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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑰

「じゃあ、異能力を解除して」
黎の言葉に耀平は、え、と驚く。
「それじゃおれ達は…」
「いいからお願い!」
霞‼と黎が声を上げた時、分かった!と霞さんが言った。
その途端、辺りの霞がなくなり、元の通りの細道が現れた。
元のように周囲を見ることができるようになったヴァンピレスは、にやりと笑っていつの間にか出していた具象体の白い鞭を振るおうとする。
しかしそんな彼女に向かって中身が入った状態のペットボトルがわたしの後方から真っ直ぐに飛んできて、ヴァンピレスの額に直撃した。
「あうっ」
ヴァンピレスはそううめくと、額を手で押さえながらその場にしゃがみ込む。
「だ、誰ですの…?」
わらわにペットボトルなんて…とヴァンピレスは顔を上げる。
わたしも彼女が目を向ける方を見ると、紺色のパーカーのフードを目深に被った少年、黎が立っていた。
「まさか、貴方…」
ヴァンピレスはふらふらと立ち上がると、黎に向かって具象体の白い鞭を向ける。
黎はかすかに後ずさり、ヴァンピレスは思い切り具象体を振り上げようとした。
しかし、そんな彼女の後ろから、させるかぁーっ‼という叫び声が聞こえた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.オウリュウ ⑪

「あの子は昔から明るくて、何だかこんな僕にも良くしてくれるから、すごく嬉しかった」
だから僕も、人が怖くなっていったんだろうね、と霞さんは言った。
わたしや師郎は黙ってそれを聞き、隣のベンチに座るネロと耀平は静かにこちらを見ている。
黎もちらと霞さんの方を見る。
「ま、そういう訳で僕は変われたんだ」
霞さんは微笑んだ。
わたし達はそんな霞さんの事を見ているばかりだったが、やがて彼はさて!と呟く。
「そろそろ日も暮れてきているし、帰る事にしようか」
霞さんがそう言ってわたし達に背を向けると、え~もう帰るのー‼と耀平が不満気に声を上げる。
霞さんはそうだよ~と振り向いた。
「君達だって、そろそろ帰り始めないと親に心配されるでしょ?」
「まーそうだけど…」
耀平は不満気な顔をするが、霞さんはじゃーあー、と彼に近付き顔を覗き込む。
「僕の事、寿々谷駅まで送ってくれない?」
その言葉に、耀平の顔がパッと明るくなる。
「え、いいの?」
「うんもちろん!」
ギリギリまで一緒にいたいし~と霞さんは続けた。
「やったぁ!」
耀平はそう言って嬉しそうに立ち上がる。
霞さんはふふと笑った。

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翠精造物帰路

すっかり日が暮れた商店街にて。
辺りが暗くなっても人で賑わう商店街を、1人の女と5人のコドモたちが駅に向かって歩いていた。
「でねー、そのトゥイーディアって子が助けてくれたんだよ〜」
金髪にカチューシャをつけたコドモ、キヲンがマスターである女…寧依と腕を組みながら話している。
その様子を後ろから青い長髪のコドモ、ピスケスと赤髪にキャップ帽のコドモ、露夏が見守りながら進んでおり、その数メートル後方で黒髪のコドモ、ナツィとジャンパースカート姿のコドモ、かすみが歩いていた。
「…なぁ」
「?」
ナツィに呼ばれて、かすみは隣を歩くナツィの方を向いてどうしたのナツィ、と尋ねる。
ナツィは前を向いたまま続ける。
「お前、“商会”の魔術師を止めるために“翼”を使ったんだって?」
ナツィにそう聞かれて、かすみはあ、うん…と気まずそうに頷く。
「きーちゃんを上から探してたら、露夏ちゃんが危ないと思って…」
それで咄嗟に、とかすみは苦笑いする。
ナツィはふぅんと返して沈黙した。
暫くの間、2人の間に静かな間が空いたが、ふとかすみがもしかして、と呟く。
「自分のこと心配してる⁇」
「⁈」
ナツィは驚いて立ち止まる。
「えっ、えっと…」
振り向きながら顔を赤らめるナツィに対し、かすみはなんとなくだよ、と笑いかける。
「ナツィは自分が滅多にしないことをすると心配するの、分かってるから」
かすみの言葉に、ナツィは顔を背けるように前を向く。
それを見てかすみはふふ、と微笑みナツィの手を取った。
「…大丈夫」
自分は自分の身を傷つけたりしないから、安心してとかすみはナツィの顔を覗き込む。
「…うん」
ナツィはかすみの方をちらと見て、その手を握り返した。

