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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その④

「外……だと?」
「そーお外」
ルチルが訝し気に問い返すも、ネコメは事も無げに答える。
「クリスチャンにも見えてるんだろうさ。ドキドキワクワクするような、“異世界”ってやつが」
言いながら、ネコメはクリスタルに意識を向けた。その目に映らないクリスタルの口元は、心なしか僅かに上がっていた。
「ナワバリ争い? 下らないねそんなこと。こんな小さい世界に甘んじる奴らの諍いになんか興味無いよ。すぐそこに見えてンだ、この不可視で強大な『壁』のその先が。出自やナワバリの違いなんかでいがみ合ってる暇も無いほど、ボクらの戦いは困難で不確かなんだぜィ?」
ネコメがニヤリと不敵な笑みをルチルに向けた瞬間、ネコメの首が刎ね飛び、後方から飛んできた何者かの腕に吹き飛ばされていった。
「ッ⁉ ネコメ⁉」
咄嗟に立ち上がるルチル。
「る、ルチル! 敵襲だ!」
駆け寄って来たのは、片腕を失ったルチルやクリスタルの仲間、ローズだった。
「ローズちゃん! あの腕ローズちゃんだったの⁉」
「うん、油断した。クソ、“あれ”が来たんだ!」
「あれってなに……」
首だけになったネコメが尋ねる。答えるのはルチル。
「……“流星刀”のトロイライト。最近この辺で猛威を振るってる『隕鉄一派』の1人だ」
「そっかー……ところでなおして」
「ああ。ローズちゃん!」
ルチルに呼ばれ、ローズが自身の傷口を抑えながら駆け寄ってくる。
「クリスちゃんとついでにネコメを頼む。戦況は?」
「アメシストがどうにかしてる」
「私はそっちに行く。他に誰も近付けるな。私とアメシストで駄目ならあとはもう無駄な被害だ」
「了解。行くよ、クリスちゃん」
「んぇあ?」
クリスタルはネコメの胴体を小脇に抱えたローズに呼ばれ、訳も分からずネコメの頭を抱えてローズについて避難した。

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その③

「しかし君らも飽きないな。毎日毎日何にも無い空間に手ェ伸ばして。退屈しないの?」
ルチルのその言葉にネコメの動きが止まり、口元をニタリと歪ませてルチルの顔を覗き込んだ。
「『何も無い』? 何も無いだって? そう見えるのかい? ハハハ、そうかそうか! ボクらが何も無いところを手探りする狂人にでも見えてるわけか! クォーツのひとでも聡い奴ばっかりじゃないんだねェ!」
「死にたいようだな?」
核に水晶針を突き付けられ、息を呑むようにネコメの笑いは途切れた。
「ぃやァーゴメンナサイ調子乗りました……。いやね? 違うんですのヨルチルのひと。ボクら、そうこのネコメちゃんとクリスチャンは、可視光しか感知できない残念な眼玉しか持ち合わせてない余所のメタルヴマらとは見てる世界が若干違うんですノヨ」
「……前にも聞いたな。どういう意味なんだ?」
ルチルの問いかけに、シシシと息を漏らすように笑いネコメは答える。
「いやほら、たとえばボクはクリソベリル・キャッツアイ。イワユル“猫目石”を核に持ちましてね。この猫目は現在絶賛生き別れ中の両の目玉とは違って、ゾクゾクするモノとワクワクするモノしか見てくれないんですノヨ」
「……つまり、どういうことだ?」
「ボクが触れたら死ぬような危険物の存在が、ボクには手に取るように分かる。距離も方位もね。『ワクワクするモノ』ってのはそりゃァルチルのひと」
ネコメはそこで言葉を切って、再び虚空に目をやった。
「“小さな世界”ミクロコスモスの外っ側でさァね」

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その②

「クリスちゃん? クリスちゃ……あ」
クリスタルを探しに来たそのメタルヴマは、クリスタルの隣に座る異種のメタルヴマを認識した瞬間、反射的に針状の水晶柱を生成し射出した。
しかし、それがよく知る者であることに気付き、すぐに水晶柱の動作を止め、粉砕し霧散させた。
「何だ、ネコメか……」
「もうびっくりしたなァ……ルチルのひと。手が早いのよ」
背後からの無音の攻撃に対し、的確に後頭部を庇った腕を解きながら、ネコメは振り向きつつ頬を膨らませて抗議した。
「それが正解だから良いんだよ」
「そりゃぁそうなんだけど……クリスチャンのお友達なんだからこう、もっと手心ってものを……」
「……まあ、正直その子の相手をしてくれてるってだけで助かってはいるんだけどね。戦えないくせにうっかり結構なダメージを食らったりするもんだから……」
「はァー呆れたっ! 水晶のひとはこれだからいけない。戦いにしか価値を見出せないなんてサモシイと思いませんか!」
「クォーツ領は良い場所だからな。日々様々な部族に襲撃を受けるこの現況、戦えない上に読めないタイミングで戦場に現れる味方ってのがどれだけ恐ろしいと思っている。クォーツの戦力は決して大きくは無いんだぞ?」
「……参った微妙に反論しづれェや」
言い合いながら、ルチルも二人の隣に腰を下ろした。

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Metallevma:水晶玉は流星を見通す

メタルヴマに似つかわしくない、煤けた無地のシャツ1枚のみを身に纏った幼い少女のような姿のそれは、今日も虚空に手を伸ばし、無意味な呻き声をあげていた。
「クリスチャン! クリスチャンどこー! おーいクリスチャン!」
「あぇ?」
呼び声に反応し、そちらに顔を向ける。両の眼球を抉り出されたメタルヴマが一人、見えない目できょろきょろと周囲を探りながら少しずつ近付いてきているのが見えたので、後頭部からひび割れ中ほどから折れた水晶柱を生やした少女のようなメタルヴマ、クリスタルは、手を振って呼び返した。
「ねこちゃん!」
「あ! よっしゃ聞こえた!」
猫耳風の突起が付いたキャスケット帽を被った盲目のメタルヴマはクリスタルに駆け寄り、額に輝くクリソベリル・キャッツアイの核でクリスチャンの顔を覗き込んだ。勿論その鉱石の目に、クリスタルの顔を確かめられるような視力は具わっていないのだが。
「ネコメちゃんが今日も来てやったぜークリスチャン。いつ殺されるかとビクビクしながら来てるんだ。感謝しろよー?」
「んー」
クリスタルの隣に腰を下ろし、ネコメも同じように空中に手を伸ばし始める。
「この辺? この辺で合ってる? 自分がどう動いてるのか目視できないのがキツイのよ」
「ぁんー」
クリスタルは曖昧に答え、虚空に透明な壁でもあるかのように両手で叩くような動作を始めた。

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Metallevma 〈企画要項〉(再掲)

(月が変わると前の月の書き込みがバックナンバーなどでしか見られなくなるため、先月投稿したものを見てなかった人用の再掲です。それではどうぞ。)

どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「Metallevma」。
鉱物を核に生まれたヒト型の存在“メタルヴマ”の物語を皆で描いていく企画です。
まずはとりあえず設定です。

