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視える世界を超えて エピソード3:人怖 その④

「ちょ、ちょっと待ってください種枚さん⁉」
流石に命の危険を覚え、無理やり割って入る。
「ア?」
何故彼女が急に怒り出したのか、タイミング的にはおそらく『人怖』に関係してるんだろうけど、兎に角何としても彼女を宥めなければ、自分が死ぬ。
「良いですか種枚さん、自分は昔っから身を以て人間なんかより恐ろしい存在の、その恐ろしさを体験してきた人間ですよ⁉」
「………………それもそうか」
説得は成功したようで、種枚さんが瞬きをすると両眼は人間のそれに戻り、手も下ろしてくれた。
「悪かったね、突然ブチ切れたりして。どうにも地雷なんだ、『一番怖いのは人間』ってのが」
「そうなんですか……」
「それよりこの塀、どうしたもんか……」
種枚さんは塀に開けてしまった穴を見つめて思案している。よく見てみると、塀の破片は残らず凍結に巻き込まれ、思ったより目立った跡は残っていない。
「……このままでもバレなかったりしないかね?」
「流石にそれは無理があるんじゃないですかね……?」
それよりも何故凍っているのかということが気になる。
「……ん、この氷、気になる?」
「え、まあはい」
「私が熱くなりやすいタチってのは言ったっけ?」
「言われましたね」
「ほら、気持ちが昂ると熱くなるって話だったろ? 逆もまた然り、って奴さ」
「それで氷が張るレベルの低温になれるんです?」
「致死レベルの高温になれるんだから、この程度の低温になれても自然じゃない?」
「自然かなぁ……」

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ポエム掲示板クリスマスフェスタ2023 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
この書き込みは12月25日まで開催していた企画「ポエム掲示板クリスマスフェスタ2023」のあとがきになります。
本当は昨日書き込む予定だったのですが…思いっきり忘れてました(笑)
まぁ少しの間お付き合いください。

今回の企画は大学からの帰り道にふと思いついたものでした。
電車の吊り広告で確か神宮外苑のクリスマスマーケットの宣伝が下がっていたので、それを見て思いつきました。
経験上こういうタイプの企画は参加しやすいっぽいので普段より多くの人が参加してくれるだろうと思ってはいたのですが…思ったより多くの人が参加してくれてめちゃくちゃ嬉しかったです!
古参の方も、最近ここに書き込むようになった方も、たまにしか現れない方も、久々に見る方も、色んな生徒の作品を見られて楽しかったです。
皆さんご参加ありがとうございました。

さて、これであとがきは終わりにしようと思ったのですが、最後に1つ宣伝をば。
来年、新年明けて早々にまた企画を開催しようと思ってます。
ですが手元に3つあるアイデアの内のどれにするか迷ってるんですよね〜
と、いう訳で只今どの企画をやってみたいかアンケートを行っております。
投票で1位になった企画を1月から開催する予定ですが、2位以降も後々に開催する予定です。
なのでお気軽にご参加ください。
では今回はこの辺で。
テトモンよ永遠に!でした〜

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視える世界を超えて エピソード3:人怖 その③

一瞬遅れて聞こえてくる破壊音。そちらに目を向けると、種枚さんの貫手が、自分の顔のほんの数㎜真横を通過し、背後のブロック塀に突き刺さっていた。
「……く、種枚さん?」
「なァ君」
「は、はい」
種枚さんが、表情だけは笑顔のまま話しかけてくる。
「霊感、欲しくないか?」
「え……」
ゆっくりと開かれた彼女の眼は、あの巨大な人影に遭った時と同じ、金色の虹彩と縦に切れ長の瞳、そしてあの時とは違って白目の部分が真っ黒に染まった、明らかな人外のそれだった。
「霊感、欲しいだろ? 奴らに対抗する力。何、ほんの一口怪異存在を喰うだけで良いのさ。喰ったものは身体を作る。多少人間を外れはするが、別に良いだろ? 今の君は人間だから私は手を出せないけど、ただの化け物に成り変わっちまえば、君を殺すのは私の義務だから仕方ないよね?」
ぐい、と目の前に顔を寄せ、何かを言い返す隙も無いペースでまくし立ててくる彼女の語調に、怒気と殺意が混ざっているのを感じる。
そういえば、背後からは何か冷気のようなものを感じる。ただの悪寒かと思ってそちらに目をやると、ブロック塀に突き刺さった彼女の手を起点に、薄く氷が張って少しずつその範囲も広がってきている。

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視える世界を超えて エピソード3:人怖 その②

「しかし、最近よく会いますね」
「そうだねェ」
歩きながら、種枚さんと言葉を交わす。実際、鎌鼬くんの件から2週間くらいか、ほぼ毎日彼女と会っていたり、姿を見たりしている気がする。
「まあ、君のことはそれなりに目ェ掛けてるからねェ」
「えっ」
「だって君、君は霊感こそ持たないが、霊視の才自体はほぼ先天のものだろう?」
「まあはい。物心ついた頃にはもう見えるようになってましたね」
「だろ? 君には素養があるんだ」
「はぁ……」
種枚さんは道端に立っていた不気味な雰囲気の女性の霊を締め上げながら、自分に笑いかけてきた。その手にあるモノさえなければ、もう少し魅力的にも見えるだろうに。

