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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑩

「見えたぜェ、リーダー後輩。お前の上げた“狼煙”がよォ……」
粉塵の舞い上がる中から、刺々しい声が楽し気に響く。
「それで? コイツをブッ殺せば良いのか? 遅刻した分働くぜェ……!」
薙ぎ払いが粉塵を吹き飛ばす。高校制服姿のアヴェスが、大盾と大刀で武装して立っていた。
「よく来てくれたぜゾッさん。テストの出来はどうだった?」
「現文駄目だった!」
「ドンマイ! じゃあ頼む!」
「りょーかいィ」
“ゾッさん”と呼ばれたアヴェス、ステルコラリウス・ポマリヌスはレヴェリテルムを変形合体させ、一つの大型戦斧を完成させた。
「叩き斬れ……“Polaris caelum”!」
全長約3mもあるそれを大きく振りかぶり、大型アリエヌスの正中線に照準を定める。
「せェー…………のォッ!」
渾身の振り下ろしが炸裂する。その破壊力はアリエヌスが構えていた両腕を破壊し、剣圧の余波を体幹部にまで到達させ、その巨体を完全に両断した。
「ふゥー……大型アリエヌス何するものぞ。俺が本気出しゃぁこんなモンよ」
レヴェリテルム“ポラリス=カエルム”の合体機構を解除し、ポマリヌスは研究者とクミを睨みつけた。
「で? 何なのお前ら。マッドサイエンティスト?」
「似たようなものだね」
研究者の男が答える脇でクミが片手を振り上げると、大型アリエヌスの残骸から黒い霧が吹き出し、彼女の足下に吸い込まれて消えた。
「うおっ、何あれ」
「ゾッさん。あのおチビちゃん、アヴェスらしいぜ」
カズアリウスの言葉に、ポマリヌスはカズアリウスとクミを交互に見た。
「えっマジで? 女の子じゃん」
「あのマッドが作ったんだとよ」
「マぁジか。ガチマッドじゃん。通報したろ。……帰してくれるならの話だけどな」
ポマリヌスが短槍を握りしめ研究者の男を睨む。しかし、男はけろっとした表情でビデオカメラをしまい、アヴェス達を追い払うように手を振った。
「帰ってくれて構わないよ。君達には感謝しているんだ。恩には報いるのが信条でね。帰った後は好きに通報してくれて構わないよ。どちらにしろ、私の研究に大きな支障は無いからね。さぁ帰った帰った。良い日を過ごしておくれ」
研究者の男とクミが手を振って送り出す中、4人のアヴェスは釈然としない感情でエレベーターに乗り込んだのだった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 解説編 2

企画参加作品「空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin-」のキャラクター解説その2です。

・サイアノチッタ クリスタータ Cyanocitta cristata
通称:クリス
モチーフ:アオカケス(Blue jay)
年齢:14歳
身長:164cm
レヴェリテルム:Caeruleum Diadema
カテルヴァ:サンダーバード。
カテルヴァ・サンダーバードのリーダー。
生真面目で、個性豊かな仲間たちをまとめることに手を焼いている。
アカがサンダーバードにやってくる前のメンバーであるルベことエリサクス ルベクラが戦死した際は自らをひどく責めており、今でもルベと仲良しだったトログに対して負い目を感じている。
何気にサンダーバード内で唯一学年が1つ上。
専用レヴェリテルム“Caeruleum Diadema”は槍型からマシンガン型に変形させることができる。

・クリサグラ モザンビカ Crythagra mozanbica
通称:モザ
モチーフ:キマユカナリア(Yellow-fronted canary)
年齢:12歳
身長:154cm
レヴェリテルム:Viridi Canticum
カテルヴァ:サンダーバード
カテルヴァ・サンダーバードのメンバー。
騒がしくてそそっかしい。
ロディことペトロイカ ロディノガステルとはクラスメイトで、大の仲良し。
専用レヴェリテルム“Viridi Canticum”は大太刀型から大砲型に変形させることができる。
本編では名前を「モザンビーク」としていたが、正確には「モザンビカ」である(作者のミス)。

・ペトロイカ ロディノガステル Petroica rodinogaster
通称:ロディ
モチーフ:セグロサンショクヒタキ(Pink robin)
年齢:12歳
身長:152cm
レヴェリテルム:Rosea Choro
カテルヴァ:サンダーバード
カテルヴァ・サンダーバードのメンバー。
のんきでかわいいもの好き。
モザことクリサグラ モザンビカとはクラスメイトで大の仲良し。
モザ曰く「身体が丈夫」らしい。
専用レヴェリテルム“Rosea Choro”は大剣型から2本の銃器型に分離することができる。

