月の魔術師【2】
「ごーはーん!!」
「分かったってば。何が食べたいんだい?」
ニトが呆れたように言いながらドアを開けると、ロマがぴょこぴょこ跳ねてニトに抱きついてきた。ニトは危なげなくロマを抱きとめる。
「ぱんけーき!」
「昨日も食べたじゃないか」
「あまいのすきー」
と、いつものように平和な会話を交わしていると…ピンポーン♪インターフォンが鳴った。二人は顔を見合わせる。
ニトの家はもともと田舎にあり、稀にニトの古い友人が訪ねてくる程度の来客しかなかった。数百年前、ロマが記憶喪失の状態でやってきたのが最後である。
「…誰だろうね」
「お、おまえのともだちじゃないのか?」
「さあ?うちには一応番犬もいるし、怪しい人ではないと思いたいけど」