・メタルヴマ Metallevma
鉱石を核に生み出されたヒト型の“何か”。
身体のどこかから核と同じ鉱石が生えている。
核になっている鉱石の名前を名乗っている。
核になった石の石言葉や性質にちなんだ特殊能力を持つ。
核の鉱石が健在な限り死ぬことはないし、食事の必要はない(食事は嗜好品程度と捉える者が多い)。
性別はないが、同じ鉱物種を核とする者をきょうだいや家族、一族として認識する。
おしゃれ好きな者が多く、皆個性豊かな格好をしている。
その昔、ある王が自らのしもべとして生み出したのが始まり。
そうして生み出された原初のメタルヴマが自らの同族を生み出していったことで数を増やしていった。
しかし数が増える内に人間に歯向かうようになり、やがて人間の住む世界から追放されてしまった。
現在は人間の住む世界のすぐ傍にある世界“ミクロコスモス”で暮らしている。

・ミクロコスモス Microkosmos
メタルヴマ達が住む小さな異世界。
人間達の住む世界から様々なモノが流れ着く。
住民であるメタルヴマ達は一族ごとの派閥に分かれて激しいナワバリ争いを続けている。
現在はメタルヴマ達が人間の住む世界を真似て人間世界顔負けの都市が造られている。

開催期間はとりあえず9月が終わるまでで、形式・投稿回数は特に問いません(あ、公序良俗は守ってね!)。
投稿作品にはタグ「Metallevma」(スペルミス注意)を付けて投稿してください。
難しめの企画ですが、企画趣旨に大体合っていればOKですのであまり気負わずにご参加ください。
質問などはレスからお願いします。
皆さんの参加お待ちしております‼︎

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その⑩

「抜けました! 脱出成功です!」
剛将の言葉と同時に、二人は村の境界を踏み越えた。
剛将の声に応え、小型ドローンは1度宙返りを決めて見せる。
『よく逃げ切ったね。最後に1個面白い機能を見せてあげよう。その名も“ミミック・フィスト”』
義腕が一瞬強く光り、その光が止むと義腕は人間の腕と変わらない外見に変わっていた。
『光の力を消費して、“人の腕の映像”を義腕の上に投影したんだ。人体に不自然な変形をしたらすぐに解除されちゃうから気を付けてね』
「あ、はい了解です。……え光の力使ってるんですか?」
『うん』
「僕の?」
『そりゃまあ。一応アンプル燃料の分がまだ残ってるから今日1日ぐらいはもつとは思うけど。光の力で動く以上、戦闘に使える力は減るから気を付けてね。何だったら、普通に学校で貰うP.A.を使った方が良いかも。アンプルは欲しかったら郵送させるから、必要になったら自宅か学校の住所教えてね。窓口には我が親友、三色吉代を通してもらえれば大丈夫だから、洞志村民避難地の……あれ何番だっけ』
『3番だな』
『そこを訪ねてくれれば良いから』
「分かりました、ありがとうございます」
『カゲが手を出してくるとも限らない。早く帰りな』
「はい、ありがとうございました」
「お世話になりました、失礼します」

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教会輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その⑧

ドローンから聞こえる明晶の指示に従い、剛将と花は脱出のため走り続けた。しかしその足は目の前に現れた大型のカゲに妨げられて止まってしまう。
『お、なかなか大きいのが出たねぇ。君ら、こいつのことは知ってる?』
明晶の問いかけに答えたのは花だった。
「いいえ、初めて見る型です。STIで教えてもらった中にも、こんなのは無かったはずです」
『そっか、それならワタシが勝手に命名しよう。ソレの名前は“ハイドラ”だ』
『”ハイドラ”ぁ? ダゴンじゃ駄目なのか?』
吉代の反応に、明晶はケラケラと笑って答えた。
『だってダゴンの方はちょっと好きなんだもん。そのまま名前使うのは申し訳なくない?』
『知らん』
『っと、今はハイドラだったね。ハナちゃんは足止めを頑張って。ゴーショウくん、ドローンの下にケースがくっついてると思うんだよ。それを開けておくれ』
「あ、はい」
剛将がそれに従いケースを開けると、中には緩衝材に埋もれてガラス製のアンプルが数本並べられていた。
「これは?」
『まあざっくり言うと、光の力を濃縮した燃料だね。義腕の手の甲を開けて、アンプルを中に差し込んで。細い方から入れるんだよ』
「開けるってどうやって」
『開けーって念じたら開くから』
「……あ、本当だ」
アンプルを義腕に差し込むと、手の甲の機構は再び閉じ、鈑金が一瞬大きくほどけ、すぐに元の腕の形に落ち着いた。
『これから使う技は、光の力をかなり消耗する。君の光の力じゃそう気軽に使えるモノじゃないからねぇ。ついでに近接戦にもっていかなきゃならないから覚悟しておいて。さあハナちゃん、一度退いて』
「あ、はい」
花が銃撃を止めて剛将の陰に隠れ、それに続いて剛将はハイドラに向けて飛び出した。

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その⑦

扉を開けた瞬間、屋外に犇めいていたカゲ達がその物音に気付き、一斉に二人の方に振り向いた。
『まずは基本の技から行こうか。適当なカゲに拳を向けて狙いを定める。腕はまっすぐ伸ばしていた方が良いけど、最悪拳さえ向いていれば大丈夫』
明晶の指示の通りに義腕が動き、カゲの群れに狙いを定める。
『本当は直接口で言った方が楽なんだけど……まあ頭の中で唱えるだけでも良い。この技の名は』
鈑金の隙間から、光の力が可視光として迸る。
『リーチ・フィスト』
その名が呼ばれるのと同時に義腕が高速で伸長し、導線上のカゲを貫いた。
「わぁっ⁉ 伸びた!」
『まだまだこんなものじゃないよ』
再び義腕が縮み、今度は小刻みに振動し始める。
『これは少し扱いが難しいけど、多分慣れればある程度は操れるようになると思うから頑張って。そしてこの技の名は』
再び、義腕が高速で伸長する。しかし先程の直線的な軌道では無く、不定期なタイミングで鋭角から直角の角度で滅茶苦茶に折れ曲がり、周囲のカゲをまとめて打ち抜いた。
『リーチ・フィスト・ディストーション。かっこいいと思わない?』
『それについては議論の余地があるんじゃないか』
「あ、三色さんも話に参加するんですね」
『さて、この辺の雑魚は今ので大体倒せたかな。隙間が残っているうちに早く進みな』
「分かりました!」

