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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 7

「…でも、ぼくのかつての戦友に手を出そうとする奴は許せないなぁ」
サタンはそう言って右の人差し指を茂みの中に隠れていた天使に向ける。茂みの中にいた天使は驚いて身構えた。
「貴様、何を…⁈」
その天使が言い終わる前にサタンの指先から閃光が放たれる。その光は天使の胸元に向かって真っ直ぐ伸び、天使を一気に吹き飛ばした。
「なっ⁈」
他の天使たちは驚いて後ずさる。吹き飛ばされた天使は大木にぶち当たりうっとうめいて気絶した。サタンはちらと他の天使たちの方を見る。
「…その権能、まさか⁈」
天使たちが弓矢を構えると、サタンはうへへへへと笑う。
「そう、そのまさかさ」
サタンはそう言って指先を向けるとそこから光線を撃ち出す。天使たちはバッと飛び上がってそれを避けた。光線は近くの木々にぶつかりその表面を焦がす。
「なんでコイツがこんな所に⁈」
「おいおいマジかよ…」
「とにかく、やるよ!」
飛び上がった天使たちは口々に言いながらも弓矢を構える。しかしサタンはニヤリと笑って右手を天使たちに向けた。
「このぼくに立ち向かおうとはいい度胸だね」
…それでも、とサタンは指先を光らせる。
「君たちに、負ける訳にはいかないんだ!」
サタンはそう言って指先から光線を撃ち出す。光線は空中で3つに枝分かれして天使たちの心臓近くに当たった。
光線を喰らった天使たちはそのまま力なく地面に落下する。サタンはその様子を見届けると、いつの間にか人間態に戻っていたアモンの方を見た。

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少年少女色彩都市・某Edit. Modeling Master Amenonuboko その④

「うさぎさんはこっちにおいでー……」
うさぎさんを左手に抱え、もふもふを堪能しながら直方体を生成する。
「ちょっとインスピレーション、湧いてきたなぁ。少し工夫してみようか」
直方体を薄っぺらく潰し、長ーく引き延ばし、先端を尖らせて、おまけに柄も付けちゃう。そうだ忘れてた。側面は斜めに削って……。
「はい完成、ちょっと雑になったけど強そうな大剣。くらえー」
回転させながら射出したそれは、上手いことエベルソルの肩の辺りに突き刺さった。
「次はー……こんなのはどうだろ」
新しく生成した直方体を、今度は思いっきり細長く引き伸ばす。頂点を増やし、形を微調整しながらできるだけ綺麗な円柱に仕上げ、先端にもう一つ小さな直方体を引っ付けて、少しこねくり回して……。
「よしできた。ジャベリン、ごー」
完成した槍も、奴に向けて飛ばす。これは前肢に上手く命中した。
「次は……斧とかどうかな?」
柄にするための直方体と刃にするための直方体。二つを適当にいじくり回して、合体させて、接合部を違和感が無いように微調整して、あっさり完成。
「そーれ飛んでけー」
放物線を描いて飛んでいった戦斧は、重心の偏りから自然に回転を始め、奴の背中にぶつかって弾かれた。
「……あれ? 背中……もしくは胴体がそこそこ硬い感じかな? じゃあまずは肢を削って動きを封じるのが良い感じかな」
次は何を作ろうか考えていると、巨大な白蛇が現れた。これも新人くんの描いたものだろうか。その首には一般市民の人がしがみついている。
「ここの人が中にいました! 助け出したんで、チャリオットで安全な場所に連れて行こうと思うんですけど」
扉の吹き飛んだ玄関から出てきた新人くんがこっちに呼びかけてくる。
「保護は私がやるよ。新人くんはエベルソルをお願いできる?胴体が硬くて、脚はそれほどでもない感じだから参考にして」
「分かりました!」

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 6

「ん、ンなワケねーよ」
「嘘つけ〜」
サタンはアモンの前に回り込んでからかう。
「本当はぼくのことが好…」
そう言いかけた所でアモンはバッとサタンの口を塞ぐ。サタンはもごもご言いながら抵抗するがシッとアモンが人差し指を立てたことで動きを止めた。
「…何かいる」
アモンがそう呟いて辺りを静かに見回す。サタンも周囲に目を配ると、確かに何かの気配を感じられた。
「これって…」
「ああ、これは…」
2人がそう言った時、少し離れた茂みの中から矢が飛んできた。
「⁈」
2人は咄嗟にそれを避ける。そしてアモンは腰に帯びている長剣を矢が飛んできた方に向けて投げた。すると茂みの中から白い独特の制服と白い翼を持ち、弓矢を携えた天使が飛び出してきた。
「やっぱり天使か‼︎」
アモンはそう声を上げて蛇のような尾を持つ狼の姿に変身し、茂みの中にいた天使に飛びかかる。しかし天使は空中に飛び上がって避けた。
「‘}+<=!」
アモンは唸って口から火炎を吐くが、そこへ上空から矢がいくつも降ってきた。
「⁈」
アモンは即座にそれを避ける。上空を見上げると先程倒した天使たちが舞い降りてきた。
「…やっぱり、仕組まれてたんだ」
サタンは上を見上げながら呟く。
「君を街中から森に追い込んで、逃げられなくしてから倒す…」
下っ端天使らしいやり方だねとサタンはこぼす。アモンは静かに頷いた。