「ああそういえば」
ふと、本当に何の脈絡も無く、図書館で読んでいた本について気になったことがあったのを思い出した。
「どうしたィ?」
「図書館で読んでた本の中に、結構、何て言うんでしょう……所謂『ヒトコワ』? みたいな話がそれなりにあったんですよね」
「…………ほう」
種枚さんの足が止まる。
「種枚さん?」
「……ん、ああ続けて?」
消滅し始めていた霊体を投げ捨てながら答える種枚さん。
「あっはい。あの手の話って、割と『結局一番怖いのは生きた人間』ってオチが多くt」
顔のすぐ横を何かが高速で通り抜け、自分の言葉は遮られた。

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タイトルとあらすじとキャラだけ決まってるやつ

【52Hzのうさぎ】
AIの反乱で崩壊した世界にただ一人生き残った、愛を信じられない少女音兎(おと)。科学者たちの足掻きによってAIすらも崩壊したこの世界で、音兎は配達途中だったであろう手紙の山を見つける。手紙を一つひとつ読みながら、皆が思っていた“愛”を想像していく。

【世界のコントローラー】
幼馴染の小夏(こなつ)と奏太(そうた)は、暮らしている村の山に建っている神社で桐箱を見つける。同時に現れた、二人の祖先だと言う枉夏(おうか)と祀夕(しゆう)。その出会いが、二人の運命を動かす。

【鉄の唄】
アンドロイドも「感情」を持つことが当たり前の世界。アンドロイドであるヴィオは、ずっと何かを探している気がしていた。それは、温かくて、優しくて、愛おしいもの。「感情」とはなんだろうか。

【僕らの声はいつだって消えやしないんだ】
歌うのが大好きな少女聖(せい)は、普段公園で子どもたちとよく歌っていた。それを聴いた純(じゅん)と類(るい)は、自分たちで創部する軽音部のボーカルとしてスカウトする。しかし聖は、ある問題を抱えていた。

【雨の獣】
一人一つ何かの動物を司る家系、緋川家。トラを司って生まれた虎(とら)は、天賦の才を備えていなかった。それと対照的に、末っ子の珠音(たまね)はネコを司り、炎を操る力を持っていた。両親は珠音に厳しい訓練を強いる。虎は珠音を連れて緋川家から出ることを決意。二人は追手から逃げながら、外の世界で幸せに暮らしていく――はずだった。

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視える世界を超えて キャラクター紹介②

・種枚さん
鎌鼬くんを鎌鼬くんにした種枚さん。鎌鼬(妖怪)をボコボコにしていたところに遭遇した、当時まだ鎌鼬くんではなかった鎌鼬くんに鎌鼬(妖怪)の生き血をシェアしてあげた結果、鎌鼬くんは鎌鼬くんになった。
霊感をあげた相手のことを「息子/娘」と呼んでいる。ちなみに娘も一人いる。
霊感をあげる絵面は「怪異にかぶりつく→相手の顔を捕まえて片手で口を開けさせた状態に固定する→怪異の生き血を口移しで相手の口にだばぁする」なのでかなりホラー寄り。これ以上本気で誰かに霊感をあげるつもりは無いようです。

・鎌鼬
年齢:高校生  性別:男  身長:170㎝
種枚によって霊感を得た少年。いうなれば弟子。その時に喰らった怪異存在の性質が肉体に表出し、【鎌鼬第一陣】の力を得た。怪異の力に半分くらい飲み込まれかけていて、油断してると人間を捨てそうになるので、その度に種枚にボコられる。
※【鎌鼬第一陣】:鎌鼬のうちの1体の力。肉体を風に変化させ、高速で、自由に空間内を移動し、肉体の接触を感じさせること無く対象を転倒させることができる。発動中は同じ距離を短距離走のペースで走るのと同程度のスタミナを消費する。

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視える世界を超えて エピソード2:鎌鼬 その⑤

「ぁ…………」
さっそく見つけたは良いものの、何か様子がおかしい。まるで正気を失っているみたいだ。
異様な雰囲気に吞まれて、上手く言葉が出ない。
少年がゆっくりと右手を上げる。何をされるのか分からなかったが、思わず目を瞑ってしまう。顔にまた強風を感じ、ひっくり返りそうになったその時だった。
「見いィつけたぞ馬鹿息子オォォッ!」
種枚さんの声がものすごいスピードで近付いてきたと思ったら、少年の立っていた辺りで、これまたものすごい衝突音が響いた。
(…………『息子』?)
今聞こえるにはやや不自然なその単語に恐る恐る目を開くと、少年のいた場所には代わりに種枚さんが立っていて、少年の姿は無かった……いや、種枚さんの視線の先、10mほど離れた木の根元に、寄りかかるように倒れていた。
「く、種枚さん……?」
「あぁ⁉ ……あ、君か」
自分の方に振り向くと、彼女の表情はすぐ柔らかなものに変わった。
「痛たたた……、『息子』はやめてくださいよ、誤解されちゃう。せめて弟子とか……」
あの少年の声だろうか。彼の方に向き直ると、種枚さんに殴られたのであろう腹の辺りをさすりながら立ち上がるところだった。
「あァー? お前に霊感をくれてやったのが誰だと思っていやがる?」
「いやまあ、それは感謝してるンスけどね?」
2人は随分と親しげだけれど、一体どんな関係なのだろうか。私の疑問に先に感づいたのは、少年の方だった。