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その⑥

「それでは、失礼します。本当にすみません、村崎さん、三色さん。お世話になりました」
部屋から出ようとする剛将が頭を下げ、気絶から目覚めていた花もそれに続いて一礼した。
「前に使っていたのの代わりのP.A.まで、ありがとうございました。今回は何もできなかったけど、いつかきっと、この村を救ってみせますから!」
「うんがんばれー」
花の言葉に無感情に答え、部屋を出る2人の後に続くように、明晶は小型ドローンP.A.を飛ばした。
『へいモシモシお二人さん? ワタシだ、プロフェッサー・アメシスト』
すぐに内蔵スピーカーを通じて、二人にコンタクトを取る。
「あれ、この声……村崎さん?」
『うんまあそうだけど……この小屋を出た瞬間、君たちが押し潰されたあのカゲの波が襲ってくる』
「ええっ」
『そんなに怖がる必要も無いよ。その義腕があるからね』
「ど、どう使えば……」
『たしか、それは光の力で動くって話はしたよね? 本物の腕みたいに正確に動かすために光の力を隅々まで行き渡らせる都合上、それで殴れば普通にカゲ倒せるんだよね』
「そうなんですか? あ、でも流石にあの密度を腕1本で相手は厳しいんじゃ……」
『大丈夫。色々と仕掛けはあるからね。そこで君らの帰り道をチュートリアルにしたいんだけどさ。こっちからもサポートするから、遠隔操作を許可してほしいんだけど』
「どうすれば……」
『許可すると言ってくれれば良いだけだよ。何なら頭で思うだけでも良い』
「あ、はい。……きょ、許可します」
剛将がそう言った瞬間、彼の意思に反して義腕がぐねぐねと動いた。
『オーケイ、動かせるようになった。それじゃあ実演しながら説明してあげよう。まず小屋を出て』
「了解です」

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Metallevma 〈企画要項〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「Metallevma(メタルヴマ)」。
鉱物を核に生まれたヒト型の存在“メタルヴマ”の物語を皆で描いていく企画です。
まずはとりあえず設定です。

・メタルヴマ Metallevma
鉱石を核に生み出されたヒト型の“何か”。
身体のどこかから核と同じ鉱石が生えている。
核になっている鉱石の名前を名乗っている。
核になった石の石言葉や性質にちなんだ特殊能力を持つ。
核の鉱石が健在な限り死ぬことはないし、食事の必要はない(食事は嗜好品程度と捉える者が多い)。
性別はないが、同じ鉱物種を核とする者をきょうだいや家族、一族として認識する。
おしゃれ好きな者が多く、皆個性豊かな格好をしている。
その昔、ある王が自らのしもべとして生み出したのが始まり。
そうして生み出された原初のメタルヴマが自らの同族を生み出していったことで数を増やしていった。
しかし数が増える内に人間に歯向かうようになり、やがて人間の住む世界から追放されてしまった。
現在は人間の住む世界のすぐ傍にある世界“ミクロコスモス”で暮らしている。

・ミクロコスモス Microkosmos
メタルヴマ達が住む小さな異世界。
人間達の住む世界から様々なモノが流れ着く。
住民であるメタルヴマ達は一族ごとの派閥に分かれて激しいナワバリ争いを続けている。
現在はメタルヴマ達が人間の住む世界を真似て人間世界顔負けの都市が造られている。

開催期間はとりあえず9月が終わるまでで、形式・投稿回数は特に問いません(あ、公序良俗は守ってね!)。
投稿作品にはタグ「Metallevma」(スペルミス注意)を付けて投稿してください。
難しめの企画ですが、企画趣旨に大体合っていればOKですのであまり気負わずにご参加ください。
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皆さんの参加お待ちしております‼︎

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その⑤

目を逸らしこそしたものの、その少年、剛将の口ぶりに悲壮感は無かった。
「……おや? そんなにショックじゃない?」
「いえ、その……僕たち、部隊の中じゃ年下の2人で、他の人たちは僕たちだけでも逃げるようにって、庇ってくれたんです。…………だから、仮に死んでたとしても、まあ、そうかな……って」
「タフだねぇ……。それじゃ、そっちのハナちゃんだっけ? その子も起こして早く帰ってもらおうかな。いつまでもこんな場所にいるものじゃないからね」
「はい……あ、でも、僕たちのP.A.ってどこに……」
「さあ? 親友、見た?」
吉代は首を横に振って答える。
「いや、見てないな。何か適当にくれてやったらどうだ?」
「それならもうあげたじゃない。まあハナちゃんには何か適当に都合してあげようかね」
そう言って明晶は机に立てかけておいた自動小銃型P.A.を花の手元に置き、剛将を見上げた。
「君の義腕にはいろいろと仕込んであってね。戦闘用P.A.としても使えるようにはなっているから、持って行ってくれて良いよ。使い方は帰り道で教えてあげよう。どうせ必要になるし」
「あ、はい。ありがとうございます!」
頭を下げる剛将にひらひらと手を振って応え、明晶は花を起こすために肩を揺すったり頬をつついたりし始めた。

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その④

「でもその子すごいよねぇ。あの密度のカゲの中で無傷だなんて。むしろなんで気絶してたんだろ」
「いやあの気持ち悪いカゲ相手じゃ正気保ってるのもキツイっすよ……あ、彼女を助けてもらったのは、ありがとうございます」
「うん、後でワタシの親友にお礼言っときな」
「あ、はい」
2人の間に沈黙が流れて数分、げんなりした様子で吉代が部屋に入ってきた。
「おかえり」
「ん、死ぬかと思った」
「それだけは無いでしょ」
「意外とそうでも無いんだ」
吉代の手首のデバイスには『255』と表示されている。
「すごい、残り2割くらいじゃん。あ、紹介するね、君が助けてきた……あれ、名前聞いてないや。ごめん、2人何て名前だっけ。というかワタシらも名乗ってないよね」
「プロフあんたその状態であのノリで話そうとしてたのか……」
呆れて溜め息を吐きながらも、吉代は明晶の隣に立ち、少年と向かい合った。
「どうも親友。それじゃ、ワタシらから自己紹介させてもらおうか。ワタシは村崎明晶。この村唯一の『生き残り』にして、この解放戦線の技術担当だよ。“プロフェッサー・アメシスト”と呼んでくれたまえ。こっちは我が親友にして戦友にして、あと何か色々の三色吉代。君らの名前も聞かせておくれ」
一息に言い切り、明晶は催促するように指を動かしてみせた。
「えっと、僕は金沢剛将(カナザワ・ゴウショウ)、彼女は佐原花(サハラ・ハナ)。県立鉱府光明学園中等部普通科の、どっちも2年です。今日は6人部隊で来たんですけど、他のみんなは……」
「多分、もう駄目だろうねぇ。君たち2人が生きていただけで十分奇跡だもの」
「そうでしょうね……」

