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緋い魔女(再掲) Act 1

「おぉ、よくぞいらっしゃいました。ささ、な…」
出迎えの挨拶を無視するように、赤毛の少女は屋敷の大きな扉を通り抜ける。
「あぁ、そんなに急がなくても…」
出迎えた屋敷の主は慌てて制止しようとしたが、少女は気にも留めずに屋敷内へと入っていった。
早歩きする少女は振り向くことなく呟く。
「…別に、まだ依頼を受けるとは言ってないのだけど」
「えぇ、それは分かっています」
少女を追いかけながら屋敷の主人は答える。
「ただ、わざわざこんな所まで…」
屋敷の主人はつらつらと長話を始めたが、少女は気にすることなく歩き続けた。
そうこうする内に、2人は屋敷の広間に辿り着いた。
「…まぁ、とりあえずそこの椅子にでも腰かけてください。詳しい話は座ってからしましょう」
屋敷の主人はそう言って少女に椅子を勧めると、使用人たちにお茶を出すよう命じた。
少女が座った様子を見てから屋敷の主人は椅子に腰かけると、要件を話し始めた。
「…では依頼の話を。ここ暫く、領内では動物の不審死が相次いでおります。最初は森にいる鹿なんかが死んでいたりしていたのですが、やがて家畜にも被害が出るようになり…」
少女は屋敷の主人の話を聞きながら、周囲を見回していた。

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校舎の裏

別館の5階のベランダも、教室のベランダも、今日はぼくが一人ボーっとしていられるような場所ではなかった。
売店が入っている建物の入り口に座り込むのも、人の目が気になるし。
というか、今日とうとう先生に絡まれてしまった。
だから誰もいない場所を求めて校内をさまよい…本館の裏に辿り着いた。
普段から、ほとんど人気がない校舎裏。
午後の光に照らされる薄汚れたコンクリートの校舎の壁と、学校の敷地と裏の高層マンションとを隔てる2メートルほどの壁、そして学校の裏にある高層マンションしか見えない風景は、まるで異世界のようで…とても自分が通っている学校に見えなかった。
よく見るとそれなりに手入れがされた植え込みがあり、ガスや水道のメーターの側には、人間が腰掛けるのにちょうどよさそうな段差もある。
よさげな段差に腰を下ろし、上を見上げると学校の裏にある高層マンションが見えた。
大人たちはあのマンションを「邪魔」と言うけれど、ぼくはそう思わない。
マンションのガラス張りのベランダの柵が、光を反射しキラキラと美しいのだ。
今日みたいによく晴れている日には、ガラスの柵が空の青を反射して建物が青く見える。
あんまり綺麗だから、思わず「わ」と声がこぼれてしまった。
もちろん、ガラス柵には空の青だけではなく、学校の傍のビルや学校の本館も少しばかり映り込んでいたが。
それでもぼくは、ガラスの青をしばらく眺めていた。
ガラスの中を雲が流れ、ぼくは秋の日差しの中で誰にも邪魔されずボーっとした。
ここには自分と地を這う蟻んこぐらいしかいない。
と思ったけど、校舎裏をぱらぱらと運動部の子達が通りだした。
ついでに4時台からの用事も思い出したので、ぼくは荷物を抱えてそそくさとこの場をあとにした。
居心地の良い陽だまりと、美しい青空を惜しみながら。

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悪夢

自分の布団で寝ていると、誰かが階下からここへ近づいてくる。
掛け布団を被ろうと手を伸ばすが、寝ぼけているからなのか、上手く腕が動かない。
気付くと自分の布団の側に父親が立っていた。
何かを言っているようだが、よく聞き取れない。
今何時なんだ…?と思いつつ、よく動かない腕でスマホのホームボタンを押す。
すぐにまだこんな時間だよと言わんばかりに父親にスマホを見せつける。
少しだけ見えたホーム画面がいつもと違ったのは気のせいだろうか…

という所で目が覚めた。
なんだ、夢か…と寝ぼけた状態で布団を被ろうとするが、なぜか腕が動かない。
というか、体が動かないのだ。
あれ? これって金縛り…と思ったところで、自分の側から誰かの泣き声が聞こえてきた。
寝ぼけ気味で姿はよく見えないが、「お母ちゃーんお母ちゃーん」と小さい子どもが泣いているようだ。
最初は弟妹かと思ったが、すぐに声が全くの別物だと気づいた。
「幽霊」
その2文字が脳内に閃くと共に、思いっきり目を瞑った。
多分、“奴”に起きているのがバレたら死ぬ、そう勘づいたからだ。
精一杯目を瞑っていると、側に立っている“奴”は泣きながらこの部屋から出て行った。
あー良かった、そういえば二段ベッドの上の段で寝ている妹はこれに気付いてないのかしら…

と思った所で目が覚めた。
全身ジットリと寝汗をかいている。
恐る恐るスマホに手を伸ばすと、画面は2時49分を指している。
布団に入ってからまだ30分くらいしか経ってないのか…
明日も早いから寝なきゃ…と寝ようとするが、また恐ろしい夢を見そうで寝るのが怖かった。

今度こそは、怖い夢を見ることはなかった。

4

『抗議 畢竟猫には敵わない』上

 不本意に頭を悩ませているそこの人間は、どうやら言葉が上手くないことを自認しているらしい。よく4本足の高台に向かって何やら作業しているのを見るが、本日はその作業のお供であるペラペラの爪とぎと、追いかけ回したくなる細い棒はない。どうやら、“しごと”に向かっているわけではないようだ。
 先に4本足の高台といったが、別に届かない高さなんかじゃない。距離を測り、少しぐっと踏み込むだけで、ほら。着地はお手の物である。
 それにしてもこの人間、いつもならこうするだけで目を丸くし、顔をほころばせるというのに、本日はどうしたものか。“すまほ”に向かってうなっている姿は、さながらけがをした子どものよう。……けがをしているのか?
 この人間には、ごはんを用意させている。住処を整えさせている。日々、撫でさせてやっている。……けがをしているとなると、問題である。自分の生活に影響が生まれるからである、あくまで。
 顔をすりつけると、この人間は喜ぶ。それを知っている。たまには喜ばせてやるのも悪くはない。
「わ。どうした、今日は甘えたさんだな」
 喜ばせてやっているだけぞ、勘違いするでない。
 それにしても、一瞬の曇った顔をみたぞ。何がどうしてそんな表情にさせるのだ。やはり、けがなのか。
「にゃー」
 本日は“さーびす”である。人間は“さーびす”が好きだ。
「おしゃべりなんて珍しいな。構ってほしいのかー?」
 笑ってはいるが、なんだかさみしそうだぞ、人間。もしかして、けがをしているのはもっと他の部分なのか。
 それにしても、撫でる技術が上達している……ううむ、意思疎通が図れたのならば、褒めて遣わすというのに。
「お互いの言葉が通じなければ、信頼関係だけで成り立っていたかな」
 ……何を言っているのだ?