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 5

天使たちと接触したサタンとアモンが街外れから逃げ出してから暫く。
2人は街から離れた森の中を歩いていた。
「ねーどこまで逃げるの〜?」
のんきに尋ねるサタンに対しアモンは仕方ねぇだろと返す。
「アイツらは諦めが悪いからな」
できる限り逃げないと、とアモンは呟く。サタンはふーんと頷いた。
「…ねぇ」
不意にサタンが話しかけたので?とアモンは聞き返す。
「君さ、例の“反乱”の後どうしてたの?」
その言葉にアモンはぴたと足を止める。
「…なぜ今さらそれを」
「いや〜だってぼくと会うの久しぶりじゃん?」
ずっと何してたのかな〜ってとサタンはアモンの前に回り込む。
「…別に」
テメェに話すことはないとアモンはそっぽを向く。
「えーぼくたちちょー仲良しだったじゃーん」
冷たいなぁとサタンは笑うが、アモンは嫌そうな顔をした。
「…テメェに語ることはねぇよ」
アモンはそう言って歩き出す。あーちょっとーとサタンもその後に続く。
「て言うかテメェ今まで何してたんだよ」
あの反乱の後急に俺の前から姿を消しやがってとアモンは呟く。サタンはいやーちょっとねと頭を掻く。
「ぼくあの後天界に連行されちゃってさ」
それで色々審理を受けてたんだよねーとサタンは続ける。
「で、その結果こっちに来たっていう」
「あっそ」
アモンは適当にそう返した。
「…もしかしてぼくがいなくて寂しかった⁇」
サタンの言葉にびくりとアモンは反応する。

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Daemonium Bellum RE 〈企画要項〉(再掲)

どうも、企画「Daemonium Bellum RE」の企画者です。
開催期間も折り返し地点に辿り着いたので、ここで企画要項の再掲を行いたいと思います。
という訳で、以下は要項です。

どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「Daemonium Bellum RE」。
天使と悪魔が人間を巻き込みつつ抗争を繰り広げる世界を皆さんに描いてもらおうという企画になっております。
開催期間は3/1(水)15:00から3/29(金)24:00までです。
参加方法は公序良俗と設定を守った上でタグ「Daemonium Bellum RE」を付ければOK!
作品の形式・個数・長さは問いません。
ちなみに当企画は2022年5月に開催した企画「Daemonium Bellum」の復刻版になります。
あの頃より賑わっている(かもしれない)ポエム掲示板なら盛り上がるかもしれない…!ということで設定をパワーアップさせました。
もし企画「Daemonium Bellum」が気になる方がいたらまとめがあるので探してみてください(宣伝)。

設定はタグ「Daemonium Bellum RE」かぼくのマイページから探してやってください。
ちなみに今回は激ムズ企画で参加者は1人2人になるだろうと思ったら、参加者が自分以外に6人出たのでびっくりしました。
…天使と悪魔って、モチーフにしやすいんですかね?
もちろんここからの参加も歓迎していますので、参加したい方は気軽にご参加ください。
何か質問などあればレスお願いします。
では、皆さんのご参加待ってまーす!

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視える世界を超えて エピソード6:月夜 その⑪

「よく頑張ったね。君、立てるかい?」
しかし種枚が少女に向けた言葉と口調は飽くまで優しいもので、少女はすぐに緊張を解き、自分の身体を見回してから、首を横に振った。
「そうか、なら家まで送ろう。未成年の夜遊びはよろしくないからね」
「……ありがとう、ございます」
少女に背中を向けると、少女は身体を引きずるようにして種枚の肩に縋りついた。
「よし、道案内は頼むよ。おい馬鹿息子、刀の方はお前に任せた」
「いや初対面の子の目の前でその呼び方マジでやめてくださいって……」
2人は少女の指示に従って彼女の自宅に向かう。到着した場所は広大な敷地面積を誇る平屋の日本家屋であった。
「ここです。……もう、大丈夫です。ありがとうございます……」
少女は自分から種枚の背を下り、鎌鼬から受け取った刀に寄りかかりながら、最後に二人に向かって1度頭を下げ、足を引きずって入っていった。

「……しかし、良い子を見つけたな」
それからも街中を駆けては怪異を狩り続ける種枚だったが、ふと思い出したように呟いた。
「良い子って……あの子ですか? 刀の?」
「そう。……あの子は、『金』かな」
「きん? ゴールドですか?」
「いやァ……? キヒヒッ、これからもう少し素敵になるぜ」
次の獲物を求めて再び駆け出した種枚の眼は、既に金色に輝く人外のそれだった。

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視える世界を超えて エピソード6:月夜 その⑩

「勝っ…………た……?」
少女は放心しつつ呟いてから、緊張の糸が切れたかのように倒れ込んだ。
風化を解除した鎌鼬が少女に近寄り、その背中をつついたが、反応は皆無であった。
「わー……完全に気ぃ失っちゃってますよこの子。師匠ぉー?」
怪異の死骸の方に呼びかけると、その後ろから先ほどまで怪異を捕えて動かないよう止め続けていた種枚が顔を出した。
「まァ、こんなデカい仕事終わらせたんだ。ゆっくり休みゃ良い」
種枚は死骸に刺さっていた刀を抜き、少女の前に放り投げ、少女の髪を掴んで顔を覗き込んだ。
「…………師匠? まさかその子、食ったりしませんよね?」
数分、微動だにせず少女の顔を眺め続けていた種枚に、鎌鼬が恐る恐る尋ねた。
「あァ? 馬鹿言え、お前じゃ無いんだぞ?」
「いや別に俺も人間獲って食うような真似した覚えは無いッス」
「お前が覚えてないだけだよ馬鹿息子め」
「……え? いや待って師匠? 俺、何かやらかしてたんですか?」
動揺する鎌鼬には反応を返さず、種枚は少女の頬や頭を軽く叩き、身体を揺すり、起こそうとしていた。
「…………ん……?」
しばらく揺さぶられ続け、ようやく少女が目を覚ました。
「起きたかイ。おはよう、お疲れ様」
歯を見せるように笑いかけた種枚に、少女は一瞬怯えたような視線を投げた。髪を乱暴に掴まれ頭を持ち上げられている状態では、致し方ないことであろう。

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり キャラクター集

・堕天使
追放組の堕天使。反逆については自分馬鹿なことやったよなー……くらいの認識。何かもう色々とどうでも良くなって現在は孤独に天使と悪魔の研究をしている。権能は『武器使用の最効率化』。片翼を失って尚その力は衰えず、というか元々そこまで強くない権能であり、雑に言うと武器扱いの品物で発揮する威力が結構高くなり、扱う腕前も強化されるというもの。