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その③

「オヤ、起きたね?」
少年が目を覚ましたのと同時に、明晶が声をかけた。その目はモニタに向けられており、少年には完全に背を向けている。
「ここは……」
「ワタシの秘密基地だよ、少年。しかし君は幸運だったね。ワタシの親友が君を見つけてくれたおかげで、君は今辛うじて生きているわけだ。まあ無傷じゃ済まなかったけど」
「……? あの、あー、すんません。ちょっと、話についてけないんだけど……」
「んー? あー……」
椅子を回転させ、明晶は少年に向き直り、にたりと笑って彼を指差した。
「君が今、身体を支えているその右腕」
「え、…………わあ何だこれ!」
金属製の義腕は、少年の意思に従って通常の人体と変わらないほど自然に動作しており、それ故に少年も実際に視認するまで気付かなかったのだ。
「私の自作ギア……まあP.A.だね。細い螺旋状のパーツを何枚も、何重にも組み合わせ、その伸縮によって身長145㎝から185㎝までの身長の人間に対応した特製義肢、名前は特に無い。元々君のための品物じゃなかったけど……まあ味方は多い方が有利だしね」
「……ぎ、ぎし?」
「そう義肢」
「え……それじゃあこれ、え、僕のこれ、腕無くなってるんすか⁉」
「うん。カゲに浸蝕されてたからねぇ。それしか無かった」
「ま、マジか……あの、それはありがとうございます」
「良いの良いの。恩義さえ感じていてくれれば。ついでにもう一つ恩着せといてあげようか?」
「え、何ですか」
少年が問い返したのとほぼ同時に、屋外から破壊音が響いた。
「え、何⁉」
「お、来たか。ワタシの親友が」
荒々しい足音が近付いてきて、吉代が部屋に入り、気絶した少女を1人床に放り投げた。
「わぁ乱暴。駄目じゃない女の子を乱暴に扱っちゃ」
「入り口壊した。ちょっと何とかしてくる」
「あー……そういうこと。行ってらっしゃい」
吉代を見送ってから、明晶は呆然とする少年の前を通り、気絶した少女を抱き起こし、壁際に寄りかからせてから再び椅子の上に戻った。
「はい、恩その2」

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ:その②

「こいつで、カゲ化した部分よりちょっと上からスパっとやるのさ」
「……止血とかは」
「大丈夫。切断と同時に切断面にバリアを張って止血する仕掛けになってるから」
「あぁ……そうなんだろうとは思ってたが、やっぱりP.A.なのか」
「うん。一応アフターケアも用意してるけどね。万が一ワタシか君がカゲに手足をやられた時のために。……さて、やるか。その子押さえてて」
メスを両手に持って立ち上がり、その刃を少年の腕に当てる。
「…………救命のためとはいえ、……人体に刃を当てるっていうのは、なかなか緊張するねぇ」
軽口のように言い放つが、明晶の手は震え、呼吸は少しずつ荒くなっている。
「プロフ」
「ん?」
「パス」
「あっ」
吉代がメス型P.A.を奪い取り、勢いのまま振りかぶった。
「っ、肩より10㎝程度先を狙って切断して!」
「了解!」
まだ人間的な腕の根元部分に、メスが入る。その刃は光の力によってほぼ何の抵抗も無く肉も骨も切断し、その切断面には光の壁がぴたりと貼り付いて完全に密閉した。
「いやぁ……ありがとうね、親友」
「ん」
「ここからはバリアを構成してる光の力を、人体の代替パーツに変形させて、自然治癒を待つ」
「さすがにこのバリア1枚分で腕全部補うのは無理じゃないか?」
「そりゃそうさね。だからこれを使う」
そう言って明晶は、未だ冷気を吐き出し続ける箱の中から、もう一つのP.A.、金属製の義腕を取り出した。

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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その①

「ぁー……増えてきたねぇ、新型」
ドローンのカメラが映す映像に苦笑しながら、明晶は光の力を回復する薬剤を一口吸った。
映像を出力したモニタには、数日前に彼女が潜むトタン小屋を襲撃したものと同タイプのカゲの姿が多く見られていた。
「せっかくだし、名前でもつけてあげようかな。ちょっとは愛着も……いや湧いちゃ駄目なんだけど」
ケラケラと笑っていると、部屋の外から荒々しい足音が近付いてきた。
「んー、何だい親友、今日は随分と激しいエントリーじゃないか。そんなにワタシに会いたかったのk」
「プロフ! 輝士拾った!」
「はぁん?」
怒鳴りながら部屋に入ってきた吉代の肩には、気絶した輝士の少年が担がれていた。
「……何その子? まだ若いね、15歳くらい?」
「知らん。それよりちょっとマズいことになってんだ」
吉代が床に下ろしたその少年の右腕はカゲに浸蝕され、新型の触手のように異形化していた。
「うわぁ……カゲに堕ちかけてる」
「光の力を使い果たしてるんだ。これ、どうにかできないか?」
「…………」
顎に手を当てて考え込む明晶の背後で、ドローンのカメラ映像が途切れ砂嵐に変わった。ドローン機体そのものが、カゲに撃墜され破損したのだ。
「プロフ?」
「……いやね。まあ道はあるよ、親友。君の特別強い光の力に中てられて、彼の身体を浸蝕するカゲもノロマになってるんだ。これは僥倖だったね」
言いながら、明晶は床下収納を開き、その中に隠していた鍵付きの箱を滑車で取り出した。
「……実を言うと、カゲに染まった肉体を治療する方法はちょっと思いついてないんだ、悔しいけど。だから、カゲに堕ちた部分をまるっと『斬り落とす』」
箱を開くと同時に、冷気が白い霧となって漏れ出す。その中から明晶が取り出したのは、無数の小型機械や配線が繋げられた、刃渡り30㎝、全長1mはあろうかという巨大な外科用メスだった。

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理外の理に触れる者:怪異使い対怪獣使い

「やあ相棒。ちょっと助けてくれるかな?」
勢い良く足元に転がってきた水呼に求められ、亮晟は無言で彼女の身体を持ち上げた。
「どうした?」
「やー、あの子にちょっと絡まれてね?」
「ほう」
亮晟が見上げた先には、異形の腕と顎を具えた月がにたにたと笑いながら近付いてきていた。
「……お前何したんだ相棒」
「そう言わないでよ。君の相棒を胸張って名乗れるようになりたくてさ、私もそこそこ頑張ってたんだよ?」
「へえ」
「まぁー……その結果ちょっとだけ人の身を外れちゃったよね」
「それで、“総大将”に目を付けられたと」
「ははは。まー私は女王様に後見されてるし? いざとなったら助けてもらえるんだけどね? あんな小さい子に危険な目に遭ってほしく無いじゃん?」
「……だからフリーの俺に相手しろと?」
「そゆこと。ほらほら相棒、いっちょカッコよく決めちゃってよ」
水呼が亮晟の背中に隠れ、月の方を指差した。彼我の距離は既に5mを切っている。
「んぉー? “モンスター”やんけ。怪獣はまだ喰った事無かったからなァ……ちょぉーっとバカシ味見させて?」
「……やってみろ。『病霞』、来ませい。『装竜』……変身」

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再掲(3度目)企画投稿:蘇れ長編!