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〜二人の秘密〜番外編 長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです!

今日はいつものように彼女に引っ張られアルの部屋に行くと、ピクニックに行く事になった。
『飲み物くらい持っていくか。』
私は飲み物を持って校門へ行くと1番乗りだった。

「先生早いね!」
私が飲み物を持ってきたというと彼女は笑ってサンドイッチを持ち上げた。
“遅くなってすみません!”
アルも来て3人そろったので、私は口を開いた。
『人がいないところに行って魔法で移動しようか。』
“そうですね。”
アルもそう返事をしたので人気のない所へ行った。

『こっちにおいで。』
「どうするの?」
彼女を手招きすると少し不安そうな顔をした。
『手を貸して。アル、準備はできたな?さぁ、君は目を瞑って。離すんじゃないぞ。』
私がそう言うと、彼女はギュッと目を瞑り、恋人繋ぎで手を離さないように握った。
アルと目を合わせると、彼女の言う「綺麗な魔法」で移動をした。
私が『もう開けてもいいよ。』と声をかけると彼女は目を開け、綺麗な草原に見とれていて、嬉しそうだった。
彼女は持って来たレジャーシートをアルと広げる。
そして、真ん中に座るとランチボックスを広げ両脇に座るよう私達に指示を出した。

“これは美味しい!”
「でしょ!?昨日ちゃんと作ったんだよ(笑)?」
『昨日から考えてたのか(笑)?』
「うん(笑)。サプライズ。」
彼女は可愛らしく笑うと、残りのサンドイッチを口に入れる。
“ほんと美味しかったよ。”
『ごちそうさま。』
私がそう言ったとき、彼女は空を向いて寝転んだ。
「今日、凄く良い天気だね!このまま寝ちゃおっかな。」
“それ乗った。”
アルがそう言って眠りに着こうとしたとき、彼女はもうすでにスヤスヤと寝息をたてていた。
そして5分も経たないうちに2人とも眠ってしまった。

私は2人の寝る横で、可愛らしい寝顔を眺める事にした。
快い風と太陽の温もりが優しく包み込み、気持ち良さそうだった。
彼女が起きてしまうまで、私はそっと二人の寝顔を見守った。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

「先生!!捕まえたっ!!」
私は先生を見つけると、右腕を後ろから引っ張った。
『おぉ、なんだ?今日の授業わからなかったか?』
「いや、全然わかったよ?なんで?」
『君がいつもと違う捕まえ方をするから聞いただけだ。』
「あれ?いつもこんな感じじゃないっけ?」
『掴まれたことはなかったはずだ。』
「あ、痛かった?」
『いいや、痛くはないさ。そんなことより、私に用事があったのだろう?』
「あぁ、そうそう。倫理についてなんだけどね。」
『倫理?』
「うん。私のクラスは選択科目で成り立ってるでしょ?だから、その選択科目のせいで倫理の授業が受けられないの。」
『そうだったな。選択科目のせいで、私も君と授業ではなかなか会えないのだったな。』
「別に選択したくて、選択したわけじゃないよ。やりたくないものをやってる。嫌だって言ったら、学校辞めて働けって言われるし。やりたいことできないのにここにいる意味は、先生に逢えるっていうそれだけよ(笑)。」
『そうか。』
「そう。それでね、先生に倫理を教えてほしいの。」
『私は倫理の担当ではないが?』
「でもそういうの得意でしょ?」
『あぁ。確かに。教えられなくもない。』
「先生。約束ね。放課後、先生の空いてるときに授業してよ(笑)。」
『もちろんだ(笑)。』
「そういう先生大好きよ(笑)。じゃあ、また後でね(笑)。」

『待て。』
先生は次の授業に行こうとした私を呼び止める。
「何??」
『辛くなったら、またおいで。いつでも私は待ってる。いつもお互いがお互いを必要としている(笑)。』
「知ってる(笑)。私もこの間、先生の事待ってるって言った気がする(笑)。じゃあ、授業始まっちゃうから行くね!!」
『あぁ。』
「私、先生の事は大好きだよ(笑)。」
イタズラに笑うと教室の方向に足を向ける。

次の授業は選択科目。
先生の笑顔が、私をそっと救ってくれる。
もう少しだけ頑張ろう。
そう決意して教室の扉を開けた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

今日はなんとなくだがいつものようにお気に入りの窓がある廊下へと向かっていた。
いつもは私が先にいるが、今日は先客がいた。
「先生??今日は用事ないのにいるんだね、珍しい。」
『あぁ。君が見ている景色を見たくなってな。』
「結構いいでしょ?ここ。」
私は先生の隣で、窓に手をつく。
『君がお気に入りにしている意味がわかったよ(笑)。』
「先生、何かあった??」
『何を言ってる?(笑)何もないさ(笑)。』
先生は誤魔化すかのように笑う。
「そっか〜。じゃあ、私の話聞いてもらおうかな〜。」
『もちろん。何だ??』
「あっ。1つ約束。途中で口挟まないでよね!」
私は先生を見ていたずらに笑う。
『あぁ、わかったよ。保証はできないが。』
「じゃあ、いくよ?」
『あぁ。』

「先生にはね、もう愛着しかないの(笑)。初めはね、嫌な奴って見てた所も、今となってはもう、あぁ〜好きだなぁ〜って見てる。こんなにも愛おしくなる人なんだなぁ〜って(笑)。先生、自暴自棄になってたでしょ?でも、その事憎めないな〜って(笑)。なんて素敵な人なんだろうって。もう好きすぎて心臓持たないよ(笑)。あっ、好きって先生としてだからね〜?(笑)。」
言いたい事を放った後に先生を見ると、頬から涙が伝っていた。
先生が何を思って何に悩んでいるかなんて実際にはわからないけど、一度は伝えておきたかった事だ。

「だからね、先生の事だけは信用してるの。先生、これからもよろしくね。」
『何で今、それを言うんだ?(笑)』
先生は涙を隠して笑う。
「なんとな〜く、なんとなく言いたくなっただけ〜。」
『ありがとう。ここに来て良かったよ。』
「先生、悩む前にここ来たらいいよ。私はいつでもここにいるから。」
『言っただろう?悩んでないさ(笑)。』