解説編その3に続く。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 解説編 1

企画参加作品「空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin-」のキャラクター解説その1です。

・ラルヴィヴォラ アカヒゲ Larvivora Akahige
通称:アカ
モチーフ:コマドリ(Japanese robin)
年齢:13歳
身長:155cm
レヴェリテルム:Aurantico Equus
カテルヴァ:サンダーバード
当エピソードの主役にして、カテルヴァ・サンダーバードのメンバー。
性格などについては〈サンプルキャラクター〉にて書いた通りで、以前所属していた要塞都市で共に行動していたアヴェス・コマことラルヴィヴォラ コマドリが行方不明になった結果、自らの身をないがしろにする戦い方をするようになった。
カテルヴァ・サンダーバードの皆との出会いでかなり丸くなった。

・トログロディテス トログロディテス Troglodytes troglodytes
通称:トログ
モチーフ:ミソサザイ(Eurasian wren)
年齢:12歳
身長:153cm
レヴェリテルム:Reginae Gradio
カテルヴァ:サンダーバード
カテルヴァ・サンダーバードのメンバー。
仲間想いで好奇心旺盛。
アカがやってくる前のサンダーバードではチームメイトだったルベことエリサクス ルベクラと息ぴったりの仲良しだったが、ルベの戦死によって新しく仲間になったアカを「ルベみたいにしない」ことを決意することになる。
ちなみにアカとはクラスメイト(アカの方が誕生日が早い)。
専用レヴェリテルム“Reginae Gradio”は大剣型から銃器型に変形させることができる。

その2に続く。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 21

「トログが助けてくれたから、不思議と力が湧いただけ」
「だから、ありがとう」とアカはこぼす。その言葉にトログは「いやいや、ボクそこまでのことしてないよ!」と手を振った。
「もう仲間を失いたくないから、ボクは助けにいっただけだし」
「だから当然のことを……」とトログは言いかけるが、アカは「ううん」と横に首を振る。
「トログや、みんなのお陰だから」
アカはそう言って立ち止まる。
「……自分も、前いた要塞都市でずっと一緒にいたアヴェスが、戦闘中に行方不明になったことがあって」
「あの子とは……コマとは、いつか要塞都市の外へ一緒に行こうって約束してたから、すごくショックだった」とアカは続ける。
「それで一緒にいてくれる相手がもういないなら、この生に意味はないって思うようになったんだ」
「でも」とアカはトログの方を見る。
「トログが、一緒に行こうって言ってくれた」
「だから、自分は、今ならどこへでも行ける気がするんだ」とアカは言う。トログは「アカ……」と呟いた。
「……トログ、自分とこれからも、一緒にいてくれる?」
アカは、不意に尋ねる。トログはちょっと驚いたような顔をして、少しの間沈黙する。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 20

「ね〜早くおいでよみんなー」
優しい午後の光が照らす要塞都市の街中を、色とりどりの服装の少年たちが歩いている。この要塞都市を守る戦士である少年たち——アヴェスの部隊、カテルヴァ・サンダーバードの5人は、先日の戦闘の前に約束したように、休日を使って最近入ったメンバー・ラルヴィヴォラ アカヒゲことアカに要塞都市内を案内していた。
「もー、ロディは浮かれちゃってるな〜」
「えー、モザだって昨日は楽しみすぎて眠れなかったんでしょ〜?」
黒と桃色のジャケットを着たアヴェス・ペトロイカ ロディノガステルことロディと、浅黒い肌のアヴェス・クリサグラ モザンビークことモザは、そう談笑しながら石畳の道を進む。そのすぐ後ろをストライプの入った空色のジャケットを羽織ったメガネのアヴェス・サイアノチッタ クリスタータことクリスが暖かい目で2人を見守りつつ歩き、さらにその後ろをベレー帽を被ったアヴェス・トログロディテス トログロディテスことトログと、橙色の詰襟ジャケットを着たアカが続いた。
「……それにしても、この間の戦闘はすごかったね」
「アカがあっという間にアリエヌスの群れを吹っ飛ばしちゃったんだもん」とトログは身体の後ろに腕を回しつつ呟く。それに対しアカは「別にそこまででもないし……」と照れくさそうに答えた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 19