2度もの失敗を乗り越え、三度目の正直な企画投稿です。今度こそ反映されてくれ。

その名も『蘇れ長編!』。
ここに投稿している人の中には、かつて長編小説シリーズを書いていたor今現在長編シリーズを書いているって人も居るんじゃないかと思います(ナニガシさんは過去にやってた勢)。
今回の企画は、自分が過去に書いていた長編小説の『世界観』を使って、新たに小説を1エピソード以上書いてみようというものになります。

ここでいう「過去に書いていた長編小説」の定義ですが、皆さんが過去に、「①同シリーズで2本以上」「②ポエム掲示板に投稿していた」「③小説形式、或いは世界観を明確に同じくするポエム形式の作品である」ことが条件となります。
つまり、無事に完結したものでも、そこに至らず自然消滅した者でもOK。
登場人物や物語の舞台、時系列が原作に沿っている必要もありません。飽くまでも『同じ世界のいつか、どこかで起きていたエピソード』が欲しいのです。

ナニガシもやる予定だし何なら既に出来ているので、皆さんもこの機会に、自分が過去生み出した世界を再び引っ張り出し、振り返ってあげてください。
参加していただける場合は、タグに『蘇れ長編!』と入れてください。

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ポエム掲示板大花火大会2023 〈企画要項〉

どうも、テトモンよ永遠に!です。
突然ですが企画です。
タイトルは「ポエム掲示板大花火大会2023」。
文字通りポエム掲示板のみんなで一斉に「花火大会」をモチーフないし舞台にした作品を投稿しようという企画です。
開催期間は8月7日15時〜8月25日24時まで(フライング・遅刻も可)。
参加方法は「花火大会」をモチーフ・舞台にした作品にタグ「ポエム掲示板大花火大会2023」を付けて投稿すればそれでOK!
形式は問いません。
なお、できたらでいいのですが投稿作品は「投稿時間帯に沿った」内容にして下さるようお願いします(夜なら花火大会をモチーフにした作品、昼間なら場所取りや屋台巡りなど)。
普段の企画はやたらと設定を凝るクセのあるぼくですが、今回はめっちゃシンプルにしました!
皆さんの想像の力で素敵な花火大会になることを楽しみにしております!
ちなみに当企画は2019年にこの掲示板で開催された企画「掲示板夏祭り」のオマージュ・リスペクト企画となっております(なおオマージュ元の開催者さんには許可を取っていません、ここにお詫び申し上げます)。
雰囲気はオマージュ・リスペクト元をイメージしているので、「事前にイメージを膨らませたい!」って人はまとめ「夏祭り‘19 前」「夏祭り’19 後」をご参照ください。
何か質問などあればレスからお願いします。
再度になりますが、皆さんのご参加楽しみにしております! 

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第1回SOLポエム掲示板夏の企画乱立祭 Introduction その②

その①が無事掲示板に反映されることを祈って、その②です。
レギュレーションの続き、企画発案者編。
2,どんな簡単なものでも壮大なものでも愉快なものでも構わないので、何か企画を考えてタグに『夏の企画乱立祭』または『夏キラ』と入れて「こんな企画用意しました!」という内容の投稿をしてください。自分や他の人が以前に出した企画のアイディアを流用したり応用したりしても良いけど、他人の過去企画を使う場合礼儀と覚悟は重要です。
3,企画投稿の際は、その企画に参加したことを示すためのタグを設定してください。普段のよくある企画と同じです。
4,企画投稿の締め切りは8月31日まで。大学生なんかは9月まで夏休みが続く人も居ると思いますが、9月からは企画参加組で楽しんでください。
5,企画をつくったら、できるだけ立て逃げせずに自分でも企画に参加してください。できるだけで良いので。

意外とスペースが残っているので一般参加者編も。
6,「お、この企画良いなー」という企画があったら参加してみてください。
7,複数の企画に同時に引っかかるような作品を作って、複数企画に同時参加しても良いです。参加した企画の分のタグは全部付けましょう。4つ以上の企画に同時参加するような猛者は頑張って工夫してみてください。
8,一つ注意。企画参加投稿に『夏の企画乱立祭』『夏キラ』のタグをつけることは推奨しません。単純にタグの上限が3つしか無いからです。タグで遊びたい人も居ると思うので。

最後に一つだけ。
9,以上のレギュレーションは全て努力義務です。しなかった、できなかったことで何かが起きるということは全くありません。夏キラと無関係の企画が立っていても面白いので無問題です。掲示板を盛り上げることをこそ最大目標として各人楽しんでください。

以上の9点を目安に、この夏を面白愉快に楽しみましょうぜ。
本格的な夏休み突入まではまだ間があるんじゃないかと思うので、質問やら改善案やらがあったらレスください。反映します。

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×××××中学校の七不思議 甲斐田正秀 12

 次の日の放課後。
 部活に参加した俺に、件の先輩がやって来た。部活の始まる前からソワソワした様子で辺りを見回していた。俺を見つけるとぱっと明るい顔で俺の名を呼びつつ駆け寄ってきたのだ。
「で、昨日どーだったよ!?」
 やっぱりな。
 先輩はおっかなびっくり訊いてきた。
「どうだったって……」
 甲斐田正秀はいましたよ。彼と話して、彼は噂とは全く違う人物で、空襲で死んだ中学生でした。
 ……とは言わなかった。言いたくなかった。
 あの少年は、そうやって大っぴらにして恐れられて良い対象ではない。もっと純粋で幼くて、切ないものだ。会って、直接話を聞いてやらなければならない。あそこに行こうと思った者だけが密かに確かに知って、ずっと心に止めておけば良いのだ。彼もそれを望んでいる。
 だから俺は
「何もありませんでしたよ」
 そう言った。
「……なあんだ、そうだよな、ははは、期待して損しちまったぜ」
「そうっすよ。それより、あれから大変だったんすよ!昇降口全部しまってて、職員室行ったら何でいるんだってチョー怒られて!」
「ははは、どんまーい」
「元凶先輩っすよ!」
「へへへ」
「もう!」
「おい!そこうるせーぞ!」
「すいません!」「すいません!」
 またも先生に怒鳴られ、部活を始めた。

 あれ以来、俺はあの時間にあの教室に行くことはなかったけど、後輩には教えてやった。
 甲斐田正秀の『恐ろしい噂』を。


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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー の設定②

プロフの自作改造ギア一覧
・光の力貯蔵システム
明晶が住んでいる小屋の入り口に隠された装置が、出入りした人間の光の力を一部吸収し、別の機会に使うために貯蓄する。貯蔵された光の力は電力・電波の代替に加え、各種改造ギアの動力源になったり、光の力を貯めるのに使われたりする。
・カゲ除け
対象範囲内に光の力を流し込み、接近したカゲを押し返すように力を働かせることでカゲを寄せ付けない設備。
・腕時計型デバイス
装備者の光の力の現在値と割合を画面に表示する。現在製作されているのは2台のみ。2台の間での通信機能、光の力で手足を保護し格闘戦を可能にする機能がある。P.A.の常識に真っ向から喧嘩を売るシリーズ。
・ドローン型P.A.
カメラとマイク・スピーカー付きのドローン。電気の代わりに光の力を使うため、光の力が尽きない限り動かし続けられる。電波の代わりに光の力で交信するため、光の力が尽きない限りどこまでも飛ばせる。
・銃型P.A.
弾倉が特別製。予め光の力を弾丸の形に形成してストックしておける。
・遠隔シールドP.A.
光の力を透明なバリアに変換して空中に展開できる。射程距離は使用者の光の力にもよるが大体10~20m程度。一度にバリアに変換できる光の力の上限は、使用者の光の力に対して一定の割合(1%弱)で決まっていて、面積を広げるほど薄く脆くなるし、耐久力のために厚みを出せば小さくなる。
・監視カメラ
動力源は光の力。常時光の力が流し込まれているので、カゲにもみくちゃにされても壊れない。
・迎撃システム
監視カメラと連動して、カゲが接近すると光の力の弾丸で迎撃してくる。
・変化弾銃
光の力を通常より大型の弾丸に変換して発射する銃。仕様上大口径。任意のタイミングで弾丸を構成する光の力の一部をシールドに分裂・変換し、跳弾させて弾道を変化させる。その性質上、弾道変化を行う度に威力が減衰していく。ちなみに外見はほぼコードレス掃除機。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー の設定①