先生は嘘が下手くそだ。
私の言ったことが少しでも先生に届いていれば私の出番は終わりだ。
「私は先生の事見てるからね(笑)。」
そう言ったとき、春の温かい風が二人を包み込んだ。

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〜二人の秘密〜長文なので時間があるときに読んでくださると嬉しいです。

トントン。私は先生がいる部屋の扉を叩く。
『先生?入ってもいい?』
爆発音とともに、
「ちょっと待て」という声が聴こえる。

5分ほど経つと扉が開いた。
「お待たせ。」
『先生、また魔法の薬学してた?』
「あぁ。少しだけだ。」
先生は魔法を使った薬学を“隠れた専門教科”としている。
先生の使う魔法の薬学はとても綺麗で素晴らしい。
『今日は失敗したの?』
「掛け合わせができると思ったのだが何処かで間違えてしまったようだ……。 片付け、手伝ってくれるか?」
『えぇ。もちろん。その代わり、チョコレートね。』
「わかってる。魔法の事は誰にも言うなよ。」
『もちろん、わかってるわよ。』
私は魔法使いでも魔女でもない。
いや、普通はみんなそうだ。でも私は、夢のような彼の秘密を知っている。

手伝いをしながら彼に問う。
『ねぇ。先生の魔法の事、私にバレたけど何もないの?お仕置きとかさ。』
「君が黙ってるから何もない。私も何も言わない。」
『誰かが魔法を使ったら、“魔法の存在がバレた”って事がバレるんじゃないの?』
「あぁ。もうバレてるだろうな。」
『大丈夫なの?』
「君が秘密にしてくれているんだ。何もないだろう。」
私は“そっか”といい一息つく。
『だいぶキレイになったんじゃない?』
「そうだな。元通りだ。」
『良かった 良かった。』
「そういえば、何か用事があったのでは?」
そう言いながらチョコレートを渡してくれた。
『えっとね〜……。 忘れた……。』
「まぁいいさ。思い出してからまた来るがいい。」
彼はホットミルクを差し出す。
『ありがとう。……魔法の事、先生にお仕置きがなくて良かったよ。』
先生と話したかっただけとは言えなかったが、帰宅のチャイムがなるまで話し合っていた。

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魔法譚 〜あとがき

初めての人は初めまして、そうでもない人はこんばんは、どうもテトモンよ永遠に!です。
突然ですが、7月に開催した企画「魔法譚」、覚えているでしょうか?
一応、企画終了後にあとがきのようなものを書きたいと思っていたのですが、気付けば年末になっていました…(^^;
いっそこのまま書かなくても良いような気がしましたが、書くって言ってしまったので少しだけ、裏話をさせて頂こうと思います。

もともと、この企画は今年の4月ごろのちょっとした空想がベースになっています。
この時点ではちょうど放送が終わったばかりの魔法少女アニメや鬼リピートしていた某STGのエクストラステージの道中曲の影響で、「魔法使い」じゃなくて「魔法少女」が出てくるようなお話でした。
ちなみにもうこの時点で「大賢者」やマジックアイテム、主人公たちを襲撃する怪物(名前はまだなかった)、大人になっても魔法少女を続けている人などは存在していました。
途中で女の子だけじゃつまんないから男性陣も…いやいっそ企画でも良いかも…と色々とこの空想は広がっていったのですが、知らない間に放置していました。
それをふと学校の帰り道に思い出したのが7月3日、ちょうど予告編を投稿した日です。
そうだ、企画をやろう!と電車内で思い立ち、あと3週間でテストだから、開催は来週からしかないな!とそのまま勢いで開催を決定してしまいました(笑)
今思えば、もっと余裕を持って開催すべきだったなとか、開催者が出しゃばりすぎたなとか後悔は色々ありますが…楽しかったです。

さて、すっかり遅くなりましたが、企画「魔法譚」はいかがだったでしょうか?
これを以って、当企画は本当の意味で終了とさせて頂きます。
参加者の皆さん、ありがとうございました。
また今度企画をやる可能性はかなり低いです。
来年には高3だし…
でも、近いうちに「魔法譚」のまとめを作ると思います。
そちらもお楽しみに。
…では。

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霧の魔法譚 #15 6/6

魔法使いたちを襲った大攻勢は、目立った損害もほとんどなく魔法使い陣営の勝利に終わった。
変わったことと言えば沖合に突如出現した謎の濃霧を偵察隊が捉えたそうだが、目立った動きはなくほどなくして消滅したらしい。おそらくファントム側の攪乱作戦が不発に終わったのだろうと多くの者がそう考えた。いずれにせよ勝ったのだから問題はないと誰も深く考えなかった。


霧に隠されたもう一つの大攻勢。一人の少女が抹殺したファントムは深海の底に消え、誰の記憶にも残ることはない。


霧の魔法譚<終>

***

大変大変長い間が空きました。覚えている方いるでしょうか。いたら嬉しいです。
夏からの課題(!)、何とか無事終わらせることができました。終わりましたよテトモンさん!
本当はもっと短く、こう、フランクな感じで終わる予定だったのですが、書き込みを引き延ばしているうちにグダグダと内容まで長くなってしまい……。お話の展開まで暗くなってしまいました。クリスマスイブにお目汚し失礼します。
霧の魔法譚は以上で終了です。見てくださった方、反応していただいた方、そして長文を載せてくれたKGBさん、長らくお付き合いいただきありがとうございました!