・悪魔氏
異形態は鼠色の不定形の物体。スライムみたいな見た目で『首』という概念が無い。また、心臓の代わりに全身の体組織と血管が直接血流を発生させており、『心臓』も存在しない。人間のことは混沌発生器だと思ってるから割と好き。好きだから天使や悪魔のせいで死ぬところはあまり見たくない。天使のことは悪魔を攻撃する分には特に何とも思わない派。でも陣営単位では対立してるから遭遇したら死ぬほど煽り散らす。権能は『人間の死の奪取』。何、大切な人に死んでほしくない? 良いね、優しい願いだ。叶えてあげよう、『死なないだけ』で良いなら。

・天使氏
不幸にも巻き込まれたちょっとかわいそうな天使のひと。対立過激派で堕天使や悪魔を見下し嫌っている節がある。人間のことは守らなきゃいけない存在だと思っているので、人質にされると弱い。権能は『電撃の操作』。ビリビリのバチバチ。

・人間さん
天使氏がいなければ巻き込まれなかったであろうガチでかわいそうなホモサピ。

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その⑨

青年が片手剣を構え、悪魔氏に突撃する。悪魔氏はすぐに不定形の物質に姿を変え、回避を試みる。けれどあまりにも素早い斬撃の連続に変形が間に合っておらず、みるみるうちに床と壁、天井が悪魔氏の血飛沫に染まっていく。
「こ、これはやべェ……再生が追い付いてねェや。ガチで強いなこれ。お前なんでロングソードなんか使ってンだよ」
少し小さくなった鼠色の物質が震えながら言う。
「射程はあった方が得でしょうよ」
「たしかに」
短い会話の後、また青年が斬りつける。鼠色の物質は変形による回避を止め、部屋全体を飛び跳ねるようにして回避を試み始めた。これによって悪魔氏の回避率はだいぶ向上したように見えるが、それでも先ほどの7割程度の攻撃は継続して直撃しているように見える。
「あッ」
しばらく跳ね回っていると、悪魔氏が素っ頓狂な声をあげて扉に激突した。そこに青年が斬撃を加えたことで、勢いで扉が吹き飛び、悪魔氏が室外に押し出された。
「あっ」
「お前……鍵くらい掛けとけよなァ」
「してたのに壊れたんですけど」
「そっかー。ンじゃ、開いたから取り敢えずそこのカワイソーなヒトカスは追い出して良いか?」
「天使さんごと放り出しといてください」
「アイよ。危ねーから天使の方の拘束は放置で良いか」
「そうですねー」
青年が私に近寄って来て、手足の拘束を片手剣で切ってくれた。
「それじゃ、お帰りくださーい。あなたの住んでる町は東に歩いて半日ほどなので」
青年と悪魔氏に見送られながら、その部屋……というか小屋を後にした。

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厄災どおる:設定④

・“疱瘡神”イユ
性別:女性  外見年齢:10歳  身長:136㎝
人形の材質:純鉄  悪意:殺意
災害:とある伝染病  能力:動物を対象とした病的ダメージ
説明:最古の“厄災どおる”。今はもう撲滅されたとある伝染病が国内に蔓延していた頃に生み出され、それからずっと人間のために働いてくれている。彼女を生み出した呪術師は既に死んでいるが、その人が「これからは人間のために生きなさい」って最初に言ってきたので、自分が死ぬまでは人間のために尽くす。
頑固だが融通は割と利き、そして飽きっぽいという何とも言えない性格。しょっちゅう「殺す!」って言うし言った以上は殺そうとするけど、基本的にプラスチック製の玩具のバットで背中とかを引っ叩いてくるだけなのでそこまで危険ではない。
戦闘面においては耐久力に優れ、能力を発動すると周囲の動物(ホモサピはサル目ヒト科やぞ)やどおるは全身から血を噴き出して衰弱し動けなくなる。別に病気になるわけでは無く、単純にその症状に襲われるというだけ。件の伝染病の治療薬と同じ成分で症状の治療自体はできるので、彼女の為だけに治療薬が今も少量製造され続けている。
ちなみに愛称の「イユ」は「癒ゆ(いゆ)」が由来。

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厄災どおる:設定③

・国定呪術師
封人形を用いて“厄災どおる”を生み出し、どおる達を世話したり災害に対処したりする職業。そこそこ難易度の高い試験とそこそこ長い研修期間を経てようやく就くことができる国家公務員。定年は無い。死ぬまで働いてもらわないと困るので。年1ペースで募集され、1度に10人弱が入ってくる。現在の職業人口はギリギリ4桁に届かないくらい。

・国定人形技師
封人形を制作する職業及びそのために必要な資格。呪術的な素養と単純な人形制作の腕が必要な職人系ジョブ。国から補助金も出るので、結構稼げる。公務員では無い。呪術パートが結構危険なので、なりたがる人はあまり多くない。だからこそ国が金出して人員確保しようとしてるわけで。ちなみに呪術の行使は法律で資格が必要と定められている。国定呪術師の中にはこの資格を持っている者も少なからずいる。

・防災省/呪術対策課
“厄災どおる”関係のお仕事をしているお役人さん達の勤め先。防災省は普通に防災対策やらアフターケアやらに尽力し、その中の呪術対策課が“厄災どおる”についての大体の業務を担当している。『発生している』災害しか対象にできない都合上、初動に対してどおるや呪術師の皆さんは無力なので、防災省のお仕事は結構責任重大。彼らが初手で踏ん張ってくれれば呪術対策課とどおる達が全て何とかしてくれます。壊れた国は防災省が何とかしてくれる。