「お前、どうして⁈」
「アカ1人に囮を任せられなくって、追いかけてきたんだ」
アカの問いに、トログはそう答える。
「さっきの作戦を念話で聞いたとき、ボクは天蓋の上から親玉アリエヌスを倒す担当を任されたけど、やっぱりアカを放っとけなかった」
「だから来た」とトログはアカの腕を握りしめる。「でも……」とアカは言いかけるが、トログは「でもじゃない!」と遮った。
「ボクたち、アカに要塞都市の案内まだしてないから」
「だから、行こう!」とトログは声を上げる。
「一緒に‼︎」
その言葉に、アカは静かに頷く。そしてアカは再度レヴェリテルムに念じてトログと同じ位置にふわりと浮き上がり、レヴェリテルムを銃器型に変形させて上空のアリエヌスたちに向ける。アカがレヴェリテルムの引き金を引くと極太の光線が放たれ、トログの作り出したエネルギー障壁もろともアリエヌスたちを消し飛ばした。
自身の周囲を固めていたはずのアリエヌスたちを倒された親玉アリエヌスは、戦っていたアヴェスたちを気にせず金切り声を上げてアカとトログの方へ飛び立つ。先ほどの光線を撃ったアカは咄嗟に宙を蹴って親玉アリエヌスに向かって飛び、レヴェリテルムの銃口を向ける。しかし先ほどの攻撃など今回の戦闘による負担が大きくレヴェリテルムを持つ手が震える。このままでは、とアカが思うが、アカに追いついたトログがレヴェリテルムを持っていない方の手で“Aurantico Equus”を支える。ちらとアカの顔を見て頷いたトログを見て、アカは思い切りレヴェリテルムの引き金を引いた。
“Aurantico Equus”の銃口からはまばゆいばかりの閃光が放たれ、一瞬にして親玉アリエヌスの元へ到達する。親玉アリエヌスは抵抗する間もなく、激しい閃光に包まれた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 18

その一方、アカはアリエヌスを引き寄せつつ要塞都市から離れるように空を飛んでいた。アリエヌスたちに自らを“親玉アリエヌス”だと思わせるレヴェリテルムの効果を与えているため、アリエヌスたちはアカを“親玉アリエヌス”だと思い込んで追いかけてきているのだ。しかし、多くのアリエヌスにその効果を与えているため、アカ自身には相当な負荷がかかっていた。
さらに、アカはアリエヌスたちに追いつかれないよう身体が耐えられるギリギリの速さで飛行しているため、余計に身体や神経に負荷がかかっており、アカは早速意識が朦朧とし始めていた。
それでも、アカはアリエヌスたちを引き寄せて飛び続けている。モザとロディ、そして他のカテルヴァのアヴェスたちが親玉に攻撃させるため、この作戦を発案した自らを囮にするのが最善だと考えたからだ。
モザやロディたちが親玉を撃破し終えるまで、自分はアリエヌスたちを引きつけていられればいい。全ては、あのアリエヌスを倒し切るまで……とアカが自分自身に言い聞かせたとき、不意につんざくような悲鳴が聞こえた。
アカは思わずその声が聞こえた親玉アリエヌスの方を見やる。すると、背後を飛んでいる小型アリエヌスたちが急に悲鳴を上げてアカに飛びかかってきた。
「⁈」
アカは一気に飛行速度を上げてその攻撃を避けるが、ただでさえ身体の限界ぎりぎりだった飛行速度を上げたものだから意識を失いそうになる。なんとか体勢を維持しようとするが、その瞬間に気が抜けてしまったのかアカの身体は突然重たくなった。そして地上へ向けて落下を始める。
このままでは要塞都市外の地面に激突する——そんな考えがアカの脳裏によぎるが、不意に誰かの腕を掴まれる。アカが思わず顔を上げると、ベレー帽を被ったアヴェスことトログがアカの真上に浮いてアカの腕を掴んでいた。
「トログ!」
アカが驚いて声を上げると、トログは笑みを浮かべる。その直後、上空からアカを追いかけてきていたアリエヌスたちが、トログの上で見えない壁のようなものに弾かれた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 16