1

霧の魔法譚 #14 2/2

シオンは一冊の本を取り出し、頁をぱらぱらとめくっていく。本は途中まで文字がびっしりと並んでいたが、ある頁から本文だけが抜け落ちたように何も書かれていない。その文字と空白の境目の頁を見つけ出し、そこに手を置く。頁の端がはたはたと音を立てている。
目を閉じ、深く深呼吸をする。吸い込んだ空気から霧の湿っぽい匂いをしっかりと感じ取って、自分が霧の中に存在していることを確認する。耳には相変わらず風切り音が鳴り響き、シャットアウトした視覚からは何の情報もなく、代わりに本に触れている手に感覚を集中させる。本の形や大きさなどを確認していき、それを記憶していく。
記憶した本を暗闇の中に描き出す。そしてそこを中心として自分自身と車の座席を描き、風切り音と霧の粒子を描き、シートベルトと後部ドアを描き、衣擦れと呼吸音を描き、大賢者と食べかけのクッキーとイツキを描き、ハンドルとタイヤを描き、バックミラーとエンジンを描き、それから空気の移動と冷たさを描き、冷えた金属と怖気を描き、その奥に眠る赤い眼光と鎧を描き、それの3万1946体の違いを描き、波と空気の狭間を描き、軋むような海底の響きを描き、そうして霧とそれ以外の狭間を描く。見えるものはすべて記憶して、霧に隠れているところは想像のもとに。そして今度はそれをじっくりと観察し強度を高めていく。
さながら現実世界を忠実に再現した模型を作るかのように、あるいは物語の背景を組み立てるかのように。
再現と記憶を同時並行しなければいけないため、頭はオーバーヒートでどろどろに溶けてしまいそうだった。一本の細い線を手繰り寄せるように地道な作業を続けていく。ファントムが整列してくれていて助かったと思う。ばらばらに配置されていたら多分、完全に再現することは不可能だった。ファントムは同じ顔、同じ体躯で、まだまだ動き出していない。どうだろう、それも秒読みな気がしていた。
完成に要した時間はわずか数十秒だが、シオンにとっては何時間も経っているような気がした。こんなに集中するのも久しぶりだが、ここまで来てしまえばあとはもう簡単だ。
現実と相違ない世界を自らの頭の中で完全に再現し終えたシオンは、いよいよ魔法を発動させる。

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魔法譚キャラクターまとめ1

作者 flactorさん
作品名 霧の魔法譚
・イツキ
願い 空飛ぶ車でドライブしたい
マジックアイテム ミニカー
魔法 ミニカーの巨大化。巨大化したミニカーは実際に運転できるようになる上、空を飛ぶ。

・シオン
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明

作者 白昼夢見人さん
作品名 田中の日常
・田中
願い 目を良くして欲しい
マジックアイテム サングラス(既に破壊)
魔法 不明。戦闘力は高い。

作者 テトモンよ永遠に!さん
作品名 魔法譚〜エンドレスジャーニィ
・前埜アキ
願い 空を飛びたい
マジックアイテム 革製のマント
魔法 空を飛ぶ魔法と思われる。変身後の衣装に付属する刃のついたグローブで攻撃も可能。

作品名 魔法譚〜ウィザードパーティ
・サワラ
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 治癒魔法の類

・アツマ
願い ここで死にたくない
マジックアイテム おもちゃみたいな銃
魔法 銃が小瓶に変身し、その中の錠剤を飲んだものは最低限死ぬことだけは回避できる

・フリード
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明。戦闘力のある魔法と思われる。

・ユウキ
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明。杖を使用する。状況から補助系の魔法と思われる。

・エリ
願い 不明
マジックアイテム 不明
魔法 不明

・少女
願い 不明
マジックアイテム 鞄
魔法 不明。ある程度の戦闘は可能らしい。 

作品名 因果応報
・センヤ
願い いじめてくる奴らに、同じ痛みを味わせたい
マジックアイテム オルゴール
魔法 自分が受けた痛みをそのまま相手に返す

少し前にテトモンよ永遠に!さんが企画した魔法譚、今も少し続いていますが、個人的興味で登場した魔法使いの皆さんをまとめようと思い立ちました。

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霧の魔法譚 #7

「じゃあイツキ君、パパっとやっちゃって」
「へいへい」
大賢者に促され、イツキは面倒くさそうにポケットからミニカーを取り出す。彼が魔法を発動させると手に持っていたミニカーがみるみるうちに大きくなり、やがて通常の車と同じサイズにまで巨大化した。
「これがイツキさんの魔法……」
「おう、すごいだろ?」
シオンが驚いていると、イツキが後部座席のドアを開けてくれる。中にはしっかりとした座席がしつらえており、先ほどまでミニカーだったとは思えない。
イツキのマジックアイテムは小さなミニカー。プルバック式のこの玩具は魔法を発動すると同時に巨大化し、おまけに内部構造も運転できるように改変されるため乗ることができるようになる。
大賢者は慣れた手つきで助手席へと腰を下ろした。
「イツキも今はこんなんだけど、昔はかわいいとこあったんだよねぇ。空飛ぶ車でドライブしたい! って純粋というかなんというか」
「うるさい。ミニカーを運転したいという小さな子供が持つにしては真っ当な夢だろ。てか我が物顔で乗り込むな大賢者」
「シオンにはドアまで開けてあげてたのに私には雑な扱いすぎない?」
言いあいながらしっかりとシートベルトを締め、イツキもため息を百回くらい吐きたそうな顔をしながら運転席へと乗り込んだ。
さきほどは仲が悪いのだろうかと二人を心配していたシオンだったが、どうやら彼らにとってはこれが通常運転らしいと気づいてからは何も言わなくなった。きっと旧知の仲というか腐れ縁というか、とにかく険悪な関係ではなさそうなのを見て取って安心する。いまでは軽口をたたきあう二人をほほえましく見ていた。
「シオン、シートベルトは締めたか? ……って何笑ってるのさ」
「いえ、すみません。では早速出発しましょうか」

***
#7更新です。
スタンプやレスありがとうございます。遅筆な私の励みとなっております……。そろそろ期末レポートも終わりそうなのでこっちの作業に集中できそうです。もうしばしお付き合いをば。

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霧の魔法譚 #5

「申し訳ない! この通り!」

転移魔法のタイミングが完璧すぎたせいでみんなの気合を根こそぎ刈り取った大賢者は、今はもう解散してイツキしか残っていないブリーフィングルームで平謝りしていた。
「大賢者の存在自体が全力で謝罪から誠意というものを奪っていってる気がする」
「ごめんって! いやこの格好については謝るつもりはないけども!」
「はぁ……、もういいっすよ。それよりこんな時に何の用ですか」
大賢者の中身のない謝罪は適当にぶった切っておいて本題に移る。
「なんだか謝罪を適当に受け流されたような気がするが……。まあ確かに時間を無駄にするわけにはいかないからな。それで今回はイツキに素晴らしい提案をしにやってきた」
「なんすか、それ」
「聞いて驚け、“空の旅”のご案内だ」
「……」
「…………」
「話したいことはそれだけですか? それじゃ僕はいろいろ確認することがあるのでこれで」
イツキが話は終わりとばかりに踵を返す。
「いやいやちょっと待ってくれ! 比喩! ジョーク! 空の旅はほら、あの、例え話だから!」
「ッ」
「舌打ちした!?」
「ふざけた言い回しすっからでしょうが!!」
「大賢者様、出立はまだですか?」
イツキが本気でイラつき始めたその時、大賢者の影から進み出てくる者がいた。
雪のような白い髪に藍色の着物。下駄をカランコロンと鳴らして大賢者の横に並び立つ。
「ちょっとふざけすぎたらイツキが怒っちゃって」
「あら大賢者様。人をからかうのもよろしいのですが、そろそろ話をお決めになられて?」
「うーん正論」
ごめんねと女の子に言うと、イツキのほうに向きなおった。

