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世にも不思議な人々61 見せる人その3

「つーかキタさん、どこに行ってたんだ?」
真琴が尋ねた。
「ちょっとハブアウィル次元にねー。バレないように上空600mくらいからこっそり見てただけだったけど、ネロちゃんとコマイヌがじゃれ合ってたり、黎君が他の異能力者から話聞いてたり、セイレーンさんが路上ライブしたりしてた」
「で、キタさん、いや、嵐山斎六さん?一体どういうことなのか説明していただきたいのですが」
初が切り出した。
「キタさんの能力は確か、『普通なら見えないものを可視化する』、だったはずです。空間に穴開けるとか別次元に行くとか、そういうのは範疇の外な気がするんですが」
「良い質問だねぇ。これだよ、これ」
そう言ってキタが自分の右眼を指差した。いつの間にかその眼にモノクルがかけられている。
「それは?」
「オータロー、ラモス、君達も能力発動時に、能力に話しかけられることがあるだろう?」
随分と久し振りの呼び名を使って、キタが説明を始めた。
「僕はあれを便宜上『能力生命体』と呼んでいるんだがね、『生命体』の名の通り、彼らはただ脳内に話しかけてくるだけのものじゃあない。実体があるんだ。その実体のほんの一部だけを借りたんだよ」
「へえ、『具象体』に似てるな」
先程まで離れた位置でネコと遊んでいたぬえが割り込んできた。
「うん、まあそういう考え方であまり間違っちゃいないよ」
「けどさあ、それとさっきの現象、どう関係するんだ?」
真琴が訊く。
「可視化を利用した幻覚の応用編みたいなもんだね。人間は外から取り入れる情報の七、八割を視覚に頼ってるんだ。その視覚を操れれば、偽薬効果の要領で、思い込みだけで幻覚を実体化させることも可能なんだ」
「無茶苦茶じゃね?」
「そこは能力の不思議パワーってことで。一部を借りたときは、どうやら能力の威力も上がるらしいし」
「へー。面白いなー。もしかして僕らもそれ出来たりすんのかな」
「まあ、能力側の気が向いたらね」
「あ、そういやお前、何ていうんだ?」
真琴が突然に吾魂に聞いた。
「あ、ぼ、僕ですかい!?………うん、僕は嵯峨野吾魂だ。それより前の名前はもう良いや。どうせ死のうとしてた身だしな。気が向いたら教えるよ。能力は『どんぐりころころ』。『志半ばにして死ぬとき、その遺志を他者に継承する』能力だ。よろしく」

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世にも不思議な人々59 見せる人その1

所変わって、主人公たちの住む街では。
初が本屋に小説の新刊を買いに行き、そこで参考書を見ていた真琴に遭遇し、なんやかんやで一緒に出てきたところにヌエを連れたキタが偶然出会し、その結果、第一コミュニティ+αという不思議な組み合わせが完成していた。
「へー、別次元から来た能力者か」
「マジか。まさかあのハブアウィル次元の人間に会えるとはな」
「そっちではそんなに有名なんで?」
「まあ、少しね」
「じゃあ、お前も『ネクロマンサー』とか『クラーケン』とかと会ったことあるのか?」
「いやー、あんまり他の異能力者とは話さなかったもんで。あ、けど二十五代前の僕が初代ネクロマンサーの誕生を見たことがあるぜ」
「マジで。良いなー」
「良いだろー」
と、そこに。
「やっと見つけたぞォッ嵐山斎六!!」
立ち塞がるように現れたのは嵯峨野吾魂。
「なあヌエ、お前、嵐山って苗字だったりしないか?」
真琴が尋ねる。
「しないなー」
「じゃあ……」
四人が揃って後ろを見た。
「馬鹿野郎共が!後ろにゃ誰も居ねえよ!んな古いネタをやんな!お前だよ!」
彼が指差したのは、何とキタであった。
「「え、えええええええ!?」」
初と真琴が同時に驚く。
「キタさん名前あったの!?」
「いやそれは当然として!そんな古臭い名前だったのか!?」
「悪かったね古臭い名前で。……そうか、君があの『アコン』か。で、何の用だい?」
「あんたには死んでもらう!それこそがもう遥か昔、六代目からの悲願だからな!」
「そんな武器も無しの丸腰でよくそんなことが言えたね。どうやって死んでもらうつもりだい?」
「え、……あっ!考えてなかった!」
「阿呆か」
「阿呆かな」
「阿呆だな」
真琴、初、ヌエの意見が見事に一致した。

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世にも不思議な人々57 受け継がれる人その2

少年が慌てて崖の下を覗き込むが、老爺の姿はもう遥かに下方にあり、見ること能わず。
「……何だったんだ今の」
不審がり考えていると、突然少年の頭の中に大量の情報が流れ込んできた。まるで、『六、七百年生き続けている人間の記憶がそのまま彼の頭に移植されているかのように』!
「うぬぁっ、ぐあああああぁぁぁぁああ……」
そして数分後、それが終わったらしく彼は立ち上がった。しかし、どうやら様子が先程までと違うようだ。
「……くフッ。ヒャッヒャッヒャッヒャッ。これが『俺』の新しい身体か。ちょいとばかし運動不足なんじゃあねえのか?」
一人称まで変わり、まるで別人格に乗っ取られたかのようである。
「まあ良いや。……第十三代嵯峨野吾魂。先代の野望は我が身命の全てを以て果たしてやろうじゃあないか」
どうやらガチに別人格関係のようだ。
「さて、先代の野望とは……?なに、『或る血統の滅亡』?ハハッ、こいつは物騒だ!……え?嘘だろ、件の血筋、残り一人って。つまんなっ。頑張って滅ぼせよ。何でそんな微妙な感じで残してたし。しょうがねーなー。俺が達成してやりますか!」
そう言って、崖とは反対側に歩き出した。
ところが、数歩行ったところで突然、まるで操り人形が糸を切られたかのように倒れこんだ。起き上がる気配が見られない。あたかも、『彼の身体が動こうと考えることを止めてしまったかのように』。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 7.サイレントレイヴン ①

