ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ⑲
「姉ちゃんがアイドルになってから、親は姉ちゃんのことでつきっきりで…」
ぼくの事なんて心配してくれなかった、と琳くんはうつむく。
「それに周りの皆は『姉ちゃんはすごいのに、弟は』って比べてばっかで…」
誰も見てくれなかったんだ、と琳くんは震える声で続ける。
「だから姉ちゃんとはできるだけ関わりたくなかったんだ」
それなのに、と琳くんは両手で顔を覆う。
「今日はZIRCON結成2周年ライブだからって、親が無理矢理ぼくを連れ出して…」
琳くんはそう言って肩を震わせる。
暫しの間わたし達は静かに彼の姿を見ていたが、ふと師郎が…じゃあと呟いた。
「何でその姉ちゃんのグッズを持っているんだ?」
琳くんは…え、と顔を上げる。
「姉ちゃんに劣等感を抱いて関わりたくないと思うなら、そのキーホルダーを持ち歩かなきゃ良いんじゃねぇか⁇」
師郎は琳くんの目を見る。
琳くんは思わず目の前のテーブルの上に置いた濃いピンク色のキーホルダーを見やった。