「すまないイツキ、少し手伝ってほしいことがある」

***
数日空きまして投稿です。
最近ばっちり期末に差し掛かってまして更新だいぶ遅いですが、しっかり完結させるのが誠意かなと思うので頑張ります。

イツキ相手にふざけて怒らせてしまった大賢者ですが、気を取り直してお手伝いを頼みます。

2

魔法譚 ~エンドレスライフ、エンドレスジャーニィ Ⅲ

「…そうかい? でもこの歳になっても魔法使いとして生きられるなんてすごいと思うよ? だって…」
「…ほとんどの魔法使いは、大人になる前に死んでしまうから」
大賢者が先に言う前に私が答えると、…そうね、と少し悲しげに答えた。
「みんな、幸せになるために魔法使いになったのに、みんな、悲劇の死を遂げてしまう…」
大賢者は悲しそうにうつむいた。
「そんな風に悲しむのなら、魔法使いなんて生み出さなきゃいいのに」
どうして生み出し続けるのよ、と私は言った。
それを聞いた大賢者は、私の目を見つめながら答えた。
「…だって、この世で魔法を使えるのが、わたし1人だけじゃ寂しいじゃないか…」
もちろん、魔法を持たないキミ達に魔法を与えて、どんなことをするのか眺めて楽しむってのもあるけど、と彼女は付け足す。
「…わがままね」
私は少しだけため息をついた。
「…でも、どんな願いもわがままと変わらないじゃないか」
「私のはちょっと違うと思いますけど」
大賢者のツッコミに、わたしはさらっと反論した。
「…オカルトなんて、基本信じてなかったから。だからあの時は、適当に『空を飛びたい』と願ったのよ」
私は彼女から目をそらしながら呟いた。
「…まぁ、いいわ」
そう言って、大賢者はふわりと飛翔した。
「わたしはこれからも、誰かのわがままを、自分のわがままを、叶えるために世界を巡るわ」
あなたも頑張るのよ、そう笑って、大賢者は夜空へと消えていった。

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魔法譚 ~エンドレスライフ、エンドレスジャーニィ Ⅱ

「…」
とん、と地面に着地し、元の姿に戻った私は、さっきまでバケモノがいた方を向いた。
凶刃、いや凶爪に敗れたバケモノは、すでにチリとなって消えていた。
やっと帰れる、そう思って元来た方へ戻ろうとすると、どこからか、乾いた拍手が聞こえた。
音がする方を向くと、電柱の上に見知った顔がたたずんでいた。
「お見事」
金髪に青いエプロン、白い帽子と白い日傘。
どこかおかしいような、おかしくないような恰好をした人物は、数メートルある電柱のてっぺんから、軽やかに飛び降りた。
「…やはり、キミは戦闘のセンスがあるねぇ」
いっそ警官や自衛官にでもなれば?と女は笑う。
「…大賢者」
私はぽつりと呟いた。
「いやぁ、元気そうで何よりだ…”前埜アキ”」
大賢者は笑顔で私に歩み寄ってくる。
「さすが、わたしの自慢の魔法使いだ」
「自慢することないと思うんですけど」
私はいつものように彼女の言葉を流した。
「…自慢することないって、キミ、自分がいくつなのか分かってる? にじゅぅ…」
「それ以上はやめてください」
私はきっぱりと大賢者の言葉を遮った。
さすがに、この歳になると年齢が気になってくる。
大賢者はつまらなさそうな顔をした。

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魔法譚 ~エンドレスライフ、エンドレスジャーニィ Ⅰ

すっかり日も暮れた駅前、バスロータリーにしろ駅の構内にしろ、どこもサラリーマンやOLでごった返していた。
騒がしい人混みを尻目に、私は駅の入り口へとまっすぐ向かっていた、が。
「…」
背後から気配を感じる。
振り向くと、自分の後方約20メートルのところに、まるで油絵の具を塗り重ねたような、としか形容しようがない”何か”がいた。
見るからに高さは2メートルほどあってかなり目立つが、道行く人々の目には見えていないように見えた。
…面倒な。
私は心の中でそう呟くと、人気のない路地裏へと足早に向かった。
そして、路地の奥の方まで入ったところで、私は手提げ鞄の中から革製のマントのようなマジックアイテムを取り出し、勢いよく羽織った。
マントを羽織ると、いつも着ているスーツはオレンジ色のワンピースに変わり、頭には魔女が被っているような帽子が現れた。
そして手には、巨大なかぎ爪のついたグローブ。
「…いるわね」
ちら、とさっき来た方を見やると、そこにはさっき駅前でみたバケモノがたたずんでいた。
少しの間それを見つめたのち、私は路地の奥へと走り出した。
もちろんバケモノも、見た目に見合わぬスピードで私を追いかけだした。
「…フッ!」
10メートルほど走ったところで、私はコンクリの地面を蹴り上げ、文字通り飛翔した。
そのまま猛禽のように加速し、時々進行方向を曲げながら徐々にバケモノとの距離を離していく。
「!"#$%&'()=~|~{}*?_>+*`{|~=!!」
バケモノもバケモノで、意味の分からない喚き声をあげながら、私に追い付こうと飛行、加速していく。
「…面倒な奴」
ちょっとだけ舌打ちしたのち、私は丁度目の前に迫ったビルの外壁ギリギリのところで減速した。
そして思いっきり壁を蹴っ飛ばして方向転換すると、そのまま両手のかぎ爪でバケモノに斬りかかった。
「!!」
突然自分に向かってきた魔法使いに思わずひるんだバケモノは、為す術もなくわたしのかぎ爪に斬り裂かれた。