夏が近づいて、日が出ている時間が長くなったとしても、夕方の6時を超えるとあたりはそれなりに暗い。
特にこの街は田舎だから、中心部はともかく駅前なんかから離れてしまえば、街灯は少なく夜は暗い。
別にこの街の治安は悪くはないから平気なんだけど。
それでも人通りは少ないから、小学校の頃は大人たちからは気を付けてとよく言われる。
まぁ、夜道じゃ何が起きるか分からないけど。
物騒なことが起こるとは限らないし、”普通の人が知らないモノ”が、涼しい顔で本領発揮しているかもしれない。
でも、何が起きても別にわたしは気にすることはないと思う。
そもそも、最近かなり現実離れしたことが起きてるし。
しょうがない、”こういうところ”に住んでいるんだもん、諦めるしかない。
そう思った時、誰かとすれ違った。
何気なく振り向くと見覚えのある後ろ姿が見えた。
「―黎?」
思わずその名を呟いたと同時に、その人がちらとこっちを見た。
「…あ、」
だが彼はこっちをチラ見しただけで、そのまま歩き去って行った。
「…」
珍しく知り合いとそこらへんで会えたのに、特に何も起きなくってちょっと虚しかった。
だが彼の姿に、ふと違和感を感じた。
―いつもはリュック持ってるのに、手ぶらで歩いてる。
…いや、そこまでおかしくないかな? わたしはそう呟くと、もう結構暗いな、と家路を急いだ。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ㉕

「…まぁ、な」
彼はくく、と笑って続ける。
「例えそうなろうとも、友達だし…いやだからこそ、か」
そしてちらと斜め後ろに目をやった。
「…あとそれを望んでる人がいるし」
耀平の視線に気づいたらしき黎が、慌てて目をそらした。
「確かにねー…黎ってボクら以外にあんまり友達いないし」
「いやお前も基本おれら以外にに友達いないだろ」
…が、学校行ってねぇからしゃあないだろ、とネロは自分をいじってきた耀平に対して口を尖らせる。
「…そうなんだ」
「…何か悪い?」
わたしの何気ない言葉に、珍しく黎が反応した。
「あ、いや…別に」
「ならいいけど。…別に、こっちは最初ただの抑止力のつもりだったから。それがいつの間にか…」
話の途中で、何か言いにくいことでもあるのか彼の言葉が途切れた。
「いつの間にか…⁇」
その続きは?と言わんばかりに耀平はうつむいている彼の顔を覗こうとした。
「…耀平、それ以上やると軽く首絞められるぞ」
黎が言いたいことに気付いているのか、師郎は苦笑いしながら耀平をとがめた。
え~と笑いながら、耀平はネロと一緒に黎の顔を見ようとしていた。
…わたしは、異能力者はやっぱり只者じゃないんだと思いながら、彼らの平和な光景を眺めているばかりだった。

〈6.ハルピュイア おわり〉

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ㉔

「…鷲尾さん、それはちょっとやりすぎなんじゃ…」
わたしが諫めようとすると、”ハルピュイア”はぴしゃりと返した。
「やりすぎって言ったって一応正当防衛になるから別にいいのよ。こうやって他の能力者が抑えていかないと、みんな大変なことになるし…」
そう言いながら、彼女はネロの腕をちょっと乱雑に離す。
”ハルピュイア”の能力から解放されたネロは何も言わずに相手を睨みつけた。
「…抑止力、か」
ぽつり、と黎が呟いた。
「…”抑止力”?」
わたしが思わず聞き返すと、さっきまで黙って場を見ていた亜理那が話し出した。
「他の能力者の暴走を抑える異能力者のことよ。まぁ、どの異能力者も、他の能力者の抑止力であることには違いないんだけどね。世界の秩序とかを崩さないようにするために」
「特に”ネクロ”なんかの強力極まりないのとかは、おれらとかで抑えてかないとダメだ。ついでに言うとコイツは感情任せになりやすくて危なっかしいし」
耀平も亜理那の言葉にうなずく。
「―秩序や秘密を守るためなら、最悪の場合自ら手を下すことだって構わねえよ」
くすりと笑う耀平に、わたしは背筋が凍り付いた。だが少し引っかかるものがあった。
「…でも、」
でも、最悪の場合、自ら手を下すのなら―とわたしは彼に浮かんだ疑問を投げかける。
「それでも友達?」
ネロがぴく、と反応したような気がした。

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世にも不思議な人々55 ヌエ

ヌエはどうやら、別次元に飛ばされたようだ。
「おお、飛んだ飛んだ。さて、ここは一体何処なんでしょうね?」
そこに現れたのは、皆さんご存知キタさんだ!どうやら、というよりやはり、ヨニヒト次元だったようだ。
「お、能力者。……?けどちょっと毛色が違う?何だか分からんが、まあ色々見せてもらいましょうかね」
と、彼がヌエに対して能力を行使した瞬間、彼の目に、通常の人間ならば有り得ない量の情報が、『可視化』された。
「うおっ、う、うおぇぇ……。何だ今の。吐き気したぞ。君、本当に人間か?」
「んあ?ええそりゃーもう、太陽が東から昇って西に沈むのと同じくらい確かに、あっしは人間ですぜ」
今度は『あっし』か。
「よっしゃ、もっかいやってみよう」
再び能力が行使された。しかし、今度は何故か何も『可視化』されなかった。
「あれぇ?おっかしーなー。君、何かした?」
ニタニタしながらヌエが答えた。
「あ、また『アレ』が出てましたか。何をしようとしてたのかは分かりませんが申し訳無い。いやね、このヌエ、『より不可解な方向に行く』という能力でして、多分貴方のやろうとしたことが不可解にねじ曲がったんでしょうねぇ」
「ふーん、道理で。しかしヌエ、もしかして他の次元から吹っ飛ばされたクチだったり?」
「しますな」
「ほう。実はつい最近君と同じ出自の奴がこっちに来てさ、まあ君ならきっとこっちでも上手くやっていけるだろう。なかなか良い性格をしているからな」
「そいつは有り難いお言葉。しかし生憎とこちらの能力者事情は全く知りませんゆえ、色々教えてもらいとうございます」
「ああ、喜んで」

