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黑翆造物邂逅 Act 19

「そ、そそそそそんな、お前だって人工精霊の癖に人間みたいに振る舞ってるじゃねーか‼︎」
なんなんだよマジで!とナツィはそっぽを向いたまま声を上げた。
「第一なんで俺のこと知らねーんだよフツー魔術の界隈にいたら知ってんだろ!」
数百年を生きる“黒い蝶”だってのに!とナツィは続ける。
「…なんで、なんで怖がらなかったんだよ」
こんな奴なのに、と一通り思いを吐き出したナツィは最後にポツリと呟き、かすみの方をちらと見る。
その顔は、まだ赤くなっていた。
かすみは目をぱちくりさせてから、それは…と口を開く。
「やっぱり、他人には優しくするものだから?」
かすみはにっこりと笑う。
ナツィは呆れたように、なんだよ…とこぼした。
「そんなのただのお人よしじゃん」
「でもいいんだ」
そうでもしないと、自分の中にはなにも残らないから、とかすみは返す。
ナツィは静かに前を向いた。
「変なの」
ナツィはポツリと呟く。
それを聞いてかすみはナツィの左隣へ移動し、その手をそっと取った。
「行こう」
ずっとここにいる訳にはいかないし、とかすみはナツィに笑いかける。
ナツィは少し頬を赤らめさせて、す、好きにしろ…とそっぽを向く。
かすみはナツィの手を少しだけ握りしめた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑰

「じゃあ、異能力を解除して」
黎の言葉に耀平は、え、と驚く。
「それじゃおれ達は…」
「いいからお願い!」
霞‼と黎が声を上げた時、分かった!と霞さんが言った。
その途端、辺りの霞がなくなり、元の通りの細道が現れた。
元のように周囲を見ることができるようになったヴァンピレスは、にやりと笑っていつの間にか出していた具象体の白い鞭を振るおうとする。
しかしそんな彼女に向かって中身が入った状態のペットボトルがわたしの後方から真っ直ぐに飛んできて、ヴァンピレスの額に直撃した。
「あうっ」
ヴァンピレスはそううめくと、額を手で押さえながらその場にしゃがみ込む。
「だ、誰ですの…?」
わらわにペットボトルなんて…とヴァンピレスは顔を上げる。
わたしも彼女が目を向ける方を見ると、紺色のパーカーのフードを目深に被った少年、黎が立っていた。
「まさか、貴方…」
ヴァンピレスはふらふらと立ち上がると、黎に向かって具象体の白い鞭を向ける。
黎はかすかに後ずさり、ヴァンピレスは思い切り具象体を振り上げようとした。
しかし、そんな彼女の後ろから、させるかぁーっ‼という叫び声が聞こえた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑪

「あの子は昔から明るくて、何だかこんな僕にも良くしてくれるから、すごく嬉しかった」
だから僕も、人が怖くなっていったんだろうね、と霞さんは言った。
わたしや師郎は黙ってそれを聞き、隣のベンチに座るネロと耀平は静かにこちらを見ている。
黎もちらと霞さんの方を見る。
「ま、そういう訳で僕は変われたんだ」
霞さんは微笑んだ。
わたし達はそんな霞さんの事を見ているばかりだったが、やがて彼はさて!と呟く。
「そろそろ日も暮れてきているし、帰る事にしようか」
霞さんがそう言ってわたし達に背を向けると、え~もう帰るのー‼と耀平が不満気に声を上げる。
霞さんはそうだよ~と振り向いた。
「君達だって、そろそろ帰り始めないと親に心配されるでしょ?」
「まーそうだけど…」
耀平は不満気な顔をするが、霞さんはじゃーあー、と彼に近付き顔を覗き込む。
「僕の事、寿々谷駅まで送ってくれない?」
その言葉に、耀平の顔がパッと明るくなる。
「え、いいの?」
「うんもちろん!」
ギリギリまで一緒にいたいし~と霞さんは続けた。
「やったぁ!」
耀平はそう言って嬉しそうに立ち上がる。
霞さんはふふと笑った。