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 3

人々で混み合う市の通りを帽子を目深に被った人物が走っていく。道行く人々は突然人混みをかき分けていく人物に驚きながらそれを避けたり、ぶつかってしまったりする。上空からの天使の追跡を逃れるように逃げていくその人物はいつの間にか人気のない街の外れまで来ていた。
「…」
帽子の人物は周囲に人がいないことを確認すると、ホッとしたように近くの壁に寄りかかる。しかし突然、ねぇと話しかけられて帽子の人物はビクッと飛び跳ねる。
帽子の人物が声のする方を見ると、地上では中々見られないような白い外套を着て頭巾を目深に被った人物が立っていた。
「やぁ」
「て、テメェ」
何者だと帽子の人物は後ずさる。白い外套の人物はふふふと笑みを浮かべる。
「ぼくは“サタン”」
見ての通りただの堕天使、と白い外套の人物は右手を胸に当てる。
「なんだよ」
一体堕天使サマが何の用、と帽子の人物が言いかけるとサタンは帽子の人物の口に右の人差し指を突きつける。
「今からぼくが君を助けてあげよう」
「は?」
なんで俺がテメェなんかに…と帽子の人物が言いかけた所で不意に上空から声が聞こえた。
「見つけたぞ‼︎」
この悪魔め!と3人の天使が舞い降りてくる。
「うぉやっべ!」
帽子の人物はそう言って駆け出した。サタンはちょっと待ってよ〜と引き留めようとしたが、おいと後ろから声をかけられて振り向く。そこには上空から舞い降りてきた天使たちがいた。
「そこのお前、アイツを知っているのか」
白い制服を着た天使の1人がそう尋ねる。サタンはあーえっとね〜とにやにやする。

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厄災どおる:設定②

・封人形
“厄災どおる”を生み出すための人形。竹の地下茎を切り出し加工した心臓のような形状のパーツに、様々な素材を材料にした人型の人形が抱き着いたような外見をした、凡そてのひらサイズ程度の人形。
人型部分の材質は、生み出された“厄災どおる”の強さに影響する。具体的には身体能力と防御力、精神性あたり。どう影響するかと問われるとちょっと困る。割と色んな影響の仕方をする。
特別な名称があるわけではないが、説明時に呼称は必要なので取り敢えず『封人形』『封印人形』と呼ばれることが多い。

使い方は簡単。災害が起きた時に災害の中心あるいは元凶に投げつけたり押し付けたりするとあら不思議、災害は収まりそこには幼い少年少女が。この行程は道具などを用いて間接的に行っても良いです。
生み出された直後、“厄災どおる”は大抵の場合自我が十分に発達していないので、人型になる前と変わらず暴れようとします。封人形を使用した呪術師が直々に追加で呪術的エネルギーを注ぎ込むか、既に人類の味方をしているどおるがボコボコにして(大抵の場合相手が強すぎて人間には太刀打ちできないので)どっちが上か分からせてから追加で呪術的エネルギーを注ぎ込んで仲間にしましょう。封人形に込められた呪術によって、どおるは大人しくなって呪術師の言うことを聞くようになります。

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厄災どおる:設定①

・“厄災どおる”
様々な災害(天災、地災、人災すべて含む)を、専用の人形を核として人型に凝縮した存在。
基本的には小学生~大きくても中学1、2年程度の幼い子どもの姿をしており、その男女比はおおよそ男3:女97(1d100で決めた。思った以上に女の子ばっかりで草)。
大規模な災害によって生じるエネルギーが小さな身体に封じ込められているので、体温は高い。最低でも37度台はある。ぽかぽか。
心臓部分には封人形(後述)が入っており、血液の代わりに微妙に粘度の高い透明な液体が体内を流れている。心臓型のパーツが特に意味も無く拍動しているため、脈拍もある。
肉体の成長は起きず、呼吸や食事や睡眠は必要はないが気分で摂る。でも発声のためには必須だから呼吸は大体してる。
ダメージは封人形にも反映され、一度体内から封人形を取り出し人型部分を修繕してから元の位置に戻せば身体もまた治る。それ以外の方法では回復せず(一応体内液の粘度のお陰で時間経過で出血は勝手に止まる)、体内液が切れたり封人形の心臓部分が破壊されたりすると死ぬ。
己の元になった災害を特殊能力として利用することができる。
また、元々人類(それ以外も)を害する存在だったのが無理やり封じられている状態なので、その表れか口が悪い。具体的には言葉遣いに悪意だったり殺意だったり見下していたりの悪感情が含まれているように感じられる。でも呪術的に制限されているので人間のために働いてくれるし人間に悪さすることは無い。能力発動中に偶然範囲内にいた奴の事は知らん。戦闘前に退避しろ。

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厄災どおる:世界観

よりにもよって3月11日になる3時間前に思いついてしまったため、流石に投稿はどうなんやってなったやつ。別に企画って訳じゃないけど取り敢えず設定だけ書こうね。使える人がいたら勝手に使っても良いよ。

舞台は現代、とある災害大国。現実で言うところの日本語と全く同じ言語文化をしているだけの架空の国家です。小さな島国でありながら複数のプレートの境界上に存在し、気流・海流・周辺地形も複雑に絡み合った結果である、『我が国の特産品は災害である。唯一の欠点は輸出できないことだ』というブラックジョークがあるほどの多種多様な災害件数と、それへの備え、対災害技術は世界でも有名である。
さて、この国において主流のアニミズム的多神信仰において、疱瘡神、疫病神、貧乏神等をはじめとした『人間にとって害になる現象』を擬人化・神格化し、鎮めることでその影響を受けないことを間接的な『利益』として享受してきた歴史がある。
ここに注目し、様々な災害を子供の姿に封じ込め、大規模被害の防止及び人間のために活用しようと確立された半呪術的存在が、“厄災どおる”である(残り半分は防災科学)。
※ちなみにどうでも良いことだけど、どおるによって例のジョークにある「輸出できない」という問題が消えました。国力とか戦力(実力)とか外交とかそういう問題がヤバい。外交関係のお役人さんは頑張ってください。