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世にも不思議な人々54 一つ目小僧のその後その2

「けどまあ良いや。せっかくのこのこ現れてくれたんだ。今度こそこの次元から消えてもらうぜ」
ヤタガラスがその右手をヌエに向けた。しかし何も起きない。
「……チッ。またか。ホント、お前何なんだ?どんな能力を使うのかも、とにかく異端ってこと以外まだよく分かってないし、全体的に不気味で不可解なんだよな」
「だからいつも言ってるだろう?『不可解こそ俺の能力の本質だ』ってさ」
ヌエが楽しそうに返す。今度の一人称は『俺』のようだ。
「まあ今度こそ上手く行くかもしれないぜ?物は試しだ、もう一度やってみろよ」
「ええ、嫌だね。どうせまた失敗するんだ。無駄なことはしたくないんだ」
「いや、自主的能力者抹殺とかいう究極の無駄は見ないふりですかや」
突っ込んだのはマリアだ。
「まあまあまあまあ。もしかしたら今度は何か起きるかも知れないじゃない?やってみなって!」
強く推すヌエに負けて、遂にヤタガラスもしぶしぶ再び能力を使うことにした。
「どうせ無理なんだろうが、そんなに言うならやってやんよ!消し飛べ異端者!」
能力がヌエに到達する瞬間、彼の目が何色かに光ったように見られた。そして、その直後には、彼は跡形も無く消えていた。
「……何だったんだ。これまで五回やって全部見事に失敗してたんだぞ。なぜ今更消えるんだよ」
「別次元に吹っ飛んだだけだって。けど何で消えたんだろうねー?消えない方に五百円とか思ってたのに」
「賭け金どこに払うんだよ」
「さあ?しかし何故に消えたんでしょ?予想外」
「全くだ。まさに不可解だよ」

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世にも不思議な人々53 一つ目小僧のその後その1

こちらはRNテトモンよ永遠に!さんのハブアウィル次元である。とある男女の双子が一つ目小僧君をヨニヒト次元に飛ばした後の話である。
「……よし、これでお仕事終了ってわけだ」
「しっかし兄上もなかなか酷いことをするねぇ。人一人この次元から消し飛ばすなんて」
「いやお前兄上なんて言うキャラじゃ無いだろ。それに、お前のせいで他次元に飛ばすだけになってるわけで、お前の邪魔が無きゃあいつは完全に消せてたんだからな」
「だからー、そういうところが物騒なんだってば兄さん。私が居なきゃやってることただの殺人だからね?」
「知ったことか。異端は消えて然るべきだ。ってか『兄さん』呼びもお前のキャラじゃねえだろ」
「特大のブーメランですが」
「次元の番人なんだ。多少は許されるさ」
「自称だけどね」
「で、お前はさっきから何をこそこそと見てるんだ?出て来いよ」
物陰から出てきたのは、ニタニタ笑いを顔に貼り付けた何とも不気味な少年だった。年の頃は十代後半といったところだろうか。
「いやー、お久しぶりですねー『ヤタガラス』、それに『マリア』」
「おー、つい三日前にも会ったけどな」
『ヤタガラス』と呼ばれた男子の方が答える。目はまるで金属のように銀色に輝いている。
「貴方はいつも『久しぶり』と言いますよね」
『マリア』も言う。こちらの目の光り方は太陽光のように真っ白だ。
「いやいや、この私にゃあ三日も十日も花薄荷も関係無いんでね」
「いや今一個関係無いのあったぞ、『ヌエ』」
どうやらニタニタ笑いの少年は『ヌエ』と云うらしい。
「個人的にはチェシャ猫の方が良かったんだけどねぇ。ほら僕っていつもニタニタ笑ってるじゃない?」
一人称がいつの間にか『僕』になっている。

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世にも不思議な人々51 一つ目小僧その4

「で、どうやって僕ら二人から逃げるつもりなんだい?」
伏見が一つ目小僧君に尋ねる。
「こうする」
そう言って一つ目小僧君が、両手を前に突き出した。
「これが俺の能力だ。まず、手首より先のパーツを『減らす』」
その言葉通り、彼の両の手首から先が消えてしまった。
「次に、そこに肘から先のパーツを二股に『増やす』」
更に手首のあった辺りから、腕が生えてきた。
「これを新しく『増やし』た腕でも繰り返す。手首から先を『減らし』、腕を『増やし』、これを繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して繰り返して!!!」
そうしてみるみるうちに増えていった彼の腕が、網のように上手いこと絡み合い、伏見・安芸を囲う檻となった。
「どうだ!これで逃げられないだろ!あとは少しずつ腕を『増やし』ながらじわじわと逃げていけば、俺の勝ちって寸法だ」
得意気に言う一つ目小僧君。我らが万能二人組は何も言わずにその檻を見ている。と、安芸の方が口を開いた。
「……こうして見ると、人の腕で出来た檻って、強度云々よりも精神的な面で脱出を阻んでますよねぇ……。隙間から逃げ出せないでしょうか?」
伏見も返す。
「いや、多分そこにまた腕が『増やされる』んだろう。これは見事。なかなかどうして詰みなんじゃあないか?」
そう言っている間にも、一つ目小僧君はじわじわと後退して確実に距離を離している。
「まあ、僕らには関係無いんだが」
ジッパーの能力で、二人はいとも容易く脱出。
「え……嘘だろ……。何なんだお前らは!?」
安芸が答える。
「万能能力者です」
伏見も続く。
「多機能能力者だ」
どうやら一つ目小僧君も観念したようだ。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ㉑

「…ソイツとはちょこちょこそこらへんで会うし」
「え⁇」
彼の発言に、わたしと亜理那と鷲尾さんは唖然とした。
「…え、マジで? ホントにちょこちょこ会うの?」
なかなか会おうと思っても会えないよね?と、亜理那は思わず身を乗り出して尋ねた。
だが尋ねられている側はポカンと顔を見合わせる。
「いや、なーんか知らないけどたまに干渉してくるってゆーか」
「なんか、出会いやすいというか…」
「うーん」
そこまでビックリする事?と彼らは首を傾げる。
…彼らにとって”情報屋”は、時々会う知り合いか友達みたいな感覚らしい。
「まーでも謎の興味持たれてることは確かっぽいよね~」
多分ボクなんだろーけど、とネロは言う。
「…だろうなぁ。ネクロは特殊な奴だしー…てか、なんで”アイツ”あの事知ってるんだ? 誰か…言った⁇」
おれは他の人に言ってないハズだけど?と耀平は他の3人に尋ねる。
「いや~俺も特に他の人に言ってないけど?」
「ボクは耀平たち以外に話す相手いないから言ってない、てか最近”アイツ”に会ってないし」
えーじゃ誰だよー言ったのは…と耀平があきれたように言った時、彼のそばでスッと手が上がった。