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魔法譚 ~ウィザードパーティ Ⅱ

「…すごい」
倒れていた少女はゆっくり上体を起こしながら呟く。
「皆さんすごいですね、チームワークとか、魔法とか、本当…」
そうかな?と周囲のコドモ達は顔を見合わせる。
「…別に、ぼくらの魔法自体は特別すごいモノじゃないと思う」
「だよね! ていうか、ここにいるメンバーって魔法使いになったことに対してネガティブな感情を持ってる子多いし…」
へ?と倒れていた少女は驚く。
「あ、ここにいるメンバーはね、魔法使いになったのは良かったんだけど、手に入れた魔法が思ってたのと違ったとか、願いを叶えてしまって魔法を持て余してしまったとか、そもそも魔法使いになったことを後悔してる子とか、色々いるんだ…」
「うちらはそういう集まりなんです」
周囲の魔法使い達がそう説明すると、倒れていた少女は、そうなんですか?と聞き返した。
「うん、そうだよ。さっきのアツマ先輩も、何年か前まであんなすごい魔法を手に入れたことを後悔してたって言うし」
「『ここで死にたくない!』って願ったのに、手に入れたのを後悔するなんて変だよねぇ」
「ちょっとエリ! それじゃ先輩に失礼でしょ」
魔法使い達の中のよさそうな会話を聞きながら、少女は自分の手元にある鞄型のマジックアイテムを見つめた。
「…あの、わたしも仲間に入って良いでしょうか?」
魔法使い達の視線が一瞬にして少女に注がれた。
「…わたしも、自分が手に入れた魔法の使い道があまり見当たらなくて…だから」
少女は魔法使い達をまっすぐ見据えた。
「だからわたしも、な…」
「あ、仲間になってもOKだよ!」
和服のような恰好をした魔法使いの言葉に、少女はぽかんとした。
「うちらの集まりは、来るもの拒まず、去るもの追わずのゆるい集まりだからね! 出会ったその時から、仲間みたいなもんだよ!」

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魔法譚 ~ウィザードパーティ Ⅰ

「先輩! こっちです!」
和服のような恰好をした少女に導かれ、蛍光色の妙な格好をした少年が家々の屋根の上を走っていく。
少年が着いた先では、他のコドモ達に介抱されている変わったセーラー服姿の少女が倒れていた。
「うちらが来る前から戦ってたみたいなんですけど、ついさっき”アイツ”の攻撃をモロに食らって、それで…」
周りのコドモ達の話を聞きながら、少年は倒れている少女に目をやった。
目に見えるケガは見当たらないが、少女は苦しそうに呼吸している。
「…さっきからサワラが治癒魔法何回も掛けてんですけど、あんまり効果がないみたいで…」
うん、うん、とうなずきながら、手の中のおもちゃみたいな銃を小瓶に変身させた。
「とりあえずおれの出番って事だな」
少年は小瓶の蓋を開けながら呟いた。
「…」
倒れている少女はちらりと少年の方を見た。
「あ、大丈夫だから、とりあえず応急処置をするだけ。安心して」
少年はそう少女に言いながら、小瓶の中の蛍光色の錠剤のようなものを少女の口に放り込んだ。
「これで平気。とりあえずこれで”死ぬこと”だけは回避できっから。あとおれの手でマジックアイテムを使ったから、ちゃんと効果は発動する、大丈夫」
訳の分からないまま錠剤を飲まされた少女は、とりあえず少年の言葉にうなずいていた。
「サワラ、もう1回治癒魔法掛けてくれ。多分今なら効くと思う」
あ、はい!と聖職者みたいな恰好をした少年は答え、倒れている少女の方へ駆け寄った。
「…そういえば、他のみんなは?」
さっきの錠剤の入った小瓶をまた銃に変えながら、少年は周りのコドモ達に尋ねる。
「フリード先輩とかはあっちでまだファントムと戦ってます!」
和服のような恰好をした少女は空を指差した。
その方向に目をやると、コドモが何人か、表面が木目のような模様になっているクビナガリュウのようなバケモノと戦っている。
「OK! ユウキ!」
はい! 先輩!と背の高い少女が杖を振るうと、少年は少しの助走をつけてから、そのまま住宅の屋根を蹴ってファントムの方へ跳んで行った。

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無幻の月-戒放-

埠頭までの直線距離自体は比較的近かったが少し寄り道することにした。魔力のテストのためだ。
通行人数人に思い付く限りの呪文をかけてみたが確かに制限は外れており、どんな魔法でも自在に行使できるようになっていた。
ふむ...考察は正しかった...なら...
桜改めサクラは気配を消して今度こそ埠頭まで行くことにした。

埠頭は既に地獄の門と化していた。哭羅はファントムに怒ったように何か指示を出している。多分、私を探しているのだろう。
そんな時、一体のファントムが哭羅へ反乱した。だが触れるより前に喰われてしまった。
「(まぁ...一体ならこんなものか)」
無感動に海に向かってサクラが呪文を唱えると海が沸き立ち始める。
「甦れ亡者よ!私がお前たちの新たな主人だ!」
サクラの切り伏せたファントムが海から哭羅めがけて突撃する。
哭羅はもちろん、周りのファントムたちも何が起きたのか理解できなかったようで動きが止まるがすぐに応戦を始める。
しかしこの一瞬が命取りで皆防戦一方だった。
「...散れ!」
サクラが一瞬ずらして突撃し、魔力で巨大化させた鎌を振り下ろす。
傀儡ごとファントムは全滅させたが、哭羅に対しては腕と足を持っていったものの避けられてしまった。
これだけ斬れれば十分だろう...
哭羅の真上まで上昇し、鎌を天に掲げて呪文を唱える。
同時に哭羅も咆哮と共にサクラへ手を伸ばす。
「届くまい...己の部下と共に砕け散れ!」
先ほど全滅させたファントムの傀儡が哭羅の足をつかむ。
無慈悲に振り下ろされた鎌は空の亀裂ごと哭羅を斬り裂いた。

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魔法譚 〜因果応報 Ⅱ

「…やぁ」
バケモノを退治した後の少年の背後から、声が聞こえた。
少年が振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。
「…大賢者さん」
「そうだよ、わたしさ。久しぶりだね、“村雨 千夜”くん」
センヤ、と呼ばれた少年に、大賢者は笑いかける。
「随分戦いに慣れてきたね」
「そうですか?」
そう答えるセンヤの服装は、昔風の軍服から学校の制服に変わった。
「…まぁ、魔法使いになってから2年くらい経ってますからね」
センヤはオルゴールの形をしたマジックアイテムをポケットの中に入れながら言った。
その様子を見ながら、ふと思い出したように大賢者は呟いた。
「…そういえば、キミの願いは何だったかな」
センヤは笑顔で答える。
「いじめてくる奴らに、同じ痛みを味わせたい」
「…まさに因果応報ね」
大賢者はボソっと言った。
「手に入れたのが、“自分が受けた痛みをそのまま相手に返す”魔法で本当によかったですよ。お陰であいつらに復讐することができたし、ファントムの退治もできるし」
本当にありがたい、とセンヤはにこりと笑う。
そうかい、と大賢者は素っ気なく答える。
「キミが後悔してないみたいで本当に良かった」
こういう願いっていうのは、途中で後悔することがよくあってね…と大賢者は苦笑する。
「…後悔なんてするわけないじゃないですか」
センヤは明るく返答した。
なら、本当に良かったわね、と大賢者は呟い
た。
そしてぽつりと一言こぼした。
「…やっぱり、人間って面白いわね」
「?」
センヤは不思議そうに大賢者の顔を見た。
「…色々な願いを抱えて生きてるからねぇ」
大賢者はセンヤの目を見据えたまま答えた。


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どうも、大賢者の代弁者です。
企画は早くも後半戦に突入しますね。
今からでも、企画への参戦は大歓迎ですよ。
あと参加するときは作品に「魔法譚」のタグを忘れずに付けてくださいね。
…さぁ、後半戦も、楽しんで参りましょう!

