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遅い。【検閲編】1

【検閲編】のまとめです。
こんな感じで作品を募集しました。

《以下の条件を満たして作品を作りなさい。
・詩であること。散文、韻文、定型、不定形は問わない。
・自らの手によって検閲を入れること。███のようにすること。
・タグを「新言語秩序」にすること。》

さあさらにめんどくさい条件を出しました。ある人に喧嘩売りすぎて作ってくれませんでした(笑)実際詩に限らなかった方が良かったのかもしれません。しかしやはり(すごい接続詞)、今回も面白い投稿が多々見られました。
実は今回の条件には裏課題がありまして。それは、
《自分の過去の作品を検閲して投稿すること。》
気づいてくれたのはお一人だけでしたが、気づいてもらえて嬉しかったです(。-∀-)

このテーマの着想は、僕の大好きなバンドのamazarashiの武道館公演『朗読演奏実験空間・新言語秩序』から来ています。詳しくはいろんなとこがライブレポート出してるので是非。
そういう話じゃない。検閲の話です。この掲示板にも検閲システムは存在します。あまりにも不適切な投稿に関しては、一部が削除されたり、時には掲載されないことだってあります。それをやめろといっているのでは決してありません。いや、ほんとに。誤解しないでくださいね。ただ、この掲示板外でも、我々は『検閲』を怖れていないでしょうか。
空気の読めない発言、知らず知らずの内に誰かを傷つけている言葉、そういうものを怖れて日々生きてはいないでしょうか。それについては僕が最たる例です。ですからここからの文章には全くもって説得力はありませんが、まあ聞いて(読んで)やってください。

(そして続く(長すぎた))

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なぞなぞリスペクト

「遅くなりました!!」
 観音寺隼人は、車から慌てて降りると、先に待っていた先輩刑事に頭を下げた。五十嵐剛。規律にはめっぽう厳しいので有名だ。
「遅い!もう七分も遅刻だぞ!」
「すっ、すいません!」
「…まあいい。事情聴取だ。いくぞ」
 凄まじく早い五十嵐の徒歩に、観音寺は必死でついていく。
 今回のガイシャは、上殿敬子、四二歳主婦。場所は自宅のリビングで、何者かによって後頭部を殴られた後に失血死。争った形跡はなく、現場からは犯人を特定できるものは何も見つからなかった。死亡推定時刻は、昨日一月一三日午後7時頃。目撃証言もなく、捜査は非常に難航していた。
 今回事情聴取を取るのは、ガイシャの夫である上殿凛太郎、四五歳会社員。近隣の住民によると、最近あまり中は良さそうには見えなかった、とのこと。

 以下が事情聴取の様子だ。
「上殿さん。あなたは昨日の午後七時頃、どこにいらっしゃいましたか」
「刑事さん、まさか私を疑っているんですか?!」
「いえ、あの、この質問は皆さんにお答えいただいているものでして…」
「…ふん。まあ、良いですけどね。じゃあお答えしますよ。私は確か、まだその時空の上でした」
「…空の上、ですか」
「ええ。私はここ二週間休暇をとってオーストラリアに旅行に行っておりまして、昨日の夜十時にやっと帰国したんですよ。そしたら、まさか妻が、あんな目にあっているなんて…」
「そうでしたか。それはお気の毒に。ところで、オーストラリアでは何をなさっていたんですか?」
「別に、観光ですよ。色んな所を見て回りました」
「良いですねー、オーストラリア。僕もいつか行ってみたいものです。何が一番良かったですか?」
「やっぱり海ですかね。一月なんでちょっと寒かったですけど、夕日の沈んでいく様は圧巻でしたよ」
「そうでしたか。それでは一応確認を取らせていただきます。ご利用になられた旅行会社はどちらでしたか」……

 その後、旅行会社などに問い合わせてみたが、上殿氏がオーストラリアに行っていたことは確からしい。これは難しい事件になるぞ…。そんな話を五十嵐刑事にすると、
「おい、何をぼさっとしているんだ。どう考えてもその凛太郎ってやつが怪しいじゃないか」