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世にも不思議な人々㊿ 一つ目小僧その3

さて、あの二人から逃げた一つ目小僧君だが。
「…一体何だったんだよあいつら……。異能力者だと言ってはいたけど、だったらピンとくるはずだろ…?大体あの双子に会ってから全てがおかしな方向に進んでるんだ。全く、今日は厄日だぜ」
「『あの双子』?気になるな。それについて詳しく良いかい?」
突然、どこからか現れた伏見が話しかけてきた。
「うおわあっ!何でいるんだ!?確かに撒いたはず!」
「いやー、チャチャさんの能力、本当に便利ですね。もう私並みに何でもありじゃないですか」
伏見の後ろから安芸の方も現れた。
「ああ、そうそう、ジッパーの能力。『次元を超える穴を作る』、まあワームホール製造能力と思ってもらえれば」
「おいこら無視すんな!」
「え?ああ、ごめんごめん。で、さあ、話を聞かせてもらおうか」
「ああ、いや、別に、むしろお前らとは居たくないんだが」
「そうかい?けど君は僕らからは逃げられないんだぜ?諦めた方が良いんじゃあないか?」
「……いいや。そりゃあ確かに俺の能力は、手品みたいなしょぼいもんだけどよォ…、これでも異能力者の端くれだ。そして何より、俺は負けず嫌いなんだ。つーわけで、何としても逃げさせてもらうぜ」
そう言った一つ目小僧の両目は、少々不思議な表現だが、『真っ黒に光っていた』。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑲

…そう考えると、やっぱり普通の人間である自分がこういうモノを知ってしまった事って、かなり大変な事だと改めて思った。
「…あの時代らへんだと、異能力者同士でも疑心暗鬼だった感じだよね」
不意にネロが呟いた。
「まーそうだな。同類だけど、自分にかけられた疑いを晴らすために他の能力者を売ったり、な…」
「それで巻き込まれた異能力者結構いるはず」
「…実際過去のレイヴンはそれで処刑されました」
「え、処刑とかあっさり言っていいモンなの⁈」
みんなががちゃがちゃ言う中、平坦な口調でかなりおぞましいことを言った黎に、わたしは後ずさる。
「…いや、実際にあったことだし」
言った張本人は、別に驚くわけでもなく淡々と答える。
「まぁ、マジメに考えればあの時代結構どうかしてたよな~」
「だよね。”魔女”や”魔法使い”だけじゃなくて、所によって異能力者は、”悪魔”やら”化け物”やら、すごい時は”神の化身”的なモノとか…」
「そもそも光る目や、能力発動時と非発動時で、同じ人格の別存在という感覚自体が普通の人間離れちゃってるから…」
「…やっぱり、世のオカルトな事って、かなり異能力者が絡んでるような気がする…」
鷲尾さんがそう言ったところで、がやがやと話していた一同はうなずいて沈黙した。

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世にも不思議な人々㊾ 一つ目小僧その2

「つーかーまーえーたァッ!」
伏見は一つ目小僧のほぼ真上から首と右腕を、安芸は地面を這うような低い姿勢で両脚を捉えた。
「よーし捕まえた……ってあれ?何だこれ?」
しかし、彼らが捕まえたのは、一つ目小僧のものらしき右腕と両脚の膝から下、そして生首だけだった。
「うわっ、気持ち悪っ」
伏見がそう言っている間に、それらは消えてしまった。
「……お華さんや、どう思う?」
「これがあの一つ目小僧の能力なんでしょうね」
「もう一度だ。今度は声を出さないようにしなくっちゃね」
「やっぱりあれが原因でしたかね?」
再び追跡開始。今度は無事に組み伏せた。
「ぐああ、離せー」
既に人間の顔に戻ってしまった一つ目小僧が抵抗する。
「いいや、駄目だね」
「一体何が目的だ!?金なら無いぞ!」
「いや、別にそういうんじゃあ無いんだ。ただ君さ、能力者なんだろ?僕らも同類だからさ」
「え!じゃあお前達も異能力者なのか!?」
一つ目小僧を組み伏せたまま、会話が始まった。
「ああ、その通りだ」
「へえ、じゃあいつその能力に気付いたんだ?」
「いや、別に、手に入った時に自覚したんだが」
「ん?じゃあそっちの子は?」
「んー、気付くっていうのはちょっと変な言い方ですね」
「思い出した、の方が正確か?」
「いや、後天的に身に着いた能力だし」
「……は?」
一つ目小僧が倒されたまま、右手を軽く握った。その瞬間、伏見の腕と言わず、脚と言わず、頭と言わず、首と言わず、肩と言わず、腹と言わず、体中に人間の右手のようなものが取り付いた。
「うわ、何だこれ」
「お前ら一体何なんだ!?少なくとも俺の仲間でだけは無いね!」
そう言って軽く右手首を上げると、その動きに対応するように取り付いた右手が一斉に伏見の身体を引っ張り、引き剥がした。
「後天的、だぁ?何ふざけたこと言ってるんだ、能力は前世から引き継がれるもんだと相場が決まってんだぜ!」
そして一つ目小僧はまた逃げ出してしまった。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑱

「…ねぇ鷲尾さん、”悲劇”って…」
思わずわたしがそう尋ねかけた時、わたしの言いたいことに気付いたのか耀平が話に入ってきた。
「…例えば、”魔女狩り”。そこのハルカとかいう奴が言いたい悲劇はこういうのだろう」
「まぁそんなところね」
そう答えて鷲尾さんはちょっとだけ間を置く。
「…まだ魔法や神が、当たり前のように信じられていた頃の話よ。ふとした時に能力を使っているところを見られたり、常人とは違うような挙動を見せたりすると、色々疑心暗鬼になりすぎている時代だったから、”魔女”だとか”魔法使い”として狩られていったのよ」
「…え」
わたしは話の内容に絶句する。
”魔女狩り”という言葉は知ってたけど、まさかその裏に”異能力者”の存在があったなんて。
―それなら、鷲尾さんが常人に異能力がバレるのを嫌がるの事に納得がいく。
異能力者は前に同じ能力を持っていた人間の記憶を引き継ぐ。だから、その時代の事もよく分かっていたりするのだろう。
実際、”魔女狩り”っていうのは凄惨なモノだったらしいから、あれほどではなくとも、”異能力”のせいで痛い目に遭うのは1番嫌に違いない。