アカがモザとロディにアリエヌスの群れを倒す方策を伝えてから10分ほど。
アカはアリエヌスの群れから少し離れた場所を飛行しつつ、群れの様子を伺っていた。
『なぁアカ、ホントにこれで大丈夫なのか?』
アカの脳内に、レヴェリテルムの効果によってモザの念話が飛んでくる。
『アカが囮になってアリエヌスを引きつけてるうちに、おいらとロディたちが親玉をやっつけるって作戦だけど……アカの負担が大きすぎねぇか?』
『そうだよアカ、いくらロディたちのことを信じたって、難しいものは難しいだろうし……』
モザとともに天蓋の上からロディも念話を飛ばす。しかしアカは『大丈夫』と短く返した。
『自分は、死んだりしないから』
アカはそう自身に言い聞かせるように言うと、不意に空中で静止する。そして銃器型に変形させていたレヴェリテルム“Aurantico Equus”を上空に向け、1発だけ高出力のエネルギー弾を撃ち出した。
エネルギー弾は上空へ向けて打ち上がると、高度数百メートルほどのところで花火のように炸裂する。戦場で戦うアヴェス、そして侵攻するアリエヌスたちはそちらに気を取られた。
「……え」
天蓋上からアカの様子を見ていたロディは思わず呟く。そして、アリエヌスの群れから悲鳴が上がった。
「あ、見ろロディ!」
モザの言葉で我に返ったロディはモザが目を向ける方を見やる。モザが目を向けるアリエヌスの群れから、衛兵のように親玉を守っていたアリエヌスたちがアカの方に向かっていた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑨

「ビク太郎、ズー坊。お前らの出る幕は無ぇ。大人しく下がってろ」
カズアリウスの指揮で、他の2人は後退した。
「おや、君のような雑魚一人で相手するつもりかい? 思い上がるのはやめた方が良いと思うがねぇ」
研究者の男が揶揄うように言う。
「うるっせ。馬鹿にすんなよ? これでも“以津真天”のアタマ張ってんだ。1つ、俺の本気ってやつを見せてやるよ。アリエヌス壊されて泣くなよ?」
「確約はできないね。本当にそうなったなら、嬉し泣きするかもしれない」
「ほざけ」
そう吐き捨て、カズアリウスは彼のレヴェリテルム“Calcitrare ungula”を変形させた。変形機構が起動し、踵部分に長さ20㎝程度の折り畳み刃が展開する。
「……随分と短い刃だ。大型を相手するには力不足だろう?」
「そうかもな。まァ食らって判断しやがれ」
足裏のブースターを起動し、カズアリウスはアリエヌスの頭頂より高く飛び上がると、右脚を伸ばしたまま足裏が直上を向くほどに振り上げた。
「蹴り殺せ――」
ブースターを再点火し、振り下ろす動きを超加速して、アリエヌスの脳天目掛けて踵落としを叩き込む。
「Calcitrare ungula”ァッ!」
ブースターからは凝縮された高火力エネルギー砲が放たれ、それを推進力としてアリエヌスが盾のように構えた腕に踵のブレードが突き刺さる。勢いは衰える事無く蹴撃が完全に振り抜かれ、腕の一部を大きく抉り抜いた。
「……なるほど、なかなか悪くない威力だ。ブースターの出力断面積を敢えて絞ることで、威力密度を上げているわけか。……だが、大型の敵を相手にするにはあまりに小規模過ぎるな」
研究者の言葉に、カズアリウスはニタリと笑う。
「別に良いんだよ。端ッからそいつ殺すことなんざ狙ってねェからな。“以津真天”が何を目的にした部隊だと思っていやがる」
カズアリウスは空間天井を指差す。ブースター役のエネルギー砲は天井を貫き、地上にまで貫通していたのだ。
「『大型相手の時間稼ぎ』だぜ。俺の仕事はもう終わったんだよ」
地上から爆発的破壊音と振動が伝わり、天井を揺らし小さな瓦礫片を落とす。
「選手交代だ。“うち”の最高火力を見やがれこの野郎」
カズアリウスが言ったその瞬間、天井が粉砕され、一つの影が飛び込んできた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 14