ところで話は変わるんだが、福島土産に「ままどおる」ってお菓子があるじゃないですか。あれ美味しいですよね。いや特に意味は無いんだが。

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 2

昼、日が1番高い所へ昇り切った頃。
日干し煉瓦でできた建物が立ち並ぶ、小さな街の広場で開かれている市で、外套を身に纏い頭巾で顔を隠した2人組が人混みをかき分けつつ歩いている。
「人、多いね」
天界の天使より多そうと紫髪の堕天使が呟く。
「そりゃそうだよ」
この世界は天使より人間の方が多いんだから、と隣を歩く金髪の天使が答える。ふーんと頷きつつ紫髪の堕天使は辺りを見回す。市を行き交う人々は天界の天使や地上の悪魔たちに比べるとみすぼらしい姿をしているが、どこか力強さを感じさせる雰囲気を纏っており、市は活気に溢れていた。
「…意外と、天使が秩序で地上を平定しなくてもみんな幸せそうだね」
紫髪の堕天使が何気なくそう言うと、金髪の天使はもちろん!と笑う。
「案外人間っていうのは強いから…」
金髪の天使がそう言った所で、2人の間を無理やり通るように帽子を目深に被った人物が駆け抜けていく。2人が思わず通り過ぎていった人物が向かった方を見た時、いたぞ‼︎と上から声が飛んできた。見上げると、3人の白い制服を着た天使たちが市の通り上空を飛んでいった。
「今のって…」
金髪の天使が紫髪の堕天使の方を見ると、紫髪の堕天使は先程の帽子の人物が駆けていった方を見ていた。
「ぼす?」
「ねぇ“べべ”」
金髪の天使が紫髪の堕天使のことを呼ぶと、紫髪の堕天使は振り向かずに呟く。
「ぼく、ちょっと行ってくる」
「え?」
べべと呼ばれた金髪の天使がポカンとする中、紫髪の堕天使は帽子の人物が走っていった方に向かって駆け出す。
「ちょ、ちょっとぼす〜」
べべもその後を追いかけ始めた。

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少年少女色彩都市・某Edit. Modeling Master Amenonuboko その③

「おい、離れろエベルソル!」
新人くんがエベルソルに叫び、チャリオットから飛び降りながらガラスペンで何かを描き始めた。奴がアパートに半分入り込んでいる状態だから、馬や戦車は使いにくいんだろう。私の戦闘スタイルも広範囲を巻き込みやすいから狙いにくいな……。
「……でも、急がなくちゃ駄目だもんなー」
ガラスペンで小さな立方体をモデリングし、エベルソルにぶつける。表面が硬そうだったから反応するかは微妙なところだったけど、幸運にも奴は屋内に侵入しようともがくのを止めて、こちらを向くためにその首を引っ張り出した。
眼も鼻も耳も無い、大顎だけの爬虫類みたいな頭部がこちらに向けられる。それとほぼ同時に、新人くんが描いたのであろう可愛らしいうさぎさんがその頭部に飛びついた。
「あっうさぎー」
「ウサギは小さくても脚力に優れたパワフルな草食獣です!」
「そっか……お、これは都合が良い」
エベルソルがうさぎさんを振り解くために暴れ、アパートから離れて地面に下りた。
「新人くん、君はまず中の様子を確認して。要救助者がいないかとか」
「え、あっはい。そうだ、今なら軍馬も戦える!」
新人くんがそう言うと、チャリオットに繋がれていたままの馬たちから馬具が消え、エベルソルに一斉に突撃していった。
「では、ちょっと離れます!」
「うん、こっちは任せてー」
馬たちと協力してエベルソルの気を引いている隙に、新人くんは奴の脇をすり抜けて件の部屋に行くために階段を駆け上っていった。

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その⑦

青年が悪魔氏に斬りかかる。悪魔氏はまたあの鼠色の不定形に姿を変えて回避しようとしたが、青年の斬撃はあまりにも素早く、不定形の物質を真っ二つにしてしまった。
断面から、真っ赤な血のような液体があふれ出る。悪魔も血は赤いのか。
「あがぁ……おい片羽根ェ、テメェ強いな」
「お褒めに与り光栄です。どうです? 死ねそうですか?」
「生憎と首も心臓も斬られてねェからなァ……どっちか消し飛ばしてから言え」
「どちらかと言わず、全身消し飛ばされたらどうでしょう」
「アー、死ぬかも。やってみろ……ッとその前に」
物質が一度悪魔氏の姿に戻り、椅子ごと私を蹴り倒してしまった。
「流石に巻き込まれて死なれても寝覚めが悪りィ」
「天使さんはどうします?」
「それは運が悪かったということで」
「了解です」
2人は戦闘を再開させた。決して広くはないこの部屋の容積、それをほぼ目一杯に使って、壁や天井すら足場として蹴りながら乱闘している。
時折彼らの戦闘の余波が天使氏に向かい、その身体を少しずつすり減らしていくが、天使氏もすぐに再生していくから、短剣が刺さったままの口以外に外傷は残らない。
もう何十度目かという青年の放った斬撃が壁に深く痕を残し、悪魔氏がその傷を足掛かりに壁を駆け、彼我の距離を詰める。眼前に迫った悪魔氏を、青年の長剣は既に捉えられない。
不定形の物質が青年の顔に迫ったその時、青年は長剣を手元で回転させ、自分の肩口に刃が食い込むのも構わず異形の悪魔氏を切り裂いた。