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世にも不思議な人々㊽ 一つ目小僧その1

人通りの絶えた夜道を、二人組が歩いていた。
一人は、まだ秋なのに冬用の暗い色のロングコートを着てフードを目深に被った長身の青年。もう一人はその彼より頭一つ分強背の低い少女。ぱっと見誘拐の現場だがどうもそうでは無いらしい。ご存知、チャチャこと伏見清次とリータこと安芸華世である。
「しっかし君、お華さん、何でこんな夜遅くにこんな人通りの無い場所にいたんだ?危ないんじゃあないか?」
「ちょっと外出先で用事に手間取りまして。チャチャさんは?」
「僕も同じような感じだな。……っと、ちょっと安芸ちゃん、こっち」
そう言って伏見清次が安芸華世を街灯も無い細い横道に引っ張り込んだ。最早事案。
「どうしました、チャチャさん?」
「いや、ほら、僕らの少し前方、一人歩いてる奴が居るだろう?」
確かに、彼らのおよそ50m先を一人、歩いている人間が居る。
「はい、居ますね」
「奴がそこの十字路を横切るときに、ちらっとカーブミラーに顔が映ったんだが」
「よく見えましたね」
「そいつの目、一つっきりしか無かったんだ」
「え……。つまり、一つ目小僧?」
「………」
「………」
「……捕まえるか」
「捕まえましょう」
「よし。君は下から、僕は上から攻めよう。この距離、詰められるか?瞬間移動とか」
「はい、『5m』ずつなら」
「よし来た!」
伏見清次は輪ゴムのバリアを空中に展開し、その上を走り出した(今回はスニーカーを履いていないので、例の高速移動は出来ないもよう)。安芸華世は短い瞬間移動を繰り返して一気に距離を詰め、二人ほぼ同時に彼の一つ目に飛びかかった。

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NO MUSIC NO LIFE #9 ワルシャワの夜に/KEYTALK

玲視点

今日は何か大切な日だった気がした。9月9日。毎年笑っていた日。誰かの誕生日だった気がする。三人に聞いてみたけれど誰の誕生日でもなかった。じゃあ、誰の誕生日だろう?私に兄弟は、あれ?
いたっけ?いなかったっけ?何も思い出せない。涙があふれてくる。何故?どうして?兄弟がいたかどうか。それがわからないだけで私は、今現在泣いている。ただ、とても大切なものをなくしてしまった気がする。事の始まりはこの数日後だった。

結月視点

暴走トラックの対処に当たれと言われ、現場へ駆けつけると、自動運転のトラックが暴走していた。ちなみに今日は、一人でどうにかなりそうだったので、三人はおいてきた。美月には、めちゃめちゃ心配されたが。暴走トラックの行く先には、少女の影があった。トラックを刀で切り、トラックを強制的に止め、少女のもとに駆け付ける。「おい!大丈夫か?」そう尋ねると、少女は少し辛そうにしながらもうなずいた。彼女を抱えて救急車を呼ぶと、十数分でこちらについた。その場にいた警官の話によると、僕が真っ二つに切ったトラックは警察署で処理してくれるらしい。仕事が終わった僕は、先ほどの少女の安否が気になったので、彼女が運ばれた病院に行ってみた。彼女の名前は高山 瑠衣というらしい。高山って玲と一緒じゃん。なんて考えながら、病室のドアをノックする。すると、「はーい」と元気な返事が返ってきた。ドアを開けるとそこいたのは先ほどの少女。「初めまして。」というと元気に「はじめまして!」と返してくれる彼女。見た目は14歳ぐらいに見えるが、言動などから、少し幼いのだと考えられる。軽く自己紹介をした後に、瑠衣からこんな風に呼ばれた。「じゃあ、これからよろしくね!王子様!」と、いわれた。「王子様?」と聞くと、「だって、瑠衣のこと助けてくれて、こんなに優しくしてくれるんだよ!結月は王子様だよ!」と答えてくれた。「そっか」と返すと嬉しそうに、「うん!」と瑠衣は笑った。「瑠衣は何歳なの?」と聞くと、「瑠衣はねー、14歳だよ!」と答える瑠衣。その割には、言動や行動が幼くないか?なんて考えるが、後で考えることにして、もう一つ質問をした。「瑠衣は兄弟とかいるの?」と尋ねると、「お姉ちゃんがいたんだけど、急にいなくなちゃって、それで探してたの。あ、お姉ちゃんの名前は玲だよ!」…は?

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑰

「…にしてもすごいね」
ちょうどわたし達の中に沈黙が流れたところで、亜理那がひょこっと話に入ってきた。
「”具象体”…わたし初めて見たな、ずっと噂程度にしか聞いてなくて」
「普通、生きているうちに見られるかどうか、ってモノなのよ? コレ常人にも見えるから、例え持っていたとしても出すことなんてめったにないし」
具象体に目を輝かせた亜理那に対して、鷲尾さんは淡々と言う。
「…大体、具象体って大きいし、変なモノのカタチをとるから目立つんだよな。コイツなんて、よく周りに他人がいないところで引っ張り出してるけど、知らない間に見られて”死に神”扱いされるもんな~」
それでこの女に異能力バレたんだろぉ~?と師郎はいつの間にか能力を引っ込めていたネロをからかう。
「ちょ、ソレ言うなよ…」
「あ、そんな経緯で異能力がサヤカにバレたんだ」
うろたえるネロに向かって、亜理那はくすっと笑った。
「何やってんのよもう…」
鷲尾さんはあきれたように額を手で押さえた。
「あの”悲劇”も、こんな風にちょっとした事で起こったのかしら…」
…”悲劇”? わたしは鷲尾さんの言葉にちょっと引っかかるモノを感じた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑯

「…端的に言うと、”異能力”の”意志”が”幻影”というカタチでこの世界に実体化したものね」
イマイチ内容を理解できないわたしへの助け舟なのか、鷲尾さんは呟くように説明した。
「ま、そんな感じだな。ごく一部の強力な能力の持ち主のみが、能力発動時に呼びだすことができる、”幻”。ちなみにコレ持ち主以外が触ると消えるんだ、…こんな風に」
鷲尾さんから引き継ぐように話を続ける耀平は、不意にネクロマンサーが持つ黒い大鎌の柄に手を伸ばした。
彼の手が柄に微かに触れると、ソレは跡形もなく見えなくなった。
「あ、ちょっと勝手に消すなよ」
「いいじゃん別に…てかこんな所でそんなモン出すな。いくらここにおれらしかいないからって、ソレ自体が危なすぎるから感情に任せて引っ張り出すのはやめろ」
”具象体”を消されて文句を言うネクロマンサーに対して、耀平はあきれたようにたしなめる。
「…むぅ」
たしなめられた彼女は、不満げに頬を膨らませた。
「ソレの刃なんか他人が下手に触ると勝手に記憶をかっさらっていくからな。マジで気を付けろ」
耀平に注意されても、ネクロマンサーはむすっとした顔でそっぽを向いていた。