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青い夏

誰もいないはずのプールサイド。今年初めて水を張った今日。僕はふらっとプールに向かった。

ぴちゃん、ぱちゃん、ぱしゃん。プールから音が聞こえた。不思議に思いながらプールサイドに出る。まず、目に飛び込んできたのは、青い硝子玉のように美しい空を反射する真新しい水。そして一人の少女。
「西城さん…。何やってるの…?」
なに聞いてんだ…。一人でため息をつく。見たら分かる。水に足を浸けてる。西城さんと話すことは今までほとんどなかった。感じた違和感は夏の空に似合わない白い肌だった。黒い長髪を揺らして振り返る。
「何って…。死のうと思って。」
冗談とも本気ともとれない表情で言い放った。
「死ぬ…?」
「冗談だよ。こんなとこで死のうと思って死ねないでしょう?本気にしちゃって、君、面白いね」
「西城さんって…変な人…?」
「ふははっ。そうかもね。梢でいいよ。西城さんって固い。この際仲良くなろうよ。」
「梢…は本当は死にたいと思う?」
「誰だって思うんじゃないかな。君もあるでしょう?意味もなく死にたくなるとき。」
「あるかも…しれない。」
「一回死んでみようか。」
「え。」
梢がプールに飛び込む。
「はっ?何して…。」
「ぷはぁー!!気持ちいいよ!!」
僕の手を梢が引っ張る。
「うわぁ⁉」
顔を上げると濡れた髪が気持ちいい。馬鹿だと思った。青すぎて笑っちゃいそうだった。というか実際笑ってた。
「どこが死んでるんだよ。」
「うじうじ考えてても仕方ないからそういう考えを殺した。」
「そっか」
梢がプールサイドに上がって鞄からバスタオルわ出す。
「何で持ってるんだよ…」
「え、逆に君は持ってないの?」
「当たり前だろ…。」
「貸すから、拗ねないの。」
「拗ねてない。」
梢はバスタオルを被ってフェンスの外を見て呟いた。
「私、生きるよ。君の生きる世界で、生きてみる。もー…君のせいだよ?私が死ねなかったのは。」
なぜか声が震えていた。

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LOST MEMORIES ⅡCⅤⅩⅨ

「私の話の前に、お嬢さまの涙の理由を教えていただけますか。」
静かに言うチャールズに、瑛瑠は困ったように微笑む。交換条件のつもりだったのだろうか。
きっと、「節度あるお付き合いを。」という発言について、瑛瑠が何かしら突っ込んでくると思っていたチャールズは、そこで帰宅が遅くなった理由や赤くなった目の理由を探るつもりだったが、違う話題を振られたために、いつも学校生活について突っ込まないからこそ、自分の話と引き換えに改めてその理由を引き出そうと言うのだろう。
しかし、どうして改めて。そんなに目が赤いのかと考え込む瑛瑠。それとも、
「……本当に、彼らと節度あるお付き合いをしていないとでも思っているの?」
そんな瑛瑠に、チャールズは一言。
「お嬢さまのわからず屋。」
まるで拗ねたような言い方に呆気に取られる。
「まあ、冗談ですが。」
「……冗談。」
「そんなことは思っていませんが、泣いた痕があるんですから、心配もするでしょう。なんせお嬢さまは、溢れるまで溜め込むしょうがない性格の持ち主ですからね。」
瑛瑠は思わず聞く。
「そんなに目赤くなっている?」
チャールズは微笑んだ。
「いつもと様子が違うことくらいわかりますよ、一番傍に居るんですから。」

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LOST MEMORIES ⅡCⅤⅩ

瑛瑠が痛いと言っても離してと言っても、英人は無視。道行く人に変な目で見られたくもないので、終いには大人しくついていくしかなくて。
そして英人は、ある家の前で立ち止まる。もちろん、瑛瑠の家ではない。
そこでやっと、強く捕まれていた腕が解放された。
「ここは……?」
恐る恐る尋ねると、あからさまに不機嫌そうな声で、家,と一言。
それは、見ればわかる。文脈上、どうやら英人の家らしいけれど。
なぜ自分が英人の家の前にいるのかがわからない。怒りに触れたために連れ込もうとしているのだろうか。英人に限ってそれはないと思うけれど。
そんなことを考えていると、怒りを含んだ低い声で、こんなことを言ってきた。
「ふざけたことを言うな。」
「……何のことですか。」
英人は、見たことのない眼をしている。瑛瑠は、思わず怯んだ。
「君に対して思わせ振りな態度をとったことはこれまでに1度もない。守ると誓ったのは勢いじゃない。昔も今も、君だから守るんだ。
共有者でしかないなんてふざけたことは言うな。長谷川も、歌名も、君のことも、これっきりの関係で終わらせるつもりはない。
君がもし本気でそう考えているのなら、それは馬鹿だ。」