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逃鷲造物茶会 Act 1

昼下がり、とある小さな喫茶店の店内にて。
カウンターからエプロン姿のコドモがティーセットを載せたお盆を持ち上げる。
そしてそれを持ったまま窓際のテーブルに向かった。
「ご注文の…」
エプロン姿のコドモことかすみがそう言いつつティーセットをテーブルの上に置いた所で、目の前のイスに座る明るい茶髪の少女がこう言った。
「ここ、いい店じゃない」
突然の言葉にかすみはへ?と拍子抜けする。
「内装といい、雰囲気といい、わたしは好きよ」
少女はそう言うが、かすみははぁ、と返すだけだ。
「あらあなた、ここの店員さんなのに良さが分からないって言うの?」
もったいないわね、と少女は溢す。
「何年ここで働いてるの?」
少女に尋ねられ、かすみはふと宙を見上げる。
「えーと…1年半、くらい?」
かすみは首を傾げながら言った。
「ふーん」
結構長いじゃない、と少女はティーカップに紅茶を注ぎながら呟く。
「まぁ、自分はアルバイトじゃなくてマスターのお手伝いみたいなものだから…」
あんまりここの良さとか考えたことなかったなぁ、とかすみは笑う。
「そう」
少女は窓の外を見ながら頷いた。
するとここで店内のカウンターの向こうに座る店主の老人がかすみの名を呼んだ。
はい?とかすみが振り向くと、店主は2階のあの子たちが呼んでる、と店の奥を指さした。
「あ、分かりました〜」
かすみはそう言うと、じゃあ自分はこれでと少女に一礼してカウンターの方に向かった。

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その⑥

来たる痛みと死に備え、反射的に目を瞑り身体を強張らせる。しかし、肉の潰れるような気持ち悪い音が聞こえるばかりで、恐れていたものはいつまでも襲ってこなかった。疑問に感じおそるおそる目を開くと、私から見て右側、悪魔氏がいた方から伸びてきた鼠色の物体が、青年の長剣を受け止めていた。
「……ッたくよォ…………俺らを『悪魔』と呼んでるのはテメエらだぜ? それをお前、人命救助なんかに使わせやがってよォ……!」
「ようやく出てきたか。それを待っていたんだ。俺の知る限り唯一無二の、『首も心臓も無い悪魔』!」
拘束を易々とすり抜けた鼠色の不定形の物質は、私の前で伸び上がり人型に、あの悪魔氏の姿に戻った。
「なるほどねェ……弱点皆無最強無敵の俺サマをご所望かい。で、その俺をどうするつもりだ?」
「勿論、殺します! あんたを殺せたとなれば、恐れるものはもう無いでしょう?」
「なるほど正論。それじゃ、恐れるものの無くなったテメェは何をするんだ?」
「いや別に……。普通に不可能を可能にする浪漫を追いたいだけですが」
「……そっかー…………。んじゃ、ヒトカスは解放してやれよ。本題は今、テメエの目の前に立ってるぜ?」
「あー、天使のひとの方は気にしない感じです?」
「まあ、うん……天使だし…………」
「了解。それじゃ、本気で殺し合いましょう!」

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少年少女色彩都市・某Edit. Modeling Master Amenonuboko その②

「や、新人くん」
先に待っていた新人くんに挨拶する。新人くんはまだ13歳か14歳程度の細っこい男の子で、濃紺のロングコートを纏っていた。
「ぬぼ子さん、急に手伝いなんか頼んじゃってすいません。今日はよろしくお願いします」
「良いんだよぉそんなに恐縮しなくて。後輩のお世話も私たち先輩の仕事だからね。君も成長したら、自分より後輩の子を助けてあげるんだよ?」
「はい、それじゃあ急ぎましょう。俺が乗り物を用意します」
そう言って、新人くんは素早く空中に何かを描き始めた。流れるような動作で、迷いなくぐいぐいと描き進め、みるみるうちに2頭引きのチャリオットを完成させてしまった。
「ほら、乗ってください」
「うん……動物描くの上手いねぇ」
言いながら、恐る恐るその戦車に乗り込む。初めて乗るチャリオットはなかなかアンバランスで乗り心地が悪かった。もちろん、口にはしないのだけど。
「では、行きますよ!」
新人くんが手綱を振るうと、2頭の馬が駆け出し、チャリオットは空を走り始めた。
「うわぁ! 飛んだ⁉」
「ほら、天高く、って言うでしょう?」
「越ゆるのかー」
そもそも今の季節は春では……? まあ良いや。
彼の駆るチャリオットは彩市上空をすごい速度で飛んでいき、あっという間に目的地へ到着した。
外見上はただのアパート。しかしてその実態は、ほぼ全室に腕利きのアーティストが居住、あるいはアトリエとして利用しているという、彩市民の間ではそこそこ有名な芸術家の集まるアパートだ。
そしてその一室に首を突っ込んでいる、大理石みたいな質感のエベルソルが1体。新人くんに任されているだけあってか、そこまで大きいサイズではないみたい。

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Daemonium Bellum RE:堕ちた明星と狼 Act 1

「この者を堕天の刑に処す‼︎」
「お前のせいであんなことになったんだぞ」
「やっぱり堕ちて当然よねぇ」
「さっさとここから失せろ」
「消えやがれ」
「…」
朝、日がそこそこに昇った頃、森の中の古びた屋敷の片隅の部屋にある寝台で、片翼で紫髪の堕天使が目を覚ます。横を向いて寝ていたその人物は、隣に横になってこちらを見ている1対の翼を持つ金髪の天使と目が合った。
「⁈」
紫髪の堕天使は驚いたように飛び起きる。しかし相手はえへへ〜と笑う。
「おはようぼす〜」
金髪の天使は笑顔で小さく手を振ったので、紫髪の人物は気まずそうな顔をする。
「添い寝は恥ずかしいからやめてと言ったのに」
紫髪の堕天使は呆れたように呟くが、金髪の天使はいいじゃーんと続ける。
「ぼすったらすごくうなされてたみたいだし」
傍にいてあげようかな〜と思って、と金髪の人物は起き上がる。紫髪の堕天使は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「…うなされてたってことは、やっぱり処刑される時の夢を見てたの?」
金髪の天使がふと真顔に戻って尋ねると、紫髪の堕天使は静かに俯く。
「やっぱり」
金髪の人物はそう呟くと寝台から降りる。
「あの一件はよく分からないよね」
ぼすなら反乱なんて起こしたりしないはずなのに、と金髪の天使は呟く。
「だからボクは何かの手違いだと思ってるんだけど…」
金髪の天使はそう言いながら紫髪の人物の方を振り向く。
「ぼす⁇」
金髪の天使は紫髪の堕天使がぼんやりしていることに気付いて、思わず声をかける。紫髪の堕天使はハッと顔を上げた。