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世にも不思議な人々をリストアップ7

モブ男子
モブ。もう出てこないと思う。
能力
過去に起因するあらゆる知識・情報を知り、アウトプットできる。
作者のコメント
もう出ないとは勿体無い能力者だ。

モブ女子
モブ。もう出てこないと思う(2度目)。
能力
『忘れる』ということを司る能力。『忘れる』能力であり『忘れさせる』能力でもある。また『忘れない』能力であり、かつ『忘れさせない』能力でもある。更に、忘却の彼方にある記憶を引っ張り出す『思い出す』能力であり『思い出させる』能力でもある。ついでに『思い出さない』能力であり『思い出させない』能力でもある。こう書くと記憶操作に誤解されるかも知れないが、飽くまで『忘れる』ということに起因した操作しかできない能力なので、悪しからず。
作者のコメント
もう出ないとは勿体無い能力者だ(2度目)。

生き物好きの少年
小五。生き物が好き。人間以外のあらゆる生き物を有害有益に拘らず深く愛している。別に人間嫌いというわけではなく、他の動植物に比べて興味が湧かないというだけなのでご安心を。
能力 かえるのうた
ヌシと認識した動植物を神格化する能力。
・神格化された動植物は寿命が大きくのびる。具体的には50年〜100年ほど。
・神格化された動植物がいる一帯はその生物が生きて居続ける限り生態系が保全される。
・神格化された動植物は高い知能を持ち、場合によっては会話さえ可能になる。
・神格化された動植物はごく稀に特殊な能力を手に入れることがある。
作者のコメント
まさか三人とも名前が出ないとは思わなんだ。人間、動植物と神格化シリーズも増えたし、次は付喪神量産かな。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑬

「…これはこれで大変な事なんだよ。常人がこういう”モノ”を知ってしまったらどうなるか…分かってる? ねぇ」
鷲尾さんは少し強めの口調で言った。まるで人を責めるように。
「ちょ、ちょっとハルカ、強く言いすぎだよ。相手は年下なんだし…」
ネロに対して強めに喋っているハルカを、亜理那は苦笑いしながら諫めた。
その様子を見ながら、わたしはこの2人を”彼ら”4人に会わせるのは間違ってたのかな…と思った。
…この通り、目の前の鷲尾さんとネロは気まずい状況だし。
あとの男性陣3人は、警戒しているのか揃ってわざとらしく関係ないフリをしているし。
まぁ、ここはショッピングモールとはいえ、人気のない階段の踊り場だから、最悪修羅場みたいなことが起こっても被害は抑えられる…ハズだ。
「…とりあえず、どうなっても知らないわ。またいつかの時代みたいな事が起こっても、アンタたちのせいだから」
「…アンタ」
鷲尾さんが冷たく言い放ったところで、ネロが静かに口を開いた。
「何? 何か異論でも…」
そう鷲尾さんが言いかけた時―
「…お前ぇぇっ!!」
不意にネロが鷲尾さんに飛びかかりかかった。

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世にも不思議な人々㊻ 敬う人その2

彼の不思議な少年としばらくお話していると、どこからか大きめのヒキガエルがのたのたと私達の方に這いずって来ました。
「あ!せーあ様だ!ほら、あれがせーあ様だよ!格好良いでしょう!」
「おー、ヒキガエルだ」
すると、そのヒキガエルが話しかけてきました。
『ヒキガエルとは何だ。我こそはこの一帯を仕切る土着の神、青蛙神にあるぞ。頭が高い!』
いや、カエルに頭が高いなどと言われましても。まあ穏便に済ませたいので言う通りにしましょうかね。私は屈んで目線を少し低くしました。
「申し訳ありません青蛙神様。ところで失礼を承知でお尋ねしたいのですが」
『何だ?』
「一体貴方様はどのような出自で?」
『出自?そんなものは知らぬ。気付いた時には既にこの世に在った。ただそれだけのことだ』
「ほう。……もしかして、そこの少年が関わっているとか、そんなこと無いでしょうか?」
『厶、彼奴か?さあ、我も所詮は産まれて幾らも経たぬ新参故、知らないことなど山とある』
ふーむ、彼の少年が一枚噛んでいると思ったのに確証が無い。
そんなこんなを考えておりますと、やけに背の高い、と言っても住之江少年よりかは少し低い、それでも細いせいでより背が高く感じられる男がやって来ました。
「む、これは奇々怪々。ヒキガエルと子供が話してら。……ふーむ、而してそれなら何もおかしくないか」
何やら訳を知っている様子。
「えーっと……すみません。これについて何か知ってるのです?」
「うにゃ。けどさっき見たお陰で分かった。ところで君もそこの少年も、僕らの仲間なのか。どんな能力なんだい?」
なぜ私が能力を持っていると知っているのでしょう。雰囲気も不審者だし近寄りたくないです。
「今君は『なぜ自分が能力を持っていると知っているのだろう。雰囲気も不審者だし近寄りたくない』って思ったろう。……君は次に『な、何故私の考えている事が!?』と言う」
「な、何故私の考えている事が!?……ハッ!」
「そういう能力だからだよ。僕のことはキタと呼んでくれ」
その男、キタさんは随分親しげに言いました。

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世にも不思議な人々をリストアップ6

此花陽太郎(ヨースケ)
中学校の頃のあだ名がヨースケだった。他に陽の字がつく奴はいなかったらしい。陽介には面白いのでヨースケと呼ばせている。周りからは感情を素直に表す明るい奴だと思われているが、その実その心の中は中々のカオスであり、心中を読むのは難しい。
能力
認識した足場には、それがどんなものであろうと乗ることができる。空中の砂粒にも、尖った針の先にも、飛んでいる羽虫の背にも、風に揺れる笹の葉先にも、本当に何にでも乗れる。もちろん足場に固体の要素は不可欠。ゲルとかダイラタンシー現象はセーフ。恐ろしいのは、ただバランスがどうのという話ではなく、ただ『その足場に乗れた』という結果だけを定着させる能力であるという点である。
作者のコメント
読みは「このはな ようたろう」。バランス感覚が良かったんだと思う。童謡を考えなくて良いのすっごい楽です。

