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磨羯造物茶会 Act 15

「そう来たか!」
ナツィはそう呟いてる短剣を鞘に納めると、上着のポケットにしまって大鎌を構える。
そして翼を羽ばたかせてカプリコルヌスに向かって下降し、自身の目の前に迫ってきたカプリコルヌスの、騎槍による刺突を大鎌の柄で受け止めた。
しかしカプリコルヌスは騎槍を自らの身体の方に寄せて大鎌をかわし、再度ナツィの頭を目がけて騎槍を突き出す。
ナツィは首を傾げるように頭を動かしてそれを避けた。
「…お前、手を抜いているな?」
「お前こそどうなんだ⁇」
カプリコルヌスとナツィはそう短く言葉を交わすと、互いに地上へ後ずさるように舞い降りる。
そしてお互いに互いの得物を構えて睨み合った。
「…」
少しの睨み合いの末、ナツィが先に走り出す。
ナツィは大鎌を斜めに構え、真っ直ぐにカプリコルヌスに接近した。
カプリコルヌスもまた騎槍をナツィにしっかり向けて駆けていく。
そしてナツィは大鎌でカプリコルヌスに斬りかかる。
だがカプリコルヌスは騎槍を少し斜め上に向けることで大鎌を受け止めた。
ナツィは大鎌を騎槍の上を滑らせてカプリコルヌスの手に刃を当てようとする。
しかしそれに気付いたカプリコルヌスはパッと騎槍を手の中から消した。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 サマーエンカウンター ⑮

そんなこんなで、自分は急遽ネロと耀平と遊ぶことになってしまった。
そのままネロに引っ張られてショッピングモールへ行き、息つく間もなく3階のゲームセンターへ連れ込まれる。
そしてネロはゲームセンター内をうろうろした後、可愛らしい鳥のぬいぐるみのクレーンゲームの前で立ち止まり、小銭の投入口に小銭を入れ始めた。
「よーし、今日こそ取るぞ~」
ネロはそう言いつつクレーンゲームのコントローラーを操作し始める。
耀平はその隣でもう少し右じゃね?とか色々とネロと話し合っていたが、ふと後ろを見やる。
彼はクレーンゲーム台に寄りかかってい2人の様子を見ている自分に気付いて、こちらに近付いてきた。
「ごめんなー、ネロの急な思いつきに付き合ってもらっちゃって」
ちゃんとおれが止められれば良かったんだけど…と耀平は頭をかく。
「アイツ、時々突拍子のない事をするからさ」
正直どうしようもないんだ、と耀平は苦笑いした。
自分はふーんとうなずく。
…とここでネロがあーダメだ~と声を上げた。
彼女の方を見ると、ネロはクレーンゲーム台の透明な板張りの部分に額をつけて駄々をこねている。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 サマーエンカウンター ⑫

それから数日。
ネロに傘を返して以降、自分は普段と変わらない夏休みを過ごしていた。
友達はいないから他人と遊ぶことほとんどなく、ただ夏休みの宿題をやったり塾の夏期講習に出かけたりする日々。
変わり映えはしないけれど、前々からこうだから別に気にする事はない。
…それでも、ふとした瞬間にこの前ネロに名前を呼んでもらった事を思い出しては、何か変な気分になっていた。
普段家族以外に自分の名前を、それも下の名前を呼んでもらうのが珍しいのかもしれない。
だけどそれだけじゃないような気がしてもやもやする。
…結局この、何とも言えない感覚を抱えたまま、自分は夏休みを過ごしていた。
「あ、おーい!」
午前中で塾の夏期講習が終わって家へ向かって歩いている帰り道、不意に自分の後ろから人を呼ぶ声が聞こえた。
何気なく振り向くと、先程自分が渡った横断歩道の向こうから黒いパーカーを着てそのフードを被った小柄な少女が駆け寄ってきている。
自分は驚いて硬直する。
「えへへ~、数日ぶりだね~」
その少女…ネロはそう言って笑みを浮かべる。
自分は相変わらず驚いていたが、そこへおいネローと明るい茶髪の少年もやって来た。

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