登場人物
・村崎明晶(むらさき・あきら)
「プロフェッサー・アメシスト」を名乗る女性。髪は腰元まで届くほど長く、目つきの悪い目元には濃い隈ができている。村外れのトタン小屋に住み、改造P.A.の研究を続けている。既に3年この小屋から1歩も出ていないが、村の状況は知っている。現在の目標は村の解放。彼女自身の持つ光の力は悲しいほど弱く、単身では戦えない。光の力の量は「6」。これはリボルバー型P.A.を6発撃ってちょうど光の力が尽きたことから計算したもの。公的機関の診断は受けたことが無いため、完全に我流。
・三色吉代(みいろ・よしろ)
明晶に協力する青年。類稀なる強さの光の力の保有者で、明晶の改造ギアを使いこなせる貴重な人材。その力で村の解放に努めている。住所は村の外、元の村民たちが移り住んだ仮拠点の一つ。ほぼ毎日明晶の小屋に通っている。光の力の量は「1250」。

洞志村(どうしむら)
明晶達が住んでいた村。3年前に突如大量のカゲに浸蝕され、人間が住めない環境になった。数㎞離れた位置にあるSTIから、2度大規模討伐部隊が派遣されたが、その両方が全滅という結果に終わった。
占拠しているカゲは未確認の種類であり、耐久力が低い代わりに流動性に優れ、体内を移動しているためかコアの位置も不確定。ヌシも見つかっていない。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その⑨

「終わったァッ!」
乱暴に足音を立て、吉代が部屋に入ってきた。
「おつかれ、親友。一応カゲ除けはどこも壊れてないよ。単純にあのカゲが強かっただけみたい」
「ああ、あと、あれと同タイプのカゲ、結構増えて来てたな」
「そっか。じゃあ防衛機構を増やさなきゃかな。もうP.A.はできてるからさ、余裕がある時に取り付けに行ってくれない?」
「あー、じゃあ帰る時にやっとく。場所は?」
「この地図参照」
明晶から図面を手渡され、吉代はちらりと見てから折りたたんでポケットに仕舞った。

「……そういえば」
数十分の沈黙の後、吉代が不意に口を開いた。
「どしたの親友」
「光の力、もう回復したのか? さっき銃3発も撃ってたけど」
「あー、あれね」
明晶はモニターを見つめたまま、自分のデバイスの画面を吉代に向けた。
「……点いてないじゃねーか」
「うん。全然回復してない」
「なんで撃てたんだ」
「カゲ除けと同じだよ、親友。君の光の力を勝手にちょっともらってストックしてたのを、弾倉に詰めてたんだ。この技術、特許申請したらお金になるかな」
「さあ……まあ便利ではあるな」
「勝手に使ったの怒ってないの?」
「俺の光の力は4桁あるらしいからな。今のところ不都合があるわけでも無いし、それだったら天才技術者サマの護身用に役立ててもらった方がずっと有意義だ」
「わぁいありがとー。ちなみにここの設備は全部、君の光の力を吸って動いてるからね?」
「……まあ、許す」
「やったぁ。今日はもう次の改造P.A.製作に費やすから、もう帰っても良いよ? 次は弾道が曲がる銃を作るんだー」
「そうか頑張れ」

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister おまけ Ⅱ

企画「鏡界輝譚スパークラー」参加作品「Crystal Brother and Sister」のおまけ…キャラ紹介のその2です。

・福貴迫 弾(ふきさこ はずむ)
所属STI:幕針文化学院
学年:高等部美術科1年
所属部隊:加賀屋隊
使用P.A.:ハルバード型、拳銃型
イメージカラー:ピンク
水晶のチームメイトの1人。
可愛いものと楽しいことが大好き。
「面白そうだから」という理由で「加賀屋隊」に入った。
「加賀屋隊」の斬り込み隊長。
中等部から幕文に通っている。
くせっ毛が特徴的で水晶より背が低い。
いつもカーディガンを着ており、ピンクのリボンタイを身に付けている。

・熊橋 寵也(くまはし ちょうや)
所属STI:幕針文化学院
学年:高等部理数科1年
所属部隊:加賀屋隊
使用P.A.:マシンガン型
イメージカラー:緑
水晶のチームメイトの1人。
理知的で基本冷静だがふとした時に感情的になる。
弾のことが心配で「加賀屋隊」に入った。
「加賀屋隊」のブレーン。
中等部から幕文に通っている。
黒縁メガネをかけている。
いつもセーターを着ており、緑のネクタイを身に付けている。

・加賀屋 石英(かがや せきえい)
所属STI:澁谷學苑
学年:高等部3年
所属部隊:クルセイダース
使用P.A.:刀型、拳銃型(共に本編未登場)
イメージカラー:白
水晶の実兄。
誰にでも心優しく、様々な人々を惹きつけるカリスマ性を持つ。
また、類稀な戦術眼を持つ。
東鏡の名門STI「澁谷學苑」に初等部から通っており、代表部隊「クルセイダース」の隊長を務めている。
白いセーターを着ている。

これでキャラ紹介は全て終了です!
何か質問などありましたらレスください。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その⑦

「……あれ、死なない」
明晶が間の抜けた声をあげた。撃たれたカゲは反動で仰け反ったものの、銃創は少しずつ塞がっていっているのだ。
「ごめん、殺しきれなかった」
「いや良い、こっちで片付ける」
カゲが怯んだ隙を狙い、吉代が斬り上げる。両断されて体外に投げ出されたダークコアを明晶が正確に撃ち砕き、そのカゲは遂に消滅した。
「ふぅ、危ないところだった……」
「畜生トドメ搔っ攫いやがって……。……ところでプロフ、なんでカゲが入ってきてんだ」
「さあ……あのカゲが強かったからかな? そもそも『カゲ除け』って、この小屋の壁全体に光の力を通して、近付いたらちょっと押し返しつつ微弱なダメージを与えることで奴らに近付かせないようにしてるんだよね。これに勝てるほど強いカゲなら、まあ入って来れるだろうねぇ。あいつらの浸蝕能力はすごいし」
「なるほど。……つまり、今この小屋、穴開いてるのか?」
「多分ね」
「おい待てヤバいんじゃねえのか?」
「うんヤバい。この小屋は、この村にとっての『最後の砦』だ。突破されたらワタシ達の希望は完全に潰える。というわけで、直してきて?」
「言われなくても」
そう言って吉代は駆け出した。
「道具と建材は入ってすぐ右……だから中から見て左の壁の隠し扉に入ってるからー」
吉代の背中に呼びかけ、明晶はモニター越しに防衛システムの点検を始めた。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その⑦