岸和田陽介(ヨータロー)
中学校の頃のあだ名がヨータローだった。他に陽の字がつく奴はいなかったらしい。陽太郎には面白いのでヨータローと呼ばせている。周りからは感情を表に出さないクールな奴と思われているが実際は感情的で表情もコロコロ変わる。ただその変化が小さいのである。
能力
『何か』を召喚する。『何か』は対象の視界の端ギリギリに出現し、視界の隅をキープするように歩き、歩行速度より早くそちらを向かれた場合は瞬間移動する。この『何か』には対象の注意を引き寄せる性質がある。ちなみに『何か』の正体は長さ60cm程度の竹ひごのような存在である。
作者のコメント
目立つのが嫌いだった結果、こうなりました。読みは「きしわだ ようすけ」。もし僕にスタンドが発現してもこんなのだな、みたいな能力。

仕出原 栄人(神か少年)
「お前神かよ」が口癖。
能力 とおりゃんせ
神だと思った人間を神格化する。たとえ冗談でも僅かにでもそう思ったのならばその人間は神になる。
・神格化された人間は長寿になる。(150歳くらい)
・神格化された人間は生命力が向上し、多少の怪我はすぐ治る上、病気にも強くなる。
・神格化された人間は、そのジャンルに由来した能力を手に入れる。
まさに現人神量産の能力。
作者のコメント
読みは「しではら はるひと」。彼の存在はこの作品の能力の可能性を広げてくれた。

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世にも不思議な人々をリストアップ5

トカゲ氏
トカゲだった男。
能力 黄金虫
他者に暗示をかけられることによって別の生き物になる。人間以外のあらゆる生き物が変化の対象となり、植物や菌類にもなり得る。ウイルスは無理。
作者のコメント
彼の友人はこの後無事ボコボコにされました。彼については名前は考えてないです。

住之江 俊介(大男)
身長七尺に届くほど長身の初の同級生。先天性の能力者。
能力 パフ
あらゆる事象が彼にとって害にならない。その影響で危機から人間を守るためにある反射の仕組みや痛覚が無い。だから辛いのも平気。更に出力を制御するための身体のブレーキが無いため、通常ならあり得ないパワーが出せる。身体はボロボロになる。なお、彼の能力は不死とも言えるが、治癒はしない。メラニンや白血球はなぜかある。
毒や病は効かないが、所詮はタンパク質の塊なので強酸かければ爛れるし、燃やせば炭化するし、首を切り落とせば首から下は神経が切れるので動かなくなる。しかし細切れになろうと蒸発しようと食われて消化されようとそれらは彼の害になり得ないので、治せれば元に戻る。
作者のコメント
読み方は「すみのえ しゅんすけ」。中学校時代の友人との『何も害にならない能力があったら毒とか病気とかアレルギーとか平気になるんじゃね?』『それ、失血とかそういうのも平気にならない?』『実質不死身だ!やべえなww』みたいな会話から誕生した能力です。

少女
住之江と仲の良い少女。計算すると背丈は140無いことになる。不登校。過去に何があったかは不明。最近住之江の小指の先の部分を切り落として治療用に引き取ったそうな。何それ怖い。
能力 蛍の光
何かで突き刺すことによってその人間の外傷を全て完全に治す。刺すときは普通に痛いので、それこそ痛覚の無い住之江ぐらいしか使える相手がいない。
作者のコメント
上の能力者だけを治すための能力です。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑧

「…確かに」
ただわたしから”異能力を知るキッカケになった人達”を紹介してもらうなら、わざわざ鷲尾さんを呼ぶ必要はない。じゃあなぜ…
「あ~、それはね」
亜理那は少し間をとって答える。
「わたし1人だとサヤカから情報引き出せる自信がないから! あとハルカにその事教えたら絶対それが誰か知りたがっていい圧力になると思ったし」
え、とわたしと鷲尾さんは軽く凍り付く。
「あ、圧力…」
内容も内容だけど、いつもの彼女からは考えられないような言葉を繰り出した亜理那に、わたしは唖然としてしまった。
鷲尾さんもあきれたように下を向く。
「そう! 圧力! あとわたしよりもハルカのほうがそういうの得意だし…」
「いやそんなワケねーわ」
あきれ切っているわたし達を気にせず、いつも通りに話を続ける彼女に鷲尾さんは軽く反論した。
そんな突っ込むも気にせず、亜理那はわたしに向き直る。
「と、いうワケでさ~サヤカ、その人達の事教えてくれない? お願いっ!」
そう言って、彼女はぺこりと頭を下げた。
「お、お願いって…」
一生のお願いと言わんばかりに頭を下げる亜理那に、わたしは戸惑った。

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世にも不思議な人々番外編 No.2談義

キタ「いやー、久し振りに登場ですよ」
初「僕はちょっと前にちらっと出たけど」
真琴「いやマジで久し振りだよ俺らは」
キタ「まあ、今回はこの作品で二番目に強い能力者について考察するわけなんだが」
真琴「何故二番目?普通こういうのは最強を考察するものじゃないのか?」
キタ「いやー、それについては作者公認で万能ちゃんが居りますからねー……」
初「あれか」
真琴「あれじゃあしょうがねえや」
キタ「まず候補をあげてみるか。まずは作者がNo.2だと正式に認めてる伏見君だろ」
初「誰それ」
真琴「チャチャさんのことだ」
初「ああ、あの人か」
キタ「次に阿蘇さん。人外モードの時はパワーもスピードも上がって細切れになっても再生するとか」
初「何それ強い。結構良い勝負だな」
キタ「他には、呪術使いの前橋つくばちゃんとかもいたな」
真琴「誰だそれ知らない」
キタ「僕らとはまだ会ってないからね」
初「群馬なのか茨城なのかはっきりして欲しい名前だ」
真琴「そうだ。素のフィジカルだけならあいつも負けてないんじゃあないか?ほら、通り魔のなっちゃん」
キタ「君からそんな言い方が出てくるとは」
真琴「う、うるせー!」
初「確かに彼女もすごいよな」
キタ「あとは、持久力のあいつ。大男。名前はまだ無い」
初「え、嘘、あいつも能力者なのか。この間会ったけどそんな素振り……あったな。すごい深い切り傷作って平気な顔してたわ」
キタ「さて、誰が最強かな」
真琴「なおこの中で最強になっても二番目は揺るがない模様」
初「やっぱりこの中じゃ最古参のチャチャさんを推したいな。一番縁深いし」
キタ「けどあの人呪いに勝てるか?」
真琴「有り得そうなのがなぁ。あの人なら何かどうにかできそう」
初「そうそう、底が見えない」
キタ「僕としては人外の阿蘇さんを推すな。あの人、なのか?姿がもう強キャラだもん」
初「それこそ呪いに勝てるか?」
真琴「逆にあの姿が呪いっぽい」
キタ「まあ結論は個人に任せるってことで」
真琴「終わり方雑だな」

