回復魔法のご利用は適切に!_1
始業開始のチャイムが聞こえた。
「あぁあ…そ、そろそろかなぁ…」
銀色の髪の毛を指に絡ませて呟いた少女_シオンは二学期からこの私立中学校へ通うことになった転入生である。転入という経験は初めてのことで、彼女は妙に緊張していた。
「…ふぅ」
そっと息を整えると、ちょうど担任がシオンを紹介したところだった。
『_では転入生を紹介します。どうぞ』
担任の声と共に教室のドアが魔法によって開く。
「!はい!失礼します」
大きな返事をしてシオンは一歩を踏み出す。_と、その瞬間だった。
「いたっ!」
シオンはドアの枠に頭をぶつけ、思わず悲鳴をあげる。……教室が静まり返った。痛みと空気感に耐えられず俯いたシオンに、担任は声をかける。
「…大丈夫ですか?」
「…大丈夫です」
シオンは緊張で失念していた。自分の身長がとても高く、大体の建物は入るときに頭を下げなければならなかったことを。