「吉代!」
明晶が叫び、吉代は咄嗟に頭を下げた。直後、彼の頭上を伸びてきた腕が通り過ぎ、そのまま明晶の首を乱暴に掴んだ。
「っ!」
「なっ……今役に立つか!」
吉代はデバイスを起動し、拳を腕に叩きつけて千切り飛ばした後、即座に残った腕を叩き落とした。
「助かったよ親友……ワタシの首、大丈夫かな」
「どっぷりカゲに染まってる。切り飛ばすか?」
「冗談言えるってことは無事みたいだね。けど……」
明晶が自身の手首を指すと、デバイスの画面は暗転していた。
「ワタシの光の力はもうからっけつでね。守って?」
「言われなくとも」
侵入してきたカゲに向き合った吉代の背中を眺めながら、明晶は光の力の回復のために新しい缶を開け出した。

2人のいる部屋に、カゲが入ってくる。屋外に蠢いているカゲ達のようなおおよそ人型に近い形状のものとは全く異なり、体高は約2.5m。既に再生している前肢は異様に長く、肘に当たる関節は3か所、指は3本具わっている。
また、老人のように折れ曲がった背中からは6本の触手が生えて滅多矢鱈に暴れており、全身の皮膚は爛れたように剥がれ、随所から垂れ下がっている。
「……これはまた、随分と変わった姿だね」
「気持ち悪いな」
カゲが伸ばしてきた4本の触手を、吉代は次々弾き返す。
「……あ、もしかしてこれがヌシかな?」
「だったら話が早くて助かるけどな……あ」
吉代が防ぎ損ねた触手が、明晶に向かって行く。その直撃より早く吉代が左手を明晶に向けると、光の力で構成された透明な壁が彼女の眼の前に出現し、触手の攻撃を阻んだ。
「悪い、通した」
「だいじょぶ。遠隔シールドもばっちり動くね。あ、親友、これ使って」
明晶の放り投げた刀型P.A.をその場で回転しながら受け取り、吉代は姿勢を低くしてカゲに接近し、抜刀の勢いのまま斬り付けた。カゲはそれを両腕を交差させて防ぎ、触手による反撃を試みた。
「村崎!」
「ああ、バッチリ狙える」
明晶がモニターの裏に隠していた銃型P.A.を取り、カゲの眉間と心臓部を撃ち抜いた。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その⑥

「戻ったぞ、プロフ」
「見てたよ親友、ご苦労様」
「そっちこそ」
「ええ? ワタシは大変なことなんて何もしてないよ?」
「そういうのは机の上の缶を隠してから言ってくれ」
吉代が指差す先、明晶のついている机の上には、『Photonic Dorper ver.1.5.0』の空き缶が既に4本転がっていた。
「仕方ないんだよぅ。何せ私の光の力はこれっきりだからね」
明晶の手首のデバイスは、赤く染まったゲージと『1』の数字を表示している。
「ドローン飛ばすだけで馬鹿にならないんだ。電波とバッテリーの両方を光の力で代用してるからね」
「…………」
「あ、ワタシがあげたデバイス、どうだった?」
そう問われ、吉代は思い出したように右腕のデバイスを見た。
「あー、結局使わなかった。まあ邪魔にはならないから良いか、って感じだな」
「へー。あ、光の力どれくらい減った?」
「……今1133だな。5だけ減った」
「ワタシなら死ぬね」
「だな……ん」
不意に、吉代が背後を振り返った。
「どしたの」
「いや……一応、入ってくるときにはちゃんと扉も閉めたし鍵もかけたし、カゲ除けも動いてるんだろ?」
「うん? ……うん、問題無く動いてる」
明晶もモニターを確認してから答えた。
「じゃあ……この足音は何だ?」
吉代のその言葉とほぼ同時に、二人のいる部屋の入り口に、腐り爛れたような禍々しい黒い手がかかった。

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野良輝士市街奪還戦 登場人物

・下野真理奈(しもつけ・まりな)
部隊内での役割は中~遠距離からの援護射撃と全体を俯瞰しながらの指揮。アプリで通話する時、一人だけハンズフリーイヤホンを使っている。P.A.故の補助効果を抜きにしても謎の狙撃能力の高さを持つ。
使用P.A.:猟銃。スコープは取り外し可能で、攻撃メインの時は外し、指揮メインの時は設置して望遠鏡代わりに使う。
・和泉宗司(いずみ・そうじ)
部隊内での役割は前衛としての敵の翻弄と破壊力が必要な敵への攻撃。特技は投擲で、特にある程度の質量があるものを狙った場所に投げるのが得意。
使用P.A.:戦槌。片側が錐状に尖っている。片手でもギリギリ使える程度のサイズ。投げたりもする。
・門見初音(かどみ・はつね)
元々の仲間たち全員から渾名で呼ばれている。部隊内での役割は前衛での補助役とヘイト分散。知り合いにSTI所属の人間がいて、その縁でP.A.製作業者とも繋がりがあり、彼女が居なければ野良輝士たちは武器を用意できなかったので感謝されて然るべき。
使用P.A.:片手半剣。全長約1.5m。地面や壁に突き立てて足場代わりにすることが多い。
・月舘灯(つきだて・あかり)
本来の部隊内での役割は中距離での支援と移動支援。P.A.の性質上機動力が最も高いので、前線に出ることも多い。
使用P.A.:鉄線銃。射程距離は約50m。巻き取り機構はあるものの、人間の重さを引き寄せられるほどでは無いため、移動時にはワイヤー部分を掴んで自力で引っ張る必要がある。銛みたいな先端が当たると普通に痛い。
・田代小春(たしろ・こはる)
STIである県立鉱府光明学園に通う少女。カゲに沈んだ町でどうにもできずに身を守っていた。後に部隊に加入する。
使用P.A.:折り畳み防楯。原色の迷彩模様で彩られた4枚の金属板で構成されている。

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その⑤

『そういや、コントローラーとか机の上に見えなかったけど、どうやって動かしてるんだ?』
「何、単純な疑問かい?」
『単純な疑問』
「普通にチェストに入れてただけだけど。そもそもドローンも隠してたでしょ」
『たしかに。……カゲが来た。切るぞ』
「はーい」
通信が途切れて数秒後、ドローンに付属したマイクが戦闘音を受信した。
「お、始まったねぇ。それ行けドローン」
ドローンは戦闘を繰り広げる吉代とカゲ達の頭上を通過し、カゲの犇く村の中央に移動した。
ドローンに設置したカメラから受信された映像は、モニタ上に監視カメラの映像とは別ウィンドウで表示される。
(さて……無駄だとは分かっているけど)
カゲ以外に動くものは無いかと画面を注視する。勿論そんなものがある訳も無く、すぐに諦めて明晶はドローンを小屋に戻すよう飛ばした。

「さて……やるか」
回転刃を具えた草刈り機型P.A.のエンジンスターターを引き、吉代はカゲ達に相対した。
「かかって来い、侵略者ども」
吉代の挑発と同時に彼に飛びかかったカゲ達の第一波は、吉代の薙ぎ払いによって膝の辺りを切断されてその場に倒れ、それに躓いた第二波、さらにそれに衝突した第三波と続き、カゲ達の手が届く前に最下層のカゲは他のカゲの重みで弾け飛んだ。
「こうなれば楽なんだよなぁ」
のたうつカゲ達を、吉代は単調作業のように1体ずつ切り殺していった。

