に続いているであろう引き戸が見えたのでそこに向かう。
その途中で、右手にあった扉が静かに開いた。そちらに顔を向けると、老人が立っていた。よく見ると、あの小さな漁船に乗っていた老人では無いか。信じられないものを見るような目でこちらを見ている。会釈して出て行こうとすると、老人に抱え上げられた。抵抗する間もなく——隙があったとして何かできた訳も無いけれど、元の部屋に連れて行かれ、また寝かされる。
何故そんなことをするのか、老人に問うた。老人は、自分が拾った以上、治るまで放り出すわけにはいかないと言っていた。
『自分が拾った』? それは違うだろう。わたしが勝手にあの船に乗り込んだのだから。
彼は面倒な荷物でしかない、殆ど死にかけだったわたしをそのまま海に捨てても良かったのに。きっと彼は善人なのだろう。可能な限り早く、動ける程度に回復し、迷惑にならないように出て行くことに決め、わたしは睡眠による回復に努めることにした。

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CHILDish Monstrum:CRALADOLE Act 5

「何かあったら隊長の自分が責任を取る」
だから行ってこい、とゲーリュオーンは呟く。
「…分かったわ」
デルピュネーはそう言ってビィと目を合わせると、バッと店外へ飛び出していった。
「…いいのか、そんなこと言って」
どうなっても知らんぞ、と羽岡はゲーリュオーンの方を見ずにこぼす。
「ああ」
自分は隊長だからな、とゲーリュオーンは店のガラス戸に映る自分を見つめた。

インバーダの急襲に、意外にもクララドル市中心部は落ち着いていた。
「シェルターはこちらでーす‼︎」
落ち着いて避難してくださーい!と警官が人々を誘導する中をイフリートは駆け抜けていった。
上空を見上げるとワイバーンが自らの特殊能力で空を飛んでいる。
「しっかしずりぃなぁワイバーン」
飛行能力とか羨ましいよとイフリートがこぼした所で、おっとと足を止める。
イフリートの目の前には成人程の大きさの昆虫のようなインバーダが4体向かって来ていた。
「お出迎えか」
イフリートはそう呟くと、右手で拳銃の形を作った。
そして向かって来るインバーダたちの内1体に向けて銃を撃つように手を動かすと、人差し指の先からまるで火炎放射器のように炎が吹き出た。

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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その③

混み合う電車に揺られて約30分、8駅先で一度下り、更に乗り換えて40分ほど、ようやく目的駅に着いたようだ。
「随分な郊外まで来ましたね」
駅を出て周囲を見回すが、ほとんど山と畑しか見えない。
「まあ、周りに何もない場所じゃなきゃ迷惑がかかるからねェ」
「周りに迷惑がかかるようなことするんですか……」
「まーね」
更に1時間ほど徒歩で移動し、山中に分け入り、かなり足が痛くなってきたところで、ようやく種枚さんが足を止めた。
「到着ですか?」
「うん、結構昔の採石場跡地」
「はあ。入って大丈夫なんです?」
「さあ? 少なくとも立ち入り禁止の看板は見た事無いねェ」
話しながら奥へと踏み入り、少し開けた場所に出る。座り込んで地面をいじっていた小柄な人影がこちらに気付き、立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。
「やっと来たなキノコちゃーん! 待ちくたびれたよ!」
人影、その少女は駆け寄る勢いのまま種枚さんに抱き着き、種枚さんは全く動じずに受け止めた。それより『キノコちゃん』か。あの名前を聞いてそれを連想するのは自分だけじゃなかったみたいで少し安心した。
「私も会いたかったぜィ犬神ちゃん」
2人して一頻り盛り上がった後、少女の方がこちらに顔を向けた。
「誰それ?」
「ああ、こいつは最近見つけた霊視の才の持ち主だよ」
「霊感は?」
「まだ無い。だから顔くらいは覚えておいてやってよ。ついでに気が向いたら助けてやって」
「りょーかい。じゃあ早速やろっか」
「はいよ」

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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その②

自分が住んでいる町には、3か所鉄道の駅がある。町名がそのまま駅名になった駅、『東』を冠する駅、『中央』と後ろにつく駅。そのうちの一つ、役所に最も近い位置にある『中央』の駅は周囲の施設の充実から人の出入りも多く、休日であったためか待ち合わせの30分前という早い時間でも駅前広場はそれなりに混雑していた。
この中で、決して背が高いわけでは無い種枚さんを探すのは苦労するかとも思ったが、その心配は杞憂に終わった。
不自然に人が避けて通る真ん中で、フードを深く被ってただ立っていた種枚さんに、恐る恐る近付いて行くと、彼女の方もすぐに気付いたようで姿が消えたと思ったら次の瞬間には自分の背後にいた。彼女のこの移動法にもいい加減慣れてきた。
「やァ、随分早かったじゃないか」
「ええまあ、待ち合わせには早く来る性分でして」
答えながら彼女の足元を見ると、今日は珍しくビーチサンダルを履いていた。この人が履物を履いているところなんて初めて見た。
「今日は裸足じゃ無いんですね」
「流石に公共交通機関でまで、ってのはねぇ……」
いつもその気遣いをしてください、という言葉は一瞬悩んだ末に飲み込むことにした。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その③

「脱走……ですか?」
信じられない言葉が聞こえてきて、思わず訊き返してしまった。
「うん、脱走。私にはやりたい事がある。この場所じゃ出来ないことが。だから、脱走」
「ベヒモス、お前はどうだ? 助けを求めたくらいだ、外に出てやりたい事があるんじゃねーの?」
フェンリルに尋ねられて、考え込んでしまう。たしかにこの場所は嫌いだ。ここを出て自由になりたい、そう思ったことは何度もある。
……けど、『ここを出た後』? ここを出て、私は何をしたいんだろう。たしかにここにいれば、“メンテナンス”もしてもらえる。外に私の戸籍なんて無いし、見方によっては、最高じゃなくても最低限、安定して生存できる。じゃあ、ここから逃げ出す意味って……?
「ああ悪かった。変に考えさせるようなこと言っちまったな」
フェンリルの言葉で正気に戻る。
「別に大したことじゃなくて良いんだよ。スレイプニルなんて『走りたい』ってそれだけだぜ? ここは狭すぎるんだとさ」
「そ、そうなんだ……」
「そう。だから私は、フェンリルとここを出たいの」
スレイプニルが言った。
「フェンリルと? 何故?」
「だって、フェンリルがいれば私の走るのを邪魔するような全部、残らず壊してくれるもの」
「へ、へえ……?」
それは、倫理とか道徳とか、そういうの的にどうなんだろう?