「それは、もう仲間を失いたくないからだよ」
ロディの言葉にアカは目を見開く。ロディは気にせず続けた。
「ロディたちのカテルヴァにはね、前にルベ……エリサクス ルべクラっていう仲間がいたんだ」
「でもある戦闘で死んじゃってさ」とロディは俯く。
「ルべと仲良しだったトログはすごくショックを受けちゃったし、リーダーのクリスはそのことで自分を責めるようになってしまった」
「だから」とロディは顔を上げた。
「ロディたち、アカが新しく仲間になるって聞いたとき、約束したんだ」
「ルべみたいにはしないって」とロディは笑う。アカはなにも言えずに黙り込んでいたが、それを見たモザは「まぁ、そういうことだ」とアカに歩み寄った。
「つまるところ、おいらたちはお前に死んでほしくない」
「人が死ぬのは、誰だって嫌だろ?」とモザはアカに近付き手を差し伸べる。アカは驚いたような顔をしたが、モザが「ほら」と促すとアカはその手を取った。
「さーて、こっからどうすっかね」
アカの腕をぐいと引っ張って立ち上がらせたモザは、上空のアリエヌスの群れを見上げて呟く。アリエヌスたちは他のカテルヴァの攻撃によって要塞都市への襲来を阻まれていたが、群れの中心にいる親玉アリエヌスにはどのカテルヴァのアヴェスも近付けていないようだった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 13

「⁈」
アカが驚く間に、突然誰かが飛び込んできて彼を抱える。そしてその誰かは一気に飛行してその場を離れた。
アカは何が起きているのか分からず混乱するが、自身を抱えて飛ぶ誰かがアリエヌスの群れから少し離れたところに着地したところで、やっと自分を抱えているのが誰かを判別することができた。
「お前は……」
アカは自身を天蓋の上に降ろす浅黒い肌のアヴェス——モザの顔を見てそう呟く。モザはなにか言いたげな顔をしたが、そこへ「モーザーっ!」と元気な声が響いた。
「やったねー!」
「ロディが落下速度を変えたお陰でアカをキャッチできた‼︎」と黒と桃色のジャケットを着たアヴェス——ロディが嬉しそうにモザとアカの元へ飛び込んでくる。モザは「ロディお前ホントに大丈夫なのか?」と腰に手を当てた。
「物体の落下速度を変えるって相当現実離れしてるぞ?」
「身体に影響とか出てないのか?」とモザはロディの顔を覗き込む。するとロディは照れくさそうに「ちょっとめまいするかも」と答え、モザは「おい」と突っ込んだ。
「お前いくら身体が丈夫だからって無理はすんなよ」
「えー、仲間の大ピンチだったんだし〜」
「もっと自分のこと大事にしろ!」
モザとロディが言い合う中、その場に座り込んでいたアカは「……なぁ」と2人に声をかける。モザとロディは「?」とアカの方を見やった。
「なんで、自分のこと……助けてくれたんだ?」
「あんな風にアリエヌスの群れに突貫したのに」とアカはこぼす。モザとロディは思わず顔を見合わせたが、やがて2人はアカの方に目をやった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 12

カテルヴァ・サンダーバードの仲間たちの元からアカが離れていって暫く。アカは空より襲来するアリエヌスの群れの中を自在に飛びながら、専用レヴェリテルム“Aurantico Equus”で敵を切り裂いている。周囲では他のカテルヴァに所属するアヴェスたちがそれぞれのレヴェリテルムでアリエヌスを倒していたが、それを気にせずアカはアリエヌスの群れの中心へと飛んでいった。
「……あれは」
時折“Aurantico Equus”でアリエヌスを撃ち落としつつ群れの中を突っ切っていくアカは、群れの中で急にアリエヌスの少ない空間に出て不意に呟く。彼の目の前には、周囲のアリエヌスを従えていると思しき体長15メートルほどの翅のあるハナカマキリのようなアリエヌスが飛んでいた。
「*}‘}“}$]€[>;;’|+|”|!<‼︎」
親玉アリエヌスはアカの姿を見とめると、耳障りな悲鳴を上げる。すると親玉アリエヌスの周囲を守るように飛んでいた体長2メートルほどのアリエヌスたちが、アカに向かって突っ込んできた。
アカは咄嗟に“Aurantico Equus”を構えて相手を両断しようとするが、体当たりしてきたアリエヌスの体表の方が硬いのか、相手は鈍い金属音を立ててアカを弾き飛ばす。アカは驚く間もなく天蓋に向かって落下し始めた。
アカはどうにか空中で体勢を立て直そうと“Aurantico Equus”に念を込めようとするが、重力に引っ張られるままに落ちているために思い通りに頭が働かない。アリエヌスの体当たりを受けたときにレヴェリテルムの飛行効果が途切れてしまったため、落下中にレヴェリテルムの効果を発動させることは至難の業だった。
このままでは天蓋に激突する、そんな思いがアカの頭をよぎり、彼は悔しそうに顔を歪ませる。しかし、これじゃ、あの子を——とアカが思いかけた時、突然ふわりと落下速度が落ちた。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 10