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ピッタリ十数字・勝手に表彰

どうもナニガシさんです。好き勝手やるならしばらく更新されない週末がチャンスだぜってことで、ナニガシさんが以前開いた企画『ピッタリ十数字』で個人的に惚れた作品を勝手に紹介していきます。


・『ピッタリ10文字』byTohofantasy
貴方に出会えた十文字

習作の時点で遭遇した何か滅茶苦茶気に入ったやつ。レスで会話した内容を引用するに、「僕自身が滅多に浮上しないアカウントであることと、あとは第三者視点でも交わらなかったはずの2人が十文字(=交差点)で交差する感じを両方10文字で表してみました」だそうです。これがエモいってやつなのか? 僕には若者語が分からねえ。

・『朝』by晴結
井の中の蛙は、空がみたい。

何かよく分からないけど何故か異様にというか奇妙にというか何か印象に残って気が付いたらお気に入り登録してたやつ。そういえばお気に入り登録って個数上限あるんすね。

・『ピッタリ十数字』byぞろりく
       昨日

         おはよ >  ●
              ⒎⒛
       今日

  〇 < さよなら
  ⒗⒓

ルールを最大限悪用してくださった作品。すげー!ってなった後に「本当にセーフかこれ?」って冷静になったけど、1回納得させた時点で彼の勝ちです。この企画において恐らく唯一『勝者』を名乗って良い。

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視える世界を超えて エピソード6:月夜 その⑨

少女は既に数十度目に達していた攻撃を終え、再び怪異から距離を取ろうとした。しかし疲労の蓄積は少女自身の想定以上に大きく、後退ろうとした両足から力が抜け、その場に尻もちをついてしまう。
「っ……!」
刀で身体を支え立とうとしたが、肉塊怪異は既に眼前まで迫っており、彼女の足の状態で回避できる段階は過ぎ去っていた。
せめて直接の衝突は避けようと、刀を盾として目の前に突き出し、無意識に両目をきつく閉じ、身体を強張らせる。
しかし怪異が衝突する直前、少女の目の前、まさに怪異が迫って来ていた方向から突風が吹き付け、彼女は吹き飛ばされるままに地面を転がった。
予想していたのと異なる挙動に、少女が恐る恐る目を開くと、肉塊怪異は移動に用いていた短い手足を忙しなく動かし続けていたものの、その移動は完全に止まっていた。
「あ……あれ……? なんで、止まって……」
呆然と怪異の様子を眺めていた少女だったが、すぐ思い出したように周囲を見回す。突風に巻かれた際に取り落とした日本刀は、手を伸ばして届く程度の距離に転がっており、すぐに回収してよろよろと立ち上がる。両脚には既に力が殆ど入らない状態ではあったが、アスファルトに突き立てた刀に寄りかかるようにして、辛うじて怪異の前に立ちはだかる。
(……なんでか分からないけど、アイツの動きは止まったし、私の脚もまだ、ギリギリ動く)
頽れそうになる脚を気力で無理やり動かし、数歩、怪異に近付く。
瞑目し、深く息を吐き、短く息を吸い、再び目を見開く。そして杖にしていた刀の柄を両手で握りしめ、大きく振り上げ、怪異に突き刺そうとした。
「……ッ⁉」
しかし、支えを失ったことで膝の力が抜け、姿勢が大きく崩れる。そのまま倒れ込むかというその時、斜め下後方から吹き上げた突風が、少女の身体を強引に立ち上がらせた。
結果、刺突の勢いは衰える事無く、肉塊怪異に深々と刃が突き刺さった。
怪異は悲鳴を上げるかのように全身を震わせ、身体を激しく上下左右に振り、一度大きく仰け反ってから、再び地面に突っ伏し、動かなくなった。

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少年少女色彩都市・某Edit. Modeling Master Amenonuboko その①

徹夜までして丸二日かけて制作した動画を動画投稿サイトにアップロードし、一仕事終えた達成感で大きく溜息を吐いた。
すっかり冷たくなった缶のカフェオレを飲み干し、大きく伸びをして、何となく辺りを見回す。フォールム本部の休憩室の一つを借りて、第二の作業場として使わせてもらっている、自室以外ではほとんど唯一と言って良い、安心できる居場所だ。
別に対人トラブルがあるわけじゃない。そんな物が無くたって、身内以外の人がいる場所が何となく苦手だってことはあるでしょう?
……そういえば名乗っていなかったっけ。ネット上では『雨野ぬぼ子』の名前で3Dアニメーションの動画を投稿していたりする、彩市在住1X歳のリプリゼントルです。同業のみんなからは『ぬぼ子』の名前で呼んでもらっています。本名っていう個人情報を明かさなくて済むのは有難い。
安心して少しずつ眠気を思い出しつつある頭でぼんやりとスマホのSNSアプリをチェックしていると、メッセージアプリの通知が出てきた。
『ぬぼ子さん、今本部にいますよね?』
同業者……リプリゼントルの1人だ。たしかこの子は少し前になったばかりの割と新人さんだったっけ。
『いるよー』
手短に返信する。
『これからエベルソル退治なんですけど、サポートお願いしたいんですが』
これは困った。今、眠くて仮眠取ろうとしてたところなんだけど……。
まあ、新人さんが力を付けるまでのお世話も、先輩の仕事の一つだし。電源マークをちょっぴり豪華にしたような魔法陣をぱぱっと描き上げ、変身した。
『OK!』というスタンプを送り、休憩室を出る。途中、自販機でエナジードリンクを購入し、飲みながら本部を出た。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 連載開始5周年記念! 作者からのごあいさつ