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LOST MEMORIES ⅡCⅣⅩⅨ

瑛瑠は英人に顔を向け、冷ややかな視線を送る。
「言っておきますが、見てたのではなく見かけただけです。
生憎、クラスメートのデートを覗く悪趣味は持ち合わせておりません。語弊のある言い方はやめてください。」
嫉妬宣言に他ならない先程の言葉に、恥ずかしさを抑えられない。
悪態をつくと、妙に納得した様子の英人の顔がある。
瑛瑠は訝しげに彼を見る。
「確かに、瑛瑠の誘いを断ったのは、彼女との約束があったからだ。」
「……大切な人なのでしょう?それなら、私を送るなんて、勘違いさせるような真似はしない方がいいかと。」
瑛瑠に、冷静さが戻ってきた。
「確かに、彼女は僕にとっては大切な存在だ。
だが、瑛瑠だって大切だ。同じ天秤ではかれるものじゃない。」
「歌名の言うOTとやらがわからなかったのですが、あなたのことを見ていて、思わせ振りな態度の略なのだと、たった今理解しました。
私とあなたは共有者でしかありません。態度を改めてください。」
まだ言うか、このヴァンパイア。
相変わらず考えが平行線だと睨むけれど、英人も同じように睨んでいて。
「……ふざけるな。」
そう言うなり、信じられない力で腕を引っ張られる。痛い上に、力まで駄々漏れである。歌名がいなくてよかったなど考える余裕は、今の瑛瑠にはなかった。

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LOST MEMORIES~愛の定義編~

歌名は、僅かに頬を赤らめる。
「そこまで言ったことなかったよね。
はじめはって……今はどきどきしないの?」
歌名の問いに、少し考える望。
「しないわけじゃないけれど、独占したいと思っていたんだ。ぼくの横で笑っていてほしかった。
……今は、ただ笑ってくれればいいかな。真剣に想いを伝えれば伝えるほど、彼女は困る。困ったように笑ってはほしくない。」
止まっていた手を動かす。言葉にして初めて、自分の想いや考えを再認識する。
「それは、愛なの?」
「……どうだろう、たぶん愛になるにはまだ何かが足りないと思うよ。やっぱり、ぼくの横で笑っていてほしいと思うし、霧と仲良く話すのを見て妬くくらいにはまだまだ恋だろうし。
……ただ、それ以上に四人の時間や関係が好きなんだ。これを、壊したくない。」
望は歌名を見つめる。
「ぼくが壊してはいけないし、みんな壊さないと信頼してくれている。もちろん、ぼくもみんながそういうことをしないと信頼している。だとすれば、みんなとの時間や関係に対する想いは愛かもしれないね。」
歌名は一通り聞いて、長テーブルに突っ伏す。
「なんで私の周りはそういうことを恥ずかしげもなく……!」
私もみんなのこと大好きだよと、消え入りそうに紡がれた言葉は、穏やかな空間に吸い込まれた。

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LOST MEMORIES ⅡCⅣⅩⅥ

結局、喫茶店にはひとりで行き、帰りに見かけたのだという説明をする。
「断られた理由がその女の子だと思ったら、少し落ち込んでしまって。私たちの方が、距離が近いと思っていたから。」
肩をすくめると、歌名は深い深いため息をつく。
「瑛瑠は可愛いなあ……ほんと、これでその彼女がお付き合いしてる相手とかだったら許せないな。」
あれだけOTかましておいて,なんてぶつぶつと話す。
お付き合いしている子でなければ、それはそれで複雑だと思うのは私だけだろうかと瑛瑠は苦笑する。
でもね,と神妙な顔をする歌名。
「そういうことする人じゃないと思うんだけどな。」
そういうこと、とは。
「英人くんイケメンだから、女の子に誘われることはあるかもしれないけど、正直私との約束を優先してもらえる自信あるもん。」
瑛瑠も、たぶんその自信があったのだ。だからこそ、一方通行を自覚しての落ち込み。
瑛瑠は、ふぅと息をつく。
「全部知らなくてもいいんです。
でも、ね?妬いちゃうでしょう?」
笑いかけると、素直な歌名は不満げにも頷く。
「さぁさぁ、プレゼントくれるんでしょ。行きましょう。」
歌名の手を引くも、行く手を阻まれる。
目の前に立ちはだかる御仁を、瑛瑠は軽く睨む。
「……どいてください。」
「なぜ今朝から僕を避けてる?」