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑤

「あ、あと! あと! ハルカは小学校からの異能力者仲間なんだ!」
「ちょ、ちょっと亜理那ぁ!」
突然の発言に、鷲尾さんは動揺した。
「なんてこと言うの⁈ バレちゃいけないのに…! 常人に見えている世界から隠さなきゃいけないモノを、何で…」
もう信じらんない…と彼女は手で顔を覆い隠す。
あ、勘違いしないで!と亜理那は慌てて鷲尾さんに説明する。
「あのね、サヤカはただの常人だけど前々から異能力のことを知ってるんだ! だから大丈夫! 多分他の普通の人たちには言ってないし!」
だから安心して!と亜理那は鷲尾さんを落ち着かせようとした。
それを聞いた鷲尾さんは静かに顔を上げる。
「多分て…それでも1人にバレてる時点で相当大変なことなんだけど?」
あーっ、まぁね…と亜理那はうなずく。
「でも、サヤカはサヤカの方で異能力知るキッカケになった人たちに脅しとかかけられてるハズだから! きっと平気!」
確かにそうだけど…わたしは多分言ってないのに、何で亜理那はその事を知ってる?
…それにしても、亜理那が会わせたい人って、予想通りやっぱり異能力者だったんだな、とわたしは思った。
まぁ、それがまさか面識のある人だとは思わなかったけど。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ④

「あ、そうなの?」
「…そういうものよ」
壁にもたれる彼女はあきれたかのように亜理那を見た。
彼女―鷲尾さんの様子を見ていて、この人は相変わらずなんだな、と思った。…まぁ、つい少し前まで同じクラスだったから、変化がなくて当然なんだろうけど。
鷲尾さんこと鷲尾 遥は、去年わたしと同じクラスの人だった。
こちら側からの印象としては、マジメで冷静。クラスでどんちゃん騒ぎしているような人たちからは、いつも少し離れたところにいるような人。
かと言って、わたしと同じように孤立していたわけではなく、よく同じようなメンバーでつるんでいることが多かった。
でもたいがい、一緒にいる人たちは彼女と同じように割とおとなしめな人達ばかり、亜理那のような人と繋がりがあるとは到底思えなかった。
「ね、ねぇ亜理那。亜理那は鷲尾さんとどういう関係?」
話が一旦落ち着いたところで、わたしは亜理那に切り出した。
「え? えーとね、ハルカはわたしと小学校の頃からの付き合いなんだ。たまにそこらへんでおしゃべりしたりするし」
ねーハルカ?と亜理那は鷲尾さんの方を見る。
鷲尾さんはまぁ、そうね、とうなずいた。

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世にも不思議な人々㊵ 歩く人・見せぬ人その3

「流石にまいたか!?」
「やめろヨースケ。あんまりフラグを立てんな」
ええ見事にフラグです。そんな二人にあの大男がものすごいスピードで突っ込んできました。
「ぎゃっ!」
「うおっ」
「よっしゃぁ……捕まえたぜェ……」
「くそぅ……。やられたー……」
「ヨースケがフラグなんか立てっから……」
「よし、ようやく捕まえたぜ。ちとボロボロになったけどな」
「いやいや貴方、ボロボロというよりグチャグチャですけど……ぅぇ」
ヨースケの言う通り、大男の両脚と右腕はグロ注意な感じでグチャグチャになっていました。
「何、問題無い。俺の能力は『あらゆる事象が己の害にならない』能力だからな」
ところで、痛覚というものは生物への損傷がその生物にとって害になるからこそいち早く危険を察知するために存在するものである。故に危険が存在しない彼には、能力の影響で痛覚が存在しないのです。
「いやそれはどうでも良いんだ。こっちが見てて気持ち悪くなるから何とかしてくんない?」
ヨータローがつっこみます。
「おお。じゃあ俺を家まで運んでくれないか?あいつは多分今日もいる」
「ええ……。それは良いけどさぁ……。ヨータロー、どっちが右側支える?」
「俺は嫌だぞ」
「俺もだよぉ……。あ、そうだ。その『あいつ』とやらをここに連れてくりゃ良いんじゃね?文脈的にお前をどうにかできる奴なんだろ?」
ヨースケの提案に大男もヨータローも感心。
「その手があったか。じゃあ、三組に不登校が一人いたろ?あいつが多分今日も俺の家に居るはずだから連れて来てくれ」

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世にも不思議な人々㊴ 歩く人・見せぬ人その2

「おい、どうしたヨースケ。お前があいつから逃げたそうな顔してたから隙を作ってやったが、何故あいつから逃げるんだ?」
影の薄い少年が二段少年に問いました。
「いや、自分でもよく分からん。けどあいつは何かヤバイ気がする。人間として必要な何かが決定的に欠けてる気がするんだ。あと普通にでかくて怖い!」
「だから何故逃げる?仮にも同級生だろ」
「いやー、よく分からん異能を持ってる俺らとしてはあんまりバレちゃいけない気がすんのよ。あいつは絶対俺らの異能について訊こうとしていたぜ」
「ふむ。じゃあ逃げた方が良いかもな。って、あいつ追い付いてきたぞ」
後ろを見ると、すぐ後ろにまであの大男は迫って来ていました。
「やべえぞあれ!やっぱ体格差的に逃げ切るのは無理だって。一歩当りの距離が違うもん!仕方ねえ、ヨータロー、俺に負ぶされ!」
「おお、やるのか、あれ」
ヨータロー、と呼ばれた方が何とかヨースケ、と呼ばれた二段少年の背中に取り付くと、次の瞬間には二人の姿は大男の真上にありました。
「ぬ、やはりお前ら……!」
大男が驚いている間に、二人は着地し、逆方向に向けて全力ダッシュを始めました(ヨータローもヨースケの背中からもちろん降りています)。
「くそう、逃がすか!」
大男が追おうとしましたが、その時またあの「カツン」という音が。そちらを大男が見て、やはり何も無いと確かめてから向き直ると、やはり二人は遠くに。
「ええい面倒くさい、こうなったら奥の手だ」
そう言って大男は右手を地に付き、力を溜めるような動作を始めました。