「っ‼︎」
トログは大剣の形に変形させた“Reginae Gladio”をアカとクリスの前に掲げ、光のバリアを展開して飛来してきたアリエヌスを防ぐ。カマキリのような体高数メートルほどのアリエヌスはトログのレヴェリテルムを押し返そうとするが、彼は負けじと“Reginae Gladio”に力を入れて踏みとどまる。それを見たモザとロディはそれぞれのレヴェリテルムを向けてエネルギー弾を発射し、アリエヌスをトログから遠ざけた。
アリエヌスが後方へと飛び退くと、トログは力が抜けたようにへたり込んだ。
「トログ!」
我に返ったクリスは慌ててトログに駆け寄る。
クリスに「大丈夫かお前……」と訊かれるトログは「へーきへーき」と笑うが、その顔は青ざめている。クリスは心配そうに「無理すんなって……」とトログの両肩に手を置いた。
その様子を見るアカは口を真一文字に結んでいたが、悲鳴のような声を上げて突進してくる先ほどのアリエヌスに気づきそちらへ駆け出す。そしてそのアリエヌスが飛びかかる前に“Aurantico Equus”でそのアリエヌスを切り裂いた。
そして仲間たちが驚くことにも気にせず、アカはそのまま天蓋を蹴って宙へ舞い上がる。クリスが呼び留める間もなく、アカは上空より飛来するアリエヌスの群れへと突っ込んでいった。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 9

「アカ‼︎」
近くでレヴェリテルム“Reginae Gladio”を構えていたトログがそう声を上げると、先ほどアリエヌスを両断した人物ことアカはちらと彼の方に気付いて、刀型になっているレヴェリテルム“Aurantico Equus”を握り直す。それを見たクリスは「おい」とマシンガン型に変形させたレヴェリテルム“Caeruleum Diadema”を担いでアカに近付いた。
「アカ、一体どこ行ってたんだ」
「心配したんだぞ」とクリスはアカの襟首を掴んで尋ねる。アカはなにも答えず、それを見ているトログは「ちょっとクリス落ち着いてよ〜」と慌てる。
「ボクたちも出撃命令があったのに上に上がるまで時間がかかっちゃったから……」
「そうじゃない!」
トログの擁護に対し、クリスはそう声を上げる。トログは一瞬驚いて動きを止め、モザやロディも驚いたような顔をする。クリスは続けた。
「勝手な行動で死なれちゃ困るんだよ‼︎」
「もしそうなったらどうするんだ……!」とクリスはアカの目を見る。アカは相変わらず無言のままだ。
「俺は、俺たちは……もう仲間を失いたくないんだ」
「だから1人で勝手に行かないでくれ」とクリスは声を震わせる。トログ、モザ、ロディはその様子を静かに見ていたが、アカは「……そんなの」とポツリと呟く。
「自分には関係ない」
「そんなの!」
「関係ないものは関係な……」
クリスの言葉をアカが遮った時、「危ないっ!」とトログの叫び声が聞こえた。2人がハッとして辺りを見回そうとした時、そばで甲高い金属音が響く。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 8

アリエヌス襲来の一報から約5分、パッセリフォルムズの壁から都市を覆うように光でできた障壁——天蓋が完全に展開したころ。
パッセリフォルムズの壁の中のエレベーターで壁の上に昇っていったトログ、クリス、モザ、ロディは、手持ちのケースから既に取り出したレヴェリテルムを携えて、戦場に飛び出していた。
「ったく、あいつどこ行ったんだ……?」
「勝手に飛び出しやがって」と大太刀型から大砲型に変形させたレヴェリテルム“Viridi Canticum”を撃ちつつモザは呟く。
周囲では天蓋の上で同じカテルヴァ・サンダーバードの仲間たちが飛び道具型に変形させたレヴェリテルムで空から迫り来るアリエヌスを撃ち落としており、上空には既に出撃しているアヴェスたちが宙を舞いながらアリエヌスと戦っていた。
「まだおいらたち、仲間になってから日が浅いのに」
「なぁロディ?」とモザは近くで2つの銃器型レヴェリテルム“Rosea Choro”を空に向けるロディに尋ねる。
「そーだねー」
「でもアカもアカで色々事情があるんだと思うよー」とロディは返す。
「どんな事情だよ」
「そりゃ“戦うこと”しか考えられなくなる事情だよー」
「ふわっとしてんな!」
モザとロディはそう言い合うが、途中で「モザ! ロディ!」というクリスの声が飛んでくる。2人がハッと顔を上げると、上空から体長1メートルほどの蝙蝠のような姿をしたアリエヌスが突っ込んできていた。
2人は咄嗟にそれぞれのレヴェリテルムを構えるが、その瞬間アリエヌスは飛んできた何者かによって真っ二つにされる。モザとロディが驚く間もなく、その人物は天蓋の上に降り立った。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 7