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野良輝士市街奪還戦 おまけ

……
「うえぇっ⁉」
最初のビルの屋上に、小春の驚嘆の声が響いた。
「そんなに驚くことかな?」
先に辿り着いた灯に助けられていた真理奈が首を傾げながら問い返した。
「いやはい、落ち着いて聞いてくださいね」
「新入りちゃんこそ落ち着いて話してね?」
「えっと……まず、そもそもP.A.を手に入れるのって、STI以外だとすごく難しいんです」
「へー。そこはかどみーちゃんに頼り切ってたから分からなかったよ」
「はい、皆さん初音さんに感謝すべきです。……だから、皆さん全員がSTIに入ってないってのはあまりに衝撃的過ぎまして」
「なるほど理解した」
「えっと……灯くん、でしたっけ」
突然話しかけられ、灯が僅かにびくりとした。
「な、何だよ」
「灯くん、私と同い年って聞きましたけど、進路はもう決めてるんですか?」
「ああ、県立第二高校に……」
「私の通ってるSTIが中高一貫なんですよ。ほら、県立鉱府光明学園って、割と有名だと思うんですけど」
「ああー……知ってる知ってる。たしかこの間ラジオで特集組まれてたよな」
「はい。で、今からでもそこに変えません? 偏差値も近いですし。STI所属ならカゲの討伐報酬も入るし、P.A.のメンテナンスとかもやりやすくなるし、他のスパークラー達と情報交換できるし、メリットずくめですよ」
「ええ……」
「なぜそんなに消極的……」
「いや何かなんとなく……」

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その④

「というかこの技術、前に『それ』作ってあげた時に説明したよね? 『弾丸以外の形状に光の力を造形する』って」
明晶が指す吉代の左手首には、腕輪型のP.A.があった。これもまた、明晶が自作した改造ギアである。
「それでなんだけど親友」
「んー」
「ちょっとこれの試運転ついでに、ここの周りのカゲ狩ってきてくれない?」
「え、俺格闘の心得とか無いっすよ」
「だいじょぶだいじょぶ。君、何やってもそれなりに上手くいくじゃん」
「……まあ、いつも使ってるP.A.の補助用に使うくらいなら」
「よし来た。使った感じはこっちからも監視カメラで見ておくけど、戻ってきたら使用感の報告とかしてくれると嬉しいな」
「了解」
吉代が部屋を出た直後、明晶はチェストから1台のドローンを引っ張り出し、開け放しになった部屋のドアから吉代の後を追跡させた。
(さて……彼が働いてくれている間に、ワタシもやることやらなくちゃねぇ)
『Photonic Dorper ver.1.5.0』と印字されたアルミ缶の栓を開け、ストローを挿して中身を一口吸ってから手首のデバイスの通話機能を起動した。
「あーもしもし親友?」
『何だ、プロフ?』
「今、君の後に続いてドローンが飛んでいったんだけどね」
『ああ、後ろから近付いてくるこの音はそれか』
「ワタシが操縦してるんだ。ついでにこれも光の力で動かしてるから、P.A.といって差し支えないね」
『戦えるのか?』
「まあ……ローターが直撃すれば痛いんじゃない?」
『あとあんた、光の力めっちゃ低かっただろ』
「そこはドーピングしてるからオッケー」
缶を足蹴にして揺らしながら明晶は答えた。

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野良輝士市街奪還戦 その⑩

倒れ込んだヌシはそれ以上動かず、肉体は少しずつ溶け消えていった。それに伴い周囲の小型のカゲも奇妙な鳴き声を上げながら消滅していく。
「助かったぜ真理ちゃん……」
うつ伏せに倒れたまま、ガッツポーズを見せる宗司。
「……何やってんだ宗司お前」
「さっきまでカゲの群れが覆い被さってたんだよ」
呆れ顔の灯に答えながら、宗司はどうにか立ち上がった。
「……うえ? カゲ達もういない……?」
宗司と並んでカゲ達にもみくちゃにされていた小春も、宗司たちの話す声に気付いて立ち上がった。
「お疲れー小春ちゃん」
初音が小春を助け起こすと、携帯電話から真理奈の声が聞こえてきた。
『もしもーし? 疲れてるところ悪いんだけど、ちょっと助けてくれなーい?』
「ん」
「どうした?」
通話に参加していた初音と灯が反応する。
『最初のビルからちょっと落ちそうになってるんだけど』
「何があったらそうなるんだあの馬鹿は……ちょっと行ってくる」
灯が鉄線銃型P.A.で屋根に登り、そのまま真理奈のもとへ駆け戻って行った。
「……俺らも行くべ。真理ちゃんに何が起きてるのか見に行こうぜ」
「了解。ついでに小春ちゃんの顔見せもしよう」
「ああはい、よろしくお願いします……」

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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その③

「ワタシの光の力は見ての通り悲しいほど低くてね。この機械を動かすだけで精いっぱいだよ。けど、君は違う。君の光の力は人並み外れているからね、君なら使いこなせるだろう」
「さっさと言えよ、オプションとやらの内容を」
ぼやきながら、吉代はデバイスを腕に巻く。同時に画面が起動し、ほぼ完全に残った状態の緑色のゲージと『1138』の数字が表示された。
「ああ、もう一つのオプションはね、『素手によるカゲとの格闘戦を可能にする効果』だ」
「……は?」
光の力は、カゲから身を守りカゲを倒すことができる力である。しかし、その真価はP.A.(Photonic Arms)を媒体に出力しなければ十分な効果を発揮できず、基本的にカゲと格闘戦を行うことは不可能なのだ。籠手やメリケンサック型のP.A.を用いれば有効打を与えることも可能ではあるが、素手となるとカゲとの戦闘は不可能と言って良い。
それを理解しているからこそ、吉代の反応も訝し気なものだった。
「おや、信じてないね?」
「いやプロフ、あんたの技術は信じてんだ。けどなァ……流石にこれまでの常識を無視し過ぎだろ」
「うーん……ちょっと説明するとね……これと同じなんだ」
言いながら、明晶は机に立てかけていた猟銃型P.A.を手元に引き寄せた。
「いや全く分からん」
「君も使ったことあるから知ってるだろうけど、銃器型のP.A.は、光の力を弾丸に変換して射撃できるんだよね」
「それは知ってるけど……」
「よくよく考えてみれば、おかしくないかい? これらの武器が示す通り、光の力は『直接叩きつけてカゲにダメージを与える現象』に変換可能なんだよ。それなのに、その性質が飛び道具でしか発生しないなんて……」
「けど実際そうだろ」
「まあね。実際作ってて分かったよ。弾丸みたいな小さくて一瞬で着弾・消滅する物体に変換するまではどうにかなるんだけどね。格闘戦のためには、手足をエネルギーで包み込み、その状態を維持しなくちゃならない。これがなかなか結構難しくってね……」
「……それで?」
「大量の光の力を消費させることで、力づくで解決した」
「これはひどい」