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魔法譚 〜因果応報 Ⅰ

ーひゅん、ひゅぅん、と何かが風を切る音が聞こえる。
音のする方角では、昔風の軍服を着た少年が、鞭を振りまわしながら奇怪な生物に立ち向かっていた。
「…っ」
伸び縮みする鞭で、ライオンの胴体に観葉植物のような頭のついたバケモノに少年は攻撃を加えていたが、怪物の側頭部から伸びた蔓のようなものに弾き飛ばされてしまった。
だが、少年は地面に打ち付けられた衝撃をものともせずに起き上がると、手の中の鞭をオルゴールに変身させ、そのゼンマイを巻き始めた。
「={${*}”{>;‘,$\>\<;’;!」
無防備になった少年に向かって、バケモノは悠々と唸り声をあげながら近づいてくる。
しかし、あと数メートルのところで、バケモノは足元から崩れ落ちた。
「$;“\<\<⁈」
バケモノが己の身体をよく見ると、全身のあちこちにミミズ腫れやアザのような傷ができている。
何が起きたのか分からないバケモノは、必死になって立ち上がろうとするが、痛みに耐えきれないのかすぐに動けなくなった。
少年は音の鳴らないオルゴールを片手に、静かに化け物に近づいていった。
「”これ”が、さっき君が僕に与えた痛みなんだよ?」
少年は笑みを浮かべながら、オルゴールを鞭に変化させた。
そして無言で鞭を思い切りバケモノに振るった。

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無幻の月-宿痾-

「哭羅(コクラ)...そんなものまで出てくるなんてねぇ...」
桜は戦場から少し離れたところにワープさせられてた。
「賢者...なぜ助ける...」
「緊急事態なんでね。本来はこんなことはしないけど哭羅が出てきちゃったからねぇ...絶対にキミにはヤツを倒してもらいたい」
コクラ...あのでかいヤツのことか?
「だからキミの腕は魔術的に繋げさせてもらった」
なるほど、まだ変身状態なのはそういうことか
「賢者、二つ聞かせろ」
「なんだい?今さら降りるとかは無しだよ?」
「一つ、コクラとか言うあの怪物はなんだ、あれを放置すると何が起こる」
「あれはファントムの上位種。いわば支配者、王様みたいなものだ。この世界では...なんだっけ...あーそうそう、ダゴンって呼ばれてる」
ダゴン...昔何かで読んだな...どっかの宗教の神様だったか?なるほど、それであんなに強いわけだ
「そして、あれを放っておくとこちらの世界がメチャクチャになる」
さした影響は無さそうだな
「では二つ、私があの指輪を取り込んだらどうなる」
一緒にワープさせられた右腕を手に取りながら言う。
これは前々から考えていたことだ
取り込めれば恐らく指輪のリミッターを外せる
もっともこれが危険な賭けなのがわからないほど私も馬鹿ではないのだが
「...あなた正気?」
いつも飄々してた大賢者の顔が険しくなる。
「正気だ。お前が私の前に現れた時と同じくらいにはには」
「...そもそもマジックアイテムの力にその肉体が耐えきれない。仮にそこをクリアしたとしてもキミは常に変身状態でいるここと同じになる。人の精神がそれに耐えられるはずがない」
「なるほど...面白い!」
聞き終わった後、指ごと指輪を飲み込んだ。
体内で力が駆け巡る。耐えきれないというのは納得だった。
だが...これなら...
暴れだしそうな魔力を精神力でねじ伏せる。
それはもう、人に非らざる魔なる者だった。
「あなた...何を...!?」
「...いい気分だ...」
「この魔力...ファントム!?まさかあなた、アレも取り込んだの!?」
どうやら、あれは禁じ手だったらしい
持ってかれた右腕を魔術で生やし、焦る大賢者を尻目に再び戦場へ飛び去った。

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魔法譚 死にたくない魔法使い2

突然、身体を丸めるようにして苦しんでいた少年が、耳を塞ぐのを止めて姿勢を正した。
「僕はさ……、ただ願っただけなんだよ。『死ぬのが怖い、死ぬのは嫌だ』って。それだけなんだ。そしたらあの人は、僕に言ったんだよ……」
少年の頭に、『大賢者』と出会ったときの会話が思い出される。

『少年、死ぬのが怖いと言ったな?』
「うん、言った」
『そうか、ところでお前さん、自分を怖いと思うか?』
「いや、思わない」
『そうか、それは幸せなことだ』
「そうなのです?」
『ああ、世の中には、自分自身が怖いなんてことを言う奴だって居る』
「それはまた奇妙な。どんなに怖がったって自分からは逃げられないでしょう?」
『死もまた、決して逃げられないことさ』
「そりゃあ、運命による死はそうでしょう。けど、何か悪いものが僕を害して、そのせいで勝手に死なされる、それが怖いのです」
『ふむ、……それなら少し……、いや、よそう。結局はお前が決めることだ』
「何の話です?」
『いや、「お前は幸せ者だ」という話だよ。さあ、これをくれてやろう。後はお前と、お前の願いが決めることさ』

少年は懐から小さな白い何かを取り出した。それは、『骨片』。何かの生き物のどこかの部位の、ほんの小さな、少年の指の長さほどの骨の欠片。
「つまりはさ、何も分からないから怖いんだ。いつ来るのか、そもそも何なのか。未知こそが恐怖の正体なんだよ。なるほど確かに僕は僕を怖がらない。その答えが『自分』ならさ……」
少年の姿と服装がが少しずつ、変化していく。
「少しハ、マシなんじャア、無いカナ?」
あまり高くなかった背丈は、いつの間にか大の大人さえ軽く見下ろせるほどのものになっていて。ボロボロの黒いローブから覗くは、骨だけの腕と顔面。トレードマークの大鎌こそ持ってはいないが、その姿は確かに『死神』だった。

