ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ㉑
その様子を見て霞さんはふふふと笑うが、ここでわたしがさっき思った事を思い出す。
「…そう言えば、霞さんって異能力者だったんですね」
わたし、全然気付かなかったですとわたしは言うと、霞さんはそうだろうねと頭をかいた。
「君が一般人だから言わなかったけど、ネロちゃんが堂々と異能力を使っているのを見て大丈夫だと思ったからさ」
だからあの通り使ったんだ、と霞さんは一瞬両目を菫色に光らせる。
「ちなみに、僕のもう1つの名前は”オウリュウ”だよ」
霞さんの言葉に対し、わたしはそうだったんですねとうなずいた。
「…まぁ、そんなことは置いといて」
そろそろ駅へ向かおうぜ、とここで師郎が手を叩いてわたし達の注目を集める。
「そろそろ霞も帰らなきゃだろ?」
師郎がそう言うと、霞さんはそうだねと答えた。
わたしと黎もうなずき、ネロは耀平に近付いて、行こうよーと腕を引っ張る。
耀平は不満そうな顔をしていたが、うんとうなずくと駅へ向かって歩き出した。
辺りはもうすっかり日が暮れ切っていた。
〈23.オウリュウ おわり〉