どうも、テトモンよ永遠に!です。
先日、3月4日をもちまして、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は連載開始5周年を迎えました~!
いやーめでたい(?)ですねー。
これもひとえに皆さんのスタンプやレスのお陰です。
いつもありがとう。

さて、今回はまたですが近況報告をしようと思います。
とにかく最近はてんやわんやでした。
「連載再開2周年記念! 作者からのごあいさつ」でも言った通り、ウチのばーちゃんが生死の境をさまよってたりしましたが、2週間くらい前の日曜日にとうとう亡くなってしまいました。
それで今週の月曜日は葬儀でして、「ごあいさつ」を書き込むことをすっかり忘れてたんですよね…
まぁ無事に見送れたし、「ごあいさつ」も書き込めてるのでよしとしましょう。
あと歳の近い妹が某藝大の受験のため頑張っています。
とりあえずこの間一次試験を突破したので明日あさってで二次試験に挑むそうです。
ぼくは隣で美術予備校や藝大受験の話を聞いてやることしかできないけど、本番の空気に飲まれないでほしいなぁと思ってます(彼女のことだから大丈夫とは思うけど)。

…と、いう訳で今回の「ごあいさつ」はここまで。
次は「20個目のエピソード記念! 作者からのごあいさつ」でお会いしましょう。
ちなみに今はその20個目のエピソードを作りかけで放置してます(笑)
実は「よその小説投稿サイトみたいな所にも自作の物語を載せてみたい!」と最近思ってそっち用に物語を書いてる内に「ハブ ア ウィル」とか「造物茶会シリーズ」の執筆作業がちょっとおざなりになってたんですよ。
「造物茶会シリーズ」は1エピソード分の書き溜めがあるので大丈夫なのですが、「ハブ ア ウィル」の新エピソードは途中で止まっているのです。
一応新エピソードの話の流れはできてるので、あとはそれをアウトプットするだけなんですけどね。
まぁ無理せず頑張ります。
ではこの辺で。
テトモンよ永遠に!でした~

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その⑤

「あんまり待たせないでほしいなぁ……そうだ」
青年は長剣を床の上に放り出し、別のものを手に取った。干からびた枯れ枝のようで、先端は4つに分かれ尖った白い何かが貼り付いている。
「これ、この間あなたの同類から貰ってきたんですよ」
「『奪ってきた』の間違いじゃねえか?」
悪魔氏の返事に彼の方を見ると、頭も両脚も既に完全に再生していた。
「もしかしたらそうかも。まあそんなことはどうでも良くって。同類の腕に切り刻まれるのって屈辱的な気分じゃありません?」
「……いやァ? 俺は別にそーいうの気にしないタイプだしなァ」
「そうですか。じゃ、やりますね」
「バッチ来ぉい」
青年はその枯れ枝……悪魔の腕の爪を用いて、悪魔氏の頭、肩、腹、腿、腕と次々斬りつけていった。血飛沫と内臓が悪魔氏の身体から飛び出していくにも拘わらず、悪魔氏は平然として笑っていた。
「ふーむ……天使の武器も駄目。悪魔の爪も駄目」
「ソラお前、首も心臓も丁寧に外すんだからこっちも何の心配も無く受けられらァな」
「どうすれば本性表してくれます?」
「これもまた俺の本性だよ」
「そう言うの良いんで。……けど困ったなぁ…………あ、そうだ」
青年が腕から長剣に持ち替え、こちらに顔を向けた。
「同じ地上に住む者同士、仲良くしておくれ」
彼の考えに気付く前に、長剣の刃が私の首に迫っていた。

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革命のレイ〜第1話 勧誘〜

「本日の審議はこれまでとする」
議長のその一言に異を唱える者はいない。誰もこの議会に意味を求めていないことはとっくに明確だ。
「今日はどこだったっけ?」
「知るかよ軍部の話なんか」
議事堂の廊下は三股に分岐していて、議会が終わると種族に別れてそれぞれの方向へ帰るのがお決まりだ。
「先日の負傷者は?」
「既に3桁を越えたとの報告が、MIAも含めるとさらに…」
この分岐点は机上の空論を絵に描いたように現場とはかけ離れた会話が飛び交っている。
「1次避難所の首尾は?」
「野良の装甲ですが、奴らの権能には十分耐えうるものになっています」
世界では天使と悪魔の戦争が続いている。人間は両種族の奴隷として軍備や援護をさせられ、いつしかそれに疑問も持たなくなっていた。
「レイ、いつまでこんな議会にこだわるつもりだ」
議事堂を出たところで声をかけてきた男の名ははムーラ。彼はレイの幼なじみであり先代の議員の息子だ。
「さぁな、せめてこの戦争が終わるまでかな」
「それが俺たちにどうこうできることじゃないのはお前の方がよく知ってるだろ」
確かに彼の言うことは事実だ。議会にいる立場では軍部に物を言うことは出来ないし、世界の実情が戦争によって多くを決しているのは否定できない。
「そうだな、でも全く変わらないってわけでもない」
「だからぁ!小さな変化じゃダメなんだよ!」
はぐらかすように軽く返したレイに対してムーラは血相を変えてレイの胸倉を掴んだ。
「離せよ…」
レイの声色は先程と違い重いものだった。ムーラも思わず手を離してしまう。
「とにかく、レイもそろそろこっちに合流してくれ」
彼がココ最近来る理由はこればかりだ。独立した人間の蜂起軍を結成するとの事らしい。
「すまないがそれは出来ない」
「何故だ?なぜそこまで議会にこだわる?」
「ムーラこそなぜ武力にこだわる?武力で抑え込んだところで同じことの繰り返しだ。たとえ今人間の手で戦争を終わらせられたとて、この軋轢はそう変わりはしない」
「それでも…このままよりはいい」
その言葉は人間の苦痛、怒りを込めたようでレイも返すことが出来なかった。