「ボクたちの人生は本当に限られたものだから、やっぱり有意義に使お?」
「ね?」とトログはアカの腕に手を伸ばす。しかしアカはその手を振り払った。
「……人生をどう使うかは、個人の勝手だ」
「ただ、自分は戦いのためにこの命を使う、それだけ」とアカは呟き、トログの横を通り過ぎる。トログは思わず「待って!」とアカに後ろから声をかけた。
アカは思わずぴたと足を止める。
「どうして……どうして、アカはそんな考え方するの?」
「もしかして、前にいた要塞都市でなにか……」とトログは言いかける。しかしその言葉は不気味なサイレンの音によって遮られた。
「⁈」
5人は思わず顔を上げる。すると彼らが手首につけている端末に通信が入った。
『こちらドムス司令部、先程パッセリフォルムズ近傍にアリエヌス出現を確認した』
『出撃対象カテルヴァは以下の通りである』と司令部にいる司令の緊迫した声が続く。
『ルッフ、コカトリス、ハルピュイア、サンダーバード……以上の4隊は直ちに出撃せよ』
『繰り返す!』と通信機の向こうの司令は出撃対象者を宣言していく。“サンダーバード”と自分たちの部隊名が読み上げられたことを確認したアカは、レヴェリテルムの入ったケースの取っ手を握り直すと壁の方へ向けて走り出した。
「あっ待てアカ!」
アカが駆け出したことに気付いたクリスは、「先に行くなっ‼︎」と声を上げて彼を追い始める。それを見たロディも「モザ、トログ!」とあとの2人の方を見た。
「ロディたちも行こう!」
「おうよ!」
ロディの言葉にモザは威勢よく答え、トログもうんと静かに頷く。そして3人は壁に向かって“橋”の上を走り出した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ -Japanese Robin- 6

「ねぇねぇ、クリスとモザはどう?」
「みんなで遊びに行こうよ!」と提案するロディを見て、浅黒い肌のアヴェスことモザは「そうだな!」と頷く。
「おれたちアカのことそんなに知らないし、せっかくなら仲良くなりたい!」
モザの言葉にロディは「でしょでしょ〜?」と明るく続ける。しかしクリスは「どうだかな」と不意に呟く。
トログ、モザ、ロディの3人は思わず不思議そうな顔をした。
「お前ら、アカのことそっちのけにしてるだろ」
クリスはそう言って自身の後ろにいる橙色の詰襟に白い和袖の外套を羽織ったアヴェス、アカの方を見やる。アカはトログたちの方を気にせず“橋”の欄干から見える風景に目をやっていた。
「……」
モザとロディは思わず沈黙し、トログは「アカ」と仲間に近寄って話しかける。
「今度みんなで遊びに行こうよ」
「この街には面白いものがいっぱいあるんだ」とトログは笑いかけるが、アカは「そんなどうでもいい」と帽子深く被った。トログは「どうして?」と首を傾げる。
「アカは世界最大の要塞都市・パッセリフォルムズには興味ないの⁇」
「別に」
トログの質問に、アカは短く答える。
「自分のやることはこの街をアリエヌスから守ることだけだから」
「それに関係ないことは、興味ない」とアカは淡々と答える。その言葉にトログは「それじゃ寂しくない?」と尋ねる。
「確かにボクたちは要塞都市を守るために生み出され、そのために戦ってる、でも……」
「戦うだけの人生じゃ、つまんないよ」とトログは俯く。トログのその様子にアカはちらと目を向けたが、気にせずトログは続ける。