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視える世界を超えて エピソード2:鎌鼬 その④

種枚さんに指示されて、一人で通りを歩く。時間がまだ早いせいか、自動車や歩行者もまだ少なくて、人通りが完全に途切れた一瞬なんか、いやに不気味な空気が流れる。
彼女が言うことには、適当なタイミングを見計らって、人目につかなさそうな場所に入り込めば良いということだったけれど……。
そこでふと思い出し、足を止める。ちょうどその位置から横道が伸びていて、この道に入って少し歩くと、そこそこ大きな公園がある。まだ時間も早いし、あそこがちょうど良いんじゃないか。
そう決心して、すぐ足早に公園に向かった。

公園までは早歩きで行けば5分もかからない。すぐに到着して、更に人目を避けるように奥へ奥へと入っていく。
外縁に遊具が立ち並ぶ広場を通り抜け、整備された遊歩道を踏み越え、落葉樹や灌木で敷地外からは殆ど中の見えないエリアにまで入り込み、そこで立ち止まる。
種枚さんの言う通りなら、あの少年が現れる筈……。
その時、背後から突風が吹いてきて、堪らず倒れ込んでしまった。
落葉の積もった地面に咄嗟に両手をついたお陰で、完全な転倒とはならずに四つん這いになるような姿勢になったが、そこに人型の影が被る。誰かが自分を見下ろしているような形だ。
顔を上げると、種枚さんに見せてもらった写真に写っていたあの少年が、無表情で立っていた。

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冬宴造物準備 下

「そういうのめんどくさい」
ナツィがそっぽを向きながら呟くと、キヲンはえー!と声を上げる。
「みんなでケーキ食べたりするんだよー!」
嫌なのー?とキヲンは首を傾げる。
「嫌だ」
「えー」
ナツィの言葉に対しキヲンは何でー?と尋ねる。
「なんでって言われても…」
ナツィは顔をしかめる。
「むー」
ナツィのケチ〜とキヲンは頬を膨らませると、ナツィから離れて物置のテーブルを囲む椅子に座る青髪のコドモ、ピスケスや赤髪のコドモ、露夏の方へ行ってしまった。
「ナツィ」
かすみがそう言いながらナツィに近付く。
「どうして嫌なの?」
かすみが尋ねるとナツィは、お前には関係ないとまたそっぽを向く。
「きーちゃんはすごくやりたがってたよ」
クリスマスは寧依(ねい)が忙しくて構ってあげられないみたいだから…とかすみは続ける。
「ナツィだって、“保護者”が構ってくれないと嫌でしょ?」
かすみのその言葉にナツィは別に、と答える。
「ただ俺はかすみと2人きりで過ごしたいだけで…」
「?」
ナツィがそこまで言った所で、かすみはつい首を傾げる。
ナツィは己が言いかけたことに気付いてハッとした。
「あ、あ、いや、今のはナシ…」
ナツィは思わず顔を赤らめる。
かすみは暫くの沈黙の後、ふふと微笑んだ。

〈冬宴造物準備 おわり〉

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冬宴造物準備 前

とある喫茶店の2階の物置にて。
物置ではちょっと不思議な雰囲気のコドモたちがそれぞれ違う飲み物を片手に談笑している。
…と、ガチャリと物置の扉が開いた。
「あ」
物置の中のコドモの1人、金髪で額に角の生えたキヲンが扉を開けた人物に気付き声を上げる。
「ナツィ!」
キヲンはそのまま立ち上がるとナツィと呼んだゴスファッションのコドモに飛び付いた。
「ちょっ」
ナツィは急に抱きつかれてよろけるが、すぐに体勢を立て直す。
「テメェなにすんだよ」
ナツィは嫌そうに呟くが、キヲンはえへへ〜とナツィにすりすりする。
「ちょうどいい所に来てくれたねナツィ」
物置のテーブルを囲む椅子に座っていたエプロン姿のコドモ、かすみが立ち上がりながらそう言う。
「?」
ちょうどいい所って…とナツィは不思議そうな顔をする。
「あのね、今度ここで“くりすますぱーてぃー”ってのをやろうと思ってるの!」
キヲンの言葉に対し、ナツィははぁ、と答える。
「こうしてきーちゃんたちがここに集まるようになってから初めてのクリスマスでしょ」
だからせっかくだからパーティーしようよって、きーちゃんがとかすみは微笑む。
「ね、いーでしょ?」
ピスケスや露夏ちゃんもやりたいって言ってるし、とキヲンはナツィに顔を近付ける。
「みんなでわいわい…」
「断る」
キヲンの言葉を遮るようなナツィの声に、キヲンはへ?と拍子抜けする。

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