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魔法譚 死にたくない魔法使い

ある時ある場所にて。その少年は、友人数名と学校からの帰り道にいた。
少年がふと気付くと、道の脇に一匹の黒猫がいた。
「あ、ネコ……」
「ネコ?どこに?」
「ねこはいます?」
「ミームか?」
どうやら少年以外には見えなかったらしい。その黒猫が、とても不自然なことなのだが、ニタリと笑った。さながら、童話に書かれたチェシャ猫のように。
「……ごめん。今ちょっと急に用事ができた」
「お、また用事か」
「お前よく用事召喚するよな」
「なに、今更止めやしねーよ。さっさと行ってきな」
「うん、ありがとう。それじゃ、また明日」
少年は友人達と別れて、黒猫とは反対側に、体力不足故にときどき歩きつつも、走りに走った。そして、三方を塀に囲まれた行き止まりに行き着いた。
『クックックックックッ………。わざわざこんな始末しやすい場所に来てくれるとは、何とも親切じゃあないか、魔法使い様ヨォ?』
先程の黒猫が現れ、話しかけてきた。しかも、人間のように二本足で器用に歩きながら。
「うう、何なんだよお前ら……。確か、ファンタズムとか何とか……」
『阿呆。ファントムだ。お前らはそう呼んでるんだろう?え?』
「そうそれ。何で僕ばっかり虐めるのさ……。せっかく人間からのいじめも無くなって友達もだんだんできてきたっていうのに……」
『そんなこと知ったことか。さて……』
いつの間にか周りの塀の上には、何匹ものネコが集まっていた。
『冥土の土産に名乗ってくれよう。我こそは猫を統べる〈ケットシー〉!闇に生きる王、不可解の魔獣!これから貴様を殺す者なり!』
ケットシーが周りのネコに呼びかける。
『さあお前達!歌え、【人を殺す歌】!死肉は好きにくれてやる!』
その合図と共に、ネコ達が一斉にニャアニャアと鳴き出した。何十、何百と重なり、不快なハーモニーを生み出すその鳴き声に、少年もたまらず耳を塞ぐ。
「うう、頭痛がする……吐き気もだ……。何だよこの鳴き声……。一体何匹居るんだよ、このネコ共は」
『お前には知る必要の無いことよ!しかしこれだけは教えてやる!この歌は音の重なり合いによって特殊な周波数を生み出し、貴様らのような人間の脳味噌と肉体を直接に殺す、必殺技なのだ!魔法を使うといったところで、所詮は人間!このままくたばりやがれェッ!』

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魔法譚 〜開幕篇

「…中止になった最後の公演をしたい」
目の前の1人の少女は、力強く言った。
「本当に、それで良いのかい?」
これで確定させちゃったら後には戻れないよ?とわたしは尋ねる。
「いいの、これがわたしの叶えたい願いだから」
少女は毅然と答えた。
「ふーん、そうなの」
じゃぁ分かった、とわたしは答えて、1つ指を鳴らした。
すると、宙に1冊の軽そうな本が現れた。
落ちてきた本を手で受け止めてから、わたしは少女にそれを手渡した。
「はい。ご注文の品だよ」
少女は作られたばかりのマジックアイテムを恐る恐る手に取った。
「…これ、どうやって使うんです?」
少女は本をパラパラしながら呟く。
「そんなの、わたしにも分からないけど?」
「え」
わたしの回答に、少女はフリーズした。
「…まぁ、分からないって言っても、そのマジックアイテムで魔法を使う方法とか、使える魔法の種類が分からない程度だからね。変身機能は念じれば使えるってのは分かってるでしょ」
相手が勘違いしないように説明したが、少女は呆然としたままだった。
「…とりあえず、色々と試してみると良い。どんな魔法が使えるのか、どうやったら魔法が使えるのか」
キミの望みを叶えられる魔法が使えることは確かなんだから、とわたしは諭した。
…暫くの間、少女は手の中のマジックアイテムを眺めていたがふと顔を上げた。
「…ありがとうございます」
そうかい、まぁ頑張って、とわたしが答えると、少女は一礼してその場から去っていった。

「…最後の公演をしたい、か」
少女の後ろ姿を見届けてから、わたしはぽつりと呟いた。
「やっぱり、人の願いは十人十色だね〜」
だから面白いんだけど、とわたしは1人笑う。
「そういや、この国では今日、願い事を短冊に書く行事があるんだっけ」
そんな夜に、短冊に書かれた願いを文字通り叶えてやるのも面白いかもしれない。
…なら。
わたしは日傘片手に地面を蹴り上げ、舞い上がった。
…どこかにいる、魔法使いの“原石”を探しに行くために。

待ってくれていた方、お待たせしました。
企画「魔法譚」の開幕です。
7月10日24時まで、のんびりと楽しみましょう!

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魔法譚 〜開催前夜

知ってる人はこんばんは、初めての人ははじめまして。
テトモンよ永遠に!改め、“魔法の伝道師”大賢者の代弁者です。
早くも企画「魔法譚」(読み:まほうたん)のスタートが、明日に迫ってきました。
…え、なにそれ?って人もいると思うので、ここで改めて企画の概要説明をしようと思います。

文明の発達により、非科学的なものがほとんど否定された現代。
だがそんな世界で、“魔法の伝道師”大賢者は魔法を扱う素質があるコドモ達に、願いを叶えるための魔法の道具“マジックアイテム”を作り与えていた。
大賢者によってマジックアイテムを手渡された人々、“魔法使い”は、その命を狙うバケモノ“ファントム”とマジックアイテムの変身機能を使って人知れず戦っている…

そんな世界を舞台に、魔法使い達のお話を詩や小説という形でみんなで作って楽しもう!というのが、この企画の概要です。
(詳しくはタグ「魔法譚」から「企画概要」を見てね)

企画の参加方法は、自分の作品に「魔法譚」のタグを付けるだけ!

投稿作品は詩でも小説でも何でもOKです!
三人称や魔法使い視点じゃなくても、大賢者視点のお話も良いですよ。

開催期間は、7月7日21時〜7月10日24時までです!
あと予定ですが、企画終了後に企画「魔法譚」のまとめを作ろうと思っているのであしからず。

細かいこと(用語解説など)はタグ「魔法譚」から「企画概要」や「用語解説」を見ることをおすすめします。
あと、質問や気になることがあったら、どんなことでもレスからどうぞ。
初めての企画なので慣れないところもありますが、頑張って進めていきたいと思います。

皆さんのご参加、楽しみに待っています。