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飛龍造物茶会 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
毎度のごとく「造物茶会シリーズ」のあとがきです。

今回のエピソードは、”今後”への布石として書いたものでした。
元々はナツィたちがいつもの街の外でワイバーン的な人工精霊やその仲間に出会って戦う…みたいな話を書きたい!と思うところから始まりましたね。
ただ実際に書いていく過程で、トゥイーディアは「人間を嫌いつつも憧れる矛盾した子」にするつもりが、「弱い子に意外と優しい姉御肌っぽい子」になってしまったので「あれ?」って感じです(笑)
でも”今後”への布石にするつもりで話の内容を詰めた結果なので「まぁいっか」と思います。
…だけどちょっと粗削りすぎた気もする。

ということで、今回はここまで。
造物茶会シリーズ第11弾もお楽しみに。

最近は想定よりも忙しくなってきちゃって、自分で始めた企画の作品の執筆が進まず悶々としてます。
あと最近はなんだか遅筆になってきちゃって、(遅筆なことは考えて書けていることかもしれないけど)逆に困ってますね。
まぁ今月中に書きあげて投稿を済ませたいので頑張ります。
それと、今は執筆を止めているけど「造物茶会シリーズ」第10弾の記念エピソードを書きかけています。
こちらはナツィとかすみの馴れ初め話なので、お楽しみに。

てなわけで、テトモンよ永遠に!でした~。

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飛龍造物茶会 Act 23

「“商会”の連中はしつこいな」
「それはこっちのセリフだ」
“学会”の犬ども、とキャスはナツィを睨む。
「おいらたち“商会”のナワバリに人工精霊を差し向けやがって…」
「は? コイツはただの迷子なんだけど」
キャスの言葉にナツィは言い返す。
嘘つけとキャスは吐き捨てるが、ナツィは嘘じゃないとキャスを睨み返した。
「単にコイツは裏路地に迷い込んで気付いたら“商会”のナワバリにいた、それだけだ」
「そんなの建前だろう⁈」
キャスは言い返すが、ナツィは建前じゃないと冷静に返す。
「コイツ、なにも武器を持ってないし出したりもしてないだろう」
普通に“学会”から差し向けられた人工精霊だったら攻撃されそうになると応戦するのが普通だろ、とナツィは続けた。
キャスは、それは…と言いかけるが、すぐに言葉が続かなくなる。
しかし…例え、そうだとしても!とキャスは槍をナツィとキヲンに向けた。
「無関係の奴に“商会”に触れられちゃ困るんだよ‼︎」
キャスがそう叫ぶと、キャスが持つ槍の穂先が橙色に輝き始める。
ナツィは咄嗟に大鎌を構える。
だがそこへ雄叫びと共に何かが突っ込んできて、キャスの槍を奪い取った。
そして上空へと舞い上がる。

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飛龍造物茶会 Act 16

「まさか“学会”の中枢に近い存在な訳ないし…」
トゥイーディアはそう言って前を向き歩き出す。
その瞬間、コツ、と何かが転がってくるような音がした。
なんの音?と何気なくキヲンが辺りを見回した時、不意に目の前が白い煙が立ち込めた。
「⁈」
キヲンとトゥイーディアは驚いて足を止める。
気付くと周囲は白い煙で何も見えなくなっていた。
「なにこれ⁈」
キヲンは混乱したように声を上げ、トゥイーディアはまさか‼︎と叫ぶ。
すると、そう、そのまさかだ、と男の声が聞こえてきた。
「お前を捕まえに来た」
男の声がそう言った途端、キヲンが急にしゃがみ込んで苦しみ出した。
トゥイーディアはおい大丈夫か⁈とキヲンの背をさすろうとする。
しかし、そこまでだ、という聞き馴染みのある声と共に、2人に金属部分が黒い短槍が突きつけられた。
「…アンタ」
トゥイーディアが顔を上げると共に、辺りの煙が晴れる。
周囲にはサイバー風ファッションのジャケットを着て、黒い目隠しをつけて剣や槍、銃器などの武器を持ったオレンジ色の髪のコドモたちが何人も立っており、キヲンとトゥイーディアの目の前にはサイバー風ファッションのジャケットを羽織り、額に黒い結晶のようなものが生えた